ダルメートカプセル(フルラゼパム)の効果と強さ
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ダルメートは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。1975年に発売された長時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。成分名(一般名)はフルラゼパムといいます。協和発酵キリンから発売されていたベノジールは同じ成分です。(2014年8月で発売中止になっています)
ダルメートは半減期が非常に長い睡眠薬ですが、実際の作用時間はそこまで長くありません。睡眠効果は3~4時間ほどで、その後は抗不安効果が中心となって寝付きやすい土台を作ってくれます。中途覚醒や早朝覚醒への効果が期待できます。
ここでは、ダルメートの効果の特徴について、詳しくお伝えしていきたいと思います。
1.ダルメートの作用する仕組み(作用機序)
GABAの働きを強めて、脳の活動を抑えます。
現在よく使われている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の2種類です。ダルメートは前者のベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。実はこの両者は同じ仕組みで睡眠効果をもたらします。
どちらもベンゾジアゼピン受容体に作用して、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えることで効果を発揮します。「GABAってなんか聞いたことあるぞ?」って方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。
ダルメートがベンゾジアゼピン受容体にくっつくと、GABAがGABA受容体にくっつきやすくなります。GABAが脳内で作用すると、脳の活動が抑えられて睡眠につながっていくのです。
詳しく知りたい方は、
ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは?効果・副作用・比較
をお読みください。
2.ダルメートの効果と特徴
まずはダルメートの特徴を、メリットとデメリットに分けてみていきましょう。
2-1.ダルメートのメリット
- 中途覚醒に有効
- 早朝覚醒に有効
- 抗不安作用がある
- 健忘や依存性が少ない
ダルメートは、非常にゆっくりと身体から抜けていく睡眠薬です。薬を服用してていくうちに少しずつ蓄積されて、寝付きやすい土台を作っていくような睡眠薬です。ですから、中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できます。
ダルメートは、体内に入るとすぐに分解されていきます。分解してできる物質は、抗不安薬のメイラックスと類似の成分です。このため、ダルメートには抗不安作用が期待できます。ダルメートは、「3~4時間の睡眠薬+長時間の抗不安薬」ともいえるでしょう。
作用時間が長い睡眠薬ですので、健忘の副作用や依存性が低いです。
2-2.ダルメートのデメリット
- 日中への眠気の持ち越しが多い
- カプセルなので細かく調整できない
ダルメートは長時間の睡眠薬ですので、薬が身体に蓄積されていくことで効果が発揮されます。薬が作用しすぎてしまうと、眠気が日中にも持ち越してしまいます。効果が不十分となってしまうと、早朝覚醒などが改善できなくなります。少しずつ調整しながら、ダルメートの適切な量を見つけていかなければいけません。
ダルメートは、15mgカプセルしか発売されていません。カプセルですから半分に割ることもできませんので、細かな調整ができないというデメリットがあります。
3.ダルメートの作用時間と強さ
ダルメートは半減期が23.6(5.9)時間の長時間型睡眠薬です。効果の強さは「普通」の睡眠薬で、中途覚醒や早朝覚醒を中心に効果のある睡眠薬です。
ダルメートは体内ですぐに分解されてしまう睡眠薬です。分解されると、抗不安薬のメイラックスに似た物質(デスアルキルフルラゼパム)になります。この物質はすぐには身体から抜けていきません。睡眠効果のあるダルメートと、抗不安効果のあるデスアルキルフルラゼパムの血中濃度変化を見ていきましょう。
ダルメートは、血中濃度がピークに達するまでには1時間ほどかかります。どんどんと代謝されていき、5.9時間で半分の量まで減少します。
デスアルキルフルラゼパムは、血中濃度がピークに達するまでには4.5時間ほどかかります。そこから非常にゆっくりと身体から抜けていき、23.6時間で半分の量まで減少します。
この2つの効果が合わさっているので、ダルメートは「3~4時間の睡眠薬+長時間の抗不安薬」と考えたら分かりやすいでしょう。抗不安効果のある物質が少しずつ身体に蓄積していって、寝付きやすい土台をつくっていくような睡眠薬です。このため、効果が安定するまでには1週間ほどかかります。
ダルメートは全体としてみれば作用時間が長いので、「長時間型」に分類されます。
睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を変えていく必要があります。ダルメートは寝付きやすい土台ができてくるような睡眠薬ですので、中途覚醒や早朝覚醒が目立つ方に有効でしょう。
ダルメートの効果は「普通」の睡眠薬です。まずは15mgから始めることが多いです。効果が安定してくるまでには1~2週間かかります。焦らずに効果を見ながら、増減させていきます。効果が不十分でしたら30mgまで使うことができます。
4.ダルメートと他剤での作用時間の比較
半減期をもとに、睡眠薬の作用時間を予想することができます。ダルメートは少しずつ薬が身体にたまっていく、作用時間が長い睡眠薬です。
睡眠薬の作用時間の違いを比較してみましょう。
薬の効果を見る時は、最高血中濃度到達時間(ピーク時間)と半減期をみていきます。
最高血中濃度到達時間が短いほど、効きが早いということですね。ほとんどの睡眠薬が1~3時間になっているかと思います。中間型や長時間作用型ではさらに長いものがありますね。これらのお薬では即効性はあまり期待できません。
半減期をみると作用時間が予想できます。超短時間型や短時間型では、即効性を期待して使われます。入眠障害だけで困っているならば超短時間型、中途覚醒で困っているならば短時間型がよいでしょう。
中間型や長時間型は、身体に薬が少しずつたまっていくことで寝付きやすい土台を作るようなお薬です。中間型は4~5日かけて、長時間型は1週間以上かけて効果が安定します。中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できます。
ダルメートは長時間型に分類されていますので、中途覚醒や早朝覚醒が目立つときに有効です。
5.ダルメートが向いている人とは?
- 中途覚醒や早朝覚醒が中心である方
- 日中に不安が強い方
ダルメートは作用時間が長く、寝付きやすい土台をつくってくれるような睡眠薬です。効果の即効性には乏しいですが、薬が身体に蓄積するにつれて全体的に睡眠効果が出てきます。中途覚醒や早朝覚醒に対する効果が期待できます。入眠障害が目立つ方では、ダルメートよりも半減期が短い睡眠薬がよいかと思います。超短時間型のアモバン・ルネスタ、短時間型のレンドルミン・エバミール/ロラメット・リスミーなどから始めた方がよいでしょう。
また、日中に不安が強い方にもよいかと思います。ダルメートは代謝されて、抗不安薬メイラックスの類似成分になります。ですから、日中には抗不安作用が期待できるのです。不眠だけでなく日中の不安が強い方では、ダルメートが向いているかと思います。
まとめ
ダルメートは、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えます。
ダルメートのメリットとしては、
- 中途覚醒に有効
- 早朝覚醒に有効
- 抗不安作用がある
- 健忘や依存性が少ない
ダルメートのデメリットとしては、
- 日中への眠気の持ち越しが多い
- 効果がマイルド
- カプセルなので細かく調整できない
ダルメートが向いている方は、
- 中途覚醒や早朝覚醒が中心である方
- 日中に不安が強い方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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