ルボックスの副作用(対策と比較)

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ルボックスは、全体的には副作用の少ないお薬ですが、ある程度は避けることができません。ルボックスではどのようなことに気をつければよいのでしょうか?

ここでは、ルボックスの副作用を中心に、私自身も試しに2か月服用したことがあるので、その実感もふまえてお伝えしていきたいと思います。

 

1.ルボックスの副作用の特徴

副作用は全体的に少ないですが、吐き気と下痢が目立ちます。

ルボックスは、セロトニンを増やすように意識したお薬です。SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されていて、他の受容体にはあまり作用しません。

ルボックスでみられる副作用の中心は、「セロトニン」によるものです。セロトニンを増やすことでお薬の効果を期待しているのですが、他にもいろいろな働きをしています。脳だけでなく胃腸にも作用します。ですから、セロトニンが過剰に作用してしまって、副作用となるのです。ルボックスでは、他のSSRIに比べるとセロトニンへの作用はマイルドなので、その分副作用は軽いものが多いです。

 

他のSSRIと比較して明らかに多いのは、吐き気や下痢です。ルボックスは身体からすぐに抜けてしまう薬なので、何回かに分けて薬を飲まなければいけません。その分胃腸に直接働いてしまう時間が長くなってしまうので、影響が大きいのです。胃腸の動きを活発にして吐き気や下痢になってしまいます。これはよくある副作用ですので、ルボックスを飲まれる方は心づもりをもってください。私が2か月服用してみた時も、吐き気はありませんでしたが、しばらく下痢傾向が続きました。胃腸の副作用は薬が身体になれてくると落ち着いていきます。一時的に薬で胃腸薬でサポートしていくのも対策です。

また、セロトニンの刺激が強くなりすぎると睡眠が浅くなることがわかっています。このため途中で目が覚めてしまったりと、不眠の原因となることがあります。反対に眠気を感じる方もいらっしゃいます。作用機序だけをみると眠気はおこりにくいのですが、薬を飲むと眠くなってしまう方が時々います。この場合は、飲み方の工夫や薬の調整を行っていきます。

性機能障害はSSRIに多いですが、ルボックスはSSRIの中では最も少ないです。それでも20~30%区らいの方には認められる副作用です。なかなかいいづらい副作用なので、悩んでいても口に出せない患者さんも多いと思います。性欲自体が低下する方も多いです。これもセロトニンが関係しているといわれていて、気分が落ち着くことで性的な興奮も起こりづらくなるのかもしれません。性機能低下が問題になる場合は、薬の変更なども考慮していきます。

 

以下の表では、代表的な抗うつ薬の副作用を比較しました。ルボックスは副作用が少ない薬ということがお分かりいただけるかと思います。

 

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

ルボックスの効果について詳しく知りたい方は、
ルボックス錠の効果と特徴
をお読みください。

 

2.ルボックスの副作用への対応方法

慣れていきますので、まずはがまんしてください。生活上での支障が大きくなるようなら対策を考えます。
①薬を減薬する②他の薬にかえる③副作用を和らげる薬を使う

抗うつ薬にはさまざまな副作用があります。多くの副作用が多少なりとも「慣れる」ことが多く、なんとかなる範囲でしたら我慢してください。生活習慣などの薬を使わない対策がある場合は、積極的にためしてください。
薬の服用方法を工夫することで副作用が軽減することもあるので、主治医に相談してみましょう。

これらを踏まえても生活上での支障が大きくなるようでしたら、対策を考えていきます。対策としては、

①減薬する
②他の薬にかえる
③副作用を和らげる薬を使う

の3つがあります。①~③は、効果と副作用の兼ね合いで考えていきます。効果が十分ならば①、増やしても効果の期待が少ない時は②、薬を続けるメリットがあるならば③になります。

さて、③としてよく用いるものや生活習慣を簡単にまとめたいと思います。

副作用 薬を使わない対策 副作用を和らげる薬
便秘 排便習慣・食物繊維・水分・運動習慣 センノサイド・マグミット・大黄甘草湯など
口渇 唾液腺マッサージ・口呼吸 白虎加人参湯
ふらつき 朝食をしっかり・ゆっくり立つ メトリジン・リズミックなど
眠気 睡眠をしっかり・昼寝習慣
体重増加 食事管理・運動習慣
吐き気 食事を控えめにする 胃薬・ガスモチン・ナウゼリン・プリンペランなど
下痢 セレキノン
性機能障害
不眠 睡眠に良い生活習慣・自律訓練法 鎮静系の抗うつ薬・睡眠導入剤など
不整脈

