喘鳴が聞こえたときに喘息以外に考える疾患は?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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胸の音がヒューヒュー聞こえる喘鳴が聞こえたら、すぐに喘息だといって治療を始める医療現場を度々みかけます。

しかし喘鳴が聞こえたら、喘息の確定診断なのでしょうか?実は喘鳴は、気管支が細くなっていればどんな病気でも聞こえる所見です。喘息では慢性的な炎症で気管支が細くなるので、確かに喘鳴が聞こえたら喘息を疑うことは正しいです。

一方で、気管支が狭くなることがある病気は他にもたくさんあります。特に高齢になって喘鳴が初めて聞こえたら、喘息よりもまず2つの病気を考えなくてはなりません。

  1. 心不全
  2. 肺気腫

どうしてこれらの病気で喘鳴が聞こえるか?さらには他にどのような病気が考えられるか?ここでは、喘鳴の聞こえることのある喘息以外の病気についてまとめていきたいと思います。

 

1.喘鳴とは何か?

喘鳴とは気管支が狭くなってヒューヒューと高い音が聞こえることを言います。

喘息の「喘」と同じ喘ぐ(あえぐ)という文字を使って、胸がヒューヒューとすることを喘鳴(ぜんめい)といいます。ヒューヒューと書きましたが、これは聴診したときに聴こえる高い音のことをいっています。笛声喘鳴などともいうように、分かりやすくいうと笛のような音がします。

喘息と喘鳴で同じ「喘ぐ」という文字が使われるため、喘息特有の音というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。喘鳴が生じていても、気管支が細くなっていることしかわかりません。その原因が喘息とは限らないのです。

詳しく喘鳴について知りたい方は、「胸の音がヒューヒューしたら喘息?喘鳴のメカニズムについて」を確認してみてください。

 

2.喘鳴が喘息以外で聞こえるのはどんな病気か?

気管支が狭くなる病気としては、喘息以外に心不全や肺気腫が有名です。

胸がヒューヒュー聞こえたときに喘息以外にどのような疾患があるのでしょうか?

「喘鳴が聞こえた=気管支などの空気の通り道が狭くなった」ということが分かる所見になります。つまり気道が狭くなる喘息以外の病気を考えるとよいのです。具体的には、

  1. 心不全
  2. 肺気腫
  3. 肺炎
  4. 咽頭炎
  5. 気管内異物

などが挙げられます。(医学的に挙げるとするならばいくらでも挙げられるのですが、話が複雑になるため代表的なのにとどめます。)

⑤の気管内異物は特殊な病気で診断するのも難しいので、今回はよくみられる①~④の病気でなぜ喘鳴が聞こえるか考えていきましょう。

 

2-1.喘鳴の原因①-心不全

心不全でうっ血が生じることで、気管支がむくんで細くなります。

心臓は左側で血液を送って、右側で受け取る役割をします。右側の動きが悪くなってしまいスムーズに血液を受け取れなくなった状態を、右心不全(うっ血性心不全)といいます。

この状態ですと、酸素を運び終わった血液が心臓にたどり着いても心臓に入れずに渋滞を起こしてしまいます。

渋滞を起こすとどうなるか?心臓に戻るまでの血管がパンパンになってしまいます。パンパンになって血管が破裂しては困りますよね?

このため血管から水が染み出て、外に出ていきます。これがむくみ(浮腫)という症状になります。顔や足がむくむことが多いです。

顔や足なら見てわかるので良いですね。しかし体の中もむくみだして、水浸しになるのです。特に心臓から近い肺がむくむことが多いです。その結果として気管支がむくむことで気管支が細くなり、喘鳴が聞こえるようになります。

治療はどうするかというと、利尿剤を使ってたくさんおしっこ出してもらいます。尿でたくさん体からお水を出せば、むくみが徐々に取れていきます。同時に塩分摂取や水分摂取も制限することが多いです。

 

2-2.喘鳴の原因②-肺気腫(COPD)

タバコで肺がレンコンみたいにスカスカになって、息が吐けなくなる病気です。息が吐けなくて痰が溜まることで、気管支が細くなっていきます。

肺気腫とは、タバコで肺を破壊して気腫化(肺がレンコンみたいにスカスカになる)する病気です。肺に穴があくと表現する先生もいます。肺がスカスカになることで思いっきり息が吐けなくなります。そうするとどうなるでしょうか?

