デパケン・デパケンRの半減期と血中濃度
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
デパケンは気分安定薬や抗てんかん薬として、様々な病気に広く使われています。多くのお薬とは違って、デパケンは血中濃度をきっちりと測りながら量を調整していくお薬です。デパケンが有効な血中濃度と中毒濃度がおおよそわかっているので、これらを目安に効果や副作用をみていきます。
デパケンの作用時間は、半減期から考えることができます。デパケンは最高血中濃度到達時間2.6時間・半減期18時間です。1日2~3回に分けて使っていくことが多いです。
ここでは、デパケンの半減期と血中濃度について、詳しくみていきたいと思います。
1.薬の半減期とは?
薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。
薬を飲み始めると、直後は血中濃度がどんどんと上がっていきます。薬の吸収がおわると、薬は代謝されて身体から出ていきますので、少しずつ血中濃度が減少していきます。身体が薬を代謝できるスピードは決まっていますので、どれくらいの量であっても一定のスピードで身体から抜けていきます。このため、薬の量が半分になるまでにかかる時間は、内服量にかかわらず一定になります。
この血中濃度が半分になるまでにかかる時間を半減期(T1/2)といいます。T1/2が短いほど、薬の切れ味がよく身体からすぐになくなるといえます。反対にT1/2が長いほど、薬が身体に蓄積しやすいといえます。
薬の効き方を考えるにあたって、もう1つのポイントがあります。最高血中濃度到達時間(Tmax)です。これは文字通りで、血中濃度がピークに達するまでの時間です。効果がでるまでのスピードに関係しています。Tmaxが短いほど、薬の効果がすぐに表れることを意味しています。
2.デパケン・デパケンRの半減期と効果時間
デパケン錠(デパケンR錠)は最高血中濃度到達時間が0.92時間(10.26時間)、半減期が9.54時間(12.92時間)の気分安定薬です。最近は、徐放製剤のデパケンR錠を使うことが多いです。
デパケン錠を服用すると、0.92時間(食後は3.46時間)で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、9.54時間ほどで血中濃度が半分になります。
この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。
デパケン錠は作用時間はそこまで長くはないので、1日2~3回に分けて服用することが一般的です。毎日服用していると、およそ6~7日で血中濃度が安定します。このため、少なくとも1週間は様子をみながら効果をみていきます。
デパケン錠の効果を安定させるために、デパケンR錠という徐放製剤が発売されています。最近はこのデパケンR錠が使われることが多くなっています。
デパケンR錠は作用時間が長く、1日1回の投与でも効果が持続します。最高血中濃度到達時間が10.26時間(食後は8.95時間)、半減期が12.92時間となっています。
3.デパケン・デパケンRの血中濃度の測り方
血中濃度が安定した状態(定常状態)で、もっとも低くなる濃度を測定します。このため、薬の投与直前のタイミングで採血します。
デパケンは血中濃度を測りながら用量を決めていきます。ですが、採血する時間によっても血中濃度は変化してしまいます。それではいつ採血をすればよいのでしょうか?
デパケンを毎日服用していると、少しずつ薬が身体にたまっていきます。きっちりと服用していれば、およそ1週間で血中濃度が安定します。
血中濃度が安定したら、その効果をみるには波の一番下の血中濃度を測定する必要があります。一番低い時でも有効血中濃度におさまっていることが大切なのです。
この一番低い値をトラフ値といいます。トラフ値となるのは、薬を服用する直前のタイミングです。朝食後に服用していることが多いので、朝食前に採血するのが一般的です。
入院患者さんではタイミングをきっちり合わせられますが、外来患者さんでは難しいですね。薬を服用して8時間以上たっていれば大きな誤差はでませんので、朝にデパケンを服用している方では夕方になれば大丈夫です。
4.デパケンの血中濃度と用量
デパケンは200~400mgから開始して、定期的に血中濃度を測りながら有効血中濃度(50~100μg/mL)まで使っていきます。
デパケンの開始用量は200~400mgとなることが多いです。月に1回血中濃度を測定しながら、有効血中濃度となるように量を調整します。
有効血中濃度は50~100μg/mLが目安です。抗躁効果を期待するときは高用量が必要で、70~120μg/mLを目標にします。
薬の代謝能力は個人差もあるため、デパケンの用量も人それぞれです。デパケンの添付文章をみると、以下の用量になっています。
- てんかん・躁症状:400~1200mg
- 片頭痛:400~800mg、最高量1000mg
デパケン・デパケンRの効果について知りたい方は、
デパケン錠・デパケンR錠の効果と特徴
をお読みください。
5.気分安定薬の半減期と作用時間の比較
デパケン錠では1日2~3回、デパケンR錠では1日1~2回で使われます。
気分安定薬の半減期を比較してみましょう。
気分安定薬の半減期をみることで、それぞれの薬の作用時間や効き方がある程度わかります。
リーマスは比較的半減期は長いのですが、1回にまとめて服用して血中濃度が高くなってしまうと中毒症状が認められることがあります。このため、1日2~3回に服用を分けることが一般的です。少ない用量で問題ない時は、1日1回にまとめてしまうこともあります。
デパケンは作用時間の短さを克服するため、デパケンR錠という徐放製剤が発売されています。薬の吸収がゆっくりとなったことで、1日1回の服用でも効果が持続します。より効果を安定させたい場合は、1日2回に分ける方がよいでしょう。
テグレトールは複雑な薬で、量が増えていくと自分の代謝を早める働きがあります。このため、服薬をしていくにつれて半減期が短くなっていきます。このこともあるので、1日2~3回に分けて服用するのが一般的です。
ラミクタールは半減期が長いため、1日1回の服用でも効果がしっかりと持続します。量が増えてくると1日2回に分けることもあります。
気分安定薬は、しっかりと飲み続けていくことが大切なお薬です。患者さんが実際に服用できなければ何の意味もありません。効果や副作用の特徴はもちろん大切ですが、服用のしやすさも意識しながらお薬を選んでいきます。
まとめ
半減期とは、薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。
デパケン錠(デパケンR錠)は最高血中濃度到達時間が0.92時間(10.26時間)、半減期が9.54時間(12.92時間)の気分安定薬です。最近は、徐放製剤のデパケンR錠を使うことが多いです。
デパケンは200~400mgから開始して、定期的に血中濃度を測りながら有効血中濃度(50~100μg/mL)まで使っていきます。
デパケン錠では1日2~3回、デパケンR錠では1日1~2回で使われます。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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