病気で退職したら収入はどうなる?雇用保険(失業保険)の基本手当について

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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雇用保険は、何らかの理由によって会社をやめたときを支えてくれる保険になります。

仕事をやめてすぐに次の仕事が見つかればよいですが、なかなか新しい仕事がみつからないこともあります。そんな中で、安心して次の就職先を探せるように、雇用保険では手当が支給されます。

会社をやめる理由は人によって様々だと思います。定年や自己都合、会社の倒産等の理由で離職など、理由によってお金の支給のされ方もかわってきます。

失業保険と呼ぶ方がイメージがつきやすい方もいるかもしれません。しかし、実際には失業保険という保険はありません。よく失業保険と言われているものは、雇用保険の求職者給付と言われる給付の中の基本手当の事をさしています。

ここでは、雇用保険の基本手当の受給について、精神科や心療内科に通院している方の場合の注意点を交えて紹介していきたいと思います。

 

1.雇用保険基本手当の受給資格

病気で仕事をやめた方は、手当の受給延長の手続きを忘れないようにしましょう。失業理由によって、受給要件も異なります。ハローワークで早めに相談することをお勧めします。

雇用保険の被保険者が、離職して以下の条件を満たす必要があります。

 

①「失業の状態」でハローワークに求職の申し込みを行うこと

ここでいう「失業の状態」とは、本人に積極的な就職の意志があり、またいつでも就職できる能力があるにも関わらず、本人達の努力では仕事につくことができない状態を指します。

この場合、怪我や病気、育児や介護などですぐには就職できない状態は「失業の状態」を満たさない事となります。

精神科や心療内科に通院中の方では、傷病手当金を支給されていることがあるかと思います。傷病手当金が支給されている方は、「失業の状態」ではありません。療養が必要な方であり、傷病手当金の支給が終わって「失業の状態=働ける状態」になれば、雇用保険の基本手当が支給されます。

このため通院中の方は、受給延長の手続きが必要です。「雇用保険受給資格に係る病状証明書」という書類を主治医に記載してもらい、週20時間以上の労働が可能と証明されれば、「失業の状態」を満たすことが出来る様になります。書類はハローワークで貰うことが出来ます。

もし、週20時間以上の労働が不可だった場合は、基本手当の受給期間を延長する必要があります。原則として手当が受給可能な期間は、離職した日の翌日から1年間と決まっています。ですがハローワークに延長の申請をすることで、最長3年間の延長をすることができます。

ここで注意が必要な点としては、受給延長が申請できる期間はとても短いということです。

離職日の翌日(求職申込以降にケガや病気をした場合は、その日からになります。)から30日を過ぎて、以降の1ヶ月以内の期間の中で申請が必要になります。このため「失業の状態」を満たせていない方は、必ず期間内に行うようにして下さい。

 

②在職時に一定の雇用保険被保険者期間を満たしていること

ここでいう一定の期間とは、離職日以前2年間に、雇用保険被保険者期間が12か月以上あることを指します。

被保険者期間は、月の中で賃金の支払いの基礎となった日が11日以上ある場合に、その月を1ヶ月としてカウントします。つまりは離職日以前2年間に、月に11日以上通常出勤した日が12か月以上あれば問題ありません。

また、特定受給資格者または特定理由離職者に当てはまる場合は、離職日以前1年間に、雇用保険被保険者期間が6か月以上あれば条件を満たす形となります。

特定受給資格者とは、

  • 会社の倒産や会社からの解雇(自己に重大な理由や責任ある場合を除く)によって離職した人
  • 会社から適切に賃金が払われていなかった人
  • 過剰な時間外労働があった人
  • 上司や同僚から著しい冷遇や嫌がらせがあった人

これらの理由で退職をした人などを指し、このほかにも様々な要件が存在します。

特定理由離職者とは、

  • 期間の定めのある労働契約を満了し、その契約が更新されなかったことにより離職をした人
  • 妊娠や育児、介護が原因で離職をした人
  • 病気やケガ、障害が原因で離職した人
  • 結婚などの事情で転居が必要になって離職をした人
  • 事業主からの転居を伴う転勤の回避の為に離職をした人

などを指し、このほかにも様々な要件が存在します。

いずれにしても要件が沢山ある上に、個人のケースバイケースの事情をどうハローワークが判断するかは分かりません。このため基本手当の申請の際は、ハローワークの担当職員に自らの事情をしっかり説明し、自分が特定受給資格者や特定理由離職者に当てはまるかを確認することをお勧めします。

