パキシルCR錠の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
パキシルCR錠は、パキシルの改良版として2012年に発売されたお薬です。
パキシルは「うつは心の風邪」のフレーズと共に、広く処方された抗うつ剤です。効果はしっかりとしているのですが、離脱症状により減薬で苦労される方が多いというデメリットがありました。パキシルCR錠では、徐放剤とすることで血中濃度の安定を図ったお薬です。
ここでは、パキシルとの違いを見ていきながら、パキシルCR錠の効果と副作用についてお伝えしていきたいと思います。
1.パキシルCRのメリットとデメリット
パキシルの効果は同等ですが、副作用を軽減したお薬です。ジェネリックと比べると薬価が高く、また小さい錠剤がないことがデメリットです。
パキシルCRとは、2012年に発売されたお薬です。ジェネリックではなく、パキシルを発売しているグラクソ・スミスクライン社から発売されたお薬です。従来のパキシルを改良したもので、CRとはControlled Releaseの略で、日本語に訳すると「徐放剤」となります。徐放剤ですと、薬の成分がゆっくりと放出されて身体に吸収されていきます。急激に吸収されないので、血中濃度の上がり方が緩やかになります。くすりの副作用は一般的に、血中濃度のピークが高くなると出やすくなります。パキシルCRではゆっくり吸収されるので、このピークが高くならずに済みます。このようにして血中濃度が安定しますので、副作用が出にくくなります。
また、パキシルCRはくすりの溶け出し方にも工夫があります。胃ではくすりが溶け出さないようにできていて、腸でゆっくりと溶けていくようにできています。このため、パキシルをはじめとしたSSRIの副作用で一番多い吐き気や下痢といった副作用が軽くなります。
パキシルCRは、パキシルと同じ量の有効成分が吸収されるので、効果は同じように期待できます。くすりの吸収の仕方を工夫することで副作用を軽減したお薬なのです。パキシルCR12.5mgはパキシル10mgと同等です。2.5mgの差がありますが、これは薬をゆっくりと放出するためにロスする薬の量です。パキシルCRには、12.5mg錠剤と25mg錠剤の2種類があります。
一方で、パキシルCRのデメリットは2つあります。
1つ目はお薬の値段にあります。先発品のパキシルとパキシルCRの価格はほとんどかわりません。ですが、ジェネリックが発売されていて、薬価は先発品の4割程度なのです。パキシルの先発品を使っている方でしたら切り替えてもよいかもしれませんが、ジェネリックと比べるとかなり価格の差が出てきますね。
2つ目は、小さな錠剤がないことです。パキシルCRの一番小さな錠剤は12.5mg錠剤です。これはパキシル10mgに相当します。パキシルでは5mg錠剤がありますが、パキシルCRにはこれに相当するものがありません。また、ハイテクな錠剤ですので、錠剤を半分に割ってしまうとパキシルCRのメリットが完全に失われてしまいます。ですから、減量するときにちょっとずつ減量することが難しくなります。
2.パキシルCRの効果とは?
同等の効果が期待できますが、効果の実感が薄れたと感じる方もいます。
抗うつ薬は、不安や不眠に関しては、効果がすぐに表れることもありますが、一般的には効果が出てくるには2週間程度かかります。
抗うつ薬が安定して効果を発揮するためには、常に身体の中に薬がある状態が必要です。薬を規則正しく服用していると、身体の中に少しずつ薬がたまっていきます。およそ服用を始めて4~5日で薬の体内での濃度が安定します。
パキシルCRを服用すると、パキシルの2倍くらいの時間をかけて吸収されます。飲み始めてから8~10時間ほどで血中濃度が最高値になります。身体に吸収されるとパキシルと同じですから、そこから徐々に血中濃度が低下していき、13~14時間で血中濃度が半減します。
即効性を期待する薬ではなく血中濃度が安定して効果が出てくる薬ですので、理論的には同じ効果が得られます。ほとんどの方は、変わらない効果が期待できます。ですが、パキシルからパキシルCRに切り替えると、「何だか調子が悪い」「効いている実感がない」とおっしゃる方がいらっしゃいます。薬を変えたという不安が大きいと思いますが、薬の立ち上がり方の違いも関係しているかもしれません。パキシルの方が、血中濃度が急激に立ち上がるので、効果の実感があるのかもしれません。
詳しく知りたい方は、
パキシル錠の効果と特徴
をお読みください。
3.パキシルCRの副作用とは?
吐き気や下痢の副作用は明らかに軽減します。他の副作用は大きくかわりません。
パキシルCRは、パキシルの2倍くらいの時間をかけて吸収されます。このため、もっとも期待ができるのは胃腸への副作用の軽減です。パキシルは胃腸に直接作用してしまって、吐き気や下痢の副作用がよくみられます。少しずつ薬が放出されることで胃腸への作用も緩やかになるので、副作用が減ります。その他にも、血中濃度が安定するので全体的に副作用は軽減されます。
とはいっても、副作用がまったくなくなるわけではありません。パキシルと有効成分は同じですので、同じ傾向の副作用が認められます。
吐き気・下痢に加えて、不眠・性機能障害・体重増加・眠気などの副作用がみられることがあります。吐き気や下痢以外の副作用に関しては、パキシルとパキシルCRに大きな違いはあまり感じません。
詳しく知りたい方は、
パキシルの副作用(対策と比較)
をお読みください。
4.パキシルCRが向いているのは?
- ジェネリックを使わない方
- 副作用で困っている方
- 離脱症状で苦しんでいる方
<適応>
- うつ・うつ状態
<適応外>
- 不安障害
- PMS
パキシルCRは、パキシルと効果が同じで副作用が少ないので、優れたお薬だと思います。ですが、ジェネリックと比べると価格の違いが大きく出てしまいます。ジェネリックを使わなくてもよい方は、副作用が少ないパキシルCRの方がよいかと思います。
パキシルに効果を感じていて、副作用も大きな問題になっていない方では、無理にパキシルCRに切り替える必要はありません。パキシルとパキシルCRは吸収のされ方の違いだけなので、長期的な薬の影響に違いはありません。パキシルの効果は感じるんだけれども副作用がきついという方などには、パキシルCRへの切り替えはよいかと思います。
離脱症状の対策として切り替えることもあります。パキシルを変えるのは不安だけれども、離脱症状が苦しんでいる場合は、血中濃度が安定するパキシルCRに切り替えると離脱症状が軽減します。ですが、12.5mgよりも小さい薬がなく、分割することもできない薬なので、少しずつ減量することができないというデメリットがあります。
まとめ
販売者名 | グラクソ・スミスクライン株式会社 |
分類 | SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬) |
剤形 | 錠剤(12.5mg・25mg) |
薬価 | 錠剤(101.2円・176.4円) |
ジェネリック | パロキセチン |
成分(一般名) | パロキセチン |
半減期 | 13~14時間 |
用法 | 1日1回 最大50mgまで |
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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