気道に溜まってる痰が出せなくなるのです。結果として気管支内に痰がたまり、細くなることで喘鳴が聞こえることがあります。ただし肺気腫は、先ほど説明したいびきの様な音に聞こえることもしばしばあります。

肺気腫はCOPDともいいます。COPDは略語で、正式名称はChronic Obstructive Pulmonary Diseaseといいます。これは日本語で慢性閉塞性肺疾患といいます。

どういうことかというと、先ほどの気腫化で肺が穴ぼこだらけになり、通常より柔らかくなってしまいます。肺は肋間筋や横隔膜の筋肉で押したり、ひろげたりすることで息を吸ったり、吐いたりします。

しかし肺がぶよんぶよんで柔らかいと、いくら横隔膜が肺を一生懸命押して呼吸しようとしてもうまく力が伝わりません。結果として吸ったり吐いたりする力が弱まる病気です。

こうすることで吐く力が弱まるとどうなるでしょうか?気道は分泌物(痰)で潤されている臓器ですが、タバコを吸ってた人はこの分泌物が多くなります。

さらに吐く力が弱いので、分泌物が上手く出せないでとどまってしまいます。結果として細い気管支に痰などが詰まってしまいさらに細くなります。こうすることで喘鳴が聞こえる細い気管支の完成です。

 

また最近の研究では肺気腫は全身性の炎症疾患といわれています。タバコなどの煙を気管支に浴びせ続けると、炎症性物質が出てきてそれが全身を駆け巡ることが分かっています。慢性的な炎症が起こることで気管支が狭くなるのです。

喘息は、慢性的な気道の炎症をもとに喘鳴や咳が起こる病気です。つまり肺気腫と喘息は病態としてはかなり似てる部分があることも分かっています。

このため呼吸器の専門家たちであっても、「これは喘息?肺気腫?それとも両方?」と意見が分かれることが多々あります。それくらい似てる病気ですし、鑑別が難しい病気です。

似てる病気なので治療も似ている部分が多いですが、優先順位が逆転しています。

  • 喘息は慢性的な炎症をとることが第一治療で、気管支を広げるのは次の治療です。
  • 肺気腫は壊れてしまった肺の気管支を広げることが第一治療で、繰り返して重症化するときに炎症をとる治療が選択になります。

似てるような病気だからどっちでもよいではなくしっかりと鑑別することが大切になります。

 

2-3.喘鳴の原因③-肺炎

肺炎で痰が気管支内にたまることで、気管支が細くなります。

ばい菌が肺の中に入って肺炎になるとどうなるでしょうか?一生懸命ばい菌を外に出そうとして咳や痰が出てきます。この痰が粘っこくてなかなか出てこれないと、結果として気管支が細くなり喘鳴が聞こえます。

ただし正常な人には肺炎になっても、ほとんど喘鳴は聞こえません。肺炎がきっかけに、

  1. 喘息発作が起きた
  2. 心臓が酸素を頑張って送ろうとしたら心不全になった
  3. もともと肺気腫があったところに痰がつまって悪化した

など他の疾患の引き金としてあることが多いです。そのため肺炎を見つけたらばい菌をやっつける抗生物質を出しておしまいではなく、他の病気が合併していないか考えることが大切です。

特に高齢者は、最初は病気がなくても肺炎の治療中に、心臓がへばったりすることもしばしばあります。常にこのことを念頭に置いて治療していきます。

 

2-4.喘鳴の原因④-咽頭炎

咽頭が狭くなることで、喘鳴が聞こえることがあります。

気管支の上の咽頭や喉頭蓋で炎症などが起きて結果的に細くなると、胸の方まで音が聞こえます。

咽頭炎などで肺の上の気道が狭くなって聞こえる音のことを、ストライダー(stridor)といいます。息を吸って咽頭や喉頭など狭くなっている部位に空気が通過するときに高い音が生じます。

一方で喘息などの喘鳴は、息を吐くときに狭い気管支を通過するときに聞こえる音です。

息を吸った時に聞こえるのが上気道の閉塞、吐いたときに聞こえるのが下気道の閉塞。さらに上の方から音がするのがストライダーなら、胸の音を聴診したらすぐにわかると思われるかと思います。文章だけ見ると簡単に見分けられそうですね?

