スピリーバの副作用とその対処法

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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スピリーバ(一般名:チオトロピウム)は、抗コリン薬の吸入薬として主にCOPD(肺気腫)に対して治療されているお薬です。2015年から重症の喘息でも、スピリーバレスピマットが適応になりました。

「コリン」とはアセチルコリンのことを意味していますが、アセチルコリンは身体の様々なところで副交感神経を興奮させます。副交感神経が気管支で興奮すると、気道が狭くなるという作用が生じます。スピリーバはこの反応を抑制することで気道を広げる効果があるお薬です。

一方で抗コリン薬は吸入しても気管支から吸収され全身に作用するお薬です。このスピリーバの代表的な副作用としては,

  • 口渇
  • 排尿障害

があります。これらの対策も含めて、スピリーバの副作用と安全性を確認してみましょう。

 

1.スピリーバの副作用の特徴

スピリーバの副作用は、有名なものとして口渇と排尿障害があります。

COPD患者さん849例にスピリーバを投与したところ、主な副作用は、

  • 口渇51例(6.01%)

と報告されています。さらに最近適応が通った喘息に対して、2,100例にスピリーバを投与したところ、517例中38例(7.35%)に副作用が認められました。こちらも主な副作用は、

  • 口渇7例(1.35%)

と報告されています。このように、頻度の差はあれ口渇が最も多いスピリーバの副作用です。

口渇とはいわゆる喉の渇きです。アセチルコリンは唾液腺の受容体(M3受容体)を刺激することで、唾液の分泌を促します。ですからこの働きを邪魔する抗コリン作用が働くと、唾液が作られなくなってしまいます。身体の水分が足りなくなったわけではありません。

もう一つ重大なスピリーバの副作用としては、排尿障害があります。特に男性の方に多く認める副作用です。というのは、前立腺肥大によって尿が出にくくなるからです。前立腺肥大症とは、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。

高齢者の男性に非常に多く、この前立腺肥大症が70代だと80%の方にあるともいわれています。気が付かずに生活している人も多いと思います。もともと前立腺肥大症で尿の通り道が狭い状態で抗コリン薬を投与すると、膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿の出を悪くする作用があります。

先ほどの副作用報告は臨床試験でのものですが、臨床試験では前立腺肥大症の患者さんは除外されるため、数字では出てきません。しかし臨床の場では、前立腺肥大症であるにも関わらず気づいていない人にスピリーバを処方して、吸入してから排尿障害が起きた後に前立腺肥大だったと気が付くケースが多々あります。

続けて、スピリーバのそれぞれの副作用と対策についてみていきましょう。

 

2.スピリーバの口渇が起こる理由と対策は?

抗コリン作用で唾液がでなくなることで喉が渇きます。水分がなくなったわけではないので絶対に安易に水分をとって解決しようとしないでください。

スピリーバを吸うとなぜ口が渇くのでしょうか?

アセチルコリンは唾液腺の受容体(M3受容体)を刺激することで、唾液の分泌を促します。普段は水分量を体が完治しながら量が少なくなればアセチルコリンの刺激が抑制されることで唾液が減り口が渇きます。

スピリーバはこの唾液の受容体をブロックすることで、口が渇いたように錯覚してしまうのです。ここで大切なことは、水分が減って口が渇いているわけではないということです。絶対にやってはいけないことは、安易に水分を取ってしまうことです。

特にアルコールやジュースは非常に危険です。

アルコールは利尿作用があるため、体内の水分自体が減ってしまいます。さらに口が渇いてしまうため、ついつい飲みすぎてしまう原因になってしまいます。またジュースなどで過度に糖分をとりすぎると、糖尿病になってしまうことがあります。

スピリーバを吸入している方は、大部分がCOPDの方かと思います。実はCOPD自体が、糖尿病の危険因子として最近注目されています。実に正常の人の1.5倍、COPDの方は糖尿病になりやすいといわれているのです。肺で燃え上がった炎症がストレスになり、糖尿病が発症するといわれています。そのため、ただでさえ糖尿病になりやすい人が、糖分を多量に摂取することは非常に危険です。

