アレグラは妊娠中や授乳中でも大丈夫?
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
アレグラは第二世代抗ヒスタミン薬として、様々なアレルギー性疾患で使われることがあります。最もよく使われているのが、花粉症の治療薬としてです。
花粉症の季節が訪れると、花粉を避けることはできません。女性は妊娠中や授乳中であっても、花粉とはかわりなく戦わなければいけません。
花粉予防が何よりも大事なのですが、お薬を使えるかどうかも気になるところだと思います。
アレグラは妊娠に影響がないでしょうか?
妊娠中にアレグラを服用しても大丈夫でしょうか?
授乳中にアレグラを服用しても大丈夫でしょうか?
ここでは、そんなアレグラの妊娠や授乳に対する疑問について考えていきたいと思います。
1.アレグラの妊娠への影響
安全性は高いと考えられますが、有益性が高い場合のみ投与することとなっています。
アレグラの薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)をみてみると、
「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」
となっています。つまりは、「絶対に安全とはいえないけど、必要ならば使ってもよいよ」ということです。
アレグラの妊娠への影響は、マウスやラットを使った動物実験によって確かめられています。その実験の中では、アレグラによって奇形が生じるという報告は認められていません。
アレグラのせいで奇形がみられたという報告はなされていませんが、本当に安全かどうかについては倫理的に確認できません。妊婦さんを使って研究などはできないからです。胎盤を通してお薬が移行してしまう以上、絶対に安全とは言い切れなくなってしまいます。
アレグラの動物実験(ラット)では、胎児の血液濃度は母体の1/6と低いですが、多少は胎盤を通して赤ちゃんにアレグラが移行してしまうことが示されています。このため、アレグラは絶対に安全とは言えないのです。
2.妊娠中の花粉症治療でのアレグラの位置づけ
妊娠16週までは薬を使わず、その後は点鼻や点眼を中心に治療をしていきます。
妊婦さんの花粉症の薬としては、点鼻や点眼が中心です。点鼻や点眼は飲み薬と違って、その場だけに作用して効果が出てきます。血液にはほとんど取り込まれないので、ごくわずかしか赤ちゃんには届きません。
ですからストロイドの点鼻薬や抗ヒスタミン点眼薬、インタールの点鼻や吸入などは比較的安全といわれていて、妊婦さんでも使われています。
これらの薬が関連した奇形の報告などはないのですが、念のため赤ちゃんの身体の重要な部分が完成する妊娠15週目までは使わない方がよいといわれています。鼻アレルギー診療ガイドラインでは4か月までは避けた方がよいとされていますので、16週までは一般的には使いません。
点鼻や点眼で症状がコントロールできない時は、飲み薬も妊娠に大きな問題はないといわれています。ですが、抗ヒスタミン薬の一部で口蓋裂のリスクが増加したとの報告もありますので、妊娠16週までは使わない方がよいです。
とはいえ、妊娠に気づく前に治療をしていたとしても過度に心配しなくても大丈夫です。薬の影響はないという報告の方が多いくらいです。
抗ヒスタミン薬の中では、昔からあるポララミンなどの薬では安全性が高いといわれています。ポララミンで眠気が強く出てしまった時は、新しい第二世代抗ヒスタミン薬も使うことはできます。アレグラをはじめ、クラリチン・ジルテックなどは奇形のリスクはないだろうと言われています。
最重症の場合はステロイドの内服をすることもあります。ステロイドの中では、プロドニンの安全性が高いといわれています。
3.抗ヒスタミン薬の妊娠への影響の比較
花粉症治療薬のほとんどは、「絶対に安全とは言えないけど、大きな問題はないだろう」と考えられています。もちろん薬は飲まないに越したことはないですが、お母さんが体調を崩してしまったら、お腹の中の赤ちゃんにもよくありません。
ですから、無理をしてはいけません。花粉症治療薬の妊娠への影響を比較してみましょう。
3-1.アレグラのガイドラインでの位置づけ
妊娠へのリスクは、FDA基準では「C」、オーストラリア分類では「B2」となっています。
アメリカ食品医薬品局(FDA)が出している薬剤胎児危険度分類基準というものがあります。現在のところ、もっとも信頼性が高い基準となっています。この基準では、薬剤の胎児への危険度を「A・B・C・D・×」の5段階に分けられています。
- A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
- B:ヒトでの危険性の証拠はない
- C:危険性を否定することができない
- D:危険性を示す確かな証拠がある
- ×:妊娠中は禁忌
もうひとつの妊娠リスクのガイドラインとしては、オーストラリア医薬品評議委員会の分類基準があります。こちらは、「A・B1・B2・B3・C・D・×」の7段階に分けられています。
- A:多数の使用経験で問題なし
- B1:症例が足りないが人で問題なく、動物実験でも影響なし
- B2:症例が足りないが人で問題なく、動物実験も足りないが影響なし
- B3:症例が足りないが人で問題ないが、動物事件で多少の影響がある
- C:薬の作用により有害な影響があるが、奇形を起こすことはない
- D:障害頻度の増加が認められる
- ×:永久的な障害を引き起こすリスクがあり、使うべきでない
3-2.抗ヒスタミン薬での妊娠リスクの比較
大差はありませんが、第二世代ではクラリチン・ザイザル・ジルテックの妊娠への安全性評価が高いです。
抗ヒスタミン薬の妊娠への安全性を比較してみましょう。
