ロナセンの副作用(対策と比較)

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ロナセンは、2008年に発売された第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)です。おもに統合失調症の治療に使われています。

ロナセンは、シンプルにドパミンとセロトニン遮断作用だけにしたお薬です。このため、体重増加や眠気といった副作用が軽減されています。

ここでは、ロナセンの副作用について詳しくお伝えしていきます。他の抗精神病薬とも比較しながら、対策を考えていきましょう。

 

1.ロナセンの副作用とは?

  • 第一世代抗精神病薬よりも副作用が少ない
  • 第二世代抗精神病薬の中でも副作用が少ない
  • 体重増加・糖尿病・脂質異常症など、代謝系の副作用が少ない
  • ドパミン遮断作用による副作用として錐体外路症状が多いが、高プロラクチン血症は少ない
  • 眠気やふらつきといった副作用が少ない

ロナセンは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)に分類されます。第一世代の抗精神病薬(定型抗精神病薬)と比較すると、副作用は全体的に軽減されています。

  • 錐体外路症状(ソワソワやふるえなど)
  • 高プロラクチン血症(生理不順・性機能低下など)

といった、ドパミン遮断作用による副作用は大きく軽減されました。

しかしながら定型抗精神病薬よりも、代謝への悪影響が多くなってしまいました。この原因はよくわかっていませんが、体重増加や糖尿病、脂質異常症などがよく認められます。このため、定期的に採血をして確認していかなければいけません。

 

第二世代抗精神病薬の中でもロナセンは、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されます。セロトニン受容体とドパミン受容体をしっかりとブロックします。このため、幻覚や妄想といった都合失調症の陽性症状にしっかりとした効果が期待できますが、ドパミンをブロックしすぎてしまうことでの副作用が避けられません。

その中でも、錐体外路症状(アカシジア)がよく認められます。同じドパミン遮断作用によって引き起こされる高プロラクチン血症は、ロナセンではあまり認められません。

ロナセンはそれ以外の受容体にはあまり作用しないので、眠気や体重増加の副作用も少ないです。非定型抗精神病薬は代謝への悪影響がありますが、ロナセンでは代謝への影響は少ないです。

 

ロナセンの効果について詳しく知りたい方は、
ロナセン錠の効果と特徴
をお読みください。

 

2.ロナセンと他の抗精神病薬の副作用比較

ドパミンとセロトニンをシンプルに遮断するお薬です。他の受容体への影響が少ないので、第二世代抗精神病薬の中でも副作用が少ないです。

ロナセンと代表的な抗精神病薬の副作用を比較してみましょう。まずはお薬の作用の特徴を比較してみましょう。

抗精神病薬の作用を比較して一覧にしました。

非定型抗精神病薬には、大きく3つのタイプが発売されています。それぞれの副作用の特徴をざっくりとお伝えしたいと思いま す。

  • SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬):ドパミンとセロトニン遮断作用が中心
    商品名:リスパダール・インヴェガ・ロナセン・ルーラン
    特徴:ドパミン遮断作用による副作用が多め
  • MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬):いろいろな受容体に適度に作用
    商品名:ジプレキサ・セロクエル・シクレスト
    特徴:鎮静作用が強く、代謝への悪影響が大きい
  • DSS(ドパミン受容体部分作動薬):ドパミンの分泌量を調整
    商品名:エビリファイ
    特徴:副作用は全体的に少ないが、アカシジア(ソワソワ)が多い

定型抗精神病薬もまだまだ使われています。急性期の激しい症状を抑えるためには、定型抗精神病薬の方が効果が優れています。また、代謝への影響は定型抗精神病薬の方が少ないです。

定型抗精神病薬は、セレネースの系統とコントミンの系統の2つに分けることができます。

  • セレネース系(ブチロフェロン系):ドパミン遮断作用が強い
    特徴:ドパミン遮断作用による副作用がとても多い
  • コントミン系(フェノチアジン系):いろいろな受容体に全体的に作用する
    特徴:鎮静作用が強い

