アズマネックス(モメタゾンフランカルボン酸)の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
アズマネックスは、2009年にMSD製薬会社より発売された吸入ステロイド薬になります。喘息の治療薬として使われています。
吸入ステロイドは喘息の発作が起きたときに吸うものではなく、喘息の発作が起きないようにコントロールするために吸入するものです。
アズマネックスは、モメタゾンフランカルボン酸エステルというステロイドが含まれています。この成分は、ナゾネックスという花粉症の点鼻薬や、フルメタという皮膚疾患の塗り薬に使用されているステロイドです。
アズマネックスは、軽症な喘息に使用されることが多いお薬です。一番の特徴としては、アズマネックスは残量が無くなるとロックシステムがかかります。これによって、残量がないのに吸入を続けてしまうミスを防ぎます。
ここでは、アズマネックスの効果や副作用の特徴について詳しくお伝えしていきます。
1.アズマネックスの効果の特徴
<メリット>
- 操作が簡単
- 残量がなくなったら、ロックがかかり吸入ができなくなる
<デメリット>
- ドライパウダーのため吸入力が必要
- 1日2回吸わなければならない
- 吸入回数で調整するため、たくさん吸えば吸うほど値段も倍増する
- 小児には使用できない
喘息を語るうえで、ステロイドは切っても切れないお薬になりました。喘息で多くの方が1950年までは亡くなっていましたが、この吸入ステロイドが登場してからは多くの命が救われています。
アズマネックスの良い点としては、吸入器であるツイストヘラーにあります。この吸入器は、キャップ開閉操作のみで1回吸入量が装填されるため、非常に使いやすい吸入器となっています。さらに吸入薬の残気量が無くなると、ロックシステムがかかって操作できなくなります。
吸入薬の最大の欠点は、残気量があるかカウンターで毎回確認しなければならない点にありました。どんな良薬でも、空っぽでは効果が発揮できません。ただし他のデバイスでは、残量がなくなっていても吸入操作ができるものが多かったのです。
そんな中、アズマネックスは残気量が0になったらロックシステムがかかり操作ができなくなります。これによって誤投与が無くなり、確実にお薬が吸えるようになります。
一方で欠点としては、アズマネックスはドライパウダーのため一定の吸入力がないと吸えません。ドライパウダーでうまく吸えない人は、スプレー式のキュバールやオルベスコを検討した方が良いでしょう。
またアズマネックスは、朝と夕2回の吸入が必要なお薬のため注意が必要です。そして吸入回数で用量を調整するため、吸入回数が2回・3回と増えれば、1日にかかる値段も2倍・3倍と増えるのが欠点です。
さらにアズマネックスの欠点は、小児に使用できない点です。吸入ステロイド単独で使うことは小児の方が多いのですが、アズマネックスのみ単独の吸入ステロイドで適応がありません。そのため小児に使用する場合も、一般的には12歳以上から処方します。
2.アズマネックスの剤形の種類と用法とは?
アズマネックスは、軽症の喘息の人に適応がある吸入薬です。
アズマネックスは、ドライパウダー式の吸入薬で主に喘息に使用されます。
アズマネックスは、
- アズマネックス100μg60吸入用
- アズマネックス200μg100吸入用
があります。
投与方法としては、成人にはアズマネックスを1日2回朝・夕で1~4回の吸入回数で投与します。なお、症状により適宜増減しますが、1日の最大投与量は800μgです。
そのためアズマネックス100μgを使うか200μgを使うかは、喘息患者さんの症状により異なります。しかし一般的には、200μg単位でコントロールすることが多いです。
一方で、小児にはアズマネックスは適応がありません。他の吸入ステロイドは小児に適応があるのに対して、唯一吸入ステロイド単体ではアズマネックスの適応がないので注意が必要です。
これはアズマネックスが、小児対して危険というわけでは決してありません。どのお薬も小児の適応を通過するためには、十分な安全性を確認した試験を通過する必要があります。
現時点では、アズマネックスはこの試験をまだ受けていないのです。そのためアズマネックスは、12歳以上から使っていくお薬になります。
3.アズマネックスの薬価は?
アズマネックスは、ステロイド単剤で薬価が低めです。ただし、投与量が増えて吸入回数が増えると費用は倍増します。
アズマネックスの薬価は、以下のようになっています。
商品名 | 吸入回数 | 薬価 | 1回吸入 |
アズマネックス100 | 60 | 2598.3 | 43.3 |
アズマネックス200 | 60 | 3293.6 | 54.9 |
※2016年8月2日時点での薬価です。
1日の薬価は、一回に何回吸入したかで変わります。1度の吸入に2回・3回と量が増えれば、値段も倍増していきます。
なおアズマネックスは、現時点ではジェネリック医薬品はありません。
4.アズマネックスの副作用の特徴
主な副作用としては、嗄声と口腔内のカビがあります。
アズマネックスの副作用はどれくらいあるのでしょうか。
市販調査では、645 例中128例(19.8%)に認められました。主なものは、
- 口腔カンジダ症39例(6.0%)
- 嗄声37例(5.7%)
- 咽喉頭症状(不快感・ 疼痛・乾燥・刺激感)16例(2.5%)
となっています。咽喉頭症状は、アズマネックスを思いっきり吸いすぎるとよく起こる症状です。困る副作用としては、口腔内カンジダと嗄声が挙げられます。
口腔内カンジダ症とはカビの感染症です。これは吸入ステロイドの免疫抑制で、口の中にカビが繁殖しやすくなる影響です。アズマネックスでは6%と最も多い副作用になっています。
嗄声は、声がかすれてしまう症状です。これは、ステロイドが咽頭筋に付着したことによる筋力低下で起きるといわれています。
これらの副作用を防ぐために必ず吸入後はうがいをしましょう。
5.アズマネックスが使えない人は?
