メプチンミニ錠の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
メプチンミニ錠(一般名:プロカテロール塩酸塩水和)は、1984年大塚製薬から発売されたβ2刺激薬の内服薬になります。
1980年に登場したメプチン錠は50μgなのに対して、メプチンミニ錠は半分の25μgになります。メプチンミニ錠は、6歳以上の小児用として作られたお薬です。
メプチンミニ錠は、主に喘息の長期管理のお薬になります。喘息発作で狭まった気管支を、β2刺激薬として広げることで喘息発作を予防します。
本来であれば吸入薬の方が効果も高く、副作用も少ないため良いのですが、うまく吸入できなければ全くお薬の効果を発揮しません。そのため、吸入薬が上手くできないお子さんを中心にメプチンミニ錠は使われます。
ここではメプチンミニ錠の効果と副作用についてみていきましょう。
1.メプチンミニ錠の効果のメリット・デメリット
<メリット>
- 長期管理薬として喘息を予防する
- 小児の発作治療薬として使われることもある
- 内服なので、うまく吸入できない人でも使える
- 薬価が安い
<デメリット>
- β2刺激薬は吸入の方が効果が高い
- 副作用がやや多い
メプチンミニ錠は、6歳以上の小児に適応があるお薬です。メプチン錠は通常50μgの量ですが、メプチンミニ錠は半分の25μgです。
喘息は、吸入薬による治療が主流になってきています。というのは、吸入薬の方が直接気管に作用するので副作用が少ないためです。しかしながら小児では、成人と違い小児の場合は吸入が難しい場合が多いです。
そのため小児では、
などの抗アレルギー薬を軽症例に使用して、重症例であれば吸入ステロイドに切り替えていくのが一般的です。それでも喘息のコントロールが悪い場合に、一時的にβ2刺激薬の上乗せしていきます。一時的となっているのは、安易な連用をしないためです。
ですからプロカテロールは、症状が強い場合に一時的に上乗せするのが一般的で、小児では長期管理薬として長期間の処方はされないことが多いです。
むしろ小児では、発作治療薬として使われることがあります。軽度の喘息発作の場合、メプチンミニ錠だけで経過観察することもあります。
喘息発作時の治療は、通常は短期間作用型のβ2刺激薬を吸入します。しかしながら小児では、喘息発作時に苦しくて暴れてしまい、うまく吸入できないこともあります。
このように小さなお子さんで吸入が難しい場合は、メプチンミニ錠で様子を見ることもできます。ただしこれは軽症例のみです。喘息発作が強ければすぐに病院を受診するようにしましょう。
また症状が無くなった場合は、メプチンミニ錠をだらだらと長期間内服せずに中止することが一般的です。
2.メプチンミニ錠の剤形と用量とは?
メプチンミニ錠は、1錠25μgです。6歳以上の小児で、就寝前に1回もしくは朝と夜に2回の内服でコントロールします。
メプチンミニ錠は、メプチン錠の後に小児用で製造されたお薬です。メプチンには様々な剤形が発売されていて、現在までに12種類にもなります。
- メプチンミニ錠50μg(1980年)
- メプチンミニ錠25μg(1984年)
- メプチン顆粒0.01%(1984年)
- メプチンシロップ5μg/mL(1984年)
- メプチンエアー10μg吸入100回(1987年)
- メプチンキッドエアー5μg吸入100回(1987年)
- メプチン吸入液0.01%(1987年)
- メプチン吸入液ユニット0.3mL(2002年)
- メプチン吸入液ユニット0.5mL(2002年)
- メプチンドライシロップ0.005%(2004年)
- メプチンクリックヘラー10μg(2005年)
- メプチンスイングヘラー(2014年)
最初の①~④は内服で投与するもので、それ以後はいずれも吸入薬になります。ちなみにメプチンの吸入は喘息の発作時に即効性を期待する治療となるため、錠剤とはまた違った使われ方をしています。
メプチンミニ錠の適応は、
気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解
となっています。
3.メプチンミニ錠の薬価とは?
