フェキソフェナジン塩酸塩錠の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
フェキソフェナジン塩酸塩錠は、2000年に発売された第二世代の抗ヒスタミン薬アレグラ錠のジェネリック医薬品になります。2013年から発売となっています。
フェキソフェナジン錠といわれるとピンと来ないかもしれませんが、アレグラ錠といわれると多くの方がご存知かと思います。「花粉症の薬と言えば?」と問われたら、おそらく一番名前が挙がるのがアレグラ錠かと思います。
抗ヒスタミン薬とは、アレルギーのときに過剰に分泌されるヒスタミンをブロックすることで、アレルギー症状を抑える効果が期待できるお薬です。花粉症をはじめとしたアレルギー疾患に使われているお薬です。
2012年からは、アレグラFXとして市販薬としても売られています。2016年は嵐の大野智さんのCMの影響もあり、アレグラFXはドラッグストアなどで爆発的に売れています。
ジェネリックのフェキソフェナジン錠は、市販で正式ルートにより購入することはできませんので、病院で処方してもらう必要があります。剤形としては30mg錠・60mg錠の他に、口の中に入れたら自然に溶けるタイプの60mgOD錠の3種類があります。
ここではフェキソフェナジン塩酸塩錠について効果や副作用の特徴を、他の抗ヒスタミン薬と比較しながら詳しく見ていきましょう。
1.フェキソフェナジンの効果の特徴
<メリット>
- 眠気が少ない
- 運転に関する注意がない
- 市販薬でも同一成分が発売されている
- ジェネリックなので薬価が安い
- OD錠が発売されている
<デメリット>
- 効果がマイルド
フェキソフェナジンの特徴は、「眠気の副作用が少ないけれども効果がマイルド」なことです。第二世代の抗ヒスタミンの中でも、眠気は非常に少ない抗アレルギー薬です。しかしながらその分、効果はマイルドになってしまうのです。
ほとんどすべての抗ヒスタミン薬では、「運転や危険作業を禁止する」「慎重に行うこと」といった添付文章上の記載があります。抗ヒスタミン薬の中ではフェキソフェナジンとクラリチンだけは、運転に関する記載がありません。
フェキソフェナジンとクラリチンはどちらも眠気は少ないですが、フェキソフェナジンの方が少ないです。他のお薬で眠気が強かった方や、絶対に眠気を避けたい方には向いているでしょう。
また、フェキソフェナジンは第一類医薬品として市販薬も発売されています。2012年11月よりアレグラFXとして発売されていて、フェキソフェナジンの効果的な方は、薬剤師さんが常駐している薬局で市販薬でも購入することができます。
さらにフェキソフェナジンはジェネリック医薬品になるので、先発品のアレグラに比べて6割ほどの薬価ですみます。OD錠も発売されていて、うまく錠剤を飲みこめない方にも使えます。
2.フェキソフェナジンの適応疾患と用量・用法
成人の場合、フェキソフェナジン60mgを1日2回内服します。
フェキソフェナジンが最もよく使われるのは、花粉症の治療薬としてでしょう。正確にいうと、花粉に対するアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎です。
その他は蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみなどで使われることがあります。これらの皮膚の病気は、ヒスタミンが発生することでかゆみが認められます。これを抑える目的でフェキソフェナジンが使われることがあります。
内服方法としては、以下のように年齢によって異なります。
- 成人:フェキソフェナジン60mgを1日2回内服
- 7歳以上12歳未満の小児:フェキソフェナジン30mgを1日2回内服
- 2 歳以上7 歳未満の小児:フェキソフェナジン30mgを1日1回(ドライシロップ0.6 g)
- 6 ヵ月以上2 歳未満の小児:フェキソフェナジン15 mg を1日2 回(ドライシロップ0.3g)
3.フェキソフェナジンの副作用の特徴
第二世代は第一世代に比べるとヒスタミンだけに作用するようにできていて、中枢への作用も少なくなっています。このため、フェキソフェナジンでは眠気や口の渇きなどの副作用が軽減されています。
フェキソフェナジンは第二世代の抗ヒスタミン薬に分類されています。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー反応を抑えて効果を示します。しかしながらヒスタミンは、実は全身に色々なところで活躍しています。