「有効な抗菌加療が存在しない感染症にかかった人」と添付文章に記載されていますが、このケースはほぼありません。
アズマネックスの添付文章には、どのような人が使えないと書いてあるのでしょうか?
有効な抗菌薬が存在しない感染症の方
とあります。実はこの一文、どんなにステロイドが少量な場合でも決め台詞のように出てきます。医者の私たちでも、「有効な抗菌薬が存在しない感染症とはいったいなんだろう??」と思います。
普通の肺炎や尿路感染では、まずそんなばい菌はいません。どこかの地域のよほど特殊な感染症を示しているのかもしれないですが、普通に生活している分にはまず感染しないです。
そのため感染症にかかっても、アズマネックスをやめなくてもまず問題ないでしょう。
その他に原則禁忌の疾患として、結核が添付文章に記載されています。「必要な場合は慎重に投与すること」となっています。喘息において吸入ステロイドが不必要になることは、基本ありません。むしろ結核を起因に喘息が悪化する可能性があります。
またアズマネックスと飲み合わせが悪いお薬も特にありません。高齢者、妊婦・授乳中、小児も特に問題ないです。
まず高齢者からみていきましょう。アズマネックスの添付文章では、
患者の状態を観察しながら慎重に投与する[一般に高齢者では生理機能が低下している]。
と記載されています。実際に高齢者は喘息発作を起こすと、最悪の場合は命に関わってきます。生理機能が低下していも吸入ステロイドの量が微量なためほぼ影響ありません。必ずアズマネックスを吸うようにしましょう。
次に、妊婦の方について添付文章では、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(大量の副腎皮質ステロイド剤を投与すると実験動物で催奇形作用が知られています)
と記載されています。催奇形性といわれると非常に怖いですね。しかしこれは実際に吸入する量の100倍近くの量を、吸入ではなく注射や経口で投与したら起きた症例です。そのため多くの人が妊娠中でも吸入ステロイドは継続しています。
授乳中は添付文章では、
アズマネックス使用経験が少ないので、患者に対する本剤の重要性を考慮した上で授乳の中止あるいは本剤の投与を中止すること
とされています。しかしアズマネックスで喘息コントロールをやめてしまった場合、発作が起きるともっと大量のステロイドが必要になります。このことを考慮すると、アズマネックスを中止することは得策ではないと思います。
以上のようにアズマネックスはどのような人でも投与できるお薬になります。
6.アズマネックスが向いている人とは?
- 残気量の確認が難しい高齢者の方
- 喘息の治療が吸入ステロイドで安定している方
現在の成人の喘息治療は、アドエアやシムビコートなどのβ2刺激薬とステロイドの合剤から治療することがほとんどです。
症状が安定している場合は、アズマネックスなどの吸入ステロイドだけに減薬していくようガイドラインでは記載されています。しかしアドエアやシムビコートで症状が安定しているのに、あえてβ2刺激薬を減らす必要があるのか、かなり意見が分かれています。
喘息発作の回数が増えれば増えるほど、喘息が難治性になることが近年報告されています。そのため治療をどんどん削っていくメリットより、デメリットの方が大きい印象があります。
そのためアズマネックスが処方されるのは、お子さんの方が多いかと思います。一方で、ステロイド単剤の吸入薬も多く処方されています。その中でも最も多い処方が、フルタイドとパルミコートになります。この2つにβ2刺激薬を配合したものが、アドエアとシムビコートとなります。
そのため、悪化したときに同じ吸入方法でできるようにということで、吸入ステロイドの単剤ではこの2つがよく使われています。
さらに吸入ステロイド単体に変更する際も、
- アドエア→フルタイド
- シムビコート→パルミコート
と同じ吸入器のデバイスに変更することが多いため、いきなりアズマネックスが使われる機会はかなり低いです。
アズマネックスが使われるとしたら、残気量がないのに毎回吸い続けてしまう人です。特に高齢者では、目盛りが見えづらいということで吸い続けてしまう人もいるのではないでしょうか?
特にパルミコートは吸った感じがしないうえに、ふると防腐剤がシャカシャカなるので残気量があると勘違いして吸い続けてしまう人もいます。これらのミスが多い人には、残気量が無くなったら吸えなくなるアズマネックスが最適かもしれません。
医師からすると、アズマネックスで喘息を治療している人を見ると、「処方している先生は、なかなか喘息の治療に詳しい先生だな」って思うお薬です。
出番は少ないかもしれませんが、本当に困った時の喘息治療の切り札のひとつがアズマネックスです。
まとめ
- アズマネックスは、ステロイド単剤のドライパウダー式の吸入薬で主に喘息の治療に使われます。
- アズマネックスの最も特徴的なのは、残気量が無くなるとロックシステムがかかり吸えなくなることです。
- アズマネックスは、1回の吸入回数を変更することで投与量をコントロールします。
- アズマネックスは、朝と夕方2度吸入するお薬です。
- アズマネックスの副作用はほぼないのですが、嗄声と口腔内のカビには注意が必要です。
- アズマネックスが使用できない疾患はほぼありません。
- アズマネックスと併用してはいけないお薬はありません。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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