クレストールで筋肉痛が出たら要注意?クレストールの副作用について

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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クレストールは、主に脂質異常症・高脂血症・高LDL血症といった病名に使用されるスタチン系のお薬です。クレストールは悪玉コレステロール(LDL)を最も下げるお薬のため、世界中でよく使用される脂質異常症のお薬です。

クレストールはLDLコレステロールを下げる力が非常に強いですが、効果が高いからといって他のお薬と比較して副作用が増えるわけではありません。ただしクレストールは、副作用がないわけではないので注意してください。

特に筋肉痛などの症状で起きる「横紋筋融解症」には注意が必要です。ここでは、クレストールで代表的な副作用である横紋筋融解症を中心に、クレストールの副作用についてまとめていきます。

 

1.クレストールの副作用について

クレストールの副作用で最も注意が必要なのは、筋肉痛などの横紋筋融解症です。

クレストールの添付文章では、10,380例中1,950例(18.8%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められています。主な副作用としては、

  1. 筋肉痛335例(3.2%)
  2. ALT(GPT)上昇179例(1.7%)
  3. CK(CPK)上 昇171例(1.6%)

となっています。最も多いのは筋肉痛です。これはクレストールの副作用として、筋肉を溶かす横紋筋融解症がありうるためです。筋肉が溶かされると、クレアチンキナーゼ(CK)という筋肉を構成する物質が血液内に増えます。その副作用が1.6%と認めます。

このように1番目と3番目に多い副作用は、横紋筋融解症で説明がつく副作用です。クレストールの2番目に多い副作用は、採血でALTが上昇することです。ALTは肝臓が障害されたことで上昇します。クレストールは、HMG-CoA還元酵素阻害薬として肝臓に作用します。肝臓に作用することで、コレステロールがLDLになるのを防ぎます。

肝臓に働くことで肝機能障害が起こることがありますが、重篤な状態になることはほとんどありません。なお、横紋筋融解症や肝機能障害含めて、クレストールの副作用は投与初期にみられることが多く、その多くは投与をやめることで回復します。

 ここでは、副作用として最も多い横紋筋融解症についてみていきましょう。

 

2.横紋筋融解症の症状について

横紋筋融解症の症状は、筋肉痛・筋疲労・褐色尿です。

クレストールなどのスタチン系のお薬の重大の副作用として、横紋筋融解症は特に注意が必要です。横紋筋融解症は、筋肉をつくっている骨格筋細胞に融解や壊死が起こり、筋肉の成分が血液中に流出してしまう病気です。

筋肉が分解することで、ミオグロビンという物質が血液内に大量に流出します。血液内にミオグロビンが大量に出ると、おしっこを作る腎臓に負担がかかります。結果として腎臓や尿管にミオグロビンがつまり、尿が出にくくなるなどの腎障害を起こしてしまうことがあります。

横紋筋融解症の頻度は0.1%未満と非常に低い副作用ですが、出現した場合には重篤になることもあります。そのため、どのような症状がまず出るか知っておくことが大切です。横紋筋融解症の症状は、

  • 筋肉痛
  • 筋疲労
  • 筋力の低下
  • 脱力・ 麻痺
  • 赤褐色尿(ミオグロビン尿)

が挙げられます。特に先ほど示したように、筋肉痛が最も多いです。クレストールを内服してから数日以内に出てくることが多いので、クレストールを内服したらこれらの症状には注意してください。

ただし、

  • 筋肉痛
  • 疲れ
  • 筋力の低下

というのは、その日の運動量で大幅に変わってくるかもしれません。特にクレストールを内服している人は、脂質異常症として運動療法を取り入れていくべきです。

「休日ちょっと頑張って走ったせいかな」と思って、様子をみたい人もいるかと思います。「筋肉痛があるから仕事を休む」とは、なかなか言いづらいかと思います。

運動の筋肉痛とクレストールの筋肉痛を見分ける最大のポイントは、運動の場合は疲れが取れてきたら徐々に良くなることですが、クレストールはどんどん悪化することです。

ただし運動の筋肉痛も普段運動しない人は2日後に出るともいわれるため、これだけで判断は難しいです。そのため、クレストール内服中に筋肉痛が出たらすぐに受診していただきたいところです。

