クレストール錠(ロスバスタチンカルシウム)の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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クレストール錠(一般名:ロスバスタチンカルシウム)は、2005年からアストラゼネカ製薬会社より発売されているお薬になります。「スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)」という種類に分類される、コレステロールを下げるお薬です。

クレストールは、おもに悪玉(LDL)コレステロールを下げるお薬です。悪玉コレステロールは直接動脈硬化を引き起こす原因になるため、LDLが高い場合はクレストールをまず使うという医師も多いです。その結果、かつて世界で最も売れたお薬にもなりました。

しかしながら、脂質異常症の治療の基本は食事制限と運動療法です。どんなにクレストールが優れていても、日常生活を見直さないと脂質異常症は改善しないため注意しましょう。

ここでは、クレストールの効果と特徴についてまとめていきます。

 

1.クレストールのメリット・デメリットについて

<メリット>

  • LDL(悪玉)コレステロールを最もよく下げられる。
  • HDL(善玉)コレステロールを増やす。
  • TG(中性脂肪)も下げる。
  • 5mgから20mgまで患者さんの目標値に合わせて幅広く使える。
  • 肝臓での代謝を受けにくいため、他のお薬との相互作用が少ない。

<デメリット>

  • 食事・運動療法なしでは脂質異常症は改善しない。
  • 2016年では後発品が登場していない。
  • 筋肉痛などの副作用が起こるケースがある。

クレストールは、脂質異常症に対して使用されるお薬です。2012年度の動脈硬化性疾患予防ガイドラインに、脂質異常症の診断基準が示されています。

脂質異常症の診断基準について

※2012年動脈硬化性疾患予防ガイドライン参照

このように脂質異常症は、3つの項目のうち一つでも当てはまれば診断されます。善玉コレステロールが低くても異常と診断されるため、高脂血症から脂質異常症に名前が変更になりました。脂質異常症の詳しい診断基準ついて知りたい方は、「健康診断で脂質異常症と診断された!!脂質異常症の診断基準は?」を参照してみてください。

この中でスタチン系のクレストールは、高LDL血症に対して適応があります。他のお薬と比較してもLDLを下げる効果が強いのがクレストールです。しかし人によっては、「そもそもなぜ高LDLを改善しなければいけないのか?」と思う人もいるかと思います。

高LDL血症をはじめとした脂質異常症は、動脈が固くなる動脈硬化の原因になります。動脈が固くなり、さらにプラークというコブができると、動脈が閉塞しやすくなります。動脈が閉塞した部位が心臓や脳などですと、

  • 心筋梗塞などの虚血心疾患
  • 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害

などの病気が起きやすくなります。これらの病気は予兆もなく、突然発症します。死亡率も非常に高いですし、一命をとりとめたとしても激しい痛みなどの症状、およびその後の後遺症に悩まされる恐ろしい病気です。

これらの病気になってから脂質異常症を慌てて治療しても、時すでに遅しです。脂質異常症をなぜ治療しなければならないのか知りたい方は、「脂質異常症はどうして治療が必要?脂質異常症が引き起こす怖い病気とは?」 を一読してみてください。

特に悪玉コレステロールは、動脈の壁を破壊してコブになるプラークの原因物質になります。そのため脂質異常症の中でも、最も最優先で治療をするべきなのが高LDL血症になります。一方で、高LDL血症を初めとして脂質異常症の治療は、

  • 食事療法
  • 運動療法

が柱となります。クレストールは、コレステロールの合成を阻害することでLDLの上昇を抑えるお薬ですが、

  • 食事を過剰に摂取している
  • 運動でコレステロール自体を消費しない

上記の状態では、クレストールの効果にも限界があります。

クレストールは、食事療法・運動療法をしっかり行ったうえで使っていきます。クレストールだけで脂質異常症を治療しようと考えないようにしましょう。クレストールはLDLを下げる薬ですが、

  • 善玉(HDL)コレステロールをあげる効果
  • 中性脂肪(TG)を下げる効果

もあります。そのため、LDLが高い上にHDLが低い、TGが高いなど合併している場合でも、クレストールは治療適応になります。

さらにクレストールは、2.5mgから20mgと幅広く投与量が変更できます。冠動脈疾患のリスクがそこまで高くない方は、クレストール2.5mgを処方されることが多いです。それでも効果が不十分、もしくは他のリスク(高血圧や糖尿病など)を持っている方は、クレストール5mgが使われます。クレストールは、最大20mgまで患者さんのリスクに合わせて使えるお薬です。

またコレステロールが高い方は、他の病気もお持ちのことが多いと思います。クレストールは肝臓での代謝を受けにくいため、飲み合わせの悪い薬が少ないのも特徴です。

 

