イフェクサーの副作用と安全性

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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海外ではメジャーな抗うつ剤として発売されているエフェクサーが、ついに日本でも2015年12月8日に発売されました。日本では、イフェクサーSRカプセルとして発売されています。

イフェクサーはSNRIと呼ばれているお薬で、サインバルタやトレドミンと同じタイプの抗うつ剤です。セロトニンとノルアドレナリンを増加させることで効果を発揮するお薬です。

アメリカでは1994年から承認されて使われてきているお薬です。民族的な違いはありますが、イフェクサ―の副作用や安全性に関しては既にある程度わかっています。

ここでは、イフェクサーの副作用と安全性についてお伝えしていきたいと思います。

 

1.イフェクサーの副作用の特徴

イフェクサーは、セロトニン作用の強いSNRIです。このため、吐き気・下痢・性機能障害・不眠などが認められます。

イフェクサーはSNRIと呼ばれるお薬です。SNRIはセロトニンとノルアドレナリンを増やすお薬ですが、イフェクサーではセロトニンを増やす効果が強いです。とくに日本で認可されている用量では、セロトニン増加作用が中心になります。このため、SSRIに近いSNRIといえるでしょう。

イフェクサーは、セロトニンとノルアドレナリンに働きます。それ以外の受容体にはほとんど作用しないので、全体的には副作用が少ないです。イフェクサーでみられる副作用の中心は、「セロトニンとノルアドレナリン」によるものです。これらの物質を増やすことでお薬の効果を期待しているのですが、過剰に働いてしまうと副作用になってしまうのです。

 

セロトニンの副作用としては、胃腸を刺激してしまうことで吐き気や下痢がよくみられます。イフェクサーはカプセルからゆっくり薬が溶け出すようにしているので、吐き気や下痢は緩和されています。そうはいっても、よくみられる副作用です。少しずつ慣れていく方が多いですが、一時的に胃腸薬を使うこともあります。

また、SSRIでよくみられる性機能障害ですが、SNRIのイフェクサーでもよく報告されています。性欲自体が低下する方も多いです。これもセロトニンが関係しているといわれていて、気分が落ち着くことで性的な興奮も起こりづらくなるのかもしれません。性機能低下が問題になる場合は、薬の変更なども考慮していきます。

不眠がみられることもあります。セロトニンは眠りを浅くしてしまいます。さらにノルアドレナリンは意欲や気力を高める作用があるので、覚醒に働きま す。この2つの効果が合わさって、不眠の副作用がみられます。ただ、SSRIでは睡眠の質も悪くなってしまうのに対して、SNRIではそこまで睡眠の質には影響がありません。この場合は、飲み方の工夫や薬の調整を行っていきます。

 

イフェクサーはセロトニン作用が強いので、「吐き気・下痢・性機能障害・不眠」といったセロトニンによる副作用が多くなります。すでに発売されているSNRIのサインバルタやトレドミンと大差はないと思いますが、注意して使っていく必要があります。

代表的な抗うつ薬について、副作用を比較して表にまとめています。

イフェクサーの効果について詳しく知りたい方は、
新薬イフェクサーSRカプセルの効果と特徴
をお読みください。

 

2.イフェクサーの添付文章での副作用の頻度

非常にたくさんの副作用報告がありますが、臨床試験の段階では副作用報告が多くなります。イフェクサーで多かった副作用を順にあげると、「①悪心や吐き気②お腹の症状③眠気④めまい⑤口の渇き⑥頭痛」となります。

イフェクサーを発売されるにあたっては、国内でも臨床試験を行っています。日本人での有効性が証明されてはじめて承認されるのですが、同時に副作用も調べられています。

これによると、イフェクサーを使った症例1255例中1028例(81.9%)で副作用の報告がありました。主な副作用は、

  • 悪心(35.5%)
  • 腹痛・膨満・便秘・下痢といった腹部不快感(27.2%)
  • 傾眠(26.9%)
  • 浮動性めまい(24.4%)
  • 口内乾燥(24.3%)
  • 頭痛(19.3%)

と報告されています。この数字をみるとビックリしてしまうかもしれませんが、ここまでは問題にはならないと思われます。程度もさまざまで、軽度の副作用や因果関係がはっきりしないものも含まれています。

私も臨床試験の担当医をしたことがありますが、ちょっとした症状を被験者の患者さんが口にすると、副作用として検討しなければいけません。お腹の調子が悪くなることは誰しもありますよね?臨床試験中にそのことをいわれると、担当医としてもSNRIで消化器症状が出やすいという知識がありますから、「イフェクサーとは関係ない!」とは断言できなくなってしまいます。