少なくとも、尿が褐色(赤い色)を認めたらすぐに受診してください。褐色尿が認められると、ミオグロビンが壊れている可能性が高いです。ミオグロビンによる褐色尿ではなかったとしても、血尿が急に出てくる時点で診察すべき症状です。

また、運動で筋肉が壊れてミオグロビン尿が出ることがありますが、もし運動によるものだとしてもミオグロビンが出てきた時点で腎不全に移行する可能性があるため、病院を受診すべき症状です。

 

3.横紋筋融解症の診断と治療について

横紋筋融解症は、CKを測定することで診断できます。治療としては、クレストールの中止と補液でCKを洗い流すことです。

横紋筋融解症が疑われた時の検査ですが、基本的には採血および尿検査になります。一番分かりやすいのが、CKを測定することです。CKとは、クレアチンキナーゼのことを示します。

  • 横紋筋
  • 平滑筋
  • 心筋

など筋肉に多く含まれている物質で、臓器や血液にはほとんど含まれていないのが特徴です。CKはさらに、3種類に分かれています。

  • CK-MB(心筋):心筋梗塞・心筋炎・開心術後・筋ジストロフィー
  • CK-BB(脳):急性脳損傷・中枢神経手術後・悪性腫瘍
  • CK-MM(筋肉):横紋筋融解症・挫滅症候群・多発性筋炎

となっています。CKMBなどは、よく心筋梗塞が疑われた時に測定します。一方で心筋や脳などに異常がある時は、なんらかの症状があることがほとんどです。そのため横紋筋融解症が疑われた時に、本当にCK-MMが上昇しているか細かく調べることはほとんどありません。

筋肉痛や筋疲労などの症状+CK上昇で、横紋筋融解症と診断できます。逆に筋肉痛があっても、CKが上昇してなければ横紋筋融解症の心配は少ないです。

また、尿も調べることでミオグロビンが尿にないか見る必要があります。尿所見の特徴として、

  • 尿潜血陽性・・・尿が赤い
  • 尿沈査で赤血球陰性・・・尿に血が含まれていない

というのがミオグロビン尿の特徴です。採血や尿で、横紋筋融解症かどうかを診断することが大切になります。診断がついたら、次は横紋筋融解症の治療です。

横紋筋融解症の治療は、まず原因薬の中止です。つまりクレストールでおこった場合は、クレストールは中止する必要があります。ただし、

  1. フィブラート系(中性脂肪を下げるお薬)
  2. ニューキノロン・マクロライド(ばい菌をやっつける抗菌薬)
  3. 塩酸クロミプラミン・塩酸マプロチリン・炭酸リチウム・バルプロ酸ナトリウムなど(精神薬)
  4. 解熱鎮痛薬
  5. 風邪薬

など他にも多くのお薬が原因になるため、「クレストールを飲んでる=クレストールのせい」とは決まりません。(クレストールのせいではないと否定することも難しいですが…)

また薬以外にも、

  • 激しい運動
  • 熱中症
  • 発熱
  • 栄養状態異常(低K血症など)
  • 外傷
  • 褥瘡(寝たきり)
  • 筋肉に感染

などでも横紋筋融解症はありえるので、思い当たる節があれば医師に伝えましょう。原因に対する治療以外には、基本的には補液しか横紋筋融解症は治療するすべはありません。

点滴で筋肉から溶け出したCKを洗い流すことで、腎臓を守ることが一番です。ミオグロビンが腎臓に詰まって重篤な腎不全になってしまうと、透析などの対応が必要になります。

そのため横紋筋融解症の一番の治療は、早期発見・早期治療になります。

 

4.クレストールで横紋筋融解症が起こる機序は?クレストールを再び内服して良いの?

