イナビルの使い方・タミフルとの効き目の比較

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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イナビルは、インフルエンザ吸入薬として2番目に発売されました。2キットを1度に吸入するだけでインフルエンザの治療ができるという簡便さから、現在多くの病院で処方されております。

ただしどんなに良いお薬でもしっかりと身体に吸収されないと効果がありません。吸入薬は普段あまり使う機会がないので、方法がわからない方も多いと思います。

一回の吸入で効果が持続するのか、心配な方もいらっしゃるかと思います。ここでは、イナビルの効果時間についてお伝えし、インフルエンザ治療薬として有名なタミフルと効果を比較していきたいと思います。

イナビルの効果について詳しく知りたい方は、「イナビル(ラニナミビル)の効果と特徴」をお読みください。

 

1.イナビルの使い方について

1-1.イナビルの吸入方法とは?

治療としては2キットを1回で吸入すれば終了です。大切なのはしっかり深く吸って、お薬がインフルエンザが増殖している気道にいきわたることが大切です。

イナビルは吸って気道内でインフルエンザウイルスが増殖するのを防ぐお薬です。そのため、しっかりと深く吸って口の奥の気道まで行きわたらないと意味がありません。どれ位深く吸うのか?文章だとイメージがわきにくい方は、発売元の第一三共製薬会社が配信している動画で確認してみましょう。

イナビルの画像です。製薬会社から許可をいただいています。

文章で簡単にまとめると以下の5つの過程で吸入します。

  1. ①と書いてある薬剤トレーをしっかりとスライドしてセットします。
  2. 息を吐いてから、しっかりと奥まで口で加えます。
  3. 体を起こして、ゆっくり深く薬を吸います。
  4. 吸い切ったら2,3秒息を止めてからゆっくりと息をはきます。
  5. 次は②と書いてある薬剤トレーをしっかりとスライドしてセットした後、2~4を繰り返します。

これが1キットの流れです。大切なのは、しっかりと息を吸うことです。治療では2キット吸いますから、4回大きく吸い込むことになります。

 

1-2.イナビルの吸入薬で注意すること

イナビルはちゃんと吸入できたかどうか確認する方法はありません。吸入する前に、どういう点に気を付けなければいけないか目を通しておきましょう。

大切なことは、いかに十分量のイナビルを吸って、気道にいるインフルエンザウイルスのところまで到達させるかということです。イナビルを吸入するときの注意点としては、以下の5つがあげられます。

  1. ①と②のトレーをしっかり端までスライドさせましょう。
  2. 軽く息を吐いて、十分に深い呼吸ができるようにしましょう。
  3. キットの下にある吸入孔は塞がないようにしましょう。
  4. 背筋を曲げずにしっかり口でくわえて、ゆっくりと深く吸いましょう。
  5. 吸入し終わった後も息を2~3秒止めて、その後ゆっくり息を吐きましょう。

それぞれの項目を細かく見ていきましょう。

  1. ①と②のトレーをしっかり端までスライドさせましょう。
    スライドを端までセットすることで薬が吸入できる状態になります。端までセットしないと薬が十分量吸入できなくなるので、吸っても効果が不十分になってしまいます。必ずしっかりとセットしたのを確認してから吸いましょう。
  2. 軽く息を吐いて十分に深い呼吸ができるようにしましょう。
    呼吸というのは、息を吐くのと吸うのとの繰り返しです。そのため深く息を吸うためには、息を吐くという動作を終わらせてから吸う必要があります。特にお年寄りの方や肺の病気(肺気腫(COPD)や喘息)をお持ちの方は、しっかりとした吸う力を確保しないとうまく吸えない可能性がありますので、より注意してください。
  3. キットの下にある吸入孔はふさがないようにしましょう。
    1と同様で、いくらしっかり吸ってもここの吸入孔をふさいでしまっては、お薬が十分に吸えなくなってしまいます。必ずどこの部位か確認して、ふさがないようにして吸いましょう。
  4. 背筋を曲げずにしっかり口でくわえて、ゆっくりと深く吸いましょう。
    吸うところが、イナビルの治療がうまく行くかどうか一番明暗が分かれるところです。しっかり口にくわえないで吸ってしまうと、イナビルが漏れてしまうことあります。また、思いっきり強く吸うのもダメです。強く吸ってしまった後にむせこんでしまったら、元も子もありません。逆にあまりにも弱すぎたり、吸う時間が足りないと、気道にいるインフルエンザウイルスまで届かない可能性もあります。「しっかりと深く」が吸入のポイントです。文章でイメージがわかない人は動画で確認してみましょう。
  5. 吸入し終わった後も、息を2~3秒止めてその後ゆっくり息を吐きましょう。
    吸い終わった瞬間に油断してべらべらとしゃべり始めたら、せっかく気道まで到達したイナビルが全部口の外に出て行ってしまいます。最後まで気を抜かずに、2~3秒息こらえてからゆっくりと吐きましょう。その後は話すのはもちろんですが、うがいや食事も問題ないです。

