双極性障害にみられる性格傾向とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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精神科の患者さんを診察していると、性格傾向と病気には関係があることに気が付きます。病前性格(病気の前の性格)と精神疾患の関係は、古くから多くの研究者によって議論されてきました。

性格傾向と精神疾患は確かに関係があるのですが、「精神疾患は性格のせい」というわけでは決してありません。双極性障害に多い性格傾向としては、昔から循環気質が有名です。循環気質とは、社交的でほがらかで、他人との調和を大切にする性格です。むしろ好ましい性格傾向なのです。

ここでは、双極性障害にみられる性格傾向についてどのように考えられているのか、詳しくみていきましょう。

 

1.双極性障害に多い性格傾向-循環気質とは?

社交性や親切を基本として、共感性や協調性を大切にするのが循環気質の方です。

双極性障害の病前性格としてもっとも有名なのものが、ドイツの精神科医のクレッチマーが提唱した循環気質です。さらにこのような性格は、肥満体型の方に多いとしています。

循環気質とは、社交的で人間味があふれ親しみやすく、他人への気配りも上手で周囲と同調していこうとする性格です。このような方は周囲の人間関係を盛り上げて、仕事も快活にバリバリこなします。社会的に成功を収めやすいといえます。

このように、社交性や親切を基本として、共感性や協調性を大切にするのが循環気質の方です。循環気質の中にも2通りの方がいて、活発で熱しやすい方と、気重で悲観的になりやすい方がいます。

多少の気分の波がありながらも性格とみなせる循環気質から、次第に循環病質、双極性障害へと病気に移行していきます。

 

2.双極性スペクトラム障害としての発揚気質・刺激性気質

躁病の最軽症型としての発揚気質・混合状態の最軽症型としての刺激性気質が提唱されています。

従来の気分障害は、単純にうつ病か双極性障害かに分けて考えられてきました。この両極端の状態で分類していくことに疑問を呈したのがアキスカルです。その両極端の状態には連続性があって、より細かくとらえる必要があると考えました。これが双極性スペクトラムという考え方です。

それに合わせて、気分障害の各病像の薄まった形として、以下の4つの気質が提唱されています。ひどくなると、各病気に発展していくと考えています。

  • 発揚気質(躁病の最軽症型)
  • 抑うつ気質(うつ病の最軽症型)
  • 刺激性気質(混合状態の最軽症型)
  • 気分循環性気質(気分循環症の最軽症型)

このうち、双極性障害と関係が深い気質として、発揚気質と刺激性気質があげられます。

発揚気質とは、気分が常に高く前向きで、自信にあふれている性格です。社交的で話をすることがすきで、楽天的で精力的に行動します。あふれる自身に基づいて行動し、空回りすることも多いですが、リーダとなる人も多いです。

刺激性気質とは、気難しく不機嫌で、イライラしているのが目立ちます。批判や不満が多く、怒りっぽい傾向にあります。

 

3.執着性格とメランコリー親和型・マニー親和型性格

熱して冷めにくい執着性格、秩序を重んじるメランコリー親和型性格、自己を強く持っているマニー親和型性格が気分障害との関係が深いです。

これまでみてきた「気質」は、性格のもとになる遺伝的に生まれ持った特徴を意味しています。このような気質を備えている人は、双極性障害に自然と発展していきやすい要素があります。

これらの気質をもとに、発病していく原因に注目して性格傾向を分析したのが下田の執着性格であり、テレンバッハのメランコリー親和型・マニー親和型です。

執着性格とは、一度起こった感情が冷めにくく、むしろ熱しやすくなるのが特徴で、仕事に熱心で凝り性、几帳面で正直、強い正義感や義務感がある性格です。感情の興奮が続いて休息ができず、病気につながってしまうのです。

テレンバッハは、似たような性格傾向としてメランコリー親和型性格を提唱しました。秩序愛が基本にあって、良心的で義務を意識し、決まり事をきっちりと守る性格です。保守的で消極的な傾向にあります。秩序が保たれている時はよいのですが、そこに変化が加わってうまくいかなくなると破綻してしまって、病気に発展します。

その対極としてマニー親和型性格を提唱しています。自己中心的で秩序に対して複雑な感情(両価性)をもっています。権威に対して抵抗が強く、自分自身を強く持っています。エネルギーにあふれていて、凝り性で熱中する傾向にあります。

メランコリー親和型性格とマニー親和型性格を対極にすると、執着性格はその中間に位置します。メランコリー親和型はうつ病に親和性が強く、マニー親和型性格は双極性障害Ⅰ型に親和性が強いです。双極性障害Ⅱ型はこの中間に位置します。

 

4.自分の性格傾向を知ってストレスをため込まない

自分の性格傾向を知って、悪循環に入る前に気づけるようにしましょう。

双極性障害に多い性格傾向を、順番にご紹介してきました。双極性障害の原因として、ストレスは大きな影響があります。ストレスをうまく対処できるようになる必要がありますが、そのためには自分の性格傾向を知ることが大切です。自分の性格傾向を知ることができれば、自分がストレスを抱えている時に早めに気を付けることができます。

例えば循環気質の方では、周囲に合わせようとするあまりに自分を犠牲にしているかもしれません。うまく自分を大事にしながら周りとコミュニケーションをとっていく方法を身につけていくことが必要です。

執着気質の方では、熱中している時は要注意です。物事に熱中することは必要ですが、大きなことが終わったら一呼吸置くようにしましょう。メランコリー親和型性格の方は、自分に課すノルマを高くもうけすぎないことです。等身大の自分を大事にしましょう。マニー親和型性格の方は、自分自身を客観視しながら自己管理をうまくしていくこと大切です。

性格傾向を変えることはなかなか容易ではありません。ですが、悪循環に入る前に気づけることが大切なのです。そのために、自分がどのような性格傾向なのかを理解しましょう。

 

まとめ

社交性や親切を基本として、共感性や協調性を大切にするのが、双極性障害に多い循環気質の方です。

躁病の最軽症型としての発揚気質・混合状態の最軽症型としての刺激性気質が提唱されています。

熱して冷めにくい執着性格、秩序を重んじるメランコリー親和型性格、自己を強く持っているマニー親和型性格が気分障害との関係が深いです。

自分の性格傾向を知って、悪循環に入る前に気づけるようにしましょう。

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