スピオルトの副作用にはどのようなものがあるか

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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スピオルトは抗コリン薬であるスピリーバに、β2刺激薬であるオルダテロールを加えた合剤のお薬になります。2種類の薬の効果で単独よりも強力に気管支を広げる作用がありCOPDに主に使用するお薬です。

合剤の問題としては、抗コリン薬とβ2刺激薬両方の副作用が出現するのが特徴的です。今までスピリーバを使用していてスピオルトに変えた方は、β2刺激薬の副作用も知っておく必要があります。

ここでは、スピオルトの副作用についてみていきましょう。

 

1.スピオルトの副作用は?

スピオルトの副作用は、スピリーバ同様に口渇が最も多いです。

スピオルトを52週間投与した国内での臨床試験では、1070例(日本人 120例を含む)中76例(7.1%)に副作用が認められたと報告されています。主な副作用は、

  • 口渇14例(1.3%)

となっています。これは、抗コリン薬のチオトロピウムによる副作用です。

なお重大な副作用として、以下の4つが示されています。

  1. 心不全、心房細動、期外収縮(1%未満):心機能の異常はβ2刺激薬および抗コリン薬両方起こりえます。
  2. イレウス(頻度不明):抗コリン薬の作用でお腹の動きが弱くなり非常に稀ですが、イレウス(腸閉塞)の可能性があります。
  3. 閉塞隅角緑内障(頻度不明):抗コリン薬にて閉塞隅角緑内障を誘発することがあるため、視力低下、眼痛、頭痛、眼の充血等があらわれた場合には中止する必要があります。
  4. アナフィラキシー(頻度不明):アナフィラキシー(蕁麻疹、血管浮腫、呼吸困難等)は抗コリン薬、β2刺激薬に限らず全てのお薬で起きえます。

特に①心機能の異常は、抗コリン作用とβ2刺激作用の両方の影響で生じます。そもそもCOPDという病気自体で、心機能の異常は起こりやすいので注意が必要です。

肺の機能が低下しているとその分心臓が頑張ろうとして無理をしています。無理をした分、疲れてへばってきて心不全、心房細動、期外収縮は起こりやすくなります。薬の副作用も含めて、COPDの方は定期的に心臓の機能は調べた方が良いでしょう。

次に抗コリン薬、β2刺激薬でおこりやすい副作用を揚げていきます。副作用が起きた時、どちらの作用で起きているか理解することはとても大切です。場合によっては合剤から単剤への切り替えも考慮する必要が出てきます。

 

2.抗コリン薬の副作用は?

主に多いのは口渇と前立腺肥大に伴う排尿障害です。

抗コリン薬はチオトロピムに限らず、一般的には口渇と前立腺肥大に伴う排尿障害が多いと言われています。

口渇とは、いわゆる喉の渇きです。アセチルコリンは唾液腺の受容体(M3受容体)を刺激することで、唾液の分泌を促します。ですからこの働きを邪魔する抗コリン作用が働くと、唾液が作られなくなってしまいます。身体の水分が足りなくなったわけではありません。

絶対にやってはいけないことは、安易に水分を取ってしまうことです。特にアルコールやジュースは非常に危険です。

さらに水分を大量にとってしまうと、心臓に負荷がかかってしまいます。もともとCOPDは先ほど記載したように心臓に負荷がかかりやすい病気なのに、水分が大量に入ってくるとさらに負担がましてしまいます。

もう一つ重大なスピリーバの副作用としては、排尿障害があります。特に男性の方に多く認める副作用です。というのは、前立腺肥大によって尿が出にくくなるからです。前立腺肥大症とは、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。

高齢者の男性に非常に多く、この前立腺肥大症が70代だと80%の方にあるともいわれています。気が付かずに生活している人も多いと思います。もともと前立腺肥大症で尿の通り道が狭い状態で抗コリン薬を投与すると、膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿の出を悪くする作用があります。

先ほどの副作用報告は臨床試験でのものですが、臨床試験では前立腺肥大症の患者さんは除外されるため、数字では出てきません。しかし臨床の場では、前立腺肥大症であるにも関わらず気づいていない人にスピオルトを処方して、吸入してから排尿障害が起きた後に前立腺肥大だったと気が付くケースが多々あります。

これら抗コリン薬の副作用は、スピリーバの副作用ともいえます。そのため副作用対策も含めて詳しく知りたい人は、「スピリーバの副作用とその対処法」を一読してみてください。

 

3.β2刺激薬の副作用とは?

β2刺激薬の多い副作用としては、動悸と手の振るえです。

スピオルトで使用されているβ2刺激薬は、オルダテロールです。オルダテロールは、日本では単剤では未承認です。ただし海外では、オルダテロールはβ2刺激薬単独で使用されています。

海外のオルダテロールの添付文章での臨床試験で見られた副作用は、

  • 鼻咽頭痛
  • 眩暈
  • 皮疹
  • 関節痛

などとされていますが、どれも1%以下と非常に確率は低いです。また症状も軽度であり、重篤なものは少なかったとされています。特に鼻咽頭症状やめまいなどは、オルダテロール以外のどんな吸入薬でも思いっきり吸いすぎると低確率で起きる副作用です。

オルダテロールに限らずβ2刺激薬の特徴的な副作用として多いのは、動悸と手の振るえです。

β刺激薬は心臓の動きも強めてしまい、結果としてドキドキする人がいます。またβ刺激薬を吸うと、手の震えを訴える人もしばしばいます。

またβ2刺激薬では、電解質の一つであるカリウムが低下することが報告されています。普通に食事している分には野菜や果物に多く含まれているため、まず問題になることはありません。しかし食事量が減ってきた高齢者などでは、注意が必要になります。

これらの結果は、スピオルトを毎日1回吸入した場合です。スピオルトを大量に投与してしまうと、β2刺激剤の薬理学的作用による副作用として、

  • 頻脈
  • 振戦
  • 動悸
  • 頭痛
  • 悪心・嘔吐
  • 低カリウム血症・高血糖

などが強く生じることがあります。スピオルトの主成分は、オルダテロールであるβ2刺激薬になります。しかしながら、β1にもわずかながら刺激してしまいます。このβ1の作用は、心臓にムチをうつような作用があります。さらに抗コリン薬も心臓にムチをうって頑張らせる作用があるため、非常に危険です。

軽度であれば、動悸の副作用があります。量がどんどん増えてしまうと、心臓のリズムを狂わせてしまい不整脈が起きてしまいます。さらに使い続けると、心臓が止まりかねないお薬なのです。

COPDは、酸素の取り込みも低下します。そうすると心臓が頑張って、一生懸命ポンプとして働きます。そこにさらにβ1の刺激を送り続けることで、心臓がオーバーヒートしてしまいます。スピオルトの効果が弱いからといって、大量に吸入しないようにしましょう。

 

まとめ

  • スピオルトは抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤のため、副作用も単剤と比べて様々なものがあります。
  • 抗コリン薬の作用としては口渇と排尿障害があります。
  • β2刺激薬の副作用としては動悸や手の震えがあります。

スピオルトは合剤のため副作用によっては単剤に切り替えてみたり検討する必要があるかと思います。一番まずいのは副作用がでたから嫌になって自己中断してしまうことです。単剤ではなく合剤であるスピオルトが処方されたということは医師側はCOPDが重度であると判断している場合です。

重度のCOPDを放置してしまう前にまずは副作用が気になるのなら処方した医師に相談してみましょう。

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