タミフル錠(オセルタミビル)の効果と特徴
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
タミフル錠(一般名:オセルタミビル)は、インフルエンザ治療薬としてもっとも有名なお薬です。知らない人も少ないくらいのお薬かと思います。
いくつかあるインフルエンザ治療薬の中で、タミフルは唯一の飲み薬として広く使われています。現在は一回吸入するだけですむイナビルなども発売されていますが、患者さんによっては飲み薬のタミフルの方が向いていることもあるのです。
タミフルは、発症からできるだけ早く服用することが求められるお薬です。48時間以上たってしまったら、あまり効果は期待できません。
ここでは、タミフルの効果について、その作用の仕組みから詳しく説明していきます。
1.タミフルの作用の仕組み(作用機序)
タミフルの効果を考えていくにあたって、どのようにしてタミフルが効果を発揮するのかを知る必要があります。
インフルエンザウイルスが感染してからどのようにして体内で増殖していくのか、そしてインフルエンザ治療薬がどのようにしてそれを防ぐのか、詳しくみていきましょう。
1-1.インフルエンザの増殖機序について
タミフルの効果や副作用を手っ取り早く知りたい方は、2の「タミフルの用量と使い方」から読んでいただければ幸いです。
インフルエンザの増殖は以下の3つの過程を経て増殖します。
- インフルエンザが体内への付着
- インフルエンザウイルスのRNA・タンパク質の合成
- インフルエンザウイルスの放出
インフルエンザウイルスは自分で増殖はできません。ひとの細胞を使って増殖して、それをばらまくことで周囲の細胞に感染を広げていきます。
インフルエンザウイルスが口や鼻から入ってくると、身体の細胞に侵入してきます。そして人の細胞の中で、ウイルスのRNAという遺伝子やタンパク質を合成していくことで増殖します。そして新しくできたインフルエンザウイルスが、感染細胞から飛び出して周囲の細胞に感染を広げていきます。
①の付着・③の放出という過程で、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる2つの糖蛋白の働きが必要になります。HAは16種類、NAは9種類あります。
インフルエンザA型では、このHAとNAの組み合わせで変異を起こすため、新型が出現します。自然界では50種類以上の組み合わせが存在するといわれ、予防接種はその中で今年は流行するだろうと予想される何種かを打ちます。そのため予想された以外のウイルスが感染すると、インフルエンザワクチンを摂取したとしてもインフルエンザに罹患してしまうのです。
1-2.抗インフルエンザ薬の作用機序と種類
日本で使われている抗インフルエンザ薬は、全てウイルスが感染細胞から放出されるのを阻害する薬剤(ノイラミニダーゼ阻害薬)です。ノイラミニダーゼ阻害薬は4剤あり、タミフルもその中の一つです。
抗インフルエンザ薬の作用の仕組みは、先ほど述べた①~③のいずれかを阻害しています。
赤で示した4剤が日本で発売されている薬です。
シンメトレル(アマンダジン)は内服薬であり、日本でもパーキンソン病などに使われる薬ですが、アメリカなどの海外ではインフルエンザにも使用されています。しかしシンメトレルはインフルエンザA型にしか効果がなく、そのA型にも効かないアマンタジン耐性インフルエンザが高率に出現しています。このことからWHOも使用を推奨しておりません。
アビガンは新しい作用機序のインフルエンザ治療薬として注目されており、感染した細胞内でのウイルスの増殖を防ぎます。現在の薬で効果のない新型インフルエンザが流行した場合、厚労省が要請して製造されることになっています。致死性のエボラ出血に対する有効性も認められ、ウイルス性疾患への幅広い効果が注目されています。
細胞からの放出を阻害する薬剤は、ノイラミニダーゼ阻害薬といわれています。ノイラミニターゼ(NA)とはインフルエンザウイルスの表面にある糖蛋白で、細胞から飛び出していく際に必要となります。この働きを邪魔するので、ウイルスが細胞外に出ていけなくなります。
日本で発売されている4種類の薬は、全てこのノイラミニダーゼ阻害薬となります。この中ではリレンザとイナビルが吸入薬、ラピアクタが点滴するお薬で、タミフルは内服薬になります。
つまりインフルエンザに効く内服するお薬は、2016年の日本ではタミフルのみということになります。
2.タミフルの用量と使い方
タミフルの用量は1日2回、朝・夕食後5日分が用量です。軽症でも重症でも同じ用量なので、自己判断で増量しないようにしましょう。
タミフルの添付文書を読むと、
通常、成人及び体重37.5 kg 以上の小児にはオセルタミビルとして1回75 mg(1カプセル) を1日2回、5日間経口投与する。
となっています。
重要なのは、重症も軽症も同じ用量(75mgカプセル1日2回5日間)ということです。細菌をやっつける抗生物質によっては、重症例によっては量を増やすこともありますが、インフルエンザ治療薬は常に同じ用量です。熱がなかなか下がらないからといって途中で飲む量を増やすことは絶対にしないようにしましょう。
また注意点としては、腎機能障害がある人には投与量を減らすように添付文書に記載があります。腎機能というのはクレアチニンクリアランス(Ccr)でみますが、10<Ccr≦30であれば、1日1回75mgを5日間となっています。
腎機能障害??クレアチニンクリアランス??っとなっている方は大丈夫です。問題は今までに慢性腎不全と診断された方です。既往歴(今までに大きな病気やけがにかかったことはありますか?)の記入欄に記載しなかったりすると、医師はそのままの量で処方してしまいます。今まで薬の投与量を調整受けた方は、必ず医師に相談しましょう。
3.タミフルはできるだけ早くに投与すること!
