ベゲタミンB錠の効果と強さ
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ベゲタミンは、3種類の成分を配合した睡眠薬です。まだ薬物療法が本格的に発達する前の1957年に、鎮静の目的で作られたお薬です。
クロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタールという3種類の成分は、すべて作用機序が異なります。絶妙な配合により強力な睡眠効果があるので、現在では睡眠薬としてつかわれています。
ベゲタミンには、ベゲタミンA錠とベゲタミンB錠の2タイプが発売されています。3種類の成分の配合が異なっていて、Aの方がBよりも強力です。
現在の睡眠薬に比べると、安全性はどうしても劣ってしまいます。ですが、非常に強力な睡眠薬ですので、本当にどうしても不眠が改善できない時に使われることもあります。私も、どうしようもなく困った時は使うことも考えます。
ここでは、ベゲタミンB錠の効果について詳しく見ていきたいと思います。
1.ベゲタミンB錠の作用する仕組み(作用機序)
抗ドパミンD2作用・抗ヒスタミンH1作用・GABA増強作用のシナジー効果によって、眠気を促します。
ベゲタミンは、3つの成分の合わせ技で効果が発揮されます。
成分名(一般名) | 作用機序 | 分類 | 商品名 |
クロルプロマジン | 抗ドパミンD2作用 | 抗精神病薬 | コントミン/ウィンタミン |
プロメタジン | 抗ヒスタミンH1作用 | 抗パーキンソン薬 | ピレチア/ヒベルナ |
フェノバルビタール | GABA促進作用 | 抗てんかん薬 | フェノバール |
クロルプロマジンは、気持ちを静める効果の強いお薬です。統合失調症の方で使う抗精神病薬ですが、気持ちが落ち着かない方によく使われるお薬です。
プロメタジンは、抗精神病薬の副作用であるパーキンソン症状を緩和するために使われることが多い抗パーキンソン薬です。抗ヒスタミン作用のある薬で、眠気が強く出てきます。花粉症の薬や風邪薬にも含まれている成分で、これらの薬を服用して眠気が出たことがある方もいらっしゃると思います。
フェノバールは、バルビツール酸系に分類される抗てんかん薬です。GABAの作用を増強させて、眠気を導きます。同じ系統のラボナやイソミタールは、強力な睡眠薬です。
これらの3つの成分が絶妙に配合されて、シナジー効果により強力な作用を発揮します。
2.ベゲタミンB錠の効果と特徴
ベゲタミンでは、強力な睡眠効果が期待できます。そのかわりに依存性が高く、安全性が低い睡眠薬です。メリットとデメリットに分けてみていきましょう。
2-1.ベゲタミンB錠のメリット
- 即効性がある
- 効果が強力
- 夢をみない
- 鎮静作用がある
睡眠薬の中でジワジワと効いてくる薬もありますが、ベゲタミンには即効性があります。ですから、服用するとすぐに効果が期待できます。
ベゲタミンB錠のメリットは、なんといっても効果の強さです。睡眠薬の中でも最強といえるでしょう。ベゲタミンA錠には劣ってしまいますが、一般的な睡眠薬よりは強力です。
また、ベゲタミンB錠ではレム睡眠を大幅に抑制する作用があります。レム睡眠は夢をみている睡眠ですから、薬を飲んだら夢をみずに朝を迎えることができます。悪夢で悩まされている方にはメリットといえるでしょう。
ベゲタミンB錠は、抗精神病薬を含んだ合剤です。このため、落ち着かない気持ちを鎮めるような作用があります。睡眠薬としてだけでなく、鎮静目的で使うこともできます。
2-2.ベゲタミンB錠のデメリット
- 副作用が強い(眠気・ふらつき)
- 依存性が高い
- 安全性が低い(呼吸抑制)
ベゲタミンB錠は効果が強いため、副作用も強くなります。睡眠作用が眠っている間だけに働いてくれればいいのですが、日中に残ってしまうと眠気やだるさにつながります。また、筋弛緩作用が強いのでふらつきも強いです。
さらに依存性が非常に高い睡眠薬です。飲み始めは強力に効く睡眠薬です。ですが、使い続けているとすぐに身体に慣れてしまって効かなくなってしまいます。効果の実感も強い薬なので、「もっと増やしたい」という気持ちがまさってしまって、どんどんと量が増えて依存してしまいます。
このように量が増えていってしまう危険性に加えて、ベゲタミンB錠は安全性も低いです。薬を使いすぎてしまうと呼吸抑制がかかってしまい、死に至ることもある睡眠薬なのです。
3.ベゲタミンB錠の作用時間と強さ
ベゲタミンB錠は作用時間は8時間ほどですが、寝付きやすい土台をつくっていきます。効果の強さは「とても強い」です。
ベゲタミンB錠は3つの成分の合剤ですから、それぞれの成分ごとに血中濃度の変化も作用時間も異なります。まずは、それぞれの成分の血中濃度の変化をみてみましょう。
成分名 | Tmax | T1/2 |
クロルプロマジン | 2~3 | 30.5 |