メプチンミニ錠は、古い薬のためジェネリック医薬品が発売されています。
メプチンは、非常に古くからあるお薬です。そのためジェネリック医薬品も数多く発売されています。
<先発品>
商品名 | 剤形 | 薬価 |
メプチン錠 | 50μg | 27.2円 |
メプチンミニ錠 | 25μg | 16.7円 |
メプチンドライシロップ | 0.005% | 66.6円/g |
メプチンシロップ | 5μg/ml | 7.3円/ml |
メプチン顆粒 | 0.01% | 49.1/g |
<後発品(ジェネリック)>
商品名 | 剤形 | 薬価 |
プロカテロール塩酸塩錠 | 25μg/50μg | 5.6円/5.8円 |
エプカロール錠 | 25μg/50μg | 5.6円/5.8円 |
マーヨン錠 | 25μg/50μg | 5.6円/5.8円 |
プロカテロールシロップ | 5μg/ml | 3.8円/ml |
※2016年7月2日時点での薬価です。
メプチンミニ錠のジェネリックとして、プロカテロール錠などが発売されています。50μg錠と25μgでは成分量が異なりますが、すでに年月もたっていて十分に安価になっているので、薬価としてはほとんど同じになっています。
後発品の薬価は、先発品の約3分の1となります。
4.メプチンミニ錠の副作用とは?
メプチンミニ錠では、動悸や手の震えが出現します。
メプチンミニ錠では、22,757例中644例(2.83%)に副作用が認められています。頻度が高い0.5~5%の副作用は以下になります。
- 動悸
- 頻脈
- 手の振るえ
β刺激薬は心臓の動きも強めてしまい、結果としてドキドキする人がいます。漫然とメプチンミニ錠を長期間使うと、心臓に負担がかかってしまいます。
またβ刺激薬の特徴として、手の震えを訴える人もしばしばいます。メプチンミニ錠では0.5~5%と少ない副作用ながら、全体の副作用でみると頻度が多い項目となっています。
またメプチンでは、電解質の一つであるカリウムが低下することが報告されています。普通に食事している分には野菜や果物に多く含まれているため、まず問題になることはありません。
ちなみにメプチンを吸入した副作用は1.3%と内服の約半分の頻度になっています。錠剤で内服した場合気管支のみならず全身にメプチンが作用するため副作用の頻度が高いと考えられます。
5.メプチンミニ錠が使用できない人は?
メプチンミニ錠が使用できない人は基本的にいません。
メプチンミニ錠が禁忌となる疾患はありません。使用するのに注意が必要な疾患は、以下の5つです。
- 甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺ホルモンの分泌促進により症状悪化の恐れ]
- 高血圧の患者[α及びβ1作用により血圧を上昇させる恐れ]
- 心疾患のある患者[β1作用により症状を悪化させる恐れ]
- 糖尿病の患者[グリコーゲン分解作用により症状を悪化させる恐れ]
- 妊婦の方[妊娠の方の安全性は確立されていない]
①~④の疾患は、喘息発作が起きた時点でさらに悪化する可能性があります。喘息発作治療薬としては、β2刺激薬の他にはステロイド点滴があります。このステロイドの方が上記の疾患をより悪化させる可能性を考慮すると、喘息発作を予防するためにメプチンミニ錠を内服した方が効率的かと思います。
また⑤の妊婦の方ですが、小児を中心に使用するお薬のため、妊婦で処方されることはあまりないとは思います。ただもしメプチンミニ錠を内服していたとすると以下の記載が添付文章で書かれています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(マウス)で催奇形作用が報告されている。)
と記載されています。催奇形と書かれるとぎょっとしてしまうかもしれませんが、これは吸入する何百倍もの量を血液に投与したことで認められたものです。
喘息発作が出現したときにメプチンの有益性が危険性を下回るケースは、ほぼありません。喘息発作が出現して治療を遅れてしまうと、もっと重篤になります。体の中の酸素が足りなくなると、お腹の子供にも影響が出かねません。
そのためメプチンミニ錠を内服した後、妊婦の方は速やかに病院を受診することをお勧めします。
またお薬を内服中で気を付けるものは、以下の通りです。
- アドレナリン・イソプレナリン(カテコールアミン併用により、アドレナリン作動性神経刺激の増大が起きる。そのため、不整脈を起こすことがある。)
- キサンチン誘導体・ステロイド剤・利尿剤 (低カリウム血症による不整脈を起こすおそれがある。)
①のお薬は、交感神経を刺激するお薬です。β2も交感神経に属する神経です。そのため併用することで、さらに効果が高まる可能性があります。しかしアドレナリンなどは、血圧が低下して集中治療室に入院しているような方に使用するお薬です。そのため普通に生活している人では、まずお目にかかることはないでしょう。
気を付けるべきは、②のキサンチン誘導体・ステロイド剤・利尿剤です。特にキサンチン誘導体とステロイドは、喘息発作が起きたときに一緒に使用することが多いお薬です。
低カリウム血症のリスクが高まりますが、普通に食事を摂取している人では心配はまず必要ありません。食事がとれないような方でこれらの治療を使用する場合は、入院する場合が多いです。
また利尿剤は、尿と一緒にカリウムが一緒に出ていってしまうお薬です。そのため利尿剤を投与している方は、定期的に採血でカリウムを調べていることが多いです。低カリウム血症の症状としては筋力の脱力があります。もし気になる方は一度医師に相談してみましょう。
6.メプチンミニ錠が向いてる人は?
