エリミン錠(ニメタゼパム)の効果と強さ
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
エリミン(一般名:ニメタゼパム)は、中時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。
効果はそこまで強いわけではありませんが、薬の包装が真っ赤なのでいかにも効きそうな睡眠薬です。眠気よりも脱力感が先に出てきて、お酒に似た感覚になるために乱用されることも多く、「赤玉」といわれている睡眠薬です。
依存性も強くて注意が必要で、私はあえてエリミンを処方するようなことはありませんでした。メーカーとしても2015年11月に発売中止となりました。とはいっても、ちゃんと用法を守って服用すれば安全ですので、服薬されている方は過度に心配しないでくださいね。
エリミンに代わる睡眠薬を見つけていかなければならない方も多いと思います。そのような方に向けて、エリミンの効果について詳しくお伝えしていきたいと思います。
1.エリミンの作用する仕組み(作用機序)
GABAの働きを強めて、脳の活動を抑えます
現在よく使われている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の2種類です。エリミンは前者のベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。実はこの両者は同じ仕組みで睡眠効果をもたらします。
どちらもベンゾジアゼピン受容体に作用して、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えることで効果を発揮します。「GABAってなんか聞いたことあるぞ?」って方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。
エリミンがベンゾジアゼピン受容体にくっつくと、GABAがGABA受容体にくっつきやすくなります。GABAが脳内で作用すると、脳の活動が抑えられて睡眠につながっていくのです。
2.エリミンの効果と特徴
エリミンの包装は真っ赤で、錠剤もオレンジ色をしています。このため「赤玉」ともいわれていて、いかにも効きそうな睡眠薬ですよね。乱用されることが多く、アングラな世界で人気がある睡眠薬です。普通に使っている方は問題ないので、心配しなくて大丈夫です。どうして乱用されるのかも含めて、エリミンの特徴をみていきましょう。
2-1.エリミンのメリット
- 身体がリラックスしてから眠気が出てくる
- 入眠障害にある程度有効
- 中途覚醒に有効
- 早朝覚醒に有効
- いかにも効きそうな見た目
エリミンには内服してから効果がでてくるまではゆっくりで、1~2時間して眠気が出てきます。眠気よりも先に筋弛緩作用がでてきます。身体の力が抜けてリラックスしてから眠りにつくので、独特の効き方をします。これが心地よい方もいらっしゃいます。
エリミンの半減期は作用時間が長く、睡眠時間をカバーして効果が持続します。このため、入眠障害だけでなく中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できる睡眠薬です。
エリミンの効果の強さは「普通」ですが、見た目が強烈です。真っ赤な包装で、封をあけると薄いオレンジの錠剤が出てきます。いかにも効きそうな見た目で、このため心理的に効果が増強されることが多いです。睡眠は不安が原因となることも多いので、思い込みの効果はバカにできないのです。
2-2.エリミンのデメリット
- 睡眠の質が落ちる
- ふらつきが出やすい
- 日中への眠気の持越し
- 依存性が強く、離脱症状や反跳性不眠になることがある
- 乱用される
エリミンを服用すると寝つきはよくなるのですが、睡眠の質が落ちてしまうというデメリットがあります。浅い睡眠が増えてしまい睡眠のメリハリが悪くなってしまいます。睡眠時間はしっかりと寝たのに疲れがとれない、寝不足に感じてしまう、といったことがあります。
また、副作用に注意する必要があります。エリミンは24時間では身体から抜けきらないので、毎日服用していると少しずつ身体にたまっていく睡眠薬です。飲み続けているうちに、エリミンの副作用が目立ってくることがあります。
エリミンでは筋弛緩作用が強いので、ふらつきには注意が必要です。高齢者では、夜にトイレで目覚めることも多くなります。薬が効いてふらついたままトイレに行くと、転倒してしまって骨折してしま うこともあるので注意が必要です。エリミンが日中にも強く作用してしまうと、眠気がでてきてしまいます。朝起きづらくなってしまったり、集中できなくなるので注意してください。
エリミンは、この筋弛緩作用のために乱用されることが多いです。眠気は1~2時間ほどかかりますが、筋弛緩作用は経口で30分ほど、舌下で10分ほどで出てきます。少し眠気がありつつもリラックスする感じが、お酒と似ているのでしょう。なかにはお酒と併用したり、砕いて鼻から吸引(スニッフ)したりして、多幸感や健忘を楽しむような乱用をする方もいます。このような使用をすると一気に依存してしまい、エリミンがないと強烈な離脱症状が起こるようになります。後悔しか残らないので絶対にやめましょう。
エリミンの副作用について詳しく知りたい方は、「エリミンの副作用(対策と比較)」をお読みください。
3.エリミンの作用時間と強さ
エリミンは半減期が12~21時間の中間型睡眠薬です。効果の強さは「普通」で、入眠障害から中途覚醒や早朝覚醒まで効果のある睡眠薬です。
