アイピーディカプセル(スプラタストトシル)の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アイピーディ(一般名:スプラタストトシル酸塩)は、大鵬薬品工業が1995年に発売した抗アレルギー薬です。

免疫に関係するTh2細胞を阻害することで、アレルギーを抑制するお薬です。主に喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎でアイピーディは使われます。

Th2細胞は免疫に重要な役割をしている細胞で、さまざまなサイトカインを分泌して炎症を引き起こします。傷ついたところで炎症が起こることで修復されていくのですが、それが過剰におきて不必要に炎症を起こしてしまうのがアレルギーです。

アイピーディは免疫のスタートに非常に重要なTh2をブロックします。これによって、理論的にはアレルギーがほぼ完ぺきにコントロールできるのです。しかし理論通りにいかないのが医療の世界です。実際にアイピーディの効果は比較的マイルドとされています。

ここでは、そんなアイピーディの効果と副作用についてご紹介していきます。

 

1.アイピーディの効果と向いている人とは?

  • 小児
  • 他のお薬で効果が不十分な場合
  • 喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎が軽症な場合

我々医師は、それぞれの病気のガイドラインを元に治療をします。実際にアイピーディは、喘息では強く推奨されているお薬ではありません。またアレルギー性鼻炎でも、軽症の場合のみ適応がある薬として記載されています。

ガイドラインはどのように作られるのかというと、製薬会社側がこれくらい効果があるという結果報告をもとに、数人の権威ある先生が話し合って作成します。つまりアイピーディは他の薬ほど良い効果があるわけではないため、2番手として扱われているのが現状です。

しかしそんなアイピーディですが、効果が弱いかわりに副作用がほとんどないのが強みです。そのため使うとしたら各疾患が軽症な場合、もしくは今使用しているお薬で効果が不十分な場合に上乗せる形で使用されます。

さらにアイピーディ-ドライシロップ5%が小児用に発売されています。そのため、喘息などで吸入器がうまく吸えないお子さんには、積極的にアイピーディ-ドライシロップ5%が使われるケースがあります。このように、大人の薬というよりは小児のための薬という印象が強いです。

 

2.アイピーディの使用方法は?

アイピーディは、成人には1回100mgを1日3回毎食後に経口投与します。

アイピーディは、気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎 のアレルギーに関与した3疾患に適応があるお薬です。

剤形としては、

  • アイピーディ100mgカプセル
  • アイピーディ50mgカプセル
  • アイピーディ5%ドライシロップ

の3種類が発売されています。

アイピーディは、成人には1回100mgを1日3回毎食後に経口投与します。添付文章では、効果や年齢にて適宜増減が記載されています。特に高齢者で肝機能障害がある人は、50mgから開始することも稀ですがあります。また、小児の場合は、アイピーディ-ドライシロップ5%を使用します。

小児の投与量は、体重によって決められます。スプラタストトシル酸塩として、1回3mg/kgを1日2回朝・夕食後に、溶解して服用することとなっています。つまりアイピーディ-ドライシロップ5%を60mg×体重で1回投与量とします。 体重30kgですと、アイピーディドライシロップ5%を1.8g一回に投与します。

なお、1日投与量はアイピーディ-ドライシロップとして6.0gを超えないように注意が必要です。成人が朝・昼・夕の3回内服なのに対して、小児のアイピーディドライシロップ5%は朝・夕の2回なので回数に注意しましょう。 年齢別の標準投与量は以下のようになります。

年齢  1回投与量 
3歳以上 5歳未満 0.75g
5歳以上 11歳未満 1.5g
11歳以上 2.0g

 

3.アイピーディの副作用は?

アイピーディは、ほとんど副作用がなく安全に使用できます。

アイピーディカプセルの使用成績調査では、7863例中3.6%(286例)でした。主な副作用は、眠気0.5%、胃部不快感0.4%、嘔気0.4%、肝機能障害0.3%、発疹0.2%などでした。

また小児で使用するアイピーディ5%ドライシロップは、1180例中2.5%(29例)でした。主な副作用は、好酸球増多0.6%、肝機能障害0.4%、嘔吐0.3%などでした。

どの副作用も1%以下の頻度であることから、アイピーディを1000人内服したら数人が出現する程度の頻度です。さらに重症な副作用は頻度が低下することを加味すると、ほとんど副作用がなく安全にアイピーディは内服できるお薬といえそうです。

 

4.アイピーディの安全性は?