クレストールがなぜ横紋筋融解症が起きるか、その機序ははっきりとしていません。クレストールを内服して数日で重篤な副作用が起きた人は、スタチン系はやめた方が無難です。一方で、クレストールを長年内服して軽度の症状であった場合は、再開も考慮します。

クレストールなどのスタチン系でなぜ横紋筋融解症が起こるか、はっきりとした機序は解明されていません。

  1. クレストールが筋肉のコレステロール成分の減少させたことによる作用
  2. クレストールが筋肉のタンパク質のPrenylation(脂肪酸を介したタンパク修飾の 一種)の障害をきたす作用
  3. クレストールの作用でコエンザイムQ10の減少によりエネルギー減少によって障害をきたす作用

などが言われています。

①は、クレストールを内服してコレステロールが急激に低下したことで起きるという説です。実はコレステロールは、体にとって重要な働きをします。大量にコレステロールがあるのが問題なだけで、少なすぎも問題です。

特にコレステロールは、細胞の膜を構成する物質です。そのため、クレストールで急激にコレステロールが低下すると、筋肉の細胞膜を構成するコレステロールが無くなって筋肉が壊れる可能性があります。

②は、クレストールがたんぱく質であるPrenylationを阻害することで筋肉が障害される可能性です。このタンパク修飾は、基本的な筋肉の細胞機能に関係しています。そのためPrenylationが阻害されると、筋肉が作られなくなり壊れやすくなるのです。

③は、クレストールが筋肉のエネルギーを阻害する可能性です。筋肉のエネルギー源となるコエンザイムQ10が無くなると、筋肉が飢餓状態になり壊れてしまいます。これによって筋肉が融解するのです。

ただしクレストールなどのスタチン系が、これら3つのうちどれが直接的な原因となって横紋筋融解症を起こすははっきりとしていません。機序がはっきりとしていないといわれると、

  • クレストールをそもそも飲みたくない
  • クレストールで横紋筋融解症が出た場合、再開したくない

という人も多いと思います。しかしクレストールの横紋筋融解症による重篤な障害は、0.008パーセント(10万人に8人)であり、死亡例は100万人中0.15人と極めて低い確率です。

今回あげた横紋筋融解症の症状を理解していれば、早期発見しやすい副作用でもあります。副作用が過剰に心配な人は、クレストールをなぜ内服するかが大切になります。クレストールを内服する脂質異常症の方は、脂質異常に伴う動脈硬化を防ぐためです。

動脈硬化が進行すると、

  • 心筋梗塞などの心疾患
  • 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害

のリスクが上昇します。これらの病気は発症すると死亡率も高いですし、後遺症も強いです。詳しく知りたい方は「脂質異常症はどうして治療が必要?脂質異常症が引き起こす怖い病気とは?」を一読してみてください。

そのため、過度にクレストールを怖がって避けた結果、もっと怖い病気が待っているかもしれないことを理解することが大切です。一方で、脂質異常症の一番の治療は薬ではありません。

が大切です。これらで脂質異常症を改善することが一番の治療法になります。そのためクレストールで横紋筋融解症が出た人は、

  • クレストールを内服していた期間
  • 横紋筋融解症の症状
  • 脂質異常症の程度

などで判断します。高LDLが改善できず、クレストールを長年飲んでて筋肉痛が出た程度であれば、場合によってはクレストールを再開します。

しかしその場合も、定期的に採血をすることを忘れないようにしましょう。採血することで、

  • 脂質異常症の改善度合い
  • 横紋筋融解症や肝機能障害の副作用の程度

を確認することができます。

 

まとめ

  • クレストールの多い副作用として、横紋筋融解症があります。
  • 横紋筋融解症は、筋肉痛や筋疲労などの症状があります。
  • クレストール内服中に褐色尿が出た場合は、緊急で病院を受診する必要があります。
  • 横紋筋融解症を診断するために、CKを採血で測定します。
  • 軽度の横紋筋融解症であれば、クレストール再開も考慮します。

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