では、アルコールやジュースでなければ問題ないでしょうか?実は、水分を過量に摂取すること自体がよくありません。COPDは肺がタバコでボロボロになった病気です。これによって息が思いっきり吐けなる病気です。息が吐けなくなった分、頑張る臓器は心臓です。

心臓は肺がやられた分、一生懸命動いて酸素を供給しようとします。しかし心臓は休むことができません。24時間、常に動き続けています。ですからCOPDの人の心臓は、へばり気味です。こういったCOPDの人の心臓は、心不全といって心臓のポンプ機能が弱ってる可能性があります。

この心臓が弱ってるところに大量の水が加わると、容易に心不全が悪化してしまいます。足がむくみだしたら危険信号です。

では水分が取れないのであれば、口の渇きはどう対策したら良いのでしょうか?

口の渇きである口渇に対して、生活習慣からできる対策としては以下のようなものがあります。

  1. よく噛む
  2. バランスのよい食事
  3. 昆布茶を摂取する
  4. 酒・タバコ・アルコールを控える
  5. 歯磨きをする
  6. 唾液腺をマッサージする

まずは食事習慣を見直してみましょう。よく噛んで食事をすることがとても重要です。噛むことで刺激になり唾液が分泌されます。

また栄養分の偏りは微量元素の摂取不足に繋がりますので、バランスよく食事をすることも大事です。味覚に重要な亜鉛は普通に食事をしている場合は問題ありませんが、インスタント食品や冷凍食品やファーストフードに偏った生活をしていると欠乏してしまいます。特別なサプリなどは必要ありませんが、食生活をしっかりとバランスよくすることが重要です。

うまみ成分が唾液の分泌を促すということもあり、昆布茶などもおすすめです。また、タバコやカフェインやアルコールを控えることで口腔粘膜への刺激が減りますので、唾液分泌が促進されます。

また歯磨きは非常に効果的です。口腔内を清潔に保つことで肺炎予防にもなります。ぜひ寝る前だけじゃなく、毎食後取り入れてください。

さらには唾液腺を積極的にマッサージすることで唾液が分泌されるようになります。

スピリーバの口渇について詳しく対策をみたい方は、「口の渇きは薬のせい?口渇の原因と対策」を一読してみてください。

 

3.スピリーバで排尿障害が起こる理由と対策は?

前立腺肥大がある男性の方に抗コリン薬を使用すると、前立腺肥大の症状が悪化することで排尿障害が出現します。

スピリーバでの排尿障害は、男性特有の症状です。具体的にどのような症状があるかというと、

  • 夜間にトイレに行く回数が多くなる
  • 尿の勢いがない
  • 尿がすぐ出ない、少ししか出ない
  • 時間がかかる(排尿障害)など

などが挙げられます。これって実は、前立腺肥大の症状なのです。前立腺肥大症について簡単にまとめてみましょう。前立腺は男性のみに存在する生殖器です。膀胱の真下にあり、尿道を取り囲むかたちで存在します。

前立腺肥大症とは、この膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。

前立腺肥大症は、男性では50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%にみられます。つまり高齢者であると、ほぼ必発で起きる病気です。上にあげた症状に心当たりがあるご高齢の方は、前立腺肥大症がもしかしたら隠れているかもしれません。

一方で前立腺肥大は、肥大し始めている初期は膀胱を刺激する症状ですが、さらに悪化すると尿道が閉塞して尿が完全に出なくなってしまいます。尿はいわば、体の老廃物を排泄するための液体です。それが出せずに体に逆流してしまうと、相当危険な状態といえます。こうなると、緊急性を要する状態になります。

