セロトニンから考える心身によい生活習慣

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人類が誕生してから長い年月の間、人は太陽と共に目覚めて活動し、日が暮れたら就寝する生活を当たり前のようにしていました。しかし急速に発展した現代社会では、24時間営業のコンビニエンスストアが当たり前となり、大都市は眠らない街ともいえる状況になっています。

便利な世の中にはなったものの、悠久の時間の中で培われた人間の生活リズムを乱してしまうことで、健康を損なってしまう人もいます。

概日リズム(サーカディアンリズム)とよばれる体内時計のリズムは、視交叉上核のメラトニンというホルモンによって調整されます。その刺激を受けて、脳内の神経伝達物質のセロトニンによって睡眠と覚醒のリズムが作られていくことが分かってきました。

セロトニンはうつ病に関係が強い物質と言われていますが、うつ病で睡眠障害が多いのもセロトニンの影響が大きいと考えられます。

精神的に安定して過ごしていくためには、脳の神経伝達物質のセロトニンを意識した生活をしてみてもよいかもしれません。ここでは、セロトニンとうまくつきあっていく過ごし方を考えていきましょう。

 

1.セロトニンとは?

脳の神経伝達物質の一つで、覚醒の維持、自律神経の調節に大きな働きがあります。精神状態の安定に重要な物質であると考えられています。

脳内には、さまざまな神経伝達物質とよばれる情報の橋渡しをする物質があります。セロトニンもそのうちのひとつで、他にはドパミンやノルアドレナリンなどが挙げられます。

脳内には150億以上の神経細胞があり、その神経の先からセロトニンなどの化学物質が放出され、別の神経細胞がそれを受けることにより情報が伝達されます。これを繰り返しているわけです。

セロトニンは数万程度の脳全体で見たらとても少ない神経細胞ですが、その役割は非常に大きく、脳の神経細胞のバランスをとるために非常に重要な働きをしています。セロトニンは覚醒状態にとても大切で、ノルアドレナリンやドパミンの働きを適切にコントロールすることで情緒が安定すると考えられています。

 

そのセロトニンを作り出す神経細胞は脳のどこにあるのかというと、脳の中心である脳幹のさらに中央部分の縫線核というところにあります。

縫線核は、交感神経や副交感神経といった自律神経のバランスを司る視床下部に働きかけています。ですからセロトニンの適切な分泌が、精神の安定や睡眠や覚醒のリズムに重要な働きがあると考えられています。セロトニン神経は朝起きると活性化して、夕方になるにつれて活動が落ちていきます。

セロトニンは、セロトニン受容体にくっつくことで作用します。そして受け皿であるセロトニン受容体は、受け取る場所によってタイプの分布が異なっており、作用も異なります。

セロトニンは、およそ90%が腸に分布しています。血液中では血小板に大部分がくっついていて、中枢神経に作用するセロトニンは2%ほどともいわれています。セロトニンが作用すると腸の動きが強まり、血管は拡張します。脳を覚醒させて、精神の安定に働きます。

セロトニン受容体について詳しく知りたい方は、「セロトニン受容体作用とは?」をお読みください。

 

2.セロトニンを増やすことでうつ病が予防できるのか?

セロトニンを増やすことでうつ病を予防できるかというと、難しいと言わざるを得ません。セロトニンの適切な機能は重要だけど、量を増やせばいいというわけではありません。

セロトニンは、うつ病に関係がある物質として世間では知られています。インターネットの情報をみていると、

「セロトニンが不足するとうつ病になる」
「セロトニンを増やせばうつ病予防になる」

というのをよく目にします。うつ病の治療薬である抗うつ剤がセロトニンを増加させる作用があるから、このようにいわれているのでしょう。確かに抗うつ剤は、効果があります。しかしながら薬をつかった直後によくなるわけではなく、時間をかけて少しずつよくなっていきます。

このことから、セロトニンが増加したことよりも、セロトニン受容体の変化や神経再生(BDNF増加)による影響が大きいのではと考えられています。

ですからうつ病は、セロトニンが増えたらよくなるという単純明快なものではありません。そうはいってもセロトニンは自律神経の調整に大きく関係していると考えられているので、適切なセロトニンが分泌されることは重要です。

 

