ビソルボン錠・細粒の副作用と安全性

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ビソルボン錠・細粒はネバネバした痰をサラサラにしたうえで、痰の分泌を増やして出しやすくするお薬です。

幅広い効果に加えて、ビソルボン錠・細粒はほとんど副作用がありません。さらに絶対に使えない病気もありませんし、飲み合わせに注意するお薬がないのもビソルボン錠・細粒の特徴的です。

そのためビソルボン錠・細粒は、妊婦・授乳中・高齢者など多くの場合に使用されるお薬です。一方で小児にはデータが少ないため積極的に勧められていません。ここではビソルボン錠・細粒がどれくらい安全か確認していきましょう。

 

1.ビソルボン錠・細粒の副作用は?

ビソルボン錠・細粒はほとんど副作用がないお薬です。

ビソルボン錠・細粒の総症例1,049例中、副作用が報告されたのは23例(2.19%)でした。主な副作用は、

  • 食欲不振8件(0.76%)
  • 悪心7件(0.67%)
  • 腹痛2件(0.19%)
  • 頭痛2件(0.19%)

となっています。ビソルボン錠・細粒は、非常に副作用の少ないお薬です。最も多い副作用である食欲不振でも0.76%と1%を切っています。その他の副作用も悪心(だるさ)、腹痛、頭痛です。

これらの副作用調査は患者さんの症状をみながら医師が報告して調査されるのですが、本当にビソルボン錠・細粒の副作用かどうか調べることはしていません。していないというより、できないとというのが正直なところです。これらの症状も、

  • ビソルボン錠・細粒の副作用か
  • 風邪などの症状か

どちらかはっきりと区別することは医学的に難しいところです。実際に風邪の人は大部分が食欲が低下したり、だるくなります。

ビソルボン錠・細粒の作用のせいで食思不振や悪心になるような作用機序は、現在のところ明らかになっていません。そのため、ビソルボン錠・細粒の副作用は過度に心配する必要はありませんし、風邪などの症状が悪化しないか心配した方が現実的かと思います。

 

2.ビソルボン錠・細粒に眠気の副作用はないのか?

添付文章でも、ビソルボン錠・細粒の副作用に眠気は記載されていません。

ビソルボン錠・細粒を内服すると、眠気が生じるとおっしゃる人が度々います。しかしビソルボン錠・細粒の添付文章では、副作用に眠気は記載されていません。作用機序的にも、ビソルボン錠・細粒は眠気を生じることはありません。

ビソルボン錠・細粒を内服中に眠気が生じる理由として、以下の二つが考えられます。

  1. 風邪の症状で眠気が生じる
  2. 他の薬の影響で眠気が生じる

まず①の風邪の症状で眠気が生じる可能性についてです。ビソルボン錠・細粒が処方される方は、

  • ネバネバした痰

の症状がある方でしょう。痰が胸や喉につっかえたりとかなりの不快感が伴います。これらの不快な症状が、安眠を妨げている可能性があります。

ビソルボン錠・細粒は痰を出しやすくするお薬ですが、原因となる病気を治す治療ではありません。そのため原因となる病気がある限り、痰は出続けます。そのためビソルボン錠・細粒を内服している間は、痰が出続けていて夜寝れてない人が多いです。

もう一つは、他のお薬の副作用です。風邪症状で最も多く処方されるのは、感冒総合薬のPL配合顆粒かと思います。このPL配合顆粒は、

  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン
  • 抗ヒスタミン
  • 無水カフェイン

の4種類の効力があるお薬が配合されています。この中で抗ヒスタミン薬は、副作用として眠気を生じる可能性があるお薬です。抗ヒスタミン薬は、鼻水を抑えるために配合されています。そのため鼻水の症状が中心の人は、PL配合顆粒ではなくポララミンなど抗ヒスタミン薬単剤で処方されている方もいます。

また咳止めであるアスベリンやメジコンも、稀にですが眠気を起こす人もいます。このような原因によって、眠気が出現する可能性が高いです。少なくとも眠気が出現したからといって、ビソルボン錠・細粒を中止する必要はありません。

 

3.ビソルボン錠・細粒が内服できない人は?

ビソルボン錠・細粒が内服できない人は、ビソルボン錠・細粒にアレルギーがある人のみです。

ビソルボン錠・細粒の添付文章では、禁忌にあたる人はビソルボン錠・細粒にアレルギーがある方のみとなっています。これはビソルボン錠・細粒に限らず、全ての薬に対していえることです。アレルギー反応として最も多いのが皮疹などの皮膚障害です。

先ほどの副作用の話に戻りますがビソルボン錠・細粒の副作用として最も多いのがアレルギー症状といえます。しかしこのアレルギー症状もほとんど軽度の皮疹の場合がほとんどです。ただし一度アレルギーが出た人は、再び投与するともっとひどいアレルギーが出るため基本的に禁忌になります。

また、ビソルボン錠・細粒は一緒に飲んではいけないお薬もなければ、一緒に飲むことで効果が減弱したり強くなったりということもないお薬です。

風邪の時に一緒に処方されることが多いPL配合顆粒などには痰切り成分は含まれていないため、ビソルボン錠・細粒と一緒に内服することが多いです。その他の咳止めや解熱剤も、ビソルボン錠・細粒との飲み合わせは問題ないです。

そのためビソルボン錠・細粒は、どのような疾患の人にも、そしてどのようなお薬を内服してる人でも、基本的には使用して良いお薬となっています。

 

4.ビソルボン錠・細粒はアルコールと一緒に内服して良いの?

