前立腺肥大症とは?前立腺肥大症の症状と進み方

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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年を取ってくると、おっしっこのトラブルが出てくることがあります。

  • トイレがやたら近い
  • 尿が出にくい
  • 尿切れが悪い

このような症状が出た方はいませんか?これは前立腺肥大症の症状かもしれません。

男性には、膀胱の下に前立腺というものがあります。前立腺は年をとるにつれて大きくなっていくので、誰にでも起こりうるのです。

前立腺肥大症とはどのようなものでしょうか?また、前立腺肥大症の症状はどのように進んでいくのでしょうか?

ここでは、前立腺肥大症の症状と進み方について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症は、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。

前立腺とはそもそもなんだろう?って思う人もいるかもしれません。前立腺は男性のみに存在する生殖器です。膀胱の真下にあり、尿道を取り囲むかたちで存在します。前立腺はクルミほどの大きさで、重さは数十グラムです。この前立腺の機能としては、

  1. 精嚢から分泌された精嚢液を精巣で作られた精子と混合し精液を貯留
  2. 排尿機能の調整

の2つになります。この②の作用がうまくいかなくなることが排尿障害の原因となります。

正常に尿をため込む場合は、膀胱の筋肉が緩むことでスペースが広がります。さらに尿道と前立腺の筋肉が収縮して、尿の通り道を塞いでしまうのです。

排尿する場合は逆で、前立腺と尿道の筋肉が緩んで尿の通り道ができるとともに、膀胱が収縮することで尿を押し出す働きがあります。

前立腺肥大症とは、この膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。症状は人によって様々ですが、健康なときには無意識に済ませている排尿がスムーズにいかなくなることで、日常生活に大きな支障をきたします。具体的には、

  • 尿の勢いが低下
  • 夜間の頻尿
  • 残尿感

が症状として現れます。

ガンとは違って良性の増殖ですので、生命にかかわるような病気ではありません。(ただし前立腺癌も似たような症状で発病することがあります。)

ですが放っておくと症状が進んでいき、尿閉といって尿が全く出なくなることもあります。そのため、前立腺肥大症がどのように症状が進んでいくのかを確認していきましょう。

 

2.前立腺肥大症の症状と病期

前立腺肥大症の病気は、第1病期:膀胱刺激期、第2病期:残尿発生期、第3病期:慢性尿閉期の3段階に分けられます。

前立腺肥大症が悪化するとどうなるのでしょうか。前立腺肥大症の症状の進み方によって病期が分けられています。病期を見ていくことで、前立腺肥大症の症状の進み方をみていきましょう。

①第1病期(膀胱刺激期)

  • 夜間にトイレに行く回数が多くなる
  • 尿の勢いがない
  • 尿がすぐ出ない、少ししか出ない
  • 時間がかかる(排尿障害)など

などの症状が出てきます。前立腺が後ろ側の尿道を刺激するために、会陰部や陰嚢部の不快感、重圧感、頻尿(特に夜間の頻尿)、残尿感などの訴えが出てきます。

また、軽い排尿困難感があり、尿が出始めるまでに時間を要する遷延性頻尿、尿が出始めても尿の勢いが弱く、排尿に時間を要する苒延(ぜんえん)性頻尿などの症状がみられます。

この時期は、膀胱の排尿筋の代償性肥大(1対になっている臓器の片方の機能が障害されると、もう片方の機能的な負荷が大きくなるために肥大すること)を伴うので、排尿はほぼ正常に機能し、残尿はほとんどありません。

前立腺肥大症は、男性では50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%にみられます。つまり高齢者であると、ほぼ必発で起きる病気です。上にあげた症状に心当たりがあるご高齢の方は、前立腺肥大症がもしかしたら隠れているかもしれません。

②第2病期(残尿発生期)