脳では神経伝達物質として情報の橋渡しをしていますが、抗ヒスタミン薬によって脳でのこの働きがブロックされてしまうと、中枢神経が抑制されて眠気が出現します。
また抗ヒスタミン薬は、抗コリン薬と似ている部分があります。このためアセチルコリン受容体をブロックしてしまい、便秘・口渇・尿閉といった抗コリン作用が起きることもあります。そのため抗コリン薬が禁忌である緑内障患者や前立腺肥大患者には、抗ヒスタミン薬も禁忌とされていました。
このように、副作用がかなり強いのが発売当初の抗ヒスタミン薬でした。こうした強い副作用のお薬を「第一世代」と呼んでいます。
1980年代になると、ヒスタミン受容体のみをブロックして、アセチルコリンの受容体をほぼブロックしないお薬が開発されました。中枢作用も少なく、このお薬を「第二世代」と呼んでいます。
第二世代抗ヒスタミン薬の中でもフェキソフェナジンは、中枢神経に移行しにくいため、抗ヒスタミン作用による眠気や太るといった副作用が少ないです。現在発売されている抗ヒスタミン薬の中では、副作用が最も少ないお薬のひとつです。
4.フェキソフェナジンの副作用と安全性
フェキソフェナジンは、抗ヒスタミン薬の副作用としての眠気は最も少ないです。その他も含めて安全な薬として多くの人に処方されています。
国内・外でのフェキソフェナジンの臨床試験において、総症例6,809例(国内1,060例、海外5,749例)中、1,093例(16.1%)に副作用が認められました。主な副作用は頭痛310例(4.6%)、眠気158例(2.3%)、嘔気83例(1.2%)と報告されています。
最も多い副作用は頭痛ですが、実は花粉症でも頭痛になることがあります。そのためフェキソフェナジンの副作用か花粉症の症状かはわからないことが多いです。また元々頭痛持ちの人は、花粉症のストレスで頭痛が発生することも多いです。いずれにしろ、フェキソフェナジンの副作用のせいで重度の頭痛が生じるというのはほぼないです。
また添付文章では、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
と記載されています。これは妊婦で安全に投与されるお薬のほぼすべてに記載されている文章です。動物実験(ラット)では、フェキソフェナジンによる奇形は認められていませんでした。このため、妊婦でも使うことができます。
一方で授乳中の婦人には、動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されています。このため添付文章上は、以下のように記載されています。
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。
赤ちゃんがフェキソフェナジンの成分を服用したことによる問題は起こっていません。授乳は避けられるものという考えから、添付文章上は勧められていません。実際のところは、自己判断で服用されている方も多いと思います。
5.フェキソフェナジンの薬価と剤形の比較
薬価としては、ジェネリックのフェキソフェナジンでは先発品の4割ほどになっています。3か月治療したとして診察料も含めた費用を比較すると、先発品と市販薬では同じ、ジェネリックでは2000円ほど安価になります。
まずはアレグラ(フェキソフェナジン)の薬価をみていきましょう。
<先発品>
商品名 | 剤形 | 薬価 | 3割負担 |
アレグラ錠 | 30mg | 56.4円 | 16.9円 |
アレグラ錠 | 60mg | 71.9円 | 21.6円 |
アレグラOD錠 | 60mg | 71.9円 | 21.6円 |
アレグラドライシロップ | 5% | 130.9円/g | 39.3円/g |
<ジェネリック(後発品)>
商品名 | 剤形 | 薬価 | 3割負担 |
フェキソフェナジン錠 | 30mg | 24.3~31.9円 | 7.3~9.6円 |
フェキソフェナジン錠 | 60mg | 31.1~41.4円 | 9.4~12.4円 |
<OTC医薬品(市販薬)>
商品名 | 剤形 | 価格 | 1錠あたり |
アレグラFX | 60mg14錠 | 1314円 | 93.9円 |
アレグラFX | 60mg28錠 | 1886円 | 67.4円 |