タミフルに限らず、抗インフルエンザ薬は早期に内服することが大切です。最低でも48時間(2日)以内に受診して内服するようにしましょう。
タミフルの作用機序をもう一度見てほしいのですが、タミフルを含めてノイラミニダーゼ阻害薬は細胞から放出を阻害するものとなっています。つまりインフルエンザを直接やっつけるのではなく、増殖したウイルスが拡大するのを防ぐものです。
そのため、インフルエンザが増殖して広がってしまった後では投与しても意味がありません。早めにインフルエンザ簡易キットで診断するように心掛けましょう。
添付文書でも、
インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること(症状発現から48 時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない)。
としっかり記載されています。
つまり、2日たってから症状がスッキリしないからと内服しても、インフルエンザをやっつける薬ではないので意味がありません。
逆に2日経っているけど熱が全然下がらない、辛いという場合は必ず病院を受診してください。インフルエンザシーズンに発熱する病気が全てインフルエンザというわけではありません。しっかりと他の病気も含めて診てもらいましょう。
4.タミフルは5日間飲みきること!
発熱がなくなったからといって、インフルエンザが完全に消滅したわけではありません。5日間の飲みきらないとタミフルに耐性を持ったインフルエンザが体内でできてしまい、症状が再発してしまいます。
インターネットで調べられた多くの方は、タミフルの副作用などもご存知かと思います。症状がある程度よくなってくると、「よくなってるのに薬を朝、夕で飲むのはめんどくさい」と思ってやめてしまいまう人もいます。
咳止めや熱さましの薬は確かによくなればやめてしまってよいのですが、タミフルは絶対に飲まなければいけません。理由としては、熱が下がった=インフルエンザウイルスが完全に消滅したわけではないためです。
熱とは基本的に、インフルエンザや細菌などを退治するための身体の防御反応です。化学の実験と同じで、体温が高くなると免疫反応が高まるのです。つまり熱が下がってきて楽になったのは、防御反応を取らなくてもよいくらいインフルエンザウイルスが少なったということです。しかしインフルエンザウイルスは繁殖力が強いウイルスです。本人が油断するとあっという間に再発してしまいます。
そしてそのインフルエンザウイルスは、タミフルが投与されているにも関わらず残った強いウイルスです。再発するとタミフルに耐性を持ったインフルエンザウイルスが出現することもあります。こうなると、かなり治療が難しくなります。
5.タミフルの副作用
タミフルの一番の問題は異常行動でしょう。その他注意しておきたいのは下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状です。
タミフルで問題視されているのは、日本人の10代で複数認めた異常行動かと思います。これに関しては別のページにまとめさせていただきます。その他のタミフルの副作用としては、製造販売後の調査4,211例において90例(2.1%)に認められています。
その中でのタミフルの主な副作用は、下痢22件(0.5%)、悪心12件(0.3%)、腹痛11件(0.3%)となっております。つまり、消化器症状が副作用として出現します。ただし注意が必要ですが、インフルエンザ自体でも消化器症状を認めます。(B型インフルエンザに多い)
タミフルの副作用か、はたまたインフルエンザの症状なのか、これを鑑別するのは医師でも困難です。
では、タミフル発売後の調査ではどうなってるのでしょうか?タミフルが発売されてから市販後調査がされましたが、こちらは処方した個々の医師の判断で報告がされます。
そのため、内服後に下痢の症状が出たと患者さんがいた場合、タミフルの副作用と判断して報告したら副作用にカウントされますし、後からインフルエンザの症状が出たんだなと判断されたらカウントされません。適当だなって感じるかもしれませんが、逆に言うと多くの薬はそのように市販後調査されています。
大切なのは、インフルエンザでも腹部症状が出るということです。
その他重大な副作用がどのように添付文書に記載されているかというと、アナフィラキ―ショック、肺炎、重症肝炎、急性腎不全、皮膚粘膜眼症候群など怖い記載が並んでおり、飲むのがためらわれてしまうかもしれません。
ただしこれらの副作用は、薬のアレルギーとしてほぼ全ての薬、さらにいうとサプリメントや食べ物でも認める事がある症状です。特別タミフルが多いということはありません。
6.検査が陰性でもタミフルが処方されることがある?
