じん肺健康診断のポイントと流れ

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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粉じんを吸入するような作業に従事する方は、じん肺健康診断を受けなければいけません。これは、特殊健康診断の一種で、会社がうけさせる義務を負っています。

ここでは、じん肺健康診断について、その概要と流れをまとめていきたいと思います。

 

1.じん肺健康診断とは?

粉じんを吸入する業務をしている労働者に対して行う、1年もしくは3年ごとの特殊健康診断です。

じん肺健康診断は、粉じんを吸入する可能性のある労働者に対して、1年もしくは3年ごとに定期的に行われる健康診断です。じん肺の症状や検査項目に狙いをつけて行う特殊健康診断です。

これは、労働安全衛生法に基づいて定められたじん肺法によって、会社に義務付けられています。

また、「有害物のガスや粉じんにさらされる業務」に該当するので、定期健康診断は6か月ごとに行わなければならないとされています。このため粉じんを吸入する可能性のある業務をしている方は、半年に1回の定期健康診断と、1年もしくは3年ごとにじん肺健康診断を受けなくてはいけません。

 

2.じん肺とは?

微細な粉じんが気道に蓄積して、慢性的に呼吸機能が低下する病気です。

鼻には異物を排除する機能が備わっていて、気管や気管支にあるせん毛という小さな毛が異物をかきだしてくれます。ですが大きさが1~5μmになってしまうと、排除することができずに気管や気管支にくっついてしまい、さらに小さな1μm以下の粉じんは肺胞まで到達します。

息を吐くことで多くは身体の外に出ていきますが、粉じんがあまりに多いところだと、少しずつ蓄積してしまいます。すると少しずつ肺が線維化していきます。次第に気管支炎や気管支の拡張などが進みます。

次第に咳や淡が多くなっていき、身体を動かすと息切れをするようになります。呼吸機能がおちていきますので、次第に安静にしていても息苦しくなっていきます。

同時に、結核や気管支拡張症、肺がんといった合併症も起こりやすくなります。じん肺は慢性的に進行していき、治療によって回復させることは困難な病気です。ですから、予防や早期発見が重要となってくるのです。

 

3.じん肺健康診断の項目

粉じんの作業歴と合わせて胸部レントゲンをとります。結核が疑われるときは精査します。

じん肺の健康診断の項目は、じん肺法第3条によって以下に決められています。

①粉じん作業の職歴
②胸部レントゲン写真

じん肺の所見がみられた方は、以下の検査を行っていきます。

③既往歴の確認
④胸部の自覚症状や他覚症状の有無
⑤肺機能検査(スパイロメトリー・動脈血ガス)

これらの検査の結果、肺結核が疑われる場合は以下を行います。

⑥結核精密検査(結核菌検査・レントゲン精査・赤血球沈降速度・ツベルクリン反応)
⑦肺結核以外の合併症の検査

 

4.じん肺健康診断実施のタイミングについて

 雇い入れ時・定期・定期外・離職時の4つのタイミングがあります。

じん肺健康診断の実施タイミングは、大きくは以下4つあります。

  • 雇い入れ時:粉じん作業に従事することになった場合
  • 定期:粉じん作業に従事している場合で、定められた定期診断の受診時期が到来した場合
  • 定期外:じん肺の疑いありと定期健康診断等で診断された場合
  • 離職時:じん肺作業から離職する場合

 上記4つのタイミングに応じて、事業主は「じん肺健康診断」を受けさせる義務があります。

雇い入れ時では、元々粉じん作業をやったことがない人や、後述する管理区分3までで肺機能障害が明らか得ない方では、じん肺のリスクは低いです。このため省略も可能です。定期では、管理区分によって1年ごとないしは、3年ごとに健診の頻度が決まります。

定期外はどのような時に行うかというと、他の健康診断でじん肺が疑われた時と、状態が非常に安定している時の2つです。離職時は、従業員が希望した時に、直近のじん肺健診から一定期間が空いていると、健診をうけることができます。

 

5.じん肺健康診断の管理区分とは?

胸部レントゲン写真と肺機能障害から程度を5段階にわけて、さまざまな対応を決定していきます。

じん肺管理区分を表にまとめました。

じん肺管理区分とは、胸部レントゲン写真の程度と著しい肺機能障害の有無から、5段階に状態を分けたものです。これは、地方じん肺審査医の意見を踏まえて都道府県労働局長により決定されます。この管理区分に従って、健診の頻度や就業上の措置を判断していきます。

まず、じん肺健康診断に関してみていきましょう。

じん肺管理区分と定期健康診断の頻度をまとめました。

定期健康診断は、1年もしくは3年に1回行われます。これは粉じん作業の状況と管理区分によって決定されます。

じん肺管理区分と離職時健康診断との関係をまとめました。

離職時には、直近の健診から一定期間があけば、希望により健診をうけることができます。その期間も、粉じん作業の状況と管理区分によって決定されます。

また、就労上の措置も管理区分に従って判断されます。

じん肺管理区分と就労上の措置に関してまとめました。

勧奨や指示とは、都道府県労働局長からになります。この就労上の措置に従って、努力義務の段階で作業転換した場合は、平均賃金の30日分の転換手当てが会社に支払われます。

義務の段階ですと、平均賃金の60日分が支払われます。退職後は、労働局に健康管理手帳を申請すると、無料で健康診断やがん検診を受けることができます。

 

6.じん肺健康診断結果報告書・じん肺健康管理実施状況報告

じん肺健康診断結果報告書およびレントゲン写真を7年間保存し、年度末に労基署への報告が必要です。

じん肺健康診断結果報告書を作成して7年間保存する必要があります。また、撮影したレントゲン写真も7年間保存する必要がありますが、医療機関で管理されている場合はそれでも問題ありません。

じん肺健康管理実施状況報告は、定期健康診断とあわせて労基署に提出するものです。

 

まとめ

粉じんを吸入する業務をしている労働者に対して行う、1年もしくは3年ごとの特殊健康診断です。

じん肺とは、微細な粉じんが気道に蓄積して、慢性的に呼吸機能が低下する病気です。

健診項目としては、粉じんの作業歴を問診し胸部レントゲンをとります。結核が疑われるときは精査します。

じん肺健康診断は、雇い入れ時・定期・定期外・離職時の4つのタイミングがあります。

胸部レントゲン写真と肺機能障害から、程度を5段階のじん肺管理区分に分けて、さまざまな対応を決定していきます。

じん肺健康診断結果報告書およびレントゲン写真を7年間保存し、年度末に労基署への報告が必要です。

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