病気で会社を休んだ時にもらえる「傷病手当金」のポイント

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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精神科の患者さんの中には、病気のせいで仕事はとても続けられない方もいらっしゃいます。有給にも限りがあるので、それをすぎたらお給料がでなくなってしまうと心配される方もいらっしゃいます。

お金がなくては生活できないから休むわけにはいかないと無理をしてしまって、ジリ貧で症状が悪くなってしまう方もいらっしゃいます。

そんな方に知っていただきたいのが傷病手当金です。健康保険組合から生活に心配なく療養していただくためのお金が支給されるのです。

ここでは、傷病手当金について、ポイントをお伝えしたいと思います。

 

1.傷病手当金とは?

健康保険の被保険者が、業務外の出来事で労務に服せなかった時に支給される手当です。

病気やけがで仕事を休まなければならなくなってしまった場合、その間の収入はどうなるのでしょうか。収入がたたれてしまったら、落ち着いて療養することもできません。出来るだけ早く復帰しなければと焦ってしまったり、どんどんと減っていく貯金残高をみるだけで気持ちが滅入ってしまいます。

会社を休職するときには、ノーワークノーペイの原則になります。仕事をしないから給料を支払わないという形です。その場合に支えてくれるのが傷病手当金です。傷病手当金の出どころは、加入している健康保険組合です。健康保険というと医療費というイメージが強いかも知れませんが、このように休職した時の生活の支えもしてくれるのです。

条件としては、健康保険に加入していることになります。その上で、支給期間中は医師の診断書による証明が必要です。会社への在籍期間中は、どのような場合でも傷病手当金が支給されます。勤続1年以上(被保険者)の方は、退職後だとしても支給されます。

傷病手当金の金額の目安は、月のお給料の2/3になります。ボーナスが出ないことも考えると、お給料が6割くらいになるイメージでしょうか。支給期間としては1年6か月になります。

※労災の場合は、労災保険から支給されます。

 

2.会社を休職した場合のお金の流れ

有給消化→(病気休暇)→傷病手当金→障害年金という流れです。

傷病手当金についてざっくりとお話しましたが、実際のお金の流れはもう少し細かいです。会社を休職した場合のお金の流れについてみていきましょう。

会社を休職するときには、それぞれの会社の就業規則によって異なります。有給が残っている場合、まずは有給消化という形をとって給与の100%が支給されます。その後、病気休職という形となり、傷病手当金が支給されるケースが最も一般的です。有給がない場合、いきなり傷病手当金となります。

公務員をはじめとした福利厚生の手厚い会社では、病気休暇という休職の前段階が制度として存在します。これは法律に定められたものではなく、それぞれの会社が就業規則で定めている制度になります。

病気休暇期間は、給与の80~100%保障されていることが多いです。その期間を過ぎてから無給の状態になった時に、傷病手当金が支給されることになります。公務員関係では、給料の100%が支給される1年間の病気休暇が定められていることが多く、その後に傷病手当金が1.5年支給されます。

傷病手当金の支給期間が1.5年であるのは、障害年金と関係しています。1.5年にわたって療養していても改善が認められない場合、病気が固定されて障害となったと考えます。症状の生活への影響の大きさに応じて、医師の判断で障害年金の申請をします。

おおよその目安は以下のようになります。

  • 1級:寝たきり
  • 2級:日常生活に支障がある
  • 3級:社会生活に支障がある

 

3.傷病手当金の支給はいつから?

3日間の待期期間(休日も含む)を過ぎてから傷病手当金が支給になります。

傷病手当金を受けるには、待期期間が必要になります。本当に傷病手当金が必要な状態なのかを証明する期間になります。

待期期間は、3日間の連続した休みのことです。有給や公休も含めることが可能です。具体的には、3つのパターンを考えると伝わるかと思います。

パターン①:3日連続した休業がない場合

傷病手当金の待機期間について①

→3日間連続した休みがないため、受給できません。

 

パターン②:3日連続休業をした後、出勤を挟んで休業4日目に入って受給する場合

傷病手当金の待機期間について②

→3日間の連続した休業があるので、出勤後の休職初日から受給できます。

 

パターン③:3日連続休業をした後、そのまま休業4日目に入って受給する場合

傷病手当金の待期期間について③

→最初の2日の休業は認められませんが、その後の休業期間の最初の3日間が待期期間になります。その後からは受給できます。

 

4.傷病手当金の受給額とは?