 

3.ルボックスの副作用―症状ごとの比較

ルボックスの副作用に関して、代表的な抗うつ薬と比較しながら、それぞれ見ていきたいと思います。

 

3-1.便秘・口渇

ルボックスでは、あまり認めません。

抗コリン系の副作用として、便秘や口渇があります。抗コリン作用が働くと、一般的に消化活動が抑えられます。このため、唾液の分泌が低下し、腸の動きも悪くなります。

ルボックスでは抗コリン作用がほとんどないので、あまり便秘や口渇はみられません。SSRIの中ではパキシルで見られることが多いです。この副作用が強くみられるのは、昔からある三環系抗うつ薬です。三環系抗うつ薬の中ではアモキサンが少ないです。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、便秘・口渇を比較して表にしまとめました。

3-2.ふらつき

ルボックスでは、あまり認めません。

抗α1作用の副作用として、立ちくらみやふらつきがよくみられます。これには血管の調整が関係しています。アドレナリンがα1受容体に作用すると、血管が収縮します。その結果として血圧を上げ、血のめぐりをよくします。抗α1作用とはこの作用をブロックしますので、結果として血圧が十分にあがらず、頭に血がまわらなくなります。このようになると、立ちくらみをしたり、ふらつくといった症状が現れてきます。

このような症状を起立性低血圧といいます。ルボックスは抗α1作用はわずかですので、ほとんど見られません。三環系の抗うつ剤ではよく認められる副作用です。新しい抗うつ薬ですと、リフレックス/レメロンのNaSSAでは眠気が強く、ふらつきがみられることがあります。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、ふらつきを比較して表にしまとめました。

3-3.眠気

ルボックスでは、あまり認められません。

詳しく知りたい方は、「ルボックスの眠気と7つの対策」をお読みください。

眠気に関しては、複数の要素が関係するので複雑です。大きくは3つの働きが関係しています。抗ヒスタミン作用、抗α1作用、セロトニン5HT2受容体阻害作用です。これらのバランスで眠気が決まります。

眠気が強い効果をもつ抗うつ薬を鎮静系抗うつ薬と呼びます。NaSSAや四環系抗うつ薬、デジレルなどが分類されます。この次に位置づけられるのが三環系抗うつ薬です。三環系抗うつ薬よりもSSRIは眠気が少ないです。

ルボックスでは、他のSSRIに比べて覚醒に働くセロトニン作用がマイルドで、眠気に働く抗ヒスタミン作用や抗α1作用がわずかにみられます。このため、ルボックスは眠気と覚醒でみると「ニュートラル」な印象です。SSRIの中で比較すると、ルボックスはやや眠気がみられることが多い印象です。

SNRIは、ノルアドレナリンに覚醒作用があるため、SSRIよりもさらに眠気が少ないです。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、眠気を比較して表にしまとめました。

3-4.体重増加

ルボックスでは、あまり認められません。

詳しく知りたい方は、「ルボックスは太るの?体重増加と5つの対策」をお読みください。

体重増加には、2つの作用が関係しています。抗ヒスタミン作用による食欲増加と、セロトニンによる代謝抑制作用です。

ヒスタミンは視床下部という部分にある満腹中枢を刺激する物質です。ですから、ヒスタミンは食欲を抑える働きがあります。これをブロックする効果が強いと食欲が増加します。また、ヒスタミンがブロックされると、グレリンというホルモン増加をひきおこします。これが摂食中枢を刺激して、食欲を増進させるともいわれています。ですから、抗ヒスタミン作用は食欲増加につながります。

セロトニンは精神を安定させ、リラックス状態をつくっていきます。すると、身体のエネルギーとしては、消費が抑えられるようになります。このように、セロトニンには代謝抑制効果があります。

ルボックスは抗ヒスタミン作用は少ししかありません。ですがセロトニン作用がありますので、少し太る傾向にはあります。SSRIの中では、パキシルが太りやすい傾向にあります。パキシルは発作的に過食になる方が多いです。

三環系抗うつ薬は、抗ヒスタミン作用もセロトニン作用も強いものが多いです。このため太りやすい薬が多いです。新しい抗うつ薬のリフレックス/レメロンも抗ヒスタミン作用が強いので太りやすいです。反対にSNRIは、ノルアドレナリンにより活動的にする効果もあるので太りにくいです。

