スピオルトの安全性について

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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スピオルトは、スピリーバの成分である抗コリンにβ2刺激薬が加わった合剤です。

スピリーバと同じ成分がスピオルトに含まれていることから、スピリーバで禁忌であった以下の2つの疾患がある人は使用できません。

  • 隅角緑内障
  • 前立腺肥大に伴う排尿障害

さらにこの抗コリン薬にβ2刺激薬が加わったことで、安全性はどうなるか気になる人もいるかと思います。

ここでは、スピオルトを安全に使用するための注意点をお伝えしていきたいと思います。

 

1.スピオルトはどういった人に使用できないのか?

スピオルトは、緑内障と前立腺肥大症の方は注意が必要です。

スピオルトの添付文章では、

  1. 閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を高め、症状を悪化させる恐れ]
  2. 前立腺肥大等による排尿障害のある患者[更に尿を出にくくすることがある]
  3. アトロピン及びその類縁物質あるいは本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者

この3つに関しては禁忌になっています。③は薬に対してアレルギーが起こった人は使えないということですが、これはすべての薬で記載されていることです。つまり、

  • 緑内障
  • 前立腺肥大症

この2つの病気をお持ちの方は注意が必要です。とはいっても、この病気だったら全ての人が禁忌なのかというと、そうではないのです。それぞれ条件があり、軽症であれば使用できる場合もあります。

スピオルトを吸入する方の多くは、高齢者の方が多いかと思います。緑内障も前立腺肥大症も、高齢者には多い病気です。人によっては指摘されてなくても、実はこれらの病気が隠れている可能性があります。

  • 視野がぼやける、狭い
  • 眼が充血している
  • 前頭部が痛い
  • 吐き気がする

は緑内障であり得る症状です。

  • 夜間にトイレに行く回数が多くなる
  • 尿の勢いがない
  • 尿がすぐ出ない、少ししか出ない
  • 時間がかかる(排尿障害)など

は前立腺肥大症であり得る症状です。

症状で思い当たる節がある人は「スピリーバの緑内障と前立腺肥大症の安全性」ついてを読んでみてください。

 

2.スピオルトはどういった人に注意すればよいの?

スピリーバで注意すべき患者さんに加え、β2刺激薬での効果も考慮しなければなりません。

スピリーバで慎重投与とされているのは、

  1. 心不全、心房細動、期外収縮の患者、それらの既往歴のある患者[心不全、心房細動、期外収縮が発現することがある]
  2. 腎機能が高度、あるいは中等度低下している患者[本剤は腎排泄型で、腎機能低下患者では血中濃度が上昇する]
  3. 前立腺肥大のある患者[排尿障害が発現する恐れ]

③の前立腺肥大は、症状がなくても注意が必要ということです。スピオルトも、この3つはそのまま慎重投与になります。それに加えてβ2刺激薬であるオルダテロールが加わったことで、

  1. 甲状腺機能亢進症の患者〔甲状腺機能亢進症の症状を悪化させるおそれ。〕
  2. 高血圧のある患者〔交感神経刺激作用により症状を悪化させるおそれ。〕
  3. 糖尿病の患者〔高用量のβ2刺激剤によって、血糖値が上昇するおそれ。〕
  4. てんかん等の痙攣性疾患のある患者〔痙攣の症状を悪化させるおそれ。〕

の4つが加わります。

つまり計7つの疾患に注意が必要になります。しかし前立腺肥大症を除いたこれら6つの病気は、よほど重症じゃない限り悪化することはありません。またこれらの病気が重症な場合は、しっかりとお薬によって症状がコントロールされていることが多いです。そのため、これらの病気でスピオルトが使えないということは少ないです。

さらに心疾患や高血圧がある患者さんですが、スピオルトに適応があるCOPDの患者さんでは、心臓がへばっていて心不全になっている可能性が高いのです。

COPDは肺がタバコでボロボロになった病気です。これによって息が思いっきり吐けなくなります。息が吐けなくなった分頑張る臓器は心臓です。心臓は肺がやられた分、一生懸命動いて酸素を供給しようとします。

しかし心臓は休むことができません。24時間、常に動き続けています。一生頑張り続けなければいけないので、COPDの人の心臓はへばり気味です。ですからCOPDの人の心臓は、軽症でも高血圧の人が多く、重度ですとほぼ心不全は必発です。

だからといってスピオルトを使わないと、呼吸状態が悪くて心臓への負担が続いてしまいます。COPDに心不全がある人はスピオルトを避けるのではなく、逆に積極的に使用する必要があります。

そのため、先ほどあげた禁忌である緑内障と前立腺肥大症の2つの疾患を注意しましょう。

 

3.スピオルトと併用してはいけない薬はあるの?

スピオルトと併用してはいけないお薬はありません。

注意するお薬としては、

  1. 三環系抗うつ薬やMAO阻害薬
  2. 交感神経刺激剤
  3. キサンチン誘導体、ステロイド剤、利尿剤(サイアザイド系利尿剤・サイアザイド系類似利尿剤・ループ利尿剤)

となっています。①のお薬は心電図異常(QT延長症候群)を引き起こす可能性があると記載されているためです。しかし先ほど記載したように、COPD自体心臓に影響を与える病気です。そのため①のお薬を飲んでる、飲んでないにかかわらず定期的に心電図は受けるべきでしょう。

②の交感神経刺激薬は、昇圧剤など集中治療室で使用することが多いお薬です。そのため、スピオルトの吸入の有無に限らず全てのことに対して注意が払われているはずなので問題にはなりません。

この中で気を付けるべきお薬は、③のキサンチン誘導体・ステロイド剤・利尿剤です。特にキサンチン誘導体とステロイドは、COPDが急性増悪したときに使用することが多いです。

これらのお薬と併用することによって低カリウム血症のリスクが高まりますが、普通に食事を摂取している人では心配はまず必要ありません。食事がとれないような方でこれらの治療を使用する場合は、入院する場合が多いです。

また利尿剤は、尿と一緒にカリウムが一緒に出ていってしまうお薬です。そのため利尿剤を投与している方は、定期的に採血でカリウムを調べていることが多いです。

 

4.スピオルトは妊娠中でも使用できるの?

スピオルトは、妊婦の方にも使用は禁止されていません。むしろ原疾患コントロールした方が、胎児にとってもよいです。

スピオルトは、COPDで処方されるお薬です。COPDはタバコで肺がボロボロになって息が吸いづらくなっている病気です。

実際にスピオルトは添付文章でも、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。高用量のオルダテロール(2489μg/Kg)をウサギに投与すると骨格や心臓に異常奇形が報告されている。]

と記載されています。胎児に移行する異常奇形と記載されると、ドキッとする人もいるかもしれません。しかしスピオルトはオルダテロールに含まれている量は5μgです。2489μgとなるとオルダテロールの約500倍の量になります。これを我々よりも小さい体のウサギに投与したら起きた事例です。実際に妊婦さんに投与してスピオルトの影響で奇形が起こることはほぼないと考えて良いと思います。

COPDと妊娠時期に診断される人の方が少ないかもしれないです。しかしCOPDと診断されてスピオルトを処方されている方は、COPDの急性増悪で低酸素血症などを併発するとお腹の赤ちゃんに影響します。そのためスピオルトは中止しない方が無難かと思います。

 

まとめ

  • スピオルトは緑内障と前立腺肥大症の方は禁忌にあたる可能性があるため注意が必要です。
  • スピオルトは併用してはいけないお薬はありません。
  • スピオルトは妊婦の方にも安心して使用できます。

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