エリミンを服用すると1時間もするとピーク近くの血中濃度になります。そして2~4時間で血中濃度がピークになります。エリミンはそこから2段階で血中濃度が減っていきます。最初は急激に血中濃度が減少して12時間かけて半分になります。そこからゆっくりと身体から抜けていき、全部で21時間かけて血中濃度が半分になります。
睡眠薬の効きは少しゆっくりで、寝る前にエリミンを服用すると1~2時間くらいで眠気がでてきます。それよりも前に身体の力が抜けてくるので、リラックスしてから眠りに入ります。睡眠時間をカバーするように効きますので、効果は朝までしっかりと持続します。また、毎日服用すると4~5日かけて少しずつ薬がたまっていきますので、寝付きやすい土台ができていきます。
このような血中濃度の変化をとるので、エリミンは「中間型」に分類されます。
睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を変えていく必要があります。エリミンは、入眠障害から中途覚醒、早朝覚醒まで広く使えます。寝付きやすい土台ができてくるような睡眠薬ですので、中途覚醒や早朝覚醒が目立つ方に有効でしょう。
エリミンの効果は「普通」の睡眠薬です。まずは3mgから始めることが多いです。効果を見ながら、増減させていきます。強く効きすぎてしまったら1.5mg、効果が不十分でしたら5mgまで使うことができます。同じ中間型睡眠薬のベンザリン/ネルボンと構造がほとんど変わりません。ですから薬の効果自体は大差ないのですが、見た目の強烈さから効果が強いと思いこんでいる方も多いです。
4.エリミンと他剤での作用時間の比較
半減期をもとに、睡眠薬の作用時間を予想することができます。エリミンは少しずつ薬が身体にたまっていく、作用時間が長い睡眠薬です。
睡眠薬の作用時間の違いを比較してみましょう。
薬の効果を見る時は、最高血中濃度到達時間(ピーク時間)と半減期をみていきます。
最高血中濃度到達時間が短いほど、効きが早いということですね。ほとんどの睡眠薬が1~3時間になっているかと思います。中間型や長時間作用型では長いものがありますね。これらのお薬では即効性はあまり期待できません。
半減期をみると作用時間が予想できます。超短時間型や短時間型では、即効性を期待して使われます。入眠障害だけで困っているならば超短時間型、中途覚醒で困っているならば短時間型がよいでしょう。
中間型や長時間型は、身体に薬が少しずつたまっていくことで寝付きやすい土台を作るようなお薬です。中間型は4~5日かけて、長時間型は1週間以上かけて効果が安定します。中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できます。
エリミンは中間型に分類されていますので、中途覚醒や早朝覚醒が目立つときに有効です。入眠障害にもある程度効果があります。
5.エリミンが向いている人とは?
- 入眠障害もあるが、中途覚醒や早朝覚醒が中心である方
- 他の睡眠薬の効果が期待できない方
- 依存傾向がない方
- 飲酒をしない方
エリミンを寝る前に服用すると、眠気の前に筋弛緩作用がみられて、リラックスして1~2時間してから眠気が出てくる睡眠薬です。作用時間が長く、睡眠時間をカバーしてうれるような睡眠薬です。入眠作用にも効果がありますが、中途覚醒や早朝覚醒に対する効果が中心です。このため、「中途覚醒や早朝覚醒が目立っていて、入眠障害も認められる方」に向いていると言えるでしょう。
依存性が強くて乱用されることもある睡眠薬ですので、まず最初に使うべき睡眠薬ではありません。まずは他の中間型や長時間型睡眠薬から使って、どれもいまいち効果がしっかりとしない時に試してみるくらいです。ベンザリン/ネルボンとは効果が類似していますので、エリミンを優先させて使うメリットはありません。
筋弛緩作用が早く出てきますので、寝る前の緊張が強い方には効果があるかもしれません。依存傾向がまったくない方に関しては、緊張で身体の症状が強い方には向いているかもしれませんね。お酒との併用が乱用や依存に繋がることが多いので、飲酒をしない方がよいでしょう。
安易な処方は悪用につながってしまう睡眠薬ですので、私はほとんど処方していません。今後は発売も禁止されますので、これまでエリミンを使っていた方は、まずはベンザリン/ネルボンに切り替えてみるとよいかと思います。その他にも睡眠薬はたくさんありますので、主治医と相談して自分にあった睡眠薬を見つけていきましょう。
まとめ
エリミンは、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えます。
エリミンのメリットとしては、
- 身体がリラックスしてから眠気が出てくる
- 入眠障害にある程度有効
- 中途覚醒に有効
- 早朝覚醒に有効
- いかにも効きそうな見た目
エリミンのデメリットとしては、
- 睡眠の質が落ちる
- ふらつきが出やすい
- 日中への眠気の持越し
- 依存性が強く、離脱症状や反跳性不眠になることがある
- 乱用される
エリミンが向いている方は、
- 入眠障害もあるが、中途覚醒や早朝覚醒が中心である方
- 他の睡眠薬の効果が期待できない方
- 依存傾向がない方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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