前立肥大症自体を詳しく知りたい方は、「前立腺肥大症とは?前立腺肥大症の症状と進み方」を一読してみてください。

ではスピリーバを吸入すると、どうして前立腺肥大症が悪化するのでしょうか?これにも抗コリン作用が関係しています。抗コリン作用は膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿の出を悪くする作用があります。前立腺自体を肥大する効果はありません。

つまり潜在的に前立腺肥大症があった人が気が付かずにスピリーバを吸入することで、膀胱の収縮力が低下して症状が表に出てくるのです。

一方でスピリーバは、薬を吸って気管支に作用するお薬です。口腔内はスピリーバは通過するため口渇は起きやすいですが、気管支からスピリーバの成分が吸収されて膀胱にまで作用する量は微量といわれています。

そのため軽度の前立腺肥大症であれば、COPDの症状を考慮してスピリーバを投与することがあります。先ほど記載したように前立腺自体を肥大させるお薬ではないため、もし排尿障害が悪化したらスピリーバを中止すれば通常は良くなります。

一方で排尿障害出現した場合の対策は、日常生活だけではなかなか難しいです。そのため、前立腺肥大のお薬を内服するのが一般的です。前立腺肥大症のお薬としては、

  1. αアドレナリン受容体遮断薬(α遮断薬)
  2. 5α還元酵素阻害薬(抗男性ホルモン薬)
  3. PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬

などがあります。この中で最もよく使うのがα1遮断薬です。α受容体遮断薬は、前立腺肥大症に伴う排尿困難の薬として、現在最も多く使われる内服薬です。前立腺平滑筋にあるα1受容体を遮断することで前立腺の筋肉を弛緩させ、その結果として、前立腺の尿道に対する圧迫を軽減します。

α1受容体遮断薬は、

  • ハルナール(一般名:タムスロシン)
  • ユリーフ(一般名:シロドシン)
  • フリバス(一般名:ナフトピジル)

などが一般的です。これらα1受容体遮断薬を内服していると、1週間以内で症状改善効果と満足度が得られます。さらにお薬を続けることで、継続投与における長期的な改善効果も示されています。

ただし、これらのα1受容体遮断薬を使用しても症状が改善しない、むしろ悪化したとなった場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。α1受容体遮断薬が効かないほど前立腺肥大症が重症な場合は、最悪尿閉になってしまいます。尿閉になると命にかかわってしまうため、非常に危険な状態です。

ここまで前立腺肥大症が重篤な場合は、スピリーバは禁忌になりますので即中止することになります。

 

まとめ

  • スピリーバの副作用は抗コリン作用にて口渇と排尿障害が副作用としてあります。
  • スピリーバの副作用である口渇は抗コリン作用で唾液の分泌が抑制されることで起きます。
  • スピリーバの副作用である口渇は水分が体内から少なくなったわけではありません。水分を大量に摂取して補おうと絶対にしないでください。
  • スピリーバの副作用の口渇の対策としては、よく噛む、歯ブラシをする、唾液腺をマッサージすることなどに注目してみてください。
  • スピリーバの副作用である排尿障害は前立腺肥大症の悪化で起きるため、男性特有の副作用です。
  • スピリーバの副作用である排尿障害は膀胱の収縮力低下を引き起こすことで、前立腺肥大症の症状を悪化させます。
  • スピリーバの副作用である排尿障害は軽度であればα1遮断薬を内服しながら加療を継続する場合もあります。
  • スピリーバの副作用である排尿障害は重篤になると尿閉になり命にも係わります。重篤な場合はすぐにスピリーバを中止しましょう。

口渇、排尿障害ともに辛い症状です。スピリーバは一方で毎日吸うことで効果を発揮します。このような症状をずっと抱えていくのはつらいですし、続けるのは難しいでしょう。その場合はスピリーバを自己中断する前にまず医師に相談しましょう。

自己中断してしまうとCOPDの症状自体が悪化してしまいもっとつらい症状が出るかもしれません。スピリーバが難しい場合はβ2刺激薬など代打薬があるためそちらに切り替えるようにしましょう。

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