ラミクタールは妊娠中でも安全って本当?

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ラミクタールは、抗てんかん薬や気分安定薬として広く使われているお薬です。ラミクタールは副作用も少なく、比較的使いやすいお薬です。妊娠への影響も少ないと考えられていて、女性には使いやすいお薬です。

同じタイプの薬はどれも催奇形性の報告が多く、ラミクタールに切り替えてから計画的に妊娠をしていただくこともあります。

ここでは、ラミクタールの妊娠への影響について、ガイドラインをもとに他の気分安定薬とも比較しながら考えていきたいと思います。

 

1.ラミクタールの妊娠への影響

ラミクタールでは、奇形のリスクはほとんどないと考えられています。

ラミクタールの薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)をみてみると、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」となっています。

抗てんかん薬や気分安定薬は、催奇形性があるものがほどんどです。催奇形性とは妊娠中の女性が服用することで、胎児にお薬が影響してしまい、出生時に赤ちゃんに奇形が発生してしまう事です。

ラミクタールでは、催奇形性はほとんどないと考えられています。口唇口蓋裂という奇形が多くなるのではという報告もありましたが、全体的にみるとリスク増加はないと考えられています。もちろん口唇口蓋裂のリスクは多少は上がるのかもしれませんが、治療もできるので過度に心配しなくて大丈夫です。

そもそも妊娠にはリスクがつきもので、普通の妊娠出産でも奇形が認められることがあります。健康な女性であっても3.3%に奇形が認められますが、ラミクタール300mg未満であれば2.0%という報告もあります。健康女性よりもラミクタールでは奇形率が低いという結果が出ています。

 

2.ラミクタールが影響する妊娠の時期とは?

妊娠初期に注意が必要です。

妊娠すると、赤ちゃんはお腹の中で少しずつ大きくなっていきますね。だからといって赤ちゃんは、少しずつ身体に必要なものを作っているわけではありません。妊娠の初めの方に、一気に重要なものを作ってしまいます。この時期を「器官形成期」といって、最後に生理が終わった日から4~7週が特に重要な時期といわれています。

ですから、奇形のリスクは妊娠のはじめにあります。妊娠4~7週は絶対過敏期といわれていて、大きな奇形がおこるリスクがあります。妊娠8~15週は相対過敏期といわれていて、少しずつリスクは少なくなっていきます。12週目までは小さな奇形がみられることもありますが、13週をすぎると機能異常などがみられることはあっても、奇形の可能性はほぼ大丈夫といわれています。

ですから、妊娠がわかった段階では少し遅いのです。すでに「器官形成期」である絶対過敏期に入っています。

 

3.ラミクタール服用中に妊娠が判明したら?

ラミクタールを服用中に妊娠が判明しても、過度に心配しなくて大丈夫です。できるだけ赤ちゃんの影響が少ないように対策をしましょう。

ラミクタールは催奇形性ははっきりしていませんので、予想外の妊娠が判明しても過度に心配しないで大丈夫です。急にラミクタールを中止してしまうと病状が悪化してしまって、お母さんと一心同体の赤ちゃんにとって悪影響となってしまいます。

ラミクタールのみでしたら、そのまま妊娠継続しても奇形のリスクはあがりません。他の薬も併用しているのでしたら、ラミクタール単剤にしていきましょう。

 

てんかんや双極性障害の治療では、薬を中止できないこともしばしばあります。このような時には、ラミクタールに変更してから計画的に妊娠をしていくこともあります。もちろん、できるだけラミクタールの量は少なくしていきます。

妊娠中はお母さんの体液量が増えて、さらに薬の代謝が早まります。ラミクタールの血中濃度が低下してしまって効果が不十分になることもありますので注意が必要です。

ラミクタールだけで双極性障害をうまくコントロールができない場合は、セロクエルやジプレキサ、リスパダールやエビリファイなどの抗精神病薬を使います。ただしセロクエルやジプレキサでは、妊娠糖尿病に注意が必要です。

 

妊娠への薬の影響を詳しく知りたい方は、
妊娠への薬の影響とは?よくある6つの疑問
をお読みください。

 

4.気分安定薬の妊娠や授乳への影響の比較

FDAでは「C」、山下分類では「E」、Hale分類では「L2」となっています。

精神科の薬の中でも、気分安定薬は妊娠への影響が大きなお薬です。もちろん薬は飲まないに越したことはないですが、お母さんが不安定になってしまったら赤ちゃんにもよくありません。ですから、無理をしてはいけません。できるだけ安全性の高いお薬を使っていきましょう。

ここで、気分安定薬の妊娠と授乳への影響に関する基準をご紹介します。

気分安定薬の妊娠への影響をガイドラインにそってまとめました。

アメリカ食品医薬品局(FDA)が出している薬剤胎児危険度分類基準というものがあります。現在のところ、もっとも信頼性が高い基準となっています。この基準では、薬剤の胎児への危険度を「A・B・C・D・×」の5段階に分けられています。

A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
B:ヒトでの危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌

ラミクタールは発売から年月がそこまでたっておらず、十分な情報が集積されていないとして「C」となっています。

 

妊娠での薬の危険性をまとめたものは、日本では公的なものがありません。薬の説明書(添付文章・インタビューフォーム)を参考にした山下の分類というものがあります。この分類では、「A・B・C・E・・E+・F・-」の8段階に分類しています。

A:投与禁止
B:投与禁止が望ましい
C:授乳禁止
E:有益性使用
:3か月以内と後期では有益性使用
E+:可能な限り単独使用
F:慎重使用
-:注意なし(≠絶対安全)

 

薬の授乳に与える影響に関しては、Hale授乳危険度分類がよく使われます。Medication and Mothers’ Milkというベストセラーの中で紹介されている分類です。

この分類では「L1~L5」の5段階に薬剤を分類しています。新薬は情報がないのでL3に分類されます。

L1:最も安全
L2:比較的安全
L3:おそらく安全・新薬・情報不足
L4:おそらく危険
L5:危険

ラミクタールは血中の蛋白質との結合が弱いです。このため、ラミクタールは母乳に移行しやすく、40%程度の移行が認められます。添付文章上では「授乳を避けること」とされていますが、最近では薬の有害性よりも母乳保育のメリットが高いと考えられています。

 

まとめ

ラミクタールでは、奇形のリスクはほとんどないと考えられています。

ラミクタールを服用中に妊娠が判明しても、過度に心配しなくて大丈夫です。できるだけ赤ちゃんの影響が少ないように対策をしましょう。

FDAでは「C」、山下分類では「E」、Hale分類では「L2」となっています。

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