 

2.雇用保険の基本手当の給付日数

雇用保険の受給期間と給付日数は異なります。受給期間内に、決められた給付日数の基本手当を受け取れます。

基本手当の給付日数は、雇用保険被保険者の年齢や被保険者期間、離職の理由により決まります。受給期間内に、決められた給付日数分の手当てが支給される形となります。

例えば受給期間の延長を特に行っていなく、給付日数が90日の方の場合は、離職の日以降、1年間の間であれば90日分の基本手当を受給できることになります。受給期間と給付日数は混同されやすいですが別の物です。以下が給付日数です。

<一般受給者の場合の給付日数>

雇用保険の給付日数について

<特定受給資格者や特定理由離職者の場合の給付日数>

雇用保険の離職時年齢と被保険者期間について

また、身体障害者、知的障害者、精神障害者等は、「就職困難者」という要件に該当することがあります。

精神科や心療内科に通院中の方の場合は、精神障害者保健福祉手帳を所持しているか、主治医作成の意見書(フォーマットはハローワークの窓口で貰えます)をハローワークに提出し、その内容が認められれば該当となります。

しかしながら主治医意見書の方法をとる場合は、ハローワークごとに扱いが違う可能性があります。ですから就職困難者該当するかどうかは、ご自身の管轄のハローワークに確認をとっておくことをお勧めします。以下が給付日数です。

<就職困難者の場合の給付日数>

就労困難者の被保険者期間について

※給付日数が330日か360日の方の場合、受給期間とその延長は以下の様になります。

  • 330日の場合
    受給期間は1年と30日
    受給期間の延長は最大3年-30日
  • 360日の場合
    受給期間は1年と60日
    受給期間の延長は最大3年-60日

 

3.雇用保険の支給額

直前の6か月での賃金をもとに計算します。年齢によって雇用保険下支給額上限も決まっています。

受給できる1日の金額のことを「基本手当日額」と言います。

この額の算出方法としては、

[離職日直前6か月に毎月支払われていた賃金の合計]÷180×調整率

となります。賃金に賞与は含まないです。また、調整率については、

  • 60歳未満は、50/100~80/100
  • 60歳以上65歳未満は、45/100~80/100

となっており、賃金が低いほど高い率になるよう決まっています。また基本手当日額には、年齢区分によって以下の様に上限額が決まっています。

雇用保険の年齢での上限額について

 

4.雇用保険での傷病手当とは?

雇用保険の基本手当をもらっていた人が、途中で急に病気やケガで仕事が出来なくなった場合に支給される手当が雇用保険の傷病手当です。健康保険の傷病手当金とは異なります。

基本手当の受給資格者が離職をすると、ハローワークに求職申し込みをします。その後に病気やケガで仕事に就くことができない状態(いわゆる「失業の状態」を満たさなくなった状態)となり、それが15日以上続いた時、雇用保険での傷病手当が支給されます。

雇用保険での傷病手当は、受給期間内の基本手当を貰うことが出来ない日数分が支給されます。支給される額は、基本手当日額と同じです。そして支給された日数分は所定給付日数からひかれますので、プラスアルファでもらえる手当ではありません。

15日以上30日未満の場合は傷病手当の支給になりますが、30日経過以降は基本手当の受給期間延長ができるようになるので、傷病手当を貰うか延長を行うかを選ぶことが出来ます。

健康保険の傷病手当金と名前はよく似ていますが、傷病手当金は在職中に怪我や病気で就労が出来なくなってしまう人が貰う手当(主に休職者が対象)なので、雇用保険の傷病手当とは別のものになります。

基本手当を貰う条件を満たしていた人が、申し込み後に急遽怪我や病気で満たさなくなってしまった場合に、基本手当を補完するために支払われるのが雇用保険の傷病手当です。

 

5.雇用保険の基本手当の申請手順

雇用保険の基本手当の申請手続きについて、流れと必要書類をお伝えしていきます。

①離職をして「雇用保険被保険者離職票-1」と「雇用保険被保険者離職票-2」を受けとる

離職票は会社から届く場合と本人が取りに行く場合があります。事業主が行方不明、会社から離職票がもらえない等、何かしらかの問題がある場合は、住居地管轄のハローワークに相談するのをお勧めします。

