ノロウイルスにアルコール消毒は効かない?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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消毒というと、アルコール消毒が真っ先に浮かぶのではないでしょうか?最近はいろいろなところにアルコール消毒が置いてあります。アルコール消毒をすれば万能と思ってらっしゃる方も多いですが、そんなことはありません。

確かにアルコール消毒には除菌効果があります。しかしながら完璧ではありません。ノロウイルスはアルコールで死なない菌のひとつです。ここでは、ノロウイルスがどうしてアルコールが効かないのか、その理由についてお伝えします。ノロウイルスを消毒するためにはどのようにすればよいのでしょうか?詳しくお伝えしていきます。

 

1.ノロウイルスにアルコール消毒が効かない理由

ノロウイルスに膜(エンベロープ)がなく、アルコールで膜を破壊できないためです。

よく普段の生活でアルコール消毒をすることがあるかと思います。最近はいろいろなところにアルコール消毒が置いてあります。手軽にできるので、シュシュッとスプレーで消毒できるので便利ですよね。

アルコール消毒は何でも効果があると考えている方もいらっしゃるかもしれますが、これは大きな誤解です。ウイルスには、アルコール消毒が効くものと効かないものがあります。

 

ウイルスにはエンベロープと呼ばれる膜をもつものともたないものがいます。この違いがアルコール消毒が効くか効かないかの違いになります。

ウイルスが細胞に感染すると、細胞の中で増殖します。ある程度増殖すると、新たな宿主をみつけてウイルスが外に飛び出そうとします。この時に細胞の膜をつきやぶろうとするので、ウイルスが細胞膜につつまれて出ていきます。細胞膜は脂質を中心とした成分でできていますので、ウイルスのエンベロープは脂質を中心とした成分でできています。

アルコールは脂質を溶かすことができるので、エンベロープのあるウイルスの膜を破壊することができます。すると、ウイルスの感染力をなくすことができるのです。

 

ノロウイルスは、エンベロープを持たないウイルスです。ですから、アルコールが効かないのです。このようなウイルスとしては、ロタウイルスやアデノウイルスなどがあります。インフルエンザをはじめとした大部分のウイルスは、エンベロープをもつウイルスです。

2.ノロウイルスを消毒するためには

塩素系の消毒剤でノロウイルスを消毒することができます。

ノロウイルスはアルコールで消毒ができないとなると、どのようにして消毒・殺菌すればよいでしょうか?ノロウイルスに効果のある消毒剤は、大きく2つあります。

  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • 二酸化塩素

いずれも塩素系の消毒剤です。一番よく使われるのが、次亜塩素酸ナトリウムです。薄い濃度でも消毒効果があることが分かっています。希釈して使わなければいけないので、手間はかかってしまいます。

二酸化塩素は、希釈せずにそのまま使えるタイプが多いというメリットがあります。ただ、次亜塩素酸より値段が高く、独特の臭気があります。

これらの塩素系消毒剤はノロウイルスに効果的なのですが、ひとつだけ難点があります。脱色してしまうのです。高級絨毯などにノロウイルスをばらまいてしまったら大変ですよね。このような時は、塩素系消毒剤は使えません。

 

3.消毒できないときは、加熱

85℃以上で90秒以上で消毒できるので、スチームアイロンで2分間の加熱をしましょう。熱湯や布団乾燥機をつかう方法もあります。

高級絨毯のように塩素系消毒剤が使えない時は、どうすればよいのでしょうか?このような時は、熱による消毒を考えていきます。85℃以上の高温で90秒以上かけると、ノロウイルスは消毒されます。50℃程度の低温でも、30分以上かけるとノロウイルスが消毒されます。

ですから、いかに加熱するかを考えていきましょう。大きく方法は3つ考えられます。

  • スチームアイロン
  • 熱湯
  • 布団乾燥機

スチームアイロンは、2分以上当て続けるとノロウイルスを消毒するのに十分な条件となります。デメリットは、あてられる範囲が狭いことです。広範囲に嘔吐物が広がってしまった場合は、難しくなってしまいます。

熱湯では、時間がたつにつれて温度が下がってしまいます。ですから、熱湯で消毒するときは注ぎ続ける必要があります。十分な熱湯を用意してかけるようにしましょう。

布団乾燥機では、50℃で30分以上の温度を保つことが必要です。家庭用の乾燥機では温度が十分にならないことがあります。専門業者では、70~100℃で40分以上の時間をかけます。自宅で行うのではなく、専門業者に依頼するようにしましょう。

 

4.手は消毒が使えない

石鹸でもみ洗いしながら、手洗いをしっかりしましょう。

塩素系洗剤は、漂白剤として使われることもあります。強力な酸化作用で、「殻のない」ウイルスのタンパク質本体を攻撃します。このようにタンパク質に影響するため、手に触れるのもよくありません。

ですから、手洗いに塩素系洗剤は使えません。それでは、手についてしまったノロウイルスはどのようにして消毒できるのでしょうか?それは、手洗いに他なりません。石鹸を使ってしっかりともみ洗いを30秒以上します。2回行った方が確実といわれています。流水で洗い流すしかないのです。

ですから、しっかりと手洗いをすることが大切です。正しい手洗いを意識して行いましょう。詳しく知りたい方は、「正しい知識で手洗い・うがいを効果的に」をお読みください。

 

まとめ

ノロウイルスにアルコールが効かないのは、ノロウイルスに膜(エンベロープ)がなく、アルコールで膜を破壊できないためです。

塩素系の消毒剤でノロウイルスを消毒することができます。

85℃以上で90秒以上で消毒できるので、スチームアイロンで2分間の加熱をしましょう。熱湯や布団乾燥機をつかう方法もあります。

石鹸でもみ洗いしながら、手洗いをしっかりしましょう。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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