インフルエンザ検査が陰性でも、インフルエンザが症状や経過から疑わしい時はタミフルが処方されます。
インフルエンザの診断は基本的には簡易検査キットで行われます。もっと正確に調べる方法もありますが、シーズン中では大勢の患者さんがいらっしゃるので、簡易検査でみていくことになります。検査について詳しく知りたい方は、「インフルエンザの検査方法と検査タイミングとは?」をお読みください。
ここでインフルエンザA、Bと診断されたらタミフルが処方されます。ここまでは誰もが納得するでしょう。
ただし簡易検査キットで陰性と診断された場合はどうでしょうか。インフルエンザ簡易検査キットで陽性と診断されたら間違いなくインフルエンザといえるのですが、陰性と診断されても違うと断言するのが難しい検査です。特に早期の場合は、インフルエンザウイルスが増殖する前かもしれませんし、子供などで大暴れしながら検査した場合は、ちゃんと鼻腔の粘膜が採取されたかが怪しいです。
そのため医師の視点で考えると、インフルエンザ簡易検査キットが陰性でも、インフルエンザ流行中の発熱で他の疾患の診断が難しい場合は、インフルエンザとして治療することが多いです。
ですので、インフルエンザの検査が陰性なのにタミフルを出されたのはなんでだろう??って思う人がいるかもしれませんが、これはインフルエンザを疑って処方されているのです。
その他インフルエンザの予防投与にも使用されます。詳しく知りたい方は、「タミフルの予防投与の適応と効果」をお読みください。
7.タミフルと他の抗インフルエンザ薬の比較
タミフルの特徴は、唯一の内服薬のインフルエンザ治療薬であることです。デメリットとしては、内服の煩わしさがあります。
4剤ある中でタミフルの一番の特徴は、「唯一の内服薬」というところです。内服が向いてる人、向いてない人で考えて処方されます。
タミフルではどんな人に向いていて、どんな人に向いてないのでしょうか。まずは4剤の比較を見てみましょう。
このように、タミフルは唯一の内服薬です。また薬価も、比較すると一番安いといえますね。デメリットとしては、新規に発売された薬と比べると1日2回、それを5日間繰り返す必要があります。
これらを踏まえて、タミフルが向いている人と向いていない人を考えていきましょう。
<タミフルが向いてる人>
- 内服薬でしか投与できない方
吸入の仕方が分からない(小さなお子さんや高齢者)
吸入する力がない(喘息や肺気腫などで吸入薬が吸えない方) - 一番安く済ませたい方(わずかな差ですが・・・)
<タミフルが向いていない人>
- 内服が難しい方
嘔吐を頻回にしている方
飲み込むと、むせてしまう方 - よくなったら途中でやめてしまいそうな方
忙しくて朝・夕飲めない方
性格的に忘れそうな方 - 10代の方(まれに見られる異常行動を避けたい方)
が大まかにあげられると思います。
まとめ
- インフルエンザウイルスは、①体内への付着②RNA・タンパク質の合成③インフルエンザウイルスの放出を経て増殖します。
- 日本で発売されている4種類の薬はノイラミニダーゼ阻害薬であり、インフルエンザ細胞の放出を阻害します。
- タミフルは2016年の時点で内服薬として唯一承認されているお薬です。
- インフルエンザの診断がついた時点で、早期に通常成人では75mg1カプセルを朝と夕食後2回、計5日、必ず10回内服します。
- タミフルの副作用としては精神異常や腹部症状があります。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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