②受給資格の決定をする

住居地管轄のハローワークで求職の申し込みを行い、「雇用保険被保険者離職票-1,2」を提出します。提出の際に併せて以下のものが必要になります。

  • 運転免許証、住基カードのような本人確認、住所及び年齢を確認できる官公署の発行した写真付きのもの
  • 写真(たて3㎝、よこ2.5㎝の正面上半身のもので3か月以内の撮影)2枚
  • 印鑑
  • 本人名義の普通預金通帳(郵便局も含む)

この後に受給資格の決定や離職理由についての判定が行われ、受給者説明会の日時のお知らせや、雇用保険受給資格者のしおりのお渡しがあり、待期期間(※)に入ります。

※待期期間と給付制限について

受給資格決定後に、7日間の待期期間に入ります。この待期期間後に受給者説明会等を行っていくことになります。この7日間の間に日雇いなどでもアルバイトをしてしまうと待期とみなされず、働いた翌日から再び7日間待期期間となってしまうので注意が必要です。

さらに離職理由によっては、待期期間後3か月の給付制限が発生します。この3か月間は基本手当をもらうことが出来ず、給付制限が終わって以降の失業認定日から、初回の基本手当が振り込まれることになります。

給付制限が発生してしまう離職条件とは、特定受給資格者・特定理由離職者以外の自己都合退職です。

心の病気が原因で離職を余儀なくされた場合などは、特定理由離職者に該当する可能性があります。このため「雇用保険の基本手当の受給資格」の項でも説明しましたように、自分がどの区分に当てはまるのかを事前にハローワーク職員によく相談しておくことが大切になります。

③雇用保険受給者初回説明会

出席必須のもので、指定の日時に開催されます。

雇用保険受給資格者のしおりと印鑑、筆記用具が必要です。

また、雇用保険受給資格者証、失業認定申告書のお渡しと第1回目の失業認定日のお知らせがあります。

④失業認定日

第1回目の失業認定日です。3か月の給付制限になっていない場合は通常、認定日から5営業日で指定した金融機関の口座に基本手当が振り込まれます。

第1回目の失業認定日以降、4週に1度ごとに失業認定を行います。指定日にハローワークへ行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況(※)等を記入して、「雇用保険受給資格者証」と共に提出します。この流れを給付日数が満了するまで行っていくこととなります。

※求職活動の頻度と範囲について

失業認定日から次の失業認定日の間で、原則として2回以上の求職活動(※)の実績が必要と決まっています。以下のものが求職活動の範囲と定められており、ハローワークやその他媒体で求人情報を閲覧する、知人等へ紹介依頼をするといったものは範囲には入らないとされています。

  • 求人への応募
  • ハローワークが行う職業相談や職業紹介、各種講習やセミナーを受ける
  • 許可・届出のある民間機関が行う職業相談や職業紹介、求職活動法指導のセミナー等を受ける
  • 公的機関等が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習、セミナー個別相談ができる企業説明会等の受講、参加等
  • 再就職に関する各種国家試験、検定等の資格試験の受験

上記の範囲はあくまで原則なので、公共職業訓練等の受講中や、採用通知を待っている間など、求職活動実績を必要としない場合もあります。

また、以前に私が関わった方の中には、ハローワークでの求人情報検索のみでも求職活動にカウントされた場合もありました。ハローワークごとや個人の事情によっても変わってくる可能性もあるので、その点についてもハローワークの担当職員に相談してみるのも良いかもしれません。

 

6.基本手当を受給しない方が良い場合

家族の健康保険の扶養に入りたい場合は、雇用保険の基本手当は受給しない方がよいこともあります。

雇用保険の基本手当は経済援助になる制度ではありますが、場合によっては受給しないほうが良いこともあります。

それは、手当の受給期間中でも家族の健康保険の扶養に自身が入りたい場合です。

基本手当の日額が3612円以上になる場合、その年の収入の見込みが130万円以上あるとみなされてしまい、保険の扶養に入ることができなくなってしまいます。

その場合は個人的に、国民健康保険や国民年金の支払いが必要になります。

 

まとめ

雇用保険の基本手当は離職後から安心して次の就職先を探せるように出る生活に必要な手当てのことです。

心療内科等に通院中の方は、まずは自身が週20時間以上の労働が可能であるかを主治医に相談する必要があります。もし、週20時間以上の労働が難しい場合は、決められた期間内に受給期間の延長を行うことが大切です。

また、申請の際は、ハローワークの担当職員に自らの事情をしっかり説明し、自分が特定受給資格者や特定理由離職者、就職困難者に当てはまるかを確認することも大切です。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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