色々書いてあってうまくできるか心配な方は、お薬を処方してくれた薬剤師さんに教えてもらいながらその場で吸入しましょう。薬剤師さんに見てもらいながら吸えば安心です。また、吸入は1回で終わりでなくて4回かけて吸いこんでいきます。緊張する必要はないので、丁寧に吸うことが大切です。

咳が強くてちゃんと吸えるか心配な方は、ためしに深呼吸してみましょう。これですぐに咳き込んでしまうのなら、内服薬のタミフルを処方してもらった方が良いかもしれません。

 

2.イナビルの効果時間

イナビルは、1回吸入するだけで効き目が持続する薬として非常に簡便です。

タミフルやリレンザは1日に朝・夕と2回、さらに5日間と計10回の服薬が必要です。これに対して、イナビルは1回で済んでしまいます。効き目が持続するのか心配になる方も多いかと思います。 

インフルエンザの有効成分はラニナミビルという成分ですが、イナビルにはラニナミビルオクタン酸エステルという成分が含まれています。イナビルは正確に言うと、これが体内に吸入されて代謝されることで、有効成分のラニナミビルとなるのです。

ラニナミビルは、最高血中濃度到達時間が4時間、半減期が70時間程度となっています。つまり一度吸入してしまうと、血中濃度が半分になるまでに3日ほどかかります。ですから、一回の吸入で十分に効果が持続するのです。

 

3.イナビルとタミフルの効き目の比較

イナビルは、タミフル・リレンザ・ラピアクタと少なくとも同じ効き目、場合によってはイナビルの方が効き目が上回ったという報告もあります。

イナビルの臨床試験でも、2001年から登場していたタミフルとの比較試験がおこなわれています。

イナビル40mg吸入した人(334人)とタミフル75mgを1日2回で5日間飲んでいた人(336人)を比較したところ、どちらも3日(約73時間)ほどでよくなりました。この結果、イナビルは1回の吸入で済むという利便性を兼ね備えたうえに、今までのインフルエンザ薬と比較しても、効き目が落ちないという地位を手に入れたのです。

さらに一部の報告では、新型インフルエンザやタミフル耐性のインフルエンザに、イナビルが他のインフルエンザ薬よりも効果を示したという報告があります。

2008-2009年では、ソ連型A型ウイルスが流行った年でした。ソ連型A型ウイルスの95%以上は、タミフル耐性と言われています。このシーズンで行われた小児の研究で、タミフルよりイナビルの方が早く症状がよくなったということから、イナビルはタミフル耐性のインフルエンザにも効くと考えられます。

もちろんこの一つの研究結果だけでイナビルがタミフルより効き目が勝ってるというのは言いすぎでしょう。ただ今までの研究から、少なくともイナビルはタミフルなど他のインフルエンザ治療薬と同等の効果があるということは示されています。

「1回だから効き目は大丈夫かなぁ?」と心配する必要は全くありません。

 

まとめ

  • イナビルは、1日1回2キット吸入するだけで治療できるインフルエンザ治療薬です。
  • イナビルは正しい吸入方法で、しっかりと深く吸うことが大切です。
  • 1日1回だけでも、タミフルやリレンザと少なくとも同等の効果が得られます。

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