メイラックスは離脱症状が少ないって本当?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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メイラックスは、1989年に発売されたベンゾジアゼピン系抗不安薬です。ソラナックス・ワイパックス・デパスといった切れ味のよい安定剤がたくさん発売されていく中、依存性や離脱症状が問題となりました。これを解決するお薬として、メイラックスが作られました。

抗不安作用もそれなりにあって、作用時間が長いお薬です。身体からはゆっくりと抜けていくので、離脱症状はとても少ないです。ですから、他の抗不安薬で離脱症状のために減薬できなくなった時に、ひとまずメイラックスに置き換えられることがあります。メイラックスにしてから少しずつ減薬すれば、スムーズにやめられることが多いのです。

ここでは、離脱症状がどのようなものか詳しくご説明し、メイラックスでの離脱症状の考え方をお伝えしていきたいと思います。

 

1.離脱症状とは?

薬が身体になれている状態で薬がなくなると、イライラや落ち込みといった精神症状、頭痛や肩こりなどの身体症状、吐き気や発汗などの自律神経症状が認められます。

離脱症状とは、抗不安薬を減薬・断薬した時に起こる様々な症状のことです。抗不安薬が身体に慣れてしまって、薬の急激な変化に身体の機能がついていけずに起こる症状です。

具体的な症状としては、

  • 精神症状:イライラ・落ち込み・不安・ソワソワ・無気力
  • 身体症状:頭痛・肩こり・不眠・まぶしさ・筋肉のけいれん
  • 自律神経症状:吐き気・耳鳴り・動悸・発汗・ふるえ

などがあります。どのような離脱症状が出てくるのかは人それぞれです。

 

なぜこのような離脱症状が出てくるのでしょうか?

抗不安薬を毎日服用していると、少しずつ身体が薬に慣れていきます。すると身体は、抗不安薬があることを前提して機能のバランスを整えるようになっていきます。このように薬があるのが当たり前の状態になっていると、急に薬がなくなってしまうと身体がビックリしてしまいます。これが離脱症状となってでてくるのです。

抗不安薬は、GABAという物質に働いて抗不安効果が出てきます。脳内では興奮させる物質はたくさんの種類がありますが、抑制させる物質はGABAくらいしかありません。このため、他の物質がバランスをとって補うこともできません。ですから、離脱症状がおこりやすいのです。

 

メイラックスのその他の副作用について知りたい方は、
メイラックスの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

.メイラックスを減らして調子が悪くなる2つの理由

メイラックスを減らして調子が悪くなるのは、「病気の再発再燃・薬を減らした不安」のどちらかです。

お薬を減らして調子が悪くなってしまうのは、大きく2つの場合があります。

①病気の再発・再燃
②薬を減らしたことでの不安感

お薬を減らして調子が悪くなると、多くの方が①の病気の再発・再燃を心配されます。ですが、②であることも多いです。

メイラックスには離脱症状はめったにみられませんから、離脱症状の可能性は考えなくてもよいかと思います。そうはいっても、薬を止めた後に明らかに今までにない症状がでてきたら、離脱症状も考えなくてはいけません

結構多いのが、②の減薬や断薬に対する不安です。頼りにしていたお薬がなくなってしまって、不安になってしまうことも多いです。長くお薬を飲んでいると、精神的にお薬に依存してしまう部分が出てきてしまいます。メイラックスがなくても大丈夫という自信を、少しずつ作っていくことが大切になります。

もちろん、病気の再発・再燃の可能性もあります。十分に病気が改善できていない時にお薬を減らしてしまうと、支えがなくなってしまって調子が悪くなってしまうことはあります。症状の経過をみながら、何が原因かを考えていきます。

 

3.離脱症状はどのような薬で注意すればよいの?

半減期が短く、力価(作用)が強い抗不安薬では注意が必要です。

このように、ベンゾジアゼピン系抗不安薬では離脱症状に気を付けなければいけません。メイラックスは抗不安薬の中でも離脱症状は少ないです。どうしてそのようにいえるのでしょうか?

どのような抗不安薬で離脱症状が起こりやすいのか考えてみましょう。ポイントとしては、2つあります。

  • 抗不安薬の作用時間が短い
  • 抗不安薬の作用(力価)が強い

 

この2つのポイントに共通することは、身体への薬の変化が大きいことです。作用が短いほど、急激に薬が身体から抜けていきます。効果が強いほど、身体から抜けた時の影響は大きくなります。このような抗不安薬で離脱症状が起こりやすいのです。

メイラックスはというと、半減期は122時間と非常に作用時間が長いです。抗不安作用はやや強いです。総合的にみると、離脱症状は「少ない」となります。

 

4.抗不安薬での離脱症状の比較

メイラックスは半減期が非常に長く、離脱症状がみられることは少ないです。

どの抗不安薬で離脱症状が起こりやすいのでしょうか?比較してみましょう。上段はよく使う抗不安薬、下段はあまり使われない抗不安薬です。

代表的な抗不安薬の効果や作用時間について比較した一覧表です。

マイナーな抗不安薬の比較

離脱症状を起こしやすい抗不安薬の特徴をこの表で言いかえると、

  • 抗不安薬の作用時間が短い=半減期が短い
  • 抗不安薬の力価(作用)が強い≒抗不安効果が強い

となります。半減期とは薬の濃度が半分になるまでにかかる時間ですので、作用時間に比例します。抗不安効果が強いということは、作用の強さを意味しています。

 

もっとも離脱症状が起こりやすい抗不安薬は、デパスです。作用時間も短く、抗不安作用も強力なためです。その次にくるのが、レキソタン・ワイパックス・ソラナックス/コンスタンです。

反対に離脱症状が起こりにくいのは、メイラックスです。作用時間が非常に長いためです。

 

5.離脱症状を少なくするためには?