ロナセンは非定型抗精神病薬のSDAに分類され、ドパミン遮断作用による副作用が多いです。具体的な症状で副作用を比較すると、以下の表のようになります。

抗精神病薬の副作用を比較しました。

 

3.ロナセンの副作用

ロナセンの特徴をふまえて、具体的な副作用についてみていきましょう。他剤とも比較しながら、それぞれの副作用への対策もお伝えしていきます。

 

3-1.錐体外路症状

ロナセンでは、錐体外路症状が多いです。

統合失調症では、ドパミンの過剰な分泌が幻覚や妄想といった陽性症状を引き起こします。抗精神病薬はドパミンの働きをブロックするお薬ですが、必要な部分でもドパミンをブロックしてしまうと副作用になります。

その症状のひとつが錐体外路症状です。脳の黒質線条体という部分では、身体の運動の細かな調節を勝手にしてくれています。黒質でドパミンが作られて線条体に伝えられています。お薬がこのドパミンの働きを邪魔してしまうと、運動の調節が上手くいかなくなってしまいます。この症状のことを錐体外路症状(EPS)といいます。

パーキンソン病という病気をご存知でしょうか?この病気は、黒質の神経細胞が変性してしまってドパミンが作れなくなってしまう病気です。ちょうどパーキンソン病に似た症状が出現します。その他にもいろいろな運動系の症状が認められることがあります。

  • 薬剤性パーキンソニズム(ふるえ・筋肉のこわばり)
  • アカシジア(ソワソワして落ち着かない)
  • 急性ジストニア(筋肉の異常な収縮)
  • ジスキネジア(勝手に身体が動く)

 

ロナセンは、非定型抗精神病薬の中では錐体外路症状が多いです。少量ではあまり問題になりませんが、16mgより量が増えると注意が必要です。

ロナセンによる錐体外路症状への対策としては、4つあります。

  1. ロナセンの減量
  2. 抗不安薬やβ遮断薬の追加
  3. 抗コリン薬の追加
  4. 他の抗精神病薬へ変更

まずは、ロナセンの減量を考えます。量が少なくなれば症状も軽減するので、薬の効果をみながら減量していきます。

減量が難しい場合は、症状を緩和するお薬を使います。抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)やβ遮断薬には、錐体外路症状を和らげる働きがあります。それでも効果が不十分なら、抗コリン薬で症状を緩和します。線条体では、アセチルコリンとドパミンがバランスを取り合っています。ドパミンが足りない時はアセチルコリンが過剰になっているので、抗コリン薬がこれを整えることでドパミンの働きを強くします。

このようなお薬としては、アキネトンやアーテンがよく使われます。その他にも、抗ヒスタミン薬に分類されるピレチア/ヒベルナも使われます。これらのお薬には、抗コリン作用があるためです。抗コリン薬にも副作用があり、尿閉・便秘といった身体症状だけでなく、認知機能に影響してせん妄が起こることがあります。必要最小限で使っていきます。

どうしても錐体外路症状がおさまらない時は、他の抗精神病薬への変更を検討します。

非定型抗精神病薬では、エビリファイ・セロクエル・ジプレキサ・ルーラン・インヴェガなどが候補になります。

抗精神病薬の錐体外路症状の比較

 

3-2.高プロラクチン血症

ロナセンでは、高プロラクチン血症は少ないです。

ロナセンが下垂体に作用してドパミンを遮断してしまうと、プロラクチンというホルモンを増やしてしまうことがあります。プロラクチンは本来、子供が産まれてから授乳中の女性に分泌されるホルモンです。ですから、乳汁の分泌を促す作用があります。また、子育てをしている時には次の出産をする余裕もないですから、排卵を抑制して妊娠しないようにする作用もあります。

このため高プロラクチン血症になってしまうと、

  • 急に母乳がでてくる(乳汁分泌)
  • 生理が遅れてしまう(生理不順)
  • 不妊になってしまう(無排卵・無月経)