ここで注意が必要なのは、セロトニンの血中濃度と脳の濃度は関係性がないことです。消化管のセロトニンは血中に取り込まれても、大部分が代謝されてしまいます。代謝されなかったとしても、脳血液関門(BBB)と呼ばれるゲートをくぐれません。このため血中のセロトニンは、脳内のセロトニンとは関係しないのです。

うつ病の方の脳内では、セロトニンが減少している可能性があるといわれています。しかしながら脳内のセロトニン測定は非常に困難で、髄液をとらなくてはいけません。背中に針をさして採取するので、そんなに気軽にできる検査ではありません。

脳内のセロトニン(正確には代謝産物の5-HIAA)を測定すると、うつ病の患者さんでは減少しているという報告もあれば、変わらないという報告もあります。このため現在のところ、セロトニンが低下していてもうつ病は診断できません。

このように、セロトニンを増やすことでうつ病が予防できるかと言われると、難しいと言わざるを得ません。現時点でわかることは、「セロトニンの適切な機能は重要だけど、純粋に量を増やせばいいというわけではない」ということです。

本来あるべきセロトニン機能に近づける努力は無駄ではありません。このように考えると、日中にセロトニンをうまく活性化することで、心身の健康に良い生活習慣につなげていくことができます。

 

3.セロトニンを増やす方法とは?

それではセロトニンを増やす方法にはどのようなものがあるでしょうか。セロトニン神経は朝方に活性化して夕方に働きが落ちるというリズムがありました。それに従ったセロトニンの活性化が必要です。

セロトニンを増加させる方法としては、以下の4つがあります。

  • 日光
  • 運動
  • よく噛むこと
  • 呼吸法

 

3-1.セロトニンを増やす方法①-日光

日光によってメラトニンが抑制されると、セロトニン神経が活性化します。

動物には、概日リズム(サーカディアンリズム)とよばれる体内時計のリズムがあります。このリズムは、視交叉上核にあるメラトニンというホルモンによって調整されています。その刺激をうけて、セロトニンが自律神経のバランスをとって睡眠と覚醒のリズムを作っていることがわかってきています。

メラトニンは20時頃から分泌が増えてきて、真夜中にピークとなり、朝になるにつれて減少していきます。メラトニンは光と密接な関係にあり、2つの大きな特徴があります。

  1. 光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制される
  2. 日中に光を浴びると、夜間のメラトニンの分泌量が増加する

メラトニンが抑制されるとセロトニン神経が活性化していきます。このことから、朝にしっかりと光を浴び、できるだけ日中に光を浴びるようにすることが大切といえます。

メラトニンについて詳しく知りたい方は、「体内時計を調整するメラトニンとは?」をお読みください。

 

3-2.セロトニンを増やす方法②-運動

運動によって血中のセロトニンは増加すると考えられていますが、脳内セロトニンが増加するエビデンスは乏しいです。

うつ病に運動は有効かどうかは賛否がありますが、ある程度は有効と考えている専門家が多いです。イギリスでは、軽症~中等症のうつ病で有効とするガイドラインがあるほどです。

また、睡眠によい運動習慣のひとつとして、ガイドラインにも運動は含まれています。日中の運動はによって睡眠と覚醒のリズムにメリハリがつくのは、感覚的にも理解できます。

運動とセロトニンの関係については、まだ分かっていない部分が多いです。運動をした前後では、血中のセロトニンが増加すると報告されています。しかしながら脳内セロトニンが増加するかはわかっていません。ただ、動物実験のレベルでは、運動によって脳内のセロトニンが増加したとする報告があります。

リズム運動がよいと提唱している専門家もいますが、運動内容による違いはよくわかっていません。

うつ病と運動について詳しく知りたい方は、「うつ病への運動療法の効果とは?」をお読みください。

 

3-3.セロトニンを増やす方法③-よく噛む

よく噛むことで咀嚼筋の緊張がとけ、血中のセロトニンは増加すると報告されています。

よく噛むことで、血中セロトニン濃度が増加するという報告があります。噛むこと、すなわち咀嚼も、筋肉をつかった運動のひとつです。

筋肉が緊張状態になってしまうと、リラックスしようと意識してもなかなかできません。緊張を緩めるには、一度思いっきり筋肉を緊張させてから緩めることが手っ取り早いです。