第1病期から前立腺肥大がさらに進行すると、尿道を狭めてしまい排尿障害が強くなり、排尿時にいきむ必要が出てきます。

さらに、排尿障害が強くなると、膀胱内の尿を全部出すことができず、尿が中断したり尿がぽたぽたと垂れるように出たり、尿のキレが悪くなったりします。

そして残尿がみられるようになり、その量はしだいに増加していきます。この時期に排尿をこらえたり、飲酒や腰の冷え、便秘などが原因となって、膀胱内に尿が溜まっているにも関わらず排尿が全く困難になるという急性完全尿閉を発症することがあります。

残尿が多くなると、細菌感染、結石の形成にもつながる恐れがあるため、そのような場合は手術の適応となります。

このように第2病期まで症状が進行すると、急激に悪化するリスクがあります。このため、前立腺肥大症の治療が必要になります。ここまで前立腺が肥大した場合は、放っておくと大変なことになるかもしれないので注意が必要です。

③第3病期(慢性尿閉期)

昼夜を問わずトイレに行く回数が増えて、排尿にかかる時間が長くなり、一回の排尿に数分かかるようになります。場合によっては、尿が全く出なくなってしまうこともあります。さらに排尿障害が進行し、いきんでも排尿できず、残尿は常に300~400mlとなります。

さらに膀胱内の圧が大幅に上昇し、尿道の抵抗に打ち勝ったときに意図せず尿が漏れてしまうことがあります。これを溢流性尿失禁といいます。

この時期になると、膀胱内の圧はつねに上がっていくため、尿が逆流して膀胱の上にある腎臓や尿の通り道にも悪影響を及ぼします。腎機能が低下すると尿を濃縮する機能も低下するため、尿量が増加し脱水を生じる危険性が高くなります。

腎機能の善し悪しをあらわすBUNや血清クレアチニンという数値も異常値となり、慢性腎臓病に移行します。なお、前立腺肥大症のすべての症例が、これらの段階を経て進行していくとは限りません。

ただし完全に尿が出せなくなる尿閉になると、このリスクは極めて高いです。尿はいわば、体の老廃物を排泄するための液体です。それが出せずに体に逆流した時点で、相当危険な状態といえます。

そして尿路が閉塞していると感染が起こり、炎症は膀胱や腎臓、前立腺におよぶことがあります。そして、前立腺の感染から精巣上体炎という病気も発症する恐れがあります。

また、尿が停滞することによって膀胱結石を合併することもあります。第3期まで前立腺肥大症の症状が進んでしまうと、放っておくと命にかかわることもあるため注意が必要です。

 

3.前立腺肥大症の症状と病期のチェック

「I-PSS(国際前立腺症状スコア)」という質問表が診断に使われています。症状と病期をチェックしてみましょう。

先ほど、

  1. 膀胱刺激期
  2. 残尿発生期
  3. 慢性尿閉期

の3つの病期をあげました。実際はエコーなどで前立腺自体がどれくらい大きいのかなど、泌尿器の先生に診てもらう必要がありますが、そもそも泌尿器に行くかどうか悩む人も多いと思います。

どうしても恥ずかしさが先行して、受診をためらわれてしまう人が多いのも事実です。そのような人のために、I-PSS(国際前立腺症状スコア)を載せておきます。

前立腺肥大症のスコア

前立腺に関係する症状(尿の勢い、排尿回数、尿が残った感じなど)を点数化して前立腺肥大症の重症度を確認するスコアとなっています。

I-PSS(国際前立腺症状スコア)の質問表は、実際の診断の際にも使われています。一般に7点以下が軽症、20点以上が重症とされています。このスコアが20点以上の人は非常に前立腺肥大が重篤な可能性があるため、急いで病院に行くようにしましょう。

 

まとめ

前立腺肥大症は、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。

前立腺肥大症の病気は、第1病期:膀胱刺激期、第2病期:残尿発生期、第3病期:慢性尿閉期の3段階に分けられます。

「I-PSS(国際前立腺症状スコア)」という質問表が診断に使われています。症状と病期をチェックしてみましょう。

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