ただし教科書通りにいかないのが医療現場です。息を吐いたときにストライダーが聞こえることも時々あります。

そもそも、胸の喘鳴を聞いて胸に異常があると先入観にとらわれてしまうと、咽頭に異常があることを見逃すことがあります。さらに患者さんが息が苦しいといってると、呼吸苦に慣れてない先生は慌ててしまって、「高い音がする=喘息」と診断してしまうこともあります。

しかし息の通り道の入り口が狭くなっているというのは、実は非常に危険な状態です。息の通り道の入り口を完全にふさいでしまったら、窒息してしまいます。

この怖い病気として挙げられるのが、

  1. 喉頭蓋炎
  2. 咽頭膿瘍

の2つです。

  • 喉が痛くてつばも飲めない
  • 声が出しづらい
  • 喉を押したら激痛が走る

これらの特徴があったら危険信号です。もし喉が痛かったら必ず医師に伝えるようにしましょう。特に上気道は耳鼻科疾患であるため、内科医師がどうしても苦手な分野になります。

治療法としては、ステロイドで上気道のむくみをとったり、ばい菌をやっつけるお薬を投与します。ただしこれらの緊急性のある病気は、耳鼻科でファイバーでまず状態を見てもらうことが必須です。

ここで大切なのは、喘息でもステロイドで気道の炎症をとる治療が第一選択です。つまり上気道で何か炎症が起きてても、喘息だと思って治療した場合も、最初は症状が軽快します。

しかしそのまま見過ごされているうちに上気道の炎症が悪化すると、気道が閉塞してしまいます。気道が閉塞しかかってたら気管挿管で人工呼吸をつなげたり、最悪首の一部を切開して気道を確保する気管切開という処置が必要です。

上気道はそれくらい生きるか死ぬかの重要な疾患になります。またこれら感染以外にも、咽頭癌や甲状腺癌で徐々に気道を圧迫することで喘鳴やストライダーが聞こえることがあります。

上気道と下気道と分けて考えるのは、現在はナンセンスといわれています。肺で喘鳴が聞かれたときは、必ず入り口である喉から問題はないか聴取したり、実際に首を触って触診することが大切です。

 

3.心不全や肺気腫を喘息と間違えて診断されたら?

心不全は、喘息の治療を行うと逆に悪化する病気です。肺気腫も、その後の加療が違うまま過ごすことになります。

高齢者の初めての喘鳴は、喘息よりも心不全や肺気腫の可能性の方が高いです。免疫力が徐々に弱っていく高齢者では、炎症が持続することで発症する喘息が初めて起きるとは考えづらいです。

そのため、

  1. 心不全
  2. 肺気腫

必ずこれらの疾患を除外する必要があります。

採血はしたか?レントゲンは?心電図は?

最低限この辺りは必須になります。喘鳴が聞こえるような心不全の治療は、利尿剤などでむくみをとる治療が中心です。一方で喘息は、気管支をひろげる吸入薬に炎症を抑えるステロイドなどを投与して治します。

この気管支をひろげる吸入薬やステロイドは、実は心臓に負担をかける可能性があるお薬です。特にステロイドは、副作用にむくみがある薬です。気管支がむくんでるところにさらに気管支をむくませてしまうと、病態が悪化してしまいます。

一方で肺気腫は、喘息と同じ気流が制限される疾患です。そのため治療薬が重なることも多いです。似てるからどっちでもよいというわけでは決してありません。これらの病気は基本的に、長期間治療を必要とする病気です。先ほど記載したように、

  • 喘息はステロイドなど炎症を抑える治療が中心です
  • 肺気腫は気管支をひろげる治療が中心です。

どちらも症状が悪ければ両方行うのです、中心に据える治療が全然違います。特に肺気腫では、悪化したときに少量のステロイドが投与することは推奨されていますが、大量に投与することは推奨されていません。心臓に負担をかけるからです。

また肺気腫を喘息と間違えて診断されると、

  • 造影剤を使った画像診断が受けれない
  • 痛み止めなどで発作が起こる喘息を恐れて、解熱鎮痛剤を使ってくれない

なんて自体が起こりえます。喘息でも本来しっかり対応すれば使えるのですが、喘息に慣れてない医師は嫌がることも多いです。

このように、正しい診断を受けないと治らないばかりか、逆に悪化してしまうことがあります。もし自分が本当に喘息か不安であれば、一度呼吸器内科を受診することをお勧めします。

 

まとめ

  • 喘鳴が聞かれた場合は喘息の可能性はあるが、喘息と確定したわけではありません。
  • 喘鳴が聞かれる他の病気としては心不全、肺気腫、上気道の感染が考えられます。
  • 高齢者で初めて喘鳴が聞かれた場合は喘息よりも心不全や肺気腫の可能性が高いです。

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