テオドール錠(テオフィリン)の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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テオドール錠(テオフィリン)は、1984年に田辺三菱製薬が発売したお薬になります。茶葉に含まれているキサンチン誘導体を利用して、

  • 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
  • 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

という2つの作用を併せ持ったお薬です。このような作用を利用して、テオドールは気管支喘息や肺気腫(COPD)の治療薬に使われています。

しかしテオドールは、血中の濃度が一定以上ないと効果を発揮しないお薬です。逆にテオドールが一定以上の濃度を超えすぎてしまうと、テオフィリン中毒として嘔気や頭痛、動悸が出てきます。さらに濃度が上昇すると、痙攣や意識がなくなるなど怖い副作用が出現します。

テオドールをうまく使いこなすためにも、テオドールの効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。

 

1.テオドールの効果のメリット・デメリット

<メリット>

  • 長期管理薬として喘息を予防する
  • COPDの治療にも使える
  • 難治性の喘息やCOPDの治療選択肢のひとつになる
  • 内服なので、うまく吸入できない人でも使える
  • 薬価が安い

<デメリット>

  • 吸入の薬の方が効果が高い
  • 副作用が多い
  • 定期的に血中濃度を採血で測定する必要がある
  • 飲み合わせが悪いものが多い

テオフィリンは、コーヒーなどに含まれている成分と同じキサンチン誘導体という成分になります。テオドールはこの成分を主として、

  • 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
  • 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

の2つの作用を併せ持った薬です。このため、

  • 喘息:気道の慢性炎症で気管支が狭まる病気
  • COPD:タバコで肺が穴ぼこだらけになることで気管支が狭まる病気

の2つの病気にテオドールは使用されます。

  • 喘息は炎症をとるのが第一で、気管支を広げるが第二
  • COPDは気道を広げるのが第一で、慢性的に悪化があれば炎症をとるのが第二

つまり炎症も気管支拡張も両方の作用を持つテオドールは、どちらの疾患にも非常に有用と期待され、1980年代では第一選択で使われてきました。しかしながら、

  • 気管支の炎症を抑えるのなら吸入ステロイドの方が上
  • 気管支を広げるのであれば抗コリン薬やβ2刺激薬の方が上

とどちらの効果でもそれぞれ上回る薬剤が出現したことで、喘息とCOPDどちらでも第一選択肢から外れています。

 

具体的にみると成人の喘息のガイドラインでは、長期管理に関しては最も軽症な方は吸入ステロイドのみで加療することとなっています。その次はステロイドの吸入量を増やすとともに、

  • β2刺激薬の吸入
  • 抗ロイコトリエンの内服
  • テオフィリンの内服

の併用が推奨されています。この中で最も併用されるのが、β2の刺激薬の吸入です。なぜなら吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤であれば、患者さんの手間は増えずにすみます。そのためβ2刺激薬が喘息で登場する時はアドエアシムビコートなどの合剤で登場することが多かったです。

一方でどうしても吸入ステロイドが使用できない場合は、内服で喘息を加療することになります。主に認知症が強い高齢者が多いです。こういった方にはテオドールが使われることが多いです。

テオドールの効果が期待できるもうひとつの疾患であるCOPDのガイドラインでは、

が第一選択になります。つまりCOPDも喘息同様に、吸入薬が主流になっています。吸入の方が気管支に直接薬をかけるため、即効性もあり、また副作用も少ないためです。

つまりテオドールが処方される場合は、吸入薬でもコントロールが悪い人に限られます。ただしテオドールは二つの効果を持つと同時に、ステロイド吸入やβ2刺激薬などにテオドールを加えることで、抗炎症や気管支拡張の相乗効果が得られることがわかっています。

そのため、難治性の喘息やCOPDを治療するのに適したお薬になります。

 

テオドールのデメリットとしては、血中濃度を定期的に採血で測らなければならないことです。これは、主成分のテオフィリンが血中内にある程度の濃度がないと全く効果を示さないからです。テオドールは古い薬剤のため、安くお薬が手に入るのもメリットの一つです。

逆にテオフィリンの血中濃度が高くなると、副作用が出現します。副作用は軽度であれば嘔吐や頭痛、動悸ですが、重度になると不整脈など心臓のリズムがおかしくなったり、痙攣して意識がなくなったりしてしまいます。

そのためテオドールは、徐放剤として胃や腸に少しずつ溶け出して、いきなり血中の濃度が高くならないように工夫されています。

一方でテオフィリンの血中濃度が安定してても、他の薬の飲みあわせ、さらにはコーヒーやお茶などカフェインと一緒にとることで、テオフィリンの血中濃度が乱高下するのがテオドールの難しいところです。

以上のように、テオドールは気管支の炎症と拡張両方の効果がある優れた薬であると同時に、血中濃度を一定に保たなければいけないというバランスをとるのが難しいお薬となっています。

 

2.テオドールの剤形と用法・用量

テオドールは、1錠50・100・200mgがあります。また小児のために、粉薬やドライシロップの剤形も発売されています。朝・就寝前に2回、内服でコントロールします。

テオドールの適応は、

喘息性(様)気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫

となっています。

成人では、テオドール1回200mgを1日2回、朝と就寝前に内服します。また、気管支喘息では1回にまとめてしまって、テオドール1回400mgを1日1回、就寝前に内服することもできます。