アイピーディは肝機能障害の方が使用注意ですが、それ以外は問題なく使用できます。妊婦の方には使用できますが、授乳中の方は授乳は勧められていません。

アイピーディの慎重投与の項目には一種類、「肝機能障害がある人」のみです。つまりそれ以外の疾患、またどのようなお薬を内服していても、アイピーディの使用は問題ないことになります。

さらに肝機能障害がある人も、絶対に使用してはいけないわけではありません。肝機能障害が起こらないか定期的に採血していれば、アイピーディの内服は可能かと思います。

また妊娠している方に対してですが、アイピーディの添付文章では、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]

となっています。この一文はほとんどの妊婦の方で内服できるお薬に記載されているものです。そのため過度に心配する必要はなく、アイピーディは妊娠中でも使えるお薬です。

一方で授乳中ですが、アイピーディの添付文章ですと、

授乳婦に投与する場合には授乳を中止させること。[動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。]

と添付文章で記載されています。医師からは添付文章でこのように書かれてしまっている以上は「アイピーディを内服する時は授乳を避けてください」と説明せざるを得ないです。ただし授乳へ移行したからといって現在それが子供に悪い影響を与えたというデータもありません。そのためここからは患者さんの自己判断になると思います。

 

5.アイピーディの薬価は?

アイピーディではジェネリックが発売されており、安価になっています。

それではアイピーディの薬価についてみていきましょう。

<先発品>

商品名 剤形 薬価(3割負担)
アイピーディカプセル 100mg 44.1円(13.2円)
アイピーディカプセル 50mg 37.2円(11.2円)
アイピーディドライシロップ 5% 52.3円/g(15.7円/g)

<後発品(ジェネリック)>

商品名 剤形 薬価(3割負担)
スプラタストトシル酸塩カプセル 100mg 29.5円(8.9円)
スプラタストトシル酸塩カプセル 50mg 29.1円(8.7円)
トシラートカプセル 100mg 29.5円(8.9円)
トシラートカプセル 50mg 29.1円(8.7円)

アイピーディにはジェネリック医薬品も発売されています。

一般名(成分名)のスプラタストトシル錠として発売されていますが、東和薬品からトシラートカプセルも発売されています。名称を統一する流れにあるので、いずれトシラートカプセルも名称変更されるでしょう。

ジェネリックでは、50mgと100mgの違いがあまりありません。アイピーディは副作用も少ないので、100mgカプセルを使う方が多いでしょう。

※平成28年4月16日現在の薬価になります。

 

6.アイピーディの効果のメカニズム(作用機序)

アイピーディは、Th2細胞を阻害することでアレルギーを抑えます。

Th2細胞はアレルギー性疾患の原点ともいえる細胞です。Th2細胞は、IL-4・IL-5・IL-6・IL-10・IL-13などのアレルギー反応を促進するサイトカインを分泌します。これらのサイトカインにてIgEや好酸球の産生が増加して、結果として喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症の症状が出現します。

Th2があればTh1細胞もあります。Th1が分泌するサイトカインは、Th2細胞が分泌するサイトカインの効果を抑制します。つまりTh1とTh2は、互いにバランスを取り合っている関係です。アレルギー症状が出現するのは、Th2の細胞が増えてバランスが崩れた時になります。アイピーディは、このTh2自体を阻害することでバランスをまた保とうとするお薬です。

実際に先ほどTh2細胞が産生するとしたIL-4やIL-5は、アイピーディを投与することで低下することも報告されています。その結果としてIgEや好酸球も抑制されていることが確認されています。

 

7.アイピーディの効果の特徴は?

アイピーディは特効薬というよりは、マイルドに効果を示すお薬です。

アイピーディは気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎(花粉症)に適応があります。

アイピーディ100mgを朝・昼・夕の3回飲ませた1004人での効果を見たものが、以下の表になります。

疾患  有効率(中等度改善以上) 
気管支喘息  49.2%(183/372) 
アトピー性皮膚炎  65.8%(241/366) 
アレルギー性鼻炎  57.9%(154/266) 

全体で5割弱という結果でした。先ほど示したように、Th2細胞を制する者はアレルギー疾患を制すると言わんばかりのメカニズムなので、この結果はやや寂しいものというのが医師からの見解です。結果としてはTh2を阻害するものの、完全に阻害するのは難しいというところでしょう。

アレルギーの機序として、Th2細胞→IL-4→IgE→喘息症状となるわけですが、このうち喘息に適応があるお薬として抗IgE抗体のゾレア(一般名オマリズマブ)というお薬があります。

このお薬は月に1度か2度皮下注するものですが、ゾレアの効果は7~9割と絶対的な効果を示します。IgEを制御するだけでこれだけの効果ですので、Th2細胞を制御できればもっと高い効果が望めるはずです。しかし効果がみられるのは喘息では半分弱ということから、アイピーディはマイルドにTh2細胞を阻害していることが分かります。

 

まとめ

  • アイピーディはTh2を阻害することで喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症に効果を発揮するお薬です。
  • アイピーディは副作用はほとんどありません。
  • アイピーディはドライシロップもあり小児に広く使われるお薬です。

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