標準報酬日額(標準報酬月額を30で除した額)の2/3の額

傷病手当金の受給額はどれくらいでしょうか?

おおよその目安は、ご自身の収入の2/3と考えて大丈夫です。基本的には、標準報酬月額をもとに計算されます。標準報酬月額とは、報酬の月額=毎月のお給料になるのですが、その決め方は4~6月の報酬の平均になります。

毎年4・5・6月の3か月の間に支払われた報酬(基本給、残業手当、通勤手当など、会社から支払われるものは全て)の合計額を3で割って平均月収を出します。それを標準報酬月額の等級表に当てはめて、等級を決定します。

等級は1~50等級まであって、例えば12等級は標準報酬月額は19万円になりますが、185,000~195,000円の方が該当します。上限の50等級は139万円となっていて、135.5万円よりも収入が高い方は一律139万円となります。
※平成28年4月より上限が47等級から50等級に上限変更

このようにして決めた金額を、その人の9月から翌年8月までの標準報酬月額とします。平成28年4月より健康保険法が改正となり、傷病手当金の支給額の計算方法がかわりました。

  • H28年3月まで
    「休んだ日の標準報酬月額」x2/3
  • H28年4月~
    「支給開始日以前の12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額」x2/3
    ※支給開始日とは1番最初に給付が支給された日

これまでは休んだ年度での標準報酬月額だけで計算していましたが、これからは細かく計算することになります。前年度の分と今年度の分をキッチリと計算するのです。給料は一般的に上がっていくものなので、今回の改正では多少減額になる方が多いと思います。

 

5.傷病手当金の支給期間

1年6か月を最長として、医師が労務不能と認めた期間のみ対象です。

傷病手当金は、支給開始から1年6か月が最長になります。もちろん医師が労務不能と認めた期間だけです。

一度支給を開始してから、途中で回復して出勤したとします。その方が再び調子を崩して休んでしまった場合、気をつける必要があります。一度職場に復帰した期間も含めて、1年6か月の中にカウントされるのです。

つまり、ひとつの病気での傷病手当金の支給は、発症してから1年6か月までということになります。別の傷病名で再休職という形では、受給できることになります。ですが、健保側で以前の傷病との関係性があると判断されれば、不受給となることもあります。最近は厳しくなってきている印象です。

傷病手当金の受給期間について

 

6.傷病手当金の申請と振込のタイミング

できるだけこまめに申請をした方がよいです。申請期間を過ぎてからでなければ診断書は作成されません。

給与のように月に一度必ず傷病手当金が支給されるように、こまめに申請書を提出するのが良いと思われます。申請書の提出後、傷病手当金が従業員の口座に振り込まれるまで3~4週間はかかります。

また、申請する期間の締切日がまだ到来していない場合は、診断書は書くことができません。例えば、平成28年3月3日~平成28年4月3日まで申請したいのなら、4月3日以降でなければ診断書を書くことができません。

傷病手当金の管轄はご加入されている健康保険の保険者になります。何か申請の際にご不明点があった場合、保険者である健康保険組合に問い合わせたら案内してくれます。

 

まとめ

健康保険の被保険者(被用者本人のみ。被扶養者は×)が、業務外の出来事で労務に服せなかった時に支給される手当です。

以下の4つの条件を満たすことが必要です。

  • 病気やケガ(業務上は全て除く)のために,療養の給付を受けていること
  • そのために仕事が出来ない事(医師の証明が必要)
  • 3日間連続した待機期間(公休も含まれる)があること(休業4日目から支給)
  • 会社から給与が支給されてないこと(給与額が傷病手当金以下の場合は、その差額支給)

※退職後も傷病手当金が支給される条件として、1年以上被保険者である必要があります。

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