一方で小児の場合は、テオドール1回100~200mgを1日2回、朝と就寝前に内服します。小児は年齢によってさらに細かく分かれています。

  • 6か月未満:投与は推奨されません
  • 6か月~1歳未満:テオドール3kg/mg
  • 1歳~15歳:テオドール4kg/mg

となっております。お子さんで錠剤がのみにくい場合は、粉薬やドライシロップがあります。

テオドールは徐放性剤として、ゆっくりと胃や腸に溶け出します。これは、テオドールをゆっくりと効かせるためです。

テオドールは難しいお薬で、血中濃度がある一定以上ないと効果が得られないと同時に、血中濃度が高すぎると副作用が出現するからです。

個人差もありますが、一般的にテオフィリンの血中濃度が8~20μg/mlですと効果が期待でき、テオフィリンの血中濃度が20μg/mlですと副作用が出現します。さらにはテオフィリンの血中濃度が30~40μg/ml以上ですと、痙攣や呼吸が止まるといった重篤なテオフィリン中毒が出現する可能性があります。

テオドールの血中濃度は、量の目安があるわけではありません。体の大きさ、腎臓や肝臓の機能の状態、さらには一緒に飲むお薬との飲み合わせでテオフィリンの血中濃度は千差万別です。

それこそテオフィリンの血中濃度が安定していても、熱がでたり食事がとれなったりすると変動することがあります。そのためテオドールを内服する際は、採血して定期的にテオフィリンの血中濃度を確認する必要があります。

 

3.テオドールの薬価とは?

テオドールは、1984年と古い薬のためジェネリック医薬品が発売されています。

テオドールは1984年と非常に古いお薬のため、数多くのジェネリック医薬品が登場しています。まずは先発品をみてみましょう。

<先発品>

商品名 剤形 薬価
テオドール錠 50mg 6.9円
テオドール錠 100mg 10.3円
テオドール錠 200mg 15.9円
テオドール顆粒 20% 19.7円/g
テオドールドライシロップ 20% 89.5円/g
テオドールシロップ 2% 10.3円/ml
テオロング錠 50mg 6.7円
テオロング錠 100mg 11.4円
テオロング錠 200mg 17.3円
テオロングドライシロップ 50% 37.1円/ml

<後発品(ジェネリック)>

商品名 剤形 薬価
テオフィリン徐放錠 50mg 6.7円
テオフィリン徐放錠 100mg 5.6円
テオフィリン徐放錠 200mg 5.8円
テオフィリン徐放ドライシロップ 20% 53円/g

※2016年7月13日の薬価です。

テオドールは毎日2回内服します。そのためこの値段を2倍すると一日の薬価となります。一方でテオドールは、同じ先発品としてエーザイからテオロングという商品名でも発売されています。薬価は大きくはかわりません。

また、1日1回の服用のユニフィルLA錠が大塚製薬から発売されています。最高血中濃度到達時間がテオドールの2倍の12時間ほどですが、1日1回での服用ではやや血中濃度が安定しません。

さらには後発薬として、テオフィリン徐放錠やドライシロップが発売されています。大きい剤形の方が後発品にすると経済的になっています。

ジェネリック医薬品として、さまざまな製薬会社からテオフィリン製剤が発売されていました。近年では名称の統一がすすんでいます。かつては以下のような商品名で発売されていましたが、現在はテオフィリン徐放剤「会社の略称」といった形で発売されています。

  • チルミン
  • テルバンス
  • テオフルマート
  • テオスロー
  • スロービッド
  • フレムフィリン
  • アーデフィリン
  • セキロイド

 

4.テオドールが向いてる人は?

  • 喘息やCOPDで吸入薬が使用できない方
  • 喘息やCOPDで吸入薬でもコントロールできない難治性の方
  • 病気や他の薬を定期的に飲んでない若年者の方

喘息もCOPDも、現在は内服ではなく吸入薬が中心の疾患です。気管支に直接薬を投与することで効果も高く、副作用も少ないためです。一方で吸入薬はうまく吸えない人などもいると思います。そういった方はテオドールなどを中心に内服薬を投与することになると思います。

また喘息では、吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤、COPDでは抗コリン薬とβ2刺激薬の吸入薬を投与していても症状が改善できない難治性の方がいます。

テオドールは、

  • 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
  • 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

の二つを併せ持ったお薬です。さらには他の吸入薬と併用することで気管支拡張作用と抗炎症作用の相乗効果が期待できるとされています。そのため難治性の喘息やCOPDの方は積極的にテオドールの適応になると思います。

 

良い薬なのですが、定期的にテオフィリンの血中濃度を測らなければなりません。さらにテオドールは他の病気や飲み薬で血中濃度が変動しやすい病気です。そのため向いてる人としてあげるのであれば、喘息やCOPD以外の病気がない人の方が望ましいです。

さらに高齢者は、体調が悪くなると肝臓や腎臓を含めて全身状態が悪化することが多いです。肝臓や腎臓が悪くなると、テオフィリンの血中濃度は急激に上がりやすくなります。そのため高齢者に使用する場合は、テオドールは慎重を期す必要があります。高齢者よりは若年者の方が向いてるお薬と言えます。

テオドールは効果も期待できる反面、副作用も怖いお薬です。テオドールについて理解を深めてから使用するようにしましょう。

 

まとめ

<メリット>

  • 長期管理薬として喘息を予防する
  • COPDの治療にも使える
  • 難治性の喘息やCOPDの治療選択肢のひとつになる
  • 内服なので、うまく吸入できない人でも使える
  • 薬価が安い

<デメリット>

  • 吸入の薬の方が効果が高い
  • 副作用が多い
  • 定期的に血中濃度を採血で測定する必要がある
  • 飲み合わせが悪いものが多い

  <向いてる人>

  • 喘息やCOPDで吸入薬が使用できない方
  • 喘息やCOPDで吸入薬でもコントロールできない難治性の方
  • 病気や他の薬を定期的に飲んでない若年者の方

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