定期健康診断の法定項目と実施方法

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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会社としては、毎年従業員の健康診断を行わなければいけません。どのようにして健康診断をおこなっていけばよいのでしょうか?

ここでは、定期健康診断の法定項目から実施方法についてみていきたいと思います。

 

1.定期健康診断に関する義務は?

通常の従業員には年1回、深夜業などの特定業務従事者には年2回の定期健康診断が義務づけられています。

労働安全衛生法第66条に基づいて、事業主は労働者に対し、医師による健康診断を受診させる義務を負っています。その労働者の対象は、「常時使用する労働者」とされていて、週30時間以上、1年以上雇用予定の方が該当します。労働安全衛生規則第44条に基づいて、1年に1回は定期的に健康診断をすることが義務付けられています。

さらに、特定業務従事者は年に2回の定期健康診断が必要です。特定業務従事者としては、高温など物理的に過酷な環境下での業務や、化学薬品を使った業務といったものは、業務内容からはっきりしているためにそこまで疑問に思うことはないかと思います。もっとも人事の方が対応に苦慮されるのが、深夜業の方の扱いです。

午後10時から午前5時までを深夜業と定義しています。はじめから深夜業として雇用している方は、もちろん特定業務従事者に含まれます。よくご相談されるのは2つのケースです。

1つ目は、残業で遅くなるのが恒常化している方はどういう扱いにすればよいのかです。従業員の突発的な勤務に関しては、6か月に1回の健康診断は不要とされています。ただし、深夜残業が恒常化している場合は健康診断の対象となりますのでご留意下さい。その目安は、過去6ヶ月間に24回以上の深夜労働があった場合は、個別に健康診断を実施する必要があるとされています。すなわち、夜の10時までの残業は、月4回までに抑えなくてはいけません。

2つ目は、遅番などでシフトとして、午後10時を超える日が定期的にあるケースです。このようなケースは、夜10時をすぎると、たとえ5分であっても深夜業とみなされます。週4回以上このようなことがある場合は、年に2回の健康診断を行う必要があります。このため業務の見直しが必要になるケースがあります。

 

2.健康診断の会社としての意義

会社が人を大事にすることは、従業員満足度をあげることに繋がります。

会社が健康診断を行う理由は、「法律でやらなければいけないから」だけなのでしょうか?とりあえず決まりだから健康診断を行って、従業員が希望したら産業医に相談させる会社さんが多いと思います。ですが健康診断は、うまく活用できると従業員満足度につながります。どうせやらなければいけないことでしたら、有意義なものにしたくはありませんか?

うまく活用できるかどうかのカギは、しっかりとフォローアップするかどうかにかかっています。健康診断を「やりっぱなし」にしては、まったく意味がありません。引っかかった人には受診の促しをしましょう。はじめは嫌がられるかもしれませんが、従業員の健康に対して会社が関心をもっていることを示すのです。人を大事にする雰囲気が少しずつ出てくると思います。

従業員側としても、自分が不健康であることに対して問題意識がないことも多いです。不摂生している方は、少し気をつけると改善も大きいです。イヤイヤながらも健康に気をつけていくにつれて、良くなっていくことが実感できるようになります。そうなると、はじめは嫌だったことも楽しくなってくるものです。

どうしても受診に対して抵抗がある方には、産業医の面談をお願いしましょう。産業医には、「少しずつ健康と向き合って生活習慣をかえていけるよう促してください」とお願いしてみてください。これに難色を示すような産業医でしたら、新しい産業医を探されてもよいかも知れません。

毎年続けていくことで、少しずつ効果がでてきます。

 

3.定期健康診断の法定項目

11の項目があります。5年に1度はちゃんと検査して、35歳の節目にはしっかりとした健康診断をすることになっています。

事業主は従業員に対し、1年に1度の医師による健康診断を受診させ、その結果を労働基準監督署に報告する義務を負っています。

法定での対象となる検査項目は以下の通りです。

一般健康診断の検査項目について表にしました。

このうち、喀痰検査はめったに行いません。胸のレントゲン写真を撮って、何も異常がなければ行わなくてよいとされています。レントゲン写真に関しても、40歳未満の方で医師が大丈夫判断すれば省略できます。ただし、5年に1回は必ず受けなければいけないとされていて、20歳・25歳・30歳・35歳は必ず受けなくてはいけません。また、結核の予防のための感染症法対象者やじん肺法の対象者は、レントゲン写真をとらなければいけません。

また、7~11の貧血・肝機能・脂質・血糖・心電図に関しても、35歳では受けなければいけませんが、40歳以下の方だと医師が必要ないと認めたら省略もできます。

このように検査項目に関する規定をみていると、「5年に1回はちゃんと検査をして、特に35歳の節目にはしっかりとした健康診断を行いましょう」という方針だと思います。

 

4.定期健康診断の費用

定期健康診断は、9,000円~10,000円の間であることが多いです。

定期健康診断の費用は、健診センターや病院によって異なりますが、およそ9,000円から10,000円です。オプションとして検査を付け加えていくと、さらに費用がかかっていきます。会社としては、法定項目の部分の定期健康診断に関してのみ、実施義務があります。プラスアルファの部分に関して補助金などがでることがありますが、これは会社の福利厚生という位置づけです。

詳しく知りたい方は、
健康診断の料金・費用はどれくらい?
をお読みください。

 

5.定期健康診断の実施方法

健康診断を実施したあと、所見があった方には受診促しをしましょう。健康診断個人票を5年間保存する義務があります。3月上旬までに集計して、定期健康診断結果報告書を記入し、労基署に提出しましょう。

まずは、会社が必ず行わなければいけないことからお話ししたいと思います。定期健康診断を行った後に必ず行わなければいけないことは、定期健康診断結果報告書を労基署に提出することです。年度末の3月上旬くらいが提出期限になります。そのことを見越すと、集計しやすいようにひとつの健診センターや医療機関で受けていただく方がよいかと思います。出張して会社で健診を行ってくれる機関もあります。ただ業種によっては、個々人で受けていただかざるを得ない会社もあるかと思います。その際は、異常値に対してマークをつけてもらうように社内喚起をかけて、受け取り時にマークを確認する習慣にしておくと、後が楽です。

詳しく知りたい方は、
定期健康診断結果報告書の書き方
をお読みください。

さらに、上述したように健康診断後のフォローアップができると理想です。健康診断の結果として異常値が出ても、「やりっぱなし」の方は多いです。所見があった方には、会社側から受診促しを行った方がよいと思われます。会社側には、再検査や受診を促す義務はありません。ですが裁判の判例として、健康診断の結果を知りながら何も配慮をしないと、安全配慮義務違反と判断されています。

 

まとめ

通常の従業員には年1回、深夜業などの特定業務従事者には年2回の定期健康診断が義務づけられています。

会社が人を大事にすることは、従業員満足度をあげることに繋がります。

定期健康診断の法定項目としては11項目あります。5年に1度はちゃんと検査して、35歳の節目にはしっかりとした健康診断をすることになっています。

定期健康診断は、9,000円~10,000円の間であることが多いです。

健康診断を実施した後、所見があった方には受診を促しましょう。3月上旬までに集計して、定期健康診断結果報告書を記入し、労基署に提出しましょう。

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