噛むという運動は、噛みしめることで筋肉を緊張させ、口をあけることで力が抜けます。これを交互に繰り返すのが「噛む」という運動です。このため、筋肉の緊張が解けてリラックスしやすいといえます。リズム運動がよいというのも、筋肉の緊張が緩みやすいことが関係しているかもしれません。

ただしここでも注意が必要ですが、血中セロトニン濃度が増えるからといって脳内セロトニン濃度が増加するとはいえないのです。

そうはいっても、食事のときによく噛んで食べることは大きなデメリットがありません。食べ物の吸収も穏やかになるので、身体にもよいと思います。よく噛んで食べる意識をしてください。外国人プロ野球選手などがガムを噛んでいたりしますが、もしかすると合理的なのかもしれませんね。

 

3-4.セロトニンを増やす方法④-呼吸法

吸うことよりも吐くことを大切に腹式呼吸をしていきます。

呼吸も、広い意味で言うと運動になります。呼吸をしている時には、多くの呼吸筋を使っています。息を吸ったり吐いたりで、それぞれの筋肉は伸びたり縮んだりします。そういう意味では、呼吸もリズム運動といえるでしょう。

呼吸法をしっかりと行うと、血中セロトニンが増加すると報告されています。くどいようですが、脳内セロトニンはわかりませんが・・・

リラックスする呼吸法についてご紹介していきます。おへその下のあたりを丹田といったりしますが、その部分を意識して腹式呼吸をしていきます。

深呼吸というと息を吸いこむイメージの方が多いですが、どちらかというと息を吐くときが大切です。息を長く吐き出していくことで、副交感神経である迷走神経が刺激されてリラックスします。

丹田をふくらませるように、鼻から息を吸いこみます。その後2秒ほど息を止めて、口から丹田をへこませるようにして、時間をかけて吐き出していきます。ゆっくり吐き出せない方は、口をすぼめてみてください。この呼吸を繰り返していきます。

呼吸法について詳しく知りたい方は、「リラックスする呼吸法とは?」をお読みください。

 

4.セロトニンは食べ物やサプリで補えるの?

セロトニンは脳内には届きません。セロトニンの材料のトリプトファンを補充しても、うつ病にはあまり効果が期待できません。

セロトニンは食事やサプリで補えないかと考えている方もいらっしゃるでしょう。セロトニンのサプリなども市販されているので、購入を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、サプリメントとしてセロトニンを摂取しても効果は期待できないでしょう。

腸管ではほとんど代謝されてしまって、吸収されたとしても肝臓で代謝されてしまいます。何とか代謝されずに血中をめぐったとしても、脳血液関門(BBB)をこえて脳内に入ることはできません。脳内のセロトニンは、脳内で作るしかないのです。

 

セロトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンから合成されます。トリプトファンは体内では十分に合成できずに、栄養素として摂取する必要がある必須アミノ酸のひとつです。このため、材料であるトリプトファンを補充すればよいのではと考えられて、サプリメントも販売されています。

実際にうつ病の患者さんでは、血中のトリプトファン濃度が低いという報告も多いのです。しかしながらトリプトファンを補充しても、効果はあまり期待できないという結果になっています。

トリプトファンが豊富な食べ物としては、肉や魚、豆や穀類、乳製品などがあげられます。これらをバランスよく食事としてとっていれば、トリプトファンが欠乏してしまうことは少ないです。

うつ病と関係する食事について詳しく知りたい方は、「うつに効く食べ物とは?うつ病に有効な食事と栄養」をお読みください。

 

まとめ

セロトニンは脳の神経伝達物質の一つで、覚醒の維持、自律神経の調節に大きな働きがあります。精神状態の安定に重要な物質であると考えられています。

セロトニンを増やすことでうつ病を予防できるかというと、難しいと言わざるを得ません。セロトニンの適切な機能は重要だけど、ただ量を増やせばいいというわけではありません。

セロトニン神経を活性化すると考えられているのは、以下の4つの方法があります。

  • 日光
  • 運動
  • よく噛むこと
  • 呼吸法

セロトニンを食べ物やサプリメントで補充しても、脳内には届きません。セロトニンの材料のトリプトファンを補充しても、うつ病にはあまり効果が期待できません。

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