抗アドレナリン(α1)作用とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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「アドレナリンが出る」などというように、アドレナリンという言葉は日常生活に使われています。アドレナリンとは交感神経に関係する脳内の神経伝達物質です。薬の影響をうけると、身体にもいろいろな影響を及ぼします。

ここでは、アドレナリンのうちα1受容体への影響を見ていきたいと思います。

 

1.抗α1作用とは?

血管の調整をしているアドレナリンα1受容体をブロックすることでみられる作用です。

抗α1作用とは、交感神経の働きとして重要なアドレナリンやノルアドレナリンの働きを抑える作用です。アドレナリンにも様々な受容体があり、そのうちのα1受容体では血管の収縮により血圧調整をしています。アドレナリンα1受容体の作用が抑えられると、血圧調整がうまくできなくなります。血圧を上げてほしいときに上手く血管がギュッと収縮しなくなります。このため、立ちくらみやめまいといった症状となってあらわれます。

また、男性の場合、勃起障害や射精障害という形で症状があらわれることがあります。勃起をする時には、血液が陰茎に集中することが大事ですが、この時に、血管の調整をになうα1作用が必要になるためです。

交感神経は副交感神経と対をなす自律神経です。副交感神経系と互いに拮抗や協調することで、血圧・呼吸・消化・排泄などをつかさどる各器官の働きを調節しています。この交感神経では、アドレナリンやノルアドレナリンという神経伝達物質によって刺激されます。αとβという受容体がありますが、そのうちα1受容体では血管の調整を行っているのです。

 

2.抗α1作用の副作用

起立性低血圧・めまい・ふらつき・過鎮静・性機能障害が認められます。

本来は意図していないものの、薬が働いてしまって抗α1作用をもたらすことがあります。これがデメリットにつながると副作用になります。抗α1作用としては、起立性低血圧・めまい・ふらつき・過鎮静・性機能障害などがあげられます。

抗うつ薬では、トリプタノールといった三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬、新しい抗うつ薬の中ではジェイゾロフトで多少認められます。抗精神病薬では、昔からある定型抗精神病薬としてはコントミンなどのフェノチアジン系と呼ばれる力価が低いもの(=mgが大きいもの)に多いです。新しい非定型抗精神病薬では、リスパダールによく見られます。

 

3.抗α1作用薬

降圧薬・頭痛薬・前立腺肥大症治療薬として使われています。

抗α1作用を利用した薬も開発されています。アドレナリンやノルアドレナリンはα1・α2・β受容体に働きます。それぞれの受容体に対して、いろいろな働き方をする薬が開発されています。このうちα1は血管の拡張や尿道の筋肉の収縮に関係しています。

  • 降圧薬:腎機能低下例などで、血管を拡張して血圧を下げます。(®デタントール®ミニプレス)
  • 頭痛薬:D2・5HT1受容体作用と合わせて、片頭痛に有効です。(®エルゴタミン)
  • 前立腺肥大症治療薬:尿道の筋肉を弛緩して排尿しやすくします。(®ハルナール®ユリーフ®フリバス)

 

4.α1作用薬

昇圧薬・起立性低血圧治療薬として使われています。

α1作用を利用した薬も開発されています。主に血圧を上げる薬として用いられます。

  • 昇圧薬:救急治療などで昇圧剤として使用します。(®ネオシネジン)
  • 起立性低血圧治療薬:血管を収縮して血圧を上昇させます。(®メトリジン®リズミック®エホチール)

 

α1を刺激するような副作用は基本的にはありません。

 

5.抗α1副作用への対応

原則的に、可能であれば薬の減薬や変更を検討します。薬によるメリットが大きくて減量や変更が難しい場合、副作用を抑えるための薬を用いることがあります。

 

5-1.起立性低血圧・めまい・ふらつきの対処

規則正しい生活習慣を心がけ、変わりがなければ薬を調整していきます。

生活習慣としては、規則正しい生活リズムを心がけることが必要です。特に朝食をしっかりととることを大事にしましょう。食事の刺激によって自律神経のバランスが整いやすくなります。また、水分摂取を意識してください。脱水状態が加わると、症状がますます悪くなります。ただ、起立性低血圧の場合、根本的に生活習慣のみで対応することは難しいことが多いです。場合によっては、リズミックやメトリジンなど血管を収縮させて血圧を上げるような薬を用います。

 

5-2.性機能障害への対応

薬の調整を行っていきます。

性機能障害に関しては、セロトニン受容体刺激作用と関連して、純粋に抗α1作用によるものとは言い切れないことが多々あります。このため改善が難しく、支障が大きい場合はより副作用の少ない薬への変更を行っていくことが現実的です。勃起障害の場合では、バイアグラ・シアリス・レビドラなどのPDE5阻害薬が有効な場合があります。

 

まとめ

抗α1作用とは、血管の調整をしているアドレナリンα1受容体をブロックすることでみられる作用です。

抗α1作用の副作用としては、起立性低血圧・めまい・ふらつき・過鎮静・性機能障害が認められます。

抗α1作用の薬としては、降圧薬・頭痛薬・前立腺肥大症治療薬として使われています。
α1作用の薬としては、昇圧薬・起立性低血圧治療薬として使われています。

起立性低血圧・めまい・ふらつきは、規則正しい生活習慣を心がけ、変わりがなければ薬を調整していきます。
性機能障害は生活習慣では変えるのは困難で、薬の調整を行っていきます。

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