 一方でデメリットしては、クレストールにはまだ後発医薬品がありません。他のスタチンの先発医薬品と比較して薬価は安いですが、後発医薬品と比較した場合、負担が少し大きいこともあります。

また副作用にも、クレストールは注意が必要です。クレストールの重大の副作用として特に注意が必要なものは、横紋筋融解症です。横紋筋融解症は、筋肉をつくっている骨格筋細胞に融解や壊死が起こり、筋肉の成分が血液中に流出してしまう病気です。

筋成分であるミオグロビンが大量に流出し、腎臓に負担がかかる結果、尿が出にくくなるなどの腎障害を起こしてしまうことがあります。クレストールを内服中に、筋肉痛や疲れやすさが出現した場合は注意しましょう。

 

2.クレストールの適応・投与量・効果は?

クレストールは、高LDL血症を中心とした脂質異常症に適応があります。クレストールの投与量は、2.5mgから20mgと幅があります。

クレストールは、

  • クレストール2.5mg
  • クレストール5mg
  • クレストールOD2.5mg
  • クレストールOD5mg

の4種類が発売されています。2016年には口腔内で溶けるOD錠も発売され、嚥下が困難な方にも投与しやすいお薬となりました。

適応症ですが、高コレステロール血症・家族性高コレステロール血症となっています。高LDL血症を中心とした脂質異常症に対して使用されるお薬です。クレストールの用法・用量は、2.5mgから投与を開始します。

早期にLDLコレステロールを低下させる必要がある場合には、5mgから処方開始できます。また投与開始や増量後、4週以降にLDLコレステロール値の低下が不十分な場合には、10mgまで増量できます。

10mgを投与してもLDL-コレステロール値の低下が不十分でない、家族性高コレステロール血症患者さんなどの重症患者さんに限り、20mgまで増量が可能です。

それぞれの効果は以下の通りです。

用量 2.5mg 5mg 10mg 20mg
総コレステロール -31.59% -36.40% -34.60% -39.58%
LDLコレステロール -44.99% -52.49% -49.60% -58.32%
TG(中性脂肪) -17.35% -23.58% -19.59% -17.01%
HDLコレステロール +7.64% +9.09% +14.04% +11.25%

と報告されています。LDLのコレステロールを2.5mgでも44%、20mgだと58%減らします。さらにHDLも10%前後増加しますし、TGも20%低下します。

つまり、脂質異常症の基準となる3つの数値を全て改善する効果がクレストールにはあります。最高血中濃度は5時間で、半減期は15~20時間です。1日1回内服すれば、1日中効果が持続できるお薬です。

 

3.クレストールの薬価は?

クレストールは新しいお薬のため、ジェネリック医薬品は登場していません。

次にクレストールの薬価です。クレストールは新しいお薬のためジェネリック医薬品は登場していません。

しかし、先発品のスタチンの中では最も費用対効果の優れる薬剤です。現在、日本で最も汎用されているのは、費用対効果がすぐれていることが大きな要因となっています。

また2016年には、水なしでも服用可能なOD錠(口腔崩壊錠)も発売にされています。クレストールの薬価は、

商品名 薬価 3割負担
クレストール錠 2.5mg 63.1 18.9
クレストール錠 5mg 121.3 36.3
クレストールOD錠 2.5mg 63.1 18.9
クレストールOD錠 5mg 121.3 36.3

※2016年12月26日の薬価です。

そこまで心血管イベントのリスクが高くない方は、クレストール2.5mgを処方するかと思います。この場合は1日薬価63.1円、1か月薬価1893円(3割負担で568円)となります。

このようにクレストールは、脂質異常症治療薬の先発品の中では費用対効果に優れる薬剤ですが、他のスタチンの後発医薬品の方が少し負担が軽くなるケースもあります。

 

4.クレストールが向いてる人は?

<向いてる人>

  • 初めてLDLコレステロールの治療を始められる方
  • LDLコレステロールが高く、その他のリスク(高血圧や糖尿病など)もある方
  • LDLコレステロールも高く、中性脂肪も高い方 

健康診断等でLDLの高値を指摘され、食事や運動などの生活習慣を改善してもLDLコレステロールが下がらない方は薬物療法の適応となります。

LDLが高ければ、まずクレストールなどのスタチン系が第一選択肢になります。特にクレストールは費用対効果に優れた薬剤なので、多くの患者さんに使われています。

冠動脈疾患のリスクの高いような方は、より厳格にLDLコレステロールを管理する必要があります。冠動脈疾患を起こさないためにも、最も効果の強いクレストールでしっかりとLDLコレステロールを管理することが重要です。