一覧表をみていただくと、FDA基準ではBかCとなっています。Cは「危険性を否定することはできない」というカテゴリーですが、この中には情報が不足していて判断ができないものも含まれます。新薬はすべてCからスタートするのです。
このような意味では、Cだからリスクが高いとは言えません。FDA基準でみると、古くからあって実績が豊富な第一世代抗ヒスタミン薬はすべてBとなっています。第二世代抗ヒスタミン薬の中では、クラリチン・ジルテック・ザイザルがBとなっています。ザイザルは比較的新しいお薬なので、Bとなっているということは安全性が高いのでしょう。
オーストラリア基準では、すべてのお薬がB2以上になっています。つまり、動物実験が不足しているかもしれませんが、妊娠への影響は報告されていないということです。このように考えれば、抗ヒスタミン薬は妊娠への影響はほとんどないと考えることができます。
妊娠での花粉症治療について詳しく知りたい方は、「妊婦さんの花粉症対策に使える薬とは?」をお読みください。
4.アレグラの授乳への影響
アレグラの安全性は比較的高いと考えられています。
アレグラの薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)をみてみると、
「授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。」
となっています。この根拠としては、アレグラが乳汁に移行してしまうことが確認されているからです。乳汁に移行するアレグラの量は、血中濃度の13%ほどという結果が出ています。そしてその濃度の変化は、血中濃度とほぼ同じになっています。
母乳への移行もわずかであり、アレグラは子供にも使われるお薬なので、比較的安全であろうと考えられています。後述するHale分類でも、アレグラは比較的安全という評価になっています。
しかしながら添付文章でダメと書かれてしまっているので、医師の立場としては「安全性は高いといわれているけど、リスクも踏まえて自己判断してください」と患者さんに説明せざるを得なくなってしまいます。母乳保育のメリットは、単に栄養補給だけでなく様々なメリットがあることがわかってきているので、授乳を止めてくださいとも言いにくいのです。
アレグラを自己判断で使われる場合は、2つのことを注意してください。
- 生後2か月はできれば避けること
- 血中濃度のピークを外すこと
生後2か月という時期は、肝臓や腎臓の機能が未熟なので薬が分解されにくく、また脳のバリア(脳血液関門)も十分に出来上がっていません。少量の薬も、大きく影響してしまうことがあります。メリットの大きい初乳だけは赤ちゃんに与えて、生後2か月までは人工乳保育する方がよいかも知れません。
また、できるだけ赤ちゃんに影響が出ない工夫をしましょう。授乳した直後にアレグラを内服するなど、飲み方の工夫をしましょう。アレグラを服用すると2~3時間で血中濃度がピークになります。できるだけ、そのピークをずらして授乳しましょう。
5.抗ヒスタミン薬の授乳への影響の比較
抗ヒスタミン薬のほとんどは、比較的安全といわれています。ですが、薬の説明書には「服用する場合は授乳を避けること」とされています。
授乳は避けようと思えば避けられるという考え方のもと、このように記載されています。抗ヒスタミンの授乳への影響の実際のところをみていきましょう。
5-1.アレグラのガイドラインでの位置づけ
アレグラの授乳へのリスクは、Hale分類では「L2」となっています。
薬の授乳に与える影響に関しては、Hale授乳危険度分類がよく使われます。Medication and Mothers’ Milkというベストセラーの中で紹介されている分類です。
この分類では「L1~L5」の5段階に薬剤を分類しています。新薬は情報がないのでL3に分類されます。
- L1:最も安全
- L2:比較的安全
- L3:おそらく安全・新薬・情報不足
- L4:おそらく危険
- L5:危険
5-2.抗ヒスタミン薬での授乳リスクの比較
アレグラは、比較的安全と考えられています。
抗ヒスタミン薬のうち、第一世代抗ヒスタミン薬は授乳は避けた方がよいです。これらのお薬は、中枢神経への移行が多いお薬です。乳児の脳にお薬が移行してしまい、眠気が強くなってしまうことがあります。
子供にてんかんや痙攣がある場合は、これらのお薬が引き金になることもあります。中枢神経への影響が強い第一世代抗ヒスタミン薬は避けるべきです。第二世代抗ヒスタミン薬のザジテンでは禁忌となっていますので注意が必要です。
第二世代抗ヒスタミン薬では、ザジテンなどの中枢神経への影響が強いお薬を除けば、全体的に授乳のリスクは低いと考えられています。
母乳中への移行はわずかであることに加えて、そもそも子供にも使うことができるお薬です。わずかに赤ちゃんに移行してしまっても、大きな問題がないのです。ですから、アレグラ・クラリチン・ジルテックはL2以上となっています。
これらのお薬を使っていても、赤ちゃんへの影響は念頭に置いておく必要はあります。一番の影響は眠気ですが、眠気が強くなると元気がなくなって栄養が不足してしまいます。夜泣きが減って楽になったと思ったら、むしろ注意してくださいね。
授乳中での花粉症治療について詳しく知りたい方は、「授乳中に花粉症の薬は大丈夫?」をお読みください。
まとめ
アレグラの妊娠への影響は少ないと考えられていますが、有益性が高い場合のみ投与することとなっています。
妊娠へのリスクは、FDA基準では「C」、オーストラリア分類では「B2」となっています。
アレグラの授乳への影響は比較的少ないと考えられています。
アレグラの授乳へのリスクは、Hale分類では「L2」となっています。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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