デパケンの副作用(対策と比較)

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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デパケンは、1975年に発売された気分安定薬です。双極性障害やてんかん、片頭痛の予防薬として適応がみとめられています。それ以外にも、気持ちを落ち着ける薬として幅広く使われています。

その他の気分安定薬や抗てんかん薬と比較すると、デパケンは副作用が少なくて使いやすいお薬です。そうはいっても、高アンモニア血症や肝機能障害には注意が必要です。意識障害の原因がデパケンであるということもあります。

ここでは、デパケンの副作用について、対策も含めて考えていきましょう。

 

1.デパケンの副作用とは?

  • 副作用が比較的少ない
  • 眠気やふらつきが多い
  • 吐き気などの胃腸障害が多い
  • 高アンモニア血症や肝機能障害に注意が必要

デパケンは、抗てんかん薬や気分安定薬に分類されます。これらのタイプのお薬は受容体に作用するのではなく、イオンチャネルや酵素に作用します。このため薬のターゲットが広がるので、副作用が全体的に多くなってしまいます。デパケンは、このタイプのお薬の中では副作用が少ないという特徴があります。

デパケンでは、穏やかな鎮静作用が期待できます。このため、眠気やふらつきの副作用が比較的多いです。また、吐き気や胃の不快感などが認められることが多いです。これらの副作用は、徐放製剤のデパケンR錠によってかなり軽減されています。

 

デパケンで気を付けなければいけないのが、高アンモニア血症と肝機能障害です。高アンモニア血症によって意識障害やけいれん発作などが認められます。

また、デパケンの肝機能障害には注意が必要です。デパケンは肝臓に負担の大きい薬なので、少しずつ肝臓にダメージが蓄積していくこともあります。それだけでなく、体質的に急激に肝機能障害が進行することがあります。

デパケンの量が少なくても認められることがあるので、アンモニアや肝機能を定期的に血液検査でチェックする必要があります。

 

デパケンの効果について詳しく知りたい方は、
デパケン錠・デパケンR錠の効果と特徴
をお読みください。

 

2.デパケンと他の気分安定薬の副作用比較

デパケンは、気分安定薬の中では副作用が少なめです。ですが、高アンモニア血症や肝機能障害に注意しましょう。

デパケンをはじめとした気分安定薬の副作用を比較してみましょう。

気分安定薬には4つのお薬が分類されています。

  • リーマス(炭酸リチウム)
  • デパケン(バルプロ酸)
  • テグレトール(カルバマゼピン)
  • ラミクタール(ラモトリギン)

副作用の頻度や安全性について比較すると、以下のようになります。

テグレトール>リーマス>デパケン>ラミクタール

テグレトールは副作用の頻度も高く、安全性も低いです。重症薬疹や無顆粒球症などの重篤な副作用に注意が必要です。リーマスも副作用が全体的に多く、治療域と中毒域が近いので注意が必要です。

デパケンやラミクタールは比較的に副作用が少なく、安全性も高いです。そうはいってもデパケンでは、肝機能や高アンモニア血症に注意が必要です。ラミクタールでは、重症薬疹に注意が必要です。

気分安定薬の副作用を比較して一覧にしました。

3.デパケンの副作用

デパケンの特徴をふまえて、具体的な副作用についてみていきましょう。他剤とも比較しながら、それぞれの副作用への対策もお伝えしていきます。

 

3-1.高アンモニア血症

デパケンの量が少なくても、高アンモニア血症が生じることがあります。無症状で気づかないことも多いので、定期的な採血でチェックが必要です。

デパケンの副作用で注意しなければいけないものとして、高アンモニア血症があげられます。

アンモニアが身体にたまっていくと、脳内の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸濃度を高めてしまいます。このため、脳の異常な興奮によりてんかん発作が起こってしまったり、意識障害が生じることがあります。ですから、デパケンを服用している方が意識障害になったら、必ずアンモニアを測定します。

アンモニアは消化管や腎臓で作られます。肝臓で尿素に変換されることで体外に排泄されていきます。この時にカルニチンが間接的に必要になります。カルニチンはデパケンを代謝するのに必要な物質なので、不足してしまっている方もいます。

このためデパケンで高アンモニア血症が生じるのは以下のように考えられています。

  • 生まれつきの尿素サイクル異常
  • 腎臓でのアンモニア産生過剰
  • カルニチンの欠乏

デパケンを長期に服用している患者さんでは、およそ半数で高アンモニア血症を認めますが、多くは無症状です。血中アンモニア値が基準値をこえても無症状であることが多く、200μg/mLを超えてはじめて症状が出てくる方もいます。

また、デパケンの量には関係なく生じるので、少量しか服用していないからといって油断できません。このため、定期的にアンモニア値をチェックする必要があります。

もし高アンモニア血症が認められたときは、症状がなければ2桁台でしたら様子を見ていきます。さすがに3桁台であったり、何らかの症状が認められたら、以下のような対策をします。

  1. エルカルチン(成分:レボカルニチン)を併用
  2. モニラック(成分:ラクツロース)を併用
  3. アルギメート(成分:グルタミン酸アルギニン)を併用
  4. デパケンを中止

 

