ラボナ錠(ペントバルビタール)の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ラボナは、バルビツール系睡眠薬に分類されます。1930年代ころに開発された薬で、日本では1952年から発売となりました。
ラボナの催眠効果は非常に強力で、何をしても改善しないような不眠の方に使われることがあります。ですが、漫然と服用しているとすぐに効かなくなり、依存性の高い睡眠薬です。過量服薬すると致死的になることもあるので、私は絶対に処方しないようにしている睡眠薬です。
ここでは、ラボナを使っている方のために、効果や副作用についてお伝えしたいと思います。
1.ラボナの作用する仕組み(作用機序)
GABAの働きを強めたり、直接Cl–チャネルを開くことで、脳の活動を抑えます。
ラボナは、バルビツール酸系睡眠薬に分類されています。
ラボナはバルビツール受容体に作用して、GABAに働きを強めます。「GABAってなんか聞いたことあるぞ?」って方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。
ラボナがバルビツール酸受容体にくっつくと、GABAの作用が大幅に増強されます。ラボナが高用量になると、GABAとは関係なしに効果が発揮されます。このようにして、ラボナは脳の活動を強力に抑えることができるのです。
現在主流のベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬でも、同じGABA受容体に作用します。ですが、ラボナのような直接的な作用はなく、GABA受容体にGABAをくっつきやすくするだけです。このため、GABAがなくなれば効果が消失します。
詳しく知りたい方は、
バルビツール酸系睡眠薬とは?効果と副作用
をお読みください。
2.ラボナの効果と特徴
ラボナでは、脳の活動を強力に抑えることで睡眠をもたらします。効果は非常に強いですが依存性が高く、安全性が低い睡眠薬です。メリットとデメリットに分けてみていきましょう。
2-1.ラボナのメリット
- 即効性がある
- 効果が強力
- 夢をみない
睡眠薬の中でジワジワと効いてくる薬もありますが、ラボナには即効性があります。ですから、服用するとすぐに効果が期待できます。
ラボナのメリットは、なんといっても効果の強さです。Cl–チャネルをガッツリと開くので、脳の興奮が強く抑えられます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬と同じGABAが関係しますが、効果はより強力です。
また、ラボナではレム睡眠を大幅に抑制する作用があります。レム睡眠は夢をみている睡眠ですから、薬を飲んだら夢をみずに朝を迎えることができます。悪夢で悩まされている方にはメリットといえるでしょう。
2-2.ラボナのデメリット
- 副作用が強い(眠気・ふらつき)
- 依存性が高い
- 安全性が低い(呼吸抑制)
- 処方が2週間まで
ラボナは効果が強いため、副作用も強くなります。睡眠作用が眠っている間だけに働いてくれればいいのですが、日中に残ってしまうと眠気やだるさにつながります。また、筋弛緩作用が強いのでふらつきも強いです。
さらに依存性が非常に高い睡眠薬です。飲み始めは強力に効く睡眠薬です。ですが、使い続けているとすぐに身体に慣れてしまって効かなくなってしまいます。効果の実感も強い薬なので、「もっと増やしたい」という気持ちがまさってしまって、どんどんと量が増えて依存してしまいます。
このように量が増えていってしまう危険性に加えて、ラボナは安全性も低いです。薬を使いすぎてしまうと呼吸抑制がかかってしまい、死に至ることもある睡眠薬なのです。ですから私は、ラボナは絶対に使わないようにしています。
このような薬ですので、第2種向精神薬という指定をうけています。処方数の制限がされていて、14日以上の処方ができません。
3.ラボナの作用時間と強さ
ラボナは半減期が15~50時間です。効果の強さは「強い」です。
ラボナを服用すると、およそ1時間で血中濃度がピークになります。ラボナはそこから少しずつ血中濃度が減っていきます。15~50時間かけてゆっくりと身体から薬が抜けて、血中濃度が半分になります。
服用してから1時間して効果のピークがくる睡眠薬ですから、即効性が期待できます。また、少しずつ身体に薬がたまっていきます。
飲み続けていると、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。ラボナでは1週間ほど服用を続けると、定常状態に達します。このため、ラボナは寝付きやすい土台をつくる睡眠薬なのです。
睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を考えていく必要があります。作用時間をみれば、ラボナは中間型睡眠薬となるでしょう。
ラボナは、即効性があるので入眠障害に有効です。寝付きやすい土台をつくるために、中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。ラボナの効果は「強い」睡眠薬です。50~100mgの用量で使います。
4.ラボナの副作用
ラボナで注意するべき副作用について、みていきましょう。
4-1.眠気
眠気は多いですが、慣れていくことも多いです。できれば他の睡眠薬に変更しましょう。
睡眠薬は夜だけに効いてくれれば理想ですね。ですが睡眠薬が効きすぎてしまうと、翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。これを「持ち越し効果(hung over)」といったりします。眠気だけでなく、だるさや集中力の低下、ふらつきなどがみられます。