抗うつ剤の太りやすさを比較してみました。

3-5.吐き気・下痢

ルボックスでは、よく認められます。

抗うつ薬は脳内のセロトニンに作用します。抗うつ薬で吐き気がでてきしてしまうのには、このセロトニンが大きく関係しています。

セロトニンの受容体は脳には10%もありません。90%以上の大部分は胃腸に存在していて胃腸の働きの調節をしています。セロトニンが分泌されると きは、胃腸が中身を出したいときです。ですから、吐き気や下痢といった形で、中身を外に出そうとする働きをします。もう少し詳しくみてみましょう。

胃腸にはセロトニン5HT受容体が分布していて、これが刺激されると迷走神経という神経が刺激されます。この神経が脳の延髄にある嘔吐中枢を刺激してしまいます。同時に、このセロトニン5HT受容体は腸の動きを活性化する働きがあります。このため、腸の動きが活発となり下痢が生じるのです。

しかしながら、徐々に体が慣れてきますので、徐々に副作用が薄れていく方がほとんどです。このため、一時的に胃腸薬を使うことでしのげることが多いです。

抗うつ薬の中では、SSRIやSNRIに多くみられます。SSRIの中でも、ルボックスは特に多いです。ルボックスは身体から薬が抜けるのが早く、複数回に分けて薬をのまなければいけません。このため、胃腸へ薬が直接作用してしまう時間が長くなってしまうのです。

また、新しい抗うつ薬のうちリフレックス・レメロンは、ほとんど吐き気などは認められません。これはセロトニン5HT受容体をブロックする作用があるためです。三環系抗うつ薬は、新しい薬と比較して少ないです。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、吐き気・下痢を比較して表にしまとめました。

3-6.性機能障害

ルボックスでは、比較的少ない方です。

性機能障害は、抗うつ薬全般でよくみられます。性欲自体が低下する形になることが多いです。これにはセロトニンが関係しています。セロトニンは、気分を落ち着かせリラックスさせる薬になります。このため、性欲も必然的におちてしまいます。

さらに、抗α1作用は性機能にも影響があります。勃起をする時には、血液が陰茎に集中することが大事ですが、この時に、血管の調整をになうα1作用が必要になります。これがブロックされますので、勃起不全や射精障害になることがあります。

SSRIの中では、ルボックスは最も少ない方です。それでも20~30%の方にみられます。パキシルとジェイゾロフトでは、およそ70~80%の方に副作用としてあらわれるといわれています。レクサプロはその間くらいといわれていて、40%程度の方に認められます。

新しい抗うつ薬のうちリフレック/レメロンでも性機能障害が少ないといわれていますが、20%程度で認められます。他の薬と比べて少ない理由としては、セロトニン5HT受容体をブロックする作用があるためと考えられています。

三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬では、ジェイゾロフトやパキシルよりは性機能障害が少ないですが、比較的よくみられる副作用です。

代表的な抗うつ薬の副作用のうち、性機能障害を比較して表にしまとめました。

3-7.不眠

ルボックスでは、時おりみられます。

不眠になる原因としては、セロトニンとノルアドレナリンが関係しています。セロトニン5HT受容体が刺激されると、深い睡眠が妨げられ、睡眠が浅くなります。また、ノルアドレナリンは交感神経に働く物質ですので、覚醒作用があります。このため、セロトニンとノルアドレナリンに働く薬は、睡眠が浅くなるという形で不眠につながります。

昔からある三環系抗うつ薬では、SSRIやSNRIと比べると不眠の副作用は少ないです。いろいろな受容体に作用するために、抗ヒスタミン作用や抗α1作用などによって眠気が強くなります。ですが、SSRIやSNRIといった新しい薬は、セロトニンやノルアドレナリンだけに作用するようにできています。ですから、不眠の副作用は出やすいのです。ルボックスでも不眠は時おり認められます。他のSSRIと比べると、セロトニンを増やす効果はマイルドなので少ないです。

鎮静系の抗うつ薬といわれているテトラミド・リフレックス/レメロン・デジレン/レスリンでは、セロトニン5HT受容体をブロックする作用があります。このため、睡眠が深くなり不眠となることは基本的にありません。

抗うつ薬の副作用である不眠を比較しました。

まとめ

新しい抗うつ薬の中でも副作用は少ないですが、吐き気や下痢が目立ちます。

ルボックスは、セロトニン過剰が原因の副作用が中心です。

これらの副作用が見られた場合、まずはがまんしてください。生活上での支障が大きくなるようなら対策を考えます。

①薬を減薬する②他の薬にかえる③副作用を和らげる薬を使う

から考えていきます。

副作用が原因で治療を中断する方が少なく、安全性が高いお薬といえます。

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