3-2.肝機能障害

デパケンは肝臓に負担が大きい薬です。体質的に急激に肝機能障害が生じることもあるので注意が必要です。

デパケンは、肝臓に負担の大きな薬です。このため肝機能障害が認められやすいです。

その大部分は一過性肝機能障害といわれ、程度も軽く、しばらくすると改善します。肝臓は予備能力が高いので、慣れてくるとカバーできるようになるのです。用量が多いほど生じやすく、44%もの方に認められるという報告があります。特に症状がないならば、そのままデパケンを継続して様子を見ていきます。

症状がみられたり、肝機能障害が慢性化する場合は、以下の2つを検討します。

  1. デパケンの減量
  2. 他の気分安定薬への変更

 

非常にまれですが、急激な体質性の肝機能障害に注意しなければいけません。症状としては、傾眠、黄疸、悪心嘔吐、出血、けいれん発作などが認められます。血液検査をすると、肝機能が異常に高くなります。

2歳以下の子供に多いですが、何らかの代謝障害や発達遅延などがあることが多いとされています。ごくまれですが、注意する必要があります。

 

3-3.眠気・ふらつき

デパケンでは、眠気が認められることが多いです。デパケンR錠では、かなり眠気が軽減されています。

詳しく知りたい方は、「デパケンの眠気と5つの対策」をお読みください。

デパケンは脳の活動を抑える作用があります。デパケンには、リラックスする神経伝達物質のGABAの働きを強めたり、神経細胞膜を安定させる作用があります。このため穏やかな鎮静作用があり、眠気の副作用も認められます。

添付文章によれば、眠気の副作用は10563例中582例(5.5%)に認められています。デパケンの眠気は、飲み始めに認められることが多いですが、少しずつ慣れていくことも多いです。

眠気の対策としては以下の5つがあげられます。

  1. 睡眠環境や習慣を見直す
  2. デパケンR錠に変更する
  3. デパケンの飲み方を工夫する
  4. デパケンの減量
  5. 他の気分安定薬に変更

まずは睡眠環境や習慣に関して、改善できることは見直していきます。詳しくは、「不眠を解消する9つの方法」「アルコール・タバコ・コーヒーと睡眠の関係」をお読みください。

デパケン錠には、徐放製剤のデパケンR錠も発売されています。ゆっくりと有効成分が溶け出すように作られていて、血中濃度が安定するのです。このため、眠気の副作用も軽減されています。徐放製剤のデパケンR錠による眠気の副作用は、添付文章によると3919例中34例(0.9%)となっています。

眠気の副作用は少しずつ慣れていくことも多く、デパケンR錠に変えたらしばらく様子を見てみましょう。効果を見ながら、就寝前や夕食後などにお薬を服用するなど、飲み方を工夫していくとうまくいくこともあります。効果との兼ね合いを見ながらでデパケンを減量すると、眠気が軽減することもあります。

それでも改善がなければ、他の気分安定薬に変更していきます。

 

3-4.体重増加

デパケンは太りにくいお薬です。ときに過食発作が認められることがあります。

詳しく知りたい方は、「デパケンは太るの?体重増加と5つの対策」をお読みください。

デパケンの薬としての直接的な副作用としては、食欲増加も代謝抑制も少ないです。このため、デパケンの薬効としての体重への影響は少ないです。ですがデパケンでは、体重増加が認められることがあります。

デパケンの間接的な原因によって、体重増加をきたしてしまうことがあるのです。

  • 双極性障害の症状コントロール不良
  • 過食症状

デパケンで体重増加してしまった場合は、その原因がはっきりすれば個々の対策をとっていきます。それ以外の一般的な対策としては、4つあります。

  1. 体重測定・食事管理
  2. 運動
  3. デパケンの減量
  4. 他の気分安定薬に変更

まずは食生活を整えましょう。カロリーを意識しながら食事をとるようにして、3食をバランスよくとることが必要です。そして、定期的に体重を測るようにしましょう。ちゃんと自分の体重を管理する習慣をつけましょう。また、運動習慣をつくりましょう。消費カロリーが増えれば体重が減少しますし、運動自体が精神的によい効果をもたらします。

このような努力によって体重増加傾向が改善できない場合は、デパケンの減量を検討します。場合によっては、他の気分安定薬に変更することもあります。

 

3-5.吐き気

デパケンでの吐き気や下痢は、薬の飲み始めに認められることが多いです。

デパケンを服用していると、吐き気や胃部不快感などの副作用が認められることがあります。添付文章をみると、吐き気は2.6%、胃腸障害は1.5%となっています。

デパケンの吐き気や胃部不快感は、飲み始めに認められることが多いです。その原因は、はっきりとわかっていません。対策としては、以下の4つがあげられます。

  1. デパケンR錠に変更する
  2. 増量ペースをゆっくりにする
  3. 吐き気止めを一時的に使う
  4. 他の気分安定薬に変更する

徐放製剤のデパケンR錠に変更しましょう。デパケンR錠ではゆっくり成分が溶け出すことで胃腸症状が軽減されています。添付文章によると、デパケンR錠による吐き気0.7%は、胃腸障害0.03%となっています。

薬を飲み続けていくと、次第に慣れていくことが多いです。増量のペースをゆっくりにしたり、吐き気止めを使うことで、デパケンが身体に慣れる時間をかせぐこともあります。

どうしてもデパケンが身体に合わない時には、他の気分安定薬に変更します。

 

まとめ

  • 副作用が比較的少ない
  • 眠気やふらつきが多い
  • 吐き気などの胃腸障害が多い
  • 高アンモニア血症や肝機能障害に注意が必要

 

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