「眠気が強くて朝起きれない」
「午前中がぼーっとしてしまう」
となってしまうと生活に支障がきてしまいますね。事故などにつながることもあるので注意が必要です。
ラボナは身体から抜けにくいので、少しずつ身体に薬がたまっていきます。睡眠効果も強いので、眠気の副作用は多いです。
眠気の副作用は飲み始めにみられることが多いですが、使い続けていくと慣れていくことも多いです。というのも、ラボナが身体にすぐに慣れてしまって、効かなくなるからです。これは決していいことではありません。「寝れるようになった」と安心していても、次第にまた不眠に逆戻りしてしまいます。
ラボナを使って眠気が出てきている方は、減量していくか他の睡眠薬への切り替えを検討していきます。
減量すると作用時間も短くなり、効果もマイルドになります。他の睡眠薬への切り替えは、ラボナを使わざるを得ない状況まで追い込まれているということなので、困難なことが多いです。できるならば、他に効果が期待できるものがないか再検討しましょう。異なる作用機序の睡眠薬を組み合わせれば、うまくいくこともあります。
4-2.ふらつき
ふらつきは多いです。
ラボナは睡眠作用だけでなく、筋弛緩作用も働いてしまいます。緊張が強くて肩がこってしまったり、身体に緊張やこわばりがある時はむしろプラスの作用になります。ですが、高齢で足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強く出てしまうと、ふらついてしまって危ないです。トイレで夜中に目が覚めた時に、眠気も相まって転倒して骨折してしまうようなこともあります。
ラボナは、身体に薬がたまっていきます。このため、ふらつきの副作用が日中に持続してしまうこともあります。眠気と同様に慣れていくことも多いですが、これは決していいことではありません。
他に効果が期待できる睡眠薬がないか、再検討した方がよいです。それが難しければ、減量しましょう。
5.ラボナの依存性
非常に依存しやすい睡眠薬です。依存には細心の注意が必要です。
ラボナは、とても依存しやすい睡眠薬です。やめようと思っても止められなくなってしまったり、快感が出てきて乱用につながることがあります。ですから、極力使わないようにしなければいけません。少なくとも、ちゃんと出口を見据えて薬を使っていくことが求められます。
依存には大きく3つのポイントがあります。身体依存と精神依存と耐性の3つです。
身体依存とは、薬が身体からなくなっていくと離脱症状が起こることです。身体が薬のある状態に慣れてしまうことで、急になくなるとバランスが崩れてしまいます。身体の依存です。睡眠薬を急にやめてしまうと、むしろひどい不眠(反跳性不眠)におそわれることがあります。
精神依存とは、精神的に頼ってしまうということですが、これは効果の実感の強さが重要です。効果が早く実感され、効果がきれる実感が大きいものほど精神的に頼ってしまいます。心の依存です。不眠は非常につらいですから、睡眠薬には頼ってしまうようになります。
耐性とは、薬が体に慣れてしまい効果が薄れていくことです。はじめは1錠で効いていたのに少しずつ眠れなくなってしまう時は、耐性が形成されています。
ラボナは、身体依存や耐性が形成されやすい睡眠薬です。さらに効果の実感も強いので、精神依存も強いです。この3つが悪循環となって、どんどんと量が増えていってしまうのです。
また、「薬を飲むと気が大きくなる」「うきうきする」などといった快感がでてくることがあります。このために乱用されることもあります。ここまでになると脳の機能にも影響が出てきて、知能も低下してしまいます。現実を正しく判断することができなくなり、乱用に拍車をかけてしまいます。
ラボナは非常に依存性の高い、リスクのある睡眠薬なのです。できるだけ使わない意識が必要です。特に衝動的になりやすいなどの依存になりやすい傾向のある方には絶対につかうべきではありません。
6.ラボナと致死量
ラボナは呼吸抑制により致死的になる睡眠薬で、安全性が低いです。
ラボナは、依存性が高く、乱用されるリスクも高い睡眠薬であることをお伝えしました。さらに怖いことに、この薬は致死量が近く、安全性の低い睡眠薬なのです。
ラボナの効果は強力です。このため大量に服薬すると、脳の機能を一気に落としてしまいます。中脳が抑制されると意識消失します。さらに脳幹の延髄が抑制されると、命に関わることになります。延髄には呼吸中枢や血管運動中枢があります。これらが抑制されるので、呼吸が止まってしまい、血圧が一気に下がってしまいます。亡くなってしまうケースでは、呼吸抑制が原因のことが多いです。
このような中毒症状は、用量の5~10倍でみられます。ラボナでの推定致死量は、1.5~7.5gと考えられています。ラボナ錠50mgにして30~150錠になります。ラボナ錠は50mg~100mgが用量ですから、100mg使っている方でしたら15錠でも致死的になる可能性があります。このため、第2種向精神薬に指定されていて、処方は14日までとされています。
まとめ
GABAの働きを強めたり、直接Cl–チャネルを開くことで、脳の活動を抑えます。
メリットとしては、
- 即効性がある
- 効果が強力
- 夢をみない
- 抗てんかん薬や麻酔薬で使われる
デメリットとしては、
- 副作用が強い(眠気・ふらつき)
- 依存性が高い
- 安全性が低い(呼吸抑制)
- 処方が2週間まで
ラボナは呼吸抑制により致死的になる睡眠薬で、安全性が低いです。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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