プロメタジン | 2.7 | 12.7 |
フェノバルビタール | 2.3 | 37~133 |
Tmaxとは、最高血中濃度到達時間のことです。血中濃度がMAXになるまでにかかる時間です。
T1/2とは、半減期のことです。血中濃度が半分になるまでにかかる時間です。
3つの成分ともに、Tmaxは短いです。このため、薬の立ち上がりが早く、即効性が期待できる睡眠薬と言えます。
3つの成分ともに、T1/2は長いです。なかなか薬が身体から抜けていかないので、服用を続けていくと少しずつ身体に薬がたまっていきます。
上図のように、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。ベゲタミンB錠では2週間ほど服用を続けると、定常状態に達します。このため、ベゲタミンは寝付きやすい土台をつくる睡眠薬と言えます。
睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を考えていく必要があります。
ベゲタミンB錠は、即効性があるので入眠障害に有効で、寝付きやすい土台を作ってくれるので中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。ベゲタミンB錠は3つの作用がシナジー効果を発揮して、効果が「とても強い」睡眠薬です。
ベゲタミンはA・Bともに、不眠目的では1~2錠、鎮静目的では3~4錠使うことができます。効果の強さとしては、ベゲタミンA錠>ベゲタミンB錠となります。
4.ベゲタミンA錠とベゲタミンB錠の違い
3つの成分の配合が異なります。ベゲタミンB錠2つよりは、ベゲタミンA錠1つの方が安全性が高いです。
ベゲタミンには、AとBの2種類が発売されています。それぞれの配合をみてみましょう。
成分名 | ベゲタミンA錠 | ベゲタミンB錠 |
クロルプロマジン | 25mg | 12.5mg |
プロメタジン | 12.5mg | 12.5mg |
フェノバルビタール | 40mg | 30mg |
このようになっています。
ベゲタミンA錠の方がB錠よりも配合成分が多いので、効果も強いです。ですからベゲタミンを使う時はベゲタミンB錠から使っていくべきです。ベゲタミンB錠1つで効果が不十分な時は、ベゲタミンB錠2つにするよりもベゲタミンA錠1つにした方が安全性が高いです。
これは、フェノバルビタールの少ない方が安全性が高いためです。フェノバルビタールはバルビツール酸系の薬で、効果は強力ですが依存性が高いです。できるだけフェノバルビタールを少なく使っていきます。
5.ベゲタミンB錠が向いている人とは?
- 他に手段が残されていない方
- 多剤処方を整理したい方
- 統合失調症による不眠の方
ベゲタミンB錠は効果を純粋にみれば、最強の睡眠薬でしょう。ですが、効果が強いということは副作用も強く、依存性も高い睡眠薬です。特にフェノバルビタールというバルビツール酸系の成分は安全性も低く、治療域と中毒域が近いお薬です。
ですから、ベゲタミンB錠は他の睡眠薬で治療をしていても、どうしても不眠を解消できない方に検討する睡眠薬です。ベンゾジアゼピン系睡眠薬でしたら、もっとも効果の強いロヒプノール/サイレースを2mgまで使ってから考えます。睡眠薬だけでなく、鎮静系抗うつ薬や抗精神病薬なども含めて検討します。それでもどうしても不眠を解消できない方に、仕方がなく使う睡眠薬です。
すでに睡眠薬が他剤になってしまっている方には、薬を一気に整理する目的でベゲタミンB錠が活躍することがあります。ベゲタミンの配合バランスは絶妙で、薬の量が一気に減量できることもあります。
また、統合失調症の難治な不眠な場合は検討することがあります。ベゲタミンB錠の成分のクロルプロマジンは抗精神病薬なので統合失調症の治療薬です。プロメタジンは、その副作用を抑える働きと睡眠効果の両方があります。統合失調症の方では、他の病気による不眠よりもベゲタミンを使う理由があります。
まとめ
抗ドパミンD2作用・抗ヒスタミンH1作用・GABA増強作用のシナジー効果によって、眠気を促します。
ベゲタミンA錠とベゲタミンB錠では、3つの成分の配合が異なります。ベゲタミンB錠2つよりは、ベゲタミンA錠1つの方が安全性が高いです。
メリットとしては、
- 即効性がある
- 効果が強力
- 夢をみない
- 鎮静作用がある
デメリットとしては、
- 副作用が強い(眠気・ふらつき)
- 依存性が高い
- 安全性が低い(呼吸抑制)
ベゲタミンが向いている方は、
- 他に手段が残されていない方
- 多剤処方を整理したい方
- 統合失調症による不眠の方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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