- 喘息で吸入薬が使用できない方
- ホクナリンテープなど貼り薬がかぶれてしまう方
- 小児で喘息発作時に吸入薬が上手くできない方
小児の場合、重篤な喘息ではβ2刺激薬よりもステロイド吸入薬を行っていきます。コントロールが不十分でβ2刺激薬を追加するとしても、内服薬よりも吸入薬の方が推奨されています。
吸入薬は気管支に直接薬を投与するために効果が高く、副作用も少ないためです。そのためメプチンミニ錠が使われるのは、「吸入薬が上手く吸えない人」というのが必須条件かと思います。
β2刺激薬にはホクナリンテープなどの貼り薬もあります。副作用の出現頻度としては
経口薬>貼り薬>吸入薬
といわれていることから、吸入薬が上手く使えない場合の次の選択肢はテープになります。ですからメプチンミニ錠は、テープも張れないような患者さん(テープかぶれがひどい等)の最終手段として処方されることになります。
小児では、軽度の喘息発作であればメプチンミニ錠で経過観察することがガイドラインでも認められています。本来であれば吸入薬の方が良いのですが、お子さんでは喘息発作時に苦しくて暴れてしまい、うまく吸入できないこともあります。
こ のように小さなお子さんで吸入が難しい場合は、メプチンミニ錠で様子を見ることもできます。しかしこれは軽症例に限ります。メプチンミニ錠は効果が発 現するのに1時間から2時間はかかるといわれています。そのため内服後症状が改善しない場合は、無理せずすぐに病院を受診するようにしましょう。
効果が感じないといってメプチンミニ錠を最高用量よりもたくさん内服する人がいます。これは非常に危険です。メプチンの添付文章には、
本剤の過度の使用により、不整脈、心停止等の重篤な副作用が発現する危険性があることを理解させメプチンを適正に使用すること
と記載されています。一度に大量にメプチンを投与すると、非常に重篤な副作用が出現することがあるのです。特に吸入薬が上手くできない人に、メプチンミニ錠は処方されていると思います。
吸入が上手くできない人は全身状態もあまりよくない方が多いでしょう。そのような方は副作用がさらに起こりやすいため、絶対にメプチンミニ錠を用法よりも多く服用しないようにしましょう。
7.メプチンミニ錠の作用メカニズム
β2刺激薬は、気管に主に存在する交感神経の受容体です。身体が活動的になる時には空気をたくさん必要とするので、β2が刺激されると気管が広がります。
最後に、どうしてβ2刺激薬では気管支が広がるのかについて、そのメカニズムをお伝えしていきたいと思います。
β2とは、交感神経の受容体になります。交感神経にはαとβという2種類の受容体があって、交感神経が活発になった時に命令の受け皿である受容体を通して全身に作用します。
βの中には、おもにβ1とβ2があります。β1は心臓に主に存在していて、β2は気管に主に存在しています。そしてそれぞれの作用は、交感神経が活発になっている状態をイメージすれば理解が出来るかと思います。
交感神経は、身体のスイッチをオンにした時の神経です。運動をした時をイメージしてみましょう。
心臓はバクバクと早くなり、全身に必要な血液を送るべくポンプとして頑張ります。この作用がβ1刺激作用になるのです。気道に関しては、空気をたくさん吸い込むべく気管が拡張します。この作用がβ2刺激作用になるのです。
もう少し詳しく言えば、β2受容体は気管の平滑筋に存在しています。筋肉が弛緩することによって、気管が拡張するのです。
これに対して抗コリン作用は、リラックスする副交感神経に関係しています。副交感神経を優位にするアセチルコリンをブロックするので、結果的には交感神経の働きを強めるのです。
メプチンミニ錠は気管におもに存在するβ2だけを刺激するお薬で、心臓への影響をできるだけ避けて気管を広げて呼吸状態を改善するお薬です。
まとめ
<メリット>
- 長期管理薬として喘息を予防する
- 小児の発作治療薬として使われることもある
- 内服なので、うまく吸入できない人でも使える
- 薬価が安い
<デメリット>
- β2刺激薬は吸入の方が効果が高い
- 副作用がやや多い
<向いている人>
- 喘息で吸入薬が使用できない方
- ホクナリンテープなど貼り薬がかぶれてしまう方
- 小児で喘息発作時に吸入薬が上手くできない方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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