このように、臨床試験では副作用の報告は多くなる傾向にあるのです。

 

イフェクサーは、2015年の12月8日に発売となりました。新薬が発売されると発売開始から6か月間は、市販直後調査というものが行われます。実際に臨床の現場でどのような副作用がみられるのかを調べていきます。市販後調査の結果がでてきたら、ご紹介していきたいと思います。

 

3.イフェクサーの安全性

論文では安全性の評価が低いですが、実際はもっと安全性が高いと考えられます。

イフェクサーを含めた新しい抗うつ薬12種類において、その効果と副作用を比較した研究がありますのでご紹介したいと思います。

抗うつ剤の効果と副作用の比較を図表でしめしました。(MANGAstudy)

MANGA studyといわれている研究で、新しい抗うつ剤を比較した論文をたくさん集めてきて分析したものです。2009年にランセットという超有名専門誌に発表されました。

  • 有効性:①リフレックス/レメロン ②レクサプロ ③イフェクサー(ベンラファキシン) ④ジェイゾロフト ⑤シタロプラム
  • 安全性:①レクサプロ ②ジェイゾロフト ③ブプロピオン ④シタロプラム ⑤フルオキセチン

イフェクサーの評価は、有効性で第3位、安全性で第8位となっています。

 

この結果は慎重に見ていく必要があります。

  • 薬によってはデータ量が不足している
  • 薬の有効性を反応性だけで評価している
  • 高用量でお薬を使う論文では副作用が多くなる
  • 日本人ではなく外国人での研究である

ちょっと論文を読んだだけでも、このような問題点が見えてきます。例えば同じSNRIのサインバルタでは、有効性が第8位・安全性が第9位となっています。これは臨床的な実感とは異なります。

この研究からは、少なくともサインバルタと同等の安全性があると考えられます。サインバルタは安全性が高いお薬なので、イフェクサーも比較的安全性は高いと思われます。

 

4.イフェクサーの副作用への対応方法

たいていの副作用は慣れていきますので、まずはがまんしてください。生活上での支障が大きくなるようなら対策を考えます。
①薬を減薬する②他の薬にかえる③副作用を和らげる薬を使う

抗うつ剤にはさまざまな副作用があります。多くの副作用が多少なりとも「慣れる」ことが多く、なんとかなる範囲でしたら我慢してください。生活習慣などの薬を使わない対策がある場合は、積極的にためしてください。
薬の服用方法を工夫することで副作用が軽減することもあるので、主治医に相談してみましょう。

これらを踏まえても生活上での支障が大きくなるようでしたら、対策を考えていきます。対策としては、

  1. 減薬する
  2. 他の薬にかえる
  3. 副作用を和らげる薬を使う

の3つがあります。①~③は、効果と副作用の兼ね合いで考えていきます。効果が十分ならば①、増やしても効果の期待が少ない時は②、薬を続けるメリットがあるならば③になります。

さて、③としてよく用いるものや生活習慣を簡単にまとめたいと思います。

副作用 薬を使わない対策 副作用を和らげる薬
便秘 排便習慣・食物繊維・水分・運動習慣 センノサイド・マグミット・大黄甘草湯など
口渇 唾液腺マッサージ・口呼吸 白虎加人参湯
ふらつき 朝食をしっかり・ゆっくり立つ メトリジン・リズミックなど
眠気 睡眠をしっかり・昼寝習慣
体重増加 食事管理・運動習慣
吐き気 食事を控えめにする 胃薬・ガスモチン・ナウゼリン・プリンペランなど
下痢 セレキノン
性機能障害
不眠 睡眠に良い生活習慣・自律訓練法 鎮静系の抗うつ薬・睡眠導入剤など
不整脈

 

まとめ

イフェクサーは、セロトニン作用の強いSNRIです。このため、吐き気・下痢・性機能障害・不眠が、サインバルタやトレドミンよりも多い可能性があります。

非常にたくさんの副作用報告がありますが、臨床試験の段階では副作用報告が多くなります。イフェクサーで多かった副作用を順にあげると、「①悪心や吐き気②お腹の症状③眠気④めまい⑤口の渇き⑥頭痛」となります。

たいていの副作用は慣れていきますので、まずはがまんしてください。生活上での支障が大きくなるようなら対策を考えます。

①薬を減薬する②他の薬にかえる③副作用を和らげる薬を使う

から考えていきます。

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