などの副作用がみられます。女性だけでなく、男性でも症状がみられます。

  • 胸がふくらんでくる(女性化乳房)
  • 性欲が落ちる(性機能低下)

などの副作用がみられます。それ以外にも、骨粗鬆症や乳がんなどへのリスクも報告されているので注意が必要です。

このような症状がみられたときは、正確に診断するためにプロラクチン濃度を測る血液検査をします。プロラクチン濃度の理想は15くらいといわれていますが、30を超えたら高プロラクチン血症と診断します。

 

ドパミン遮断作用が強いと高プロラクチン血症を起こしやすいのですが、ロナセンでは少ないです。これは、ロナセンが脂溶性が高いためです。脳は非常に重要なので、脂質でつくられている細胞膜でバリアー(血液脳関門)がされています。脂に溶けやすいほど、このバリアーを超えやすくなります。

このため、ロナセンは少ない量でしっかり脳に作用でき、バリアーの外にある下垂体への影響が少なくて済みます。その結果、高プロラクチン血症の副作用が少ないのです。

ロナセンによって高プロラクチン血症の症状がみられたら、薬を中止して他の抗精神病薬にすることがほとんどです。プロラクチンへの影響が少ないエビリファイ・セロクエル・ジプレキサ・ルーランなどが候補になります。

抗精神病薬の高プロラクチン血症の比較

 

3-3.便秘・口渇(抗コリン作用)

ロナセンでは、便秘が認められることがあります。

抗精神病薬はアセチルコリンの働きをブロックしてしまうことがあります。アセチルコリンは副交感神経を刺激する作用があります。このため抗コリン作用とは、「リラックできない時はどういう身体の状態か?」をイメージすると理解しやすいです。

リラックしている時に食べ物の消化はすすみます。このため、唾液が分泌され、胃腸は動き、尿や便は排泄されやすくなります。抗コリン作用によってこれらの活動が抑えられると、口がかわいたり、便秘になったり、尿が出にくくなります。

 

ロナセンには抗コリン作用は中程度であり、副作用として認められることがあります。薬の承認時には、便秘は10.1%の方に認められています。

ロナセンによる便秘や口渇への対策としては、3つあります。

  1. ロナセンの減量
  2. 生活習慣の改善
  3. 下剤や漢方などの追加

まずはできる限り、ロナセンを減薬していきます。それでも改善しない場合は、お薬以外で改善できることは試してみます。下剤や漢方薬などを追加していくこともあります。ロナセンが原因で薬を変更するまでの副作用が認められることはあまりありません。変更するとしたら、インヴェガやルーランやエビリファイが候補となるでしょう。

詳しくは、「抗コリン作用とは?」をお読みください。

抗精神病薬の便秘・口渇の副作用を比較しました。

3-4.ふらつき

ロナセンでは、ふらつきは少ないです。

ふらつきは、いろいろな作用が重なって認められる副作用です。眠気が強かったらフラフラしますよね?抗ヒスタミン作用が強いお薬では眠気が強く認められます。また、アドレナリンα1受容体は血管の調整を行っています。抗α1作用によって脳に血液が上手くいかなければ、クラクラしてしまいます。

ロナセンでは抗ヒスタミン作用も抗α1作用も少ないです。このため、めまいやふらつき(起立性低血圧)は少ないです。

ロナセンでふらつきが認められた場合の対策としては、3つあります。

  1. ロナセンの減量
  2. 生活習慣の改善
  3. 昇圧剤の追加

まずはできる限り、ロナセンを減量していきます。また、生活習慣でできることは改善していきます。

  • 朝食を抜いている方は、しっかりととるようにする
  • 立ち上がる時はゆっくりと身体を動かす

これでも日常生活に支障がある場合は、メトリジンやリズミックといった血圧を上げるお薬を使うことがあります。副作用を軽減するためにお薬を使うのはあまり好ましいことではないので、できるだけ少ない量にします。

抗精神病薬のふらつきの副作用比較

3-5.眠気

ロナセンでは、眠気は少ないです。

詳しく知りたい方は、「ロナセンの眠気と6つの対策」をお読みください。

眠気は、抗ヒスタミン作用の影響が大きいです。抗ヒスタミン作用成分は、花粉症のお薬や風邪薬にも含まれています。これらの薬を飲んで眠くなる経験をされたことはありませんか?