ビソルボン錠・細粒とアルコールは飲み合わせとしては問題ありません。ただしアルコール自体、風邪には良くないので注意しましょう。

ビソルボン錠・細粒は、アルコールと一緒に内服することで効果が減弱したり、副作用が増えたりといったことがないお薬です。ただし問題ないからといって、ビソルボン錠・細粒とアルコールを一緒に飲んでよいかはまた別問題です。

特に風邪でビソルボン錠・細粒を内服している人は要注意です。ビソルボン錠・細粒以外の風邪薬は、アルコールと一緒に内服すると眠気が強く出てくることがあります。場合によっては、意識が低下してもうろうとしたりします。

また風邪薬は、あくまでも症状を一時的に緩和する対処療法にすぎません。風邪の一番の治療は安静です。そのため、アルコールを飲まずに体を休めることが一番の治療になります。

一方で病気によっては、長期にビソルボン錠・細粒を内服している方もいるかもしれません。COPD(肺気腫)などタバコで肺がボロボロになって痰が出続ける人に、ビソルボン錠・細粒はよく処方されます。

COPDは痰がネバネバする人が多く、痰のキレが悪いとのことでビソルボンの効果を期待することも多いです。COPDは基本的には治らない病気のため、一生ビソルボン錠・細粒を飲み続ける人も多いでしょう。タバコを吸ってる人はお酒が好きな人も多いです。

タバコを頑張って禁煙しているのに、アルコールも一滴も飲んではいけないというのは酷な話かもしれません。そのためビソルボン錠・細粒を長期に飲む必要がある人は、節度を守ればアルコールを飲んでも良いとは個人的には思います。ただしその場合も、禁煙のストレスでついついお酒がすすんでしまう人が多いです。あくまでも嗜む程度であって、大量にアルコールを飲んではいけません。

一方で結核などでビソルボン錠・細粒を飲み続けている人は、イスコチンやリファンピシンなどばい菌をやっつけるお薬を一緒に飲んでることが多いです。これらのばい菌をやっつけるお薬が肝障害を起こす可能性があるため、肝臓を悪くするアルコールは控えなければなりません。

そのため長期にビソルボン錠・細粒を内服している方は、アルコールを飲んでも良いか一度処方されている医師に相談してみると良いでしょう。

 

5.ビソルボン錠・細粒は高齢者・小児・妊婦の方に処方して良いの?

基本的にどの方も禁忌ではありません。ただし小児や妊婦の方は注意が必要です。

ビソルボン錠・細粒は高齢者に関しては添付文章では、一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意することと記載されています。

しかしビソルボン錠・細粒は安全性が高いお薬です。逆にビソルボン錠・細粒を処方するような痰がでている方は、痰を出す力が高齢者の方の場合弱ってることが多いため、若い方より不快感が強くなると思います。そのため実際の医療現場では、高齢者でもほとんどが通常量処方されていると思います。

ただビソルボン錠・細粒は、小児に適応がありません。これだけ副作用が少ないのになぜ小児に適応がないのか、不思議に思う人がいるかもしれません。これは小児に対して、ビソルボン錠・細粒が危険だからではありません。小児に対して安全性を確認したデータが存在しないからです。

実際にビソルボンは以前シロップも登場していて小児の方に多く処方されていました。しかしビソルボンはサラサラした痰に使用すると逆に症状が悪化します。子供の呼吸音がゼイゼイするだけでは痰の性状が分からないため、ビソルボンは症状が言えない小さな乳幼児の方には注意が必要でした。

さらにビソルボンが発売された1960年に比べて、今では様々な痰切りのお薬が登場しています。2017年では痰切りとしてムコダインがあります。ムコダインは鼻水などにも適応があるため、小児にも非常に使いやすいお薬です。そのためあえて小児に対してビソルボンを使用することがなくなったため、2016年3月31日をもって小児でよく使用されていたビソルボンのシロップは発売中止になっています。

また、妊婦の方も適応になります。添付文章では、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.〔妊婦に対しての安全性は確立されていない.〕

と記載されています。実際に妊娠中に安全が確立されているお薬は痰切りに限らずほとんどありません。そのためビソルボンを妊婦に対して躊躇する理由は少ないです。

一方でビソルボン錠・細粒は、痰を出しやすくするお薬であり、痰がでる原因を治す治療薬ではありません。そのため軽症な方は、あえてビソルボン錠・細粒を内服する必要はないと思います。またビソルボン錠・細粒を内服していて症状が軽くなった方も、飲み切る必要性が低いお薬です。

 

まとめ

  • ビソルボン錠・細粒は副作用が少ないお薬です。最も多いといわれている食欲低下も風邪による影響の方が大きいと思われるお薬です。
  • ビソルボン錠・細粒で眠気の副作用が出現することは少ないです。
  • ビソルボン錠・細粒は、どのような病気の人でも内服できるお薬です。
  • ビソルボン錠・細粒は、飲み合わせが問題ないお薬です。
  • ビソルボン錠・細粒を風邪で内服している人は、アルコールは控えましょう。一方で長期間ビソルボン錠・細粒を内服する必要がある方は、一度医師と相談してみましょう。
  • ビソルボン錠・細粒は小児では安全性の試験が実施されていないため、同じ効果のあるムコダインが推奨されます。
  • ビソルボン錠・細粒は妊娠中や授乳中の方は、安全性の試験が示されていないため注意が必要と添付文章では記載されています。

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