成人の場合、フェキソフェナジンは60mgを1日2錠服用します。これをもとに、28日間の自己負担額で比較してみましょう。
- 先発品:1208円
- ジェネリック:522円
- 市販薬:1886円
このように計算してみると、圧倒的にジェネリック医薬品の負担が少ないですね。しかしながら病院でお薬をもらうとなると、初診料や処方箋料などが必要になります。自己負担額は初診では1010円、再診では570円になります。花粉症の治療を3か月行ったとすると、診察料で2150円となります。これを踏まえて比較してみましょう。
- 先発品:1208×3+2150=5774円
- ジェネリック:522×3+2150=3716円
- 市販薬:1886×3=5658円
このようにして比較してみると、市販薬は先発品と同等になると思います。ジェネリックだと薬価が4割ほどになるので、全体的にみても2000円ほど安価になります。
剤形としては、先発品のアレグラには口の中で溶けるタイプのOD錠と、子供が服用しやすいドライシロップが発売されています。ジェネリックのフェキソフェナジンでもOD錠は発売されていますが、ドライシロップは発売されていません。
アレグラとフェキソフェナジンについて詳しく知りたい方は、「アレグラの先発品・ジェネリック・市販薬の比較」をお読みください。
6.第二世代抗ヒスタミン薬の中でのフェキソフェナジンの位置づけ
フェキソフェナジンは眠気はもっとも少ないですが、効果の強さもマイルドになります。
それでは、第二世代抗ヒスタミン薬の中ではフェキソフェナジンはどのような位置づけになるでしょうか。代表的な第二世代抗ヒスタミン薬を比較して表にしたのでご覧ください。
※薬理学的なデータに加えて、私の使用経験を踏まえて作成しました。人によって薬の効き方も異なります。
これをみていただくと、フェキソフェナジンは眠気が少ないかわりに効果がマイルドなことがお分かりいただけると思います。クラリチンとフェキソフェナジンは同じくらいの効果ですが、眠気でいうとフェキソフェナジンの方が少ないです。
現在主流で使われている第二世代抗ヒスタミン薬は、左下から真ん中にかけてのお薬です。フェキソフェナジンの効果が不十分で効かないときは、真ん中の方の薬を使っていきます。
右上の方のお薬は、第二世代抗ヒスタミン薬には分類されますが、第一世代に近いお薬です。眠気が強いということは、中枢のヒスタミンもブロックしてしまうことを意味しています。どうしても効果が不十分な時に検討されます。
7.フェキソフェナジンが向いている人とは?
- 運転や危険作業を仕事にしている方
- できるだけ負担の少ないお薬から始めたい方
- できれば市販薬にしていきたい方
- 1日2回の服用が可能な方
フェキソフェナジンの特徴を一言で言えば、「効果も副作用もマイルドな抗ヒスタミン薬」と言えます。それではどのような方に向いているのかを考えていきましょう。
フェキソフェナジンが最もよく使われている理由は、その眠気の少なさです。タクシーやトラックなどの運転が主とする仕事の方や、重機を扱ったり危険な薬品を扱ったりする方には向いています。抗ヒスタミン薬の添付文章に、運転や危険作業に関する注意喚起がないのはフェキソフェナジンとクラリチンだけです。
それ以外にも、絶対に眠気は勘弁したい方にはよいでしょう。ただし効果はマイルドなので、症状をしっかりとコントロールできないのでしたら無理せずに、もう少し効果の強い抗ヒスタミン薬に変更するようにしましょう。
フェキソフェナジンには市販薬も発売されています。将来的には市販薬に切り替えていきたい方は、フェキソフェナジンを使っていくのも方法です。
ただしフェキソフェナジンは、効果の持続時間が長くありません。このため1日2回の服用をしなければ、効果は安定しません。きっちりとお薬を1日2回飲める方に向いています。
まとめ
<メリット>
- 眠気が少ない
- 運転に関する注意がない
- 市販薬でも同一成分が発売されている
- ジェネリックなので薬価が安い
- OD錠が発売されている
<デメリット>
- 効果がマイルド
<向いている人>
- 運転や危険作業を仕事にしている方
- できるだけ負担の少ないお薬から始めたい方
- できれば市販薬にしていきたい方
- 1日2回の服用が可能な方
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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