ヒスタミンは覚醒状態に大切な脳内物質なので、これがブロックされると眠気が出てきてしまいます。他にも、セロトニン2受容体遮断作用やアドレナリンα1受容体遮断作用も眠気につながります。

ロナセンは、抗ヒスタミン作用はほとんどありません。セロトニン2受容体遮断作用はありますが、アドレナリンα1受容体遮断作用もわずかです。このため総合的にみて、ロナセンは眠気が起こりにくいお薬です。

もしロナセンで眠気が出てしまったら、対策としては大きく4つあります。

  1. 睡眠環境や習慣を見直す
  2. ロナセンの減量
  3. ロナセンの飲み方を工夫する
  4. 他の抗精神病薬に変更

まずはロナセンをできる限り減量します。また、睡眠環境や習慣に関して、改善できることは見直していきます。詳しくは、「不眠を解消する9つの方法」「アルコール・タバコ・コーヒーと睡眠の関係」をお読みください。

効果を見ながら、就寝前や夕食後などにお薬を服用するなど、飲み方を工夫していくとうまくいくこともあります。お薬を変更するならば、ルーラン・インヴェガ・エビリファイなどに変更することもあります。

抗精神病薬の眠気の副作用比較

3-6.体重増加

ロナセンでは、体重増加は少ないです。

詳しく知りたい方は、「ロナセンは太るの?体重増加と4つの対策」をお読みください。

抗精神病薬では、ヒスタミン1受容体遮断作用やセロトニン2C受容体遮断作用によって食欲が増加します。食べてしまった分だけ太るのかというと、それだけではないのです。何らかの代謝への悪影響があることが分かっていて、実際に食べている以上に体重が増加してしまいます。糖尿病や脂質異常症などのリスクも、明らかに上がります。

特に、MARTAと呼ばれる非定型抗精神病薬で多いです。ジプレキサやセロクエルでは、糖尿病の患者さんには使うことができないお薬となっています。

ロナセンは抗ヒスタミン作用は少なく、セロトニン2C受容体遮断作用もそこまで強くありません。他の非定型抗精神病薬と比べても代謝抑制作用が少ないので、太りにくいいお薬といえます。

 

ロナセンによる体重増加の対策としては、3つあります。

  1. 体重測定・食事管理
  2. 運動
  3. ロナセンの減量

ロナセンは用量が増えるほど、体重増加が認められやすくなります。食生活を整えれば、少しずつ体重は落ち着いていきます。ジプレキサのように、少量でも問答無用で体重増加をきたすのとは異なります。

ですから、まずは食生活を整えましょう。カロリーを意識しながら食事をとるようにして、3食をバランスよくとることが必要です。そして、定期的に体重を測るようにしましょう。ちゃんと自分の体重を管理する習慣をつけましょう。また、運動習慣をつくりましょう。消費カロリーが増えれば体重が減少しますし、運動自体が精神的によい効果をもたらします。

体重増加傾向が改善できない場合は、ロナセンの減量を検討します。効果をみながら、できる限り減量していきます。ロナセンは太りにくいお薬なので、体重増加が原因で他の抗精神病薬に変更することはまずありません。

抗精神病薬の体重増加の副作用を比較しました。

 

まとめ

  • 第一世代抗精神病薬よりも副作用が少ない
  • 第二世代抗精神病薬の中でも副作用が少ない
  • 体重増加・糖尿病・脂質異常症など、代謝系の副作用が少ない
  • ドパミン遮断作用による副作用として錐体外路症状が多いが、高プロラクチン血症は少ない
  • 眠気やふらつきといった副作用が少ない

ドパミンとセロトニンをシンプルに遮断するお薬です。他の受容体への影響が少ないので、第二世代抗精神病薬の中でも副作用が少ないです。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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