 LDLコレステロールが高い方の中には、中性脂肪も高い方がいらっしゃいます。

クレストールは、中性脂肪を下げるフィブラート系のお薬との併用は禁忌(腎機能障害が急激に出現することがあるため)です。そのため、LDLか中性脂肪のどちらかを優先して下げる薬を選択しますが、現状はLDLを優先的に下げます。実際に動脈硬化学会のガイドラインでも、まずはLDLコレステロールの管理を第一優先することとなっています。

その理由は、動脈硬化巣の初期病変であるプラークの内部にはコレステロールが沈着していますが、このコレステロールはLDLに由来するものであることが判明しているからです。

また LDL-Cを低下させることで、動脈硬化性疾患が減少することも確認されています。この ように動脈硬化に密接に関係しているコレステロールは、LDLに含まれるコレステロールが主なのです。したがってLDLコレステロールと中性脂肪がどちらも高い場合には、スタチンを使ってLDLコレステロールを下げる治療を行うこととなっています。

クレストールはLDLコレステロールはもちろん、中性脂肪も20%ほど下げられると言われています。そのため、LDLコレステロールとトリグリセライドのどちらも高い方にもメリットがあると考えられます。 

高LDL血症をしっかりと治療して、動脈硬化の進行を食い止めましょう。

 

5.クレストールの作用機序は?

クレストールは、HMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロールの合成を阻害します。

クレストールの働きを説明する前に、脂質がどのように代謝されているのかを知ってみると良いかもしれません。

脂質を取り込まれた後の代謝の順序ですが、

  1. 食事をとることで脂質が取り込まれます。
  2. 脂質が分解されTG(トリグリセリド)が上昇します。
  3. TGが肝臓に取り込まれます。
  4. 肝臓でLDL(悪玉コレストロール)が作られます。
  5. LDLがコレステロールを体中に回します。
  6. LDLがHDL(善玉コレステロール)に変化します。
  7. HDLが余分なコレステロールを回収してまわります。

となります。大切なことは、コレステロールのおおもとである脂質は体にとって大切な物質であるということです。そのため、⑤でLDLが体中にコレステロールを回しているのです。コレステロールの働きを具体的にあげると、

  1. 細胞膜の構成
  2. ホルモンの原料
  3. 胆汁酸の原料

などが挙げられます。脂質異常症は余分にコレステロールがあることが問題になります。

クレストールは、④の部分で肝臓でTGがLDLに変換されるのを防ぐお薬です。具体的には、HMG-CoA還元酵素という酵素をクレストールは阻害します。このHMG-COA還元酵素は、肝臓内でLDLを作る働きがある酵素です。この酵素を阻害することにより、LDLが作られるのをクレストールは邪魔するのです。

④でLDLが作られなくなると、⑤以降も変化が生じます。

  1. LDLが体内に回る量が減ります。
  2. LDLが少ないことを体が察知して、体内に栄養がないと勘違いします。
  3. LDLを肝臓に取り込んで、低栄養状態に備えます。

このようにして、LDLはさらに血中から減ります。また体内に栄養がないと勘違いすることで、HDLを沢山作って③の肝臓に取り込むように働きかけるのです。

また肝臓では、中性脂肪からVLDL(超低密度リポタンパク質)も作成されます。VLDLには、中性脂肪を運ぶ働きがあります。

そのためHMG-COA還元酵素を阻害してVLDLが減ると、中性脂肪を運ぶ物質も減るため中性脂肪も低下します。大切なのは、食事療法で脂質を制限する、運動療法で血管内の脂質を減らすといったことが重要であるということです。

HMG-COA還元酵素を阻害したからといって、100%肝臓でLDLが作られないわけではありません。つまり沢山食べてしまえば、肝臓でLDLは作られてしまいます。

また血管内に栄養がたくさん漂っていれば、体も勘違いしないためLDLを肝臓に取り込もうとしないし、HDLを増やしてコレステロールを回収しようともしません。そのため、しっかりと食事療法と運動療法をやったうえで、クレストールは効果を発揮するお薬だということを認識しましょう。

 

まとめ

<メリット>

  • LDL(悪玉)コレステロールを最もよく下げられる。
  • HDL(善玉)コレステロールを増やす。
  • TG(中性脂肪)も下げる。
  • 5mgから20mgまで患者さんの目標値に合わせて幅広く使える。
  • CYPを介した代謝を受けにくいため、他のお薬との相互作用が少ない。

<デメリット>

  • 食事・運動療法なしでは脂質異常症は改善しない。
  • 2016年では後発品が登場していない。
  • 筋肉痛などの副作用が起こるケースがある。

<向いてる人>

  • 初めてLDLコレステロールの治療を始められる方
  • LDLコレステロールが高く、その他のリスク(高血圧や糖尿病など)もある方
  • LDLコレステロールも高く、中性脂肪も高い方 

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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