服薬期間が長く、量が多いと依存しやすくなります。アルコールとの併用は絶対に避けましょう。お薬だけでない努力をしていくことも大切です。

依存につながりやすい薬以外の要因を考えていきましょう。依存につながりやすい要因として4つあげられます。

  • 服薬期間が長い
  • 抗不安薬の量が多い
  • アルコールと併用している
  • 抗不安薬以外の努力をしていない

服薬期間が長くなればなるほど、身体にとっては抗不安薬があるのが当たり前になってきます。抗不安薬依存の大きな特徴としては、精神依存が強いことです。 「薬がないと不安なことに立ち向かえない」という思い込みが強くなってしまうのです。これは、年月が経てば経つほど強くなってしまいます。

抗不安薬の量が多いと、身体への影響も強くなってしまいます。薬が効かなくなって、どんどんと薬の量が増えている場合は要注意です。身体が抗不安薬に慣れてしまって耐性ができています。

 

また、メイラックスとアルコールの併用は絶対にやめましょう。お酒の力を借りて不安なことを乗り越えることが習慣になってしまうと、アルコール依存症への入り口になってしまいます。また、抗不安薬と併用すると、相互作用で抗不安薬の影響が増大してしまいます。2つの効果があわさって依存になりやすくなってしまいます。

不安は少しずつ慣れて解消していく必要があります。慣れていくことで自信をつけていくことが大切なのです。決まったシチュエーションに不安を感じる方は、少しずつチャレンジして自信をつけていくことが必要です。漠然とした不安の方は、しっかりと薬で落ち着かせるこ とが必要です。薬を飲むことは割り切っていただき、できるだけ依存しにくいように対策をとっていきます。

 

6.離脱症状が認められたら?

慣れるまで耐えるか、元の量に戻すかです。

メイラックスは、離脱症状が少ない抗不安薬です。もしメイラックスによる離脱症状が認められたときはどうすればよいでしょうか?

その場合にできることは、「慣れるまで様子を見る」か「元の量に戻す」かのどちらかになります。自己判断でメイラックスを減らした方は、メイラックスを元の量に戻しましょう。主治医と相談して、本当にメイラックスを減らしても大丈夫なのかを確認しましょう。

 

様子をみるべきか元に戻すべきかの判断は、「我慢できるかどうか」になります。我慢できるならば、身体が慣れていくにしたがって離脱症状が落ち着いていきます。

生活に支障がある場合は、元の量に戻すようにしましょう。メイラックスの血中濃度が安定するまでには2~3週間はかかります。この間は同じ量で様子を見るようにしましょう。その上で、主治医と相談して対策を考えましょう。

 

7.メイラックスは他の抗不安薬よりも離脱症状がマシ?

メイラックスは、他の抗不安薬に比べると離脱症状が少ないです。このため、他の抗不安薬のクッションとして使われることがあります。

メイラックスは、離脱症状は起こりにくい抗不安薬です。離脱症状が起こりやすい抗不安薬をうまく減量できない時に、「いったんメイラックスに置き換えてからやめていく」という方法をとることがあります。

 

まずは、使っているお薬をゆっくりと減量していきます。できる限り減らせるところまで減量をすすめていきます。そのまま減量できれば理想ですが、限界がくることがあります。不思議なもので、量が少なくなるほど離脱症状は起こりやすくなります。

このような場合は、メイラックスやセルシン/ホリゾンといった作用時間が長い抗不安薬に置き換えていきます。作用時間が長い抗不安薬はゆっくりと身体から抜けていくので、身体が薬の変化に慣れる時間をかせげます。このため、離脱症状は起こりにくくなります。

 

メイラックスに置き換わったら、今度はメイラックスをゆっくりと減量していきます。ちゃんと減薬・断薬していこうと思うのでしたら、「急がばまわれ」です。焦る気持ちもあるかもしれませんが、急いで減薬・断薬すると離脱症状が強くでてしまって、よけいにやめられなくなってしまいます。

離脱症状が起きてしまったら、より少ない量にして減量していきます。身体から減っていくスピードがゆっくりであればあるほど、離脱症状は起こりにくくなります。安全に減らしていく量の目安としては、服用している量の1/10ずつ減量していくことが推奨されています。

減量して様子を見る期間は1~2週間ほどが基本ですが、離脱症状がひどい方は3週間や4週間と減らしてからのペースも長くしていきます。量が少なくなっていくほど少しの変化で離脱症状が起こるので、減量も慎重にしていった方がよいです。

 

それではどれくらいの量でおきかえていけばよいのでしょうか?等価換算表というものがありますので、代表的な抗不安薬だけピックアップしたものをみてみましょう。

抗不安薬を等価換算表のうち、よく使うものだけをまとめました。

メイラックス1.67mgやメイラックス/ホリゾン5mgと同じ強さはどのくらいか、目安がわかるかと思います。これはあくまで目安なので、実際の薬効は異なる部分も多いです。

 

まとめ

薬が身体になれている状態で薬がなくなると、イライラや落ち込みといった精神症状、頭痛や肩こりなどの身体症状、吐き気や発汗などの自律神経症状が認められます。これを離脱症状といいます。

メイラックスを減らして調子が悪くなるのは、「病気の再発再燃・薬を減らした不安」のどちらかです。

メイラックスは半減期が非常に長く、離脱症状がみられることは少ないです。

服薬期間が長く、量が多いと依存しやすくなります。アルコールとの併用は絶対に避けましょう。お薬だけでない努力をしていくことも大切です。

離脱症状がでてしまったら、慣れるまで耐えるか、元の量に戻すかです。

メイラックスは、他の抗不安薬に比べると離脱症状が少ないです。このため、他の抗不安薬のクッションとして使われることがあります。

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