ネオフィリン(アミノフィリン)の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ネオフィリン注射液(一般名アミノフィリン)は、日新製薬株式会社が1993年に発売した静脈注射です。

ネオフィリンは、主成分であるアミノフィリンが茶葉に含まれているキサンチン誘導体という物質です。このキサンチン誘導体が、

  • 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
  • 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

という2つの作用を併せ持ったお薬です。このような作用を利用して、ネオフィリンは主に喘息発作時の治療薬として注射で投与します。

しかしネオフィリンは、血中の濃度が一定以上ないと効果を発揮しないお薬です。逆にネオフィリンが一定以上の濃度を超えすぎてしまうと、アミノフィリン中毒として嘔気や頭痛、動悸が出てきます。さらに濃度が上昇すると、痙攣や意識がなくなるなど怖い副作用が出現します。

ネオフィリン注射液をうまく使いこなすためにも、ネオフィリン注射液の効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。

 

1.ネオフィリンの効果のメリット・デメリット

<メリット>

  • 喘息発作時の治療薬として投与する
  • 点滴のため確実に投与できる
  • COPDの急性増悪にも使用できる

<デメリット>

  • 副作用が多い
  • 持病によっては血中濃度が変動しやすい
  • 飲み合わせが悪いものが多い

アミノフィリンは、コーヒーなどに含まれている成分と同じキサンチン誘導体という成分になります。ネオフィリンはこの成分を主として、

  • 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
  • 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

の2つの作用を併せ持った薬です。このため、

  • 喘息:気道の慢性炎症で気管支が狭まる病気
  • COPD:タバコで肺が穴ぼこだらけになることで気管支が狭まる病気

の二つの病気に主に使用します。特にネオフィリンは喘息の発作時に使用するお薬です。喘息の発作の時は、

  1. β2刺激薬の吸入(メプチンサルタノール)
  2. ステロイド点滴(サクシゾン、ソルメルコート、リンデロン、デキサートなど)
  3. ネオフィリン点滴

が主な治療となります。軽症であればメプチンやサルタノールの吸入で様子が見れます。

そのため②ステロイド点滴と③ネオフィリン点滴は、中等症以上の喘息発作で病院を受診したときに投与されます。

この時に、ステロイド点滴と一緒に投与されるのがネオフィリンです。喘息発作で病院を受診したときに、メプチンやべネトリンなどのネブライザーで吸入するとともに点滴することが多いです。

ステロイドとともにネオフィリンは、注射液として確実に投与できるのが魅力です。

一方でネオフィリンのデメリットとしては、主成分のアミノフィリンの血中濃度で効果と副作用の出現が決まります。アミノフィリンの血中濃度と効果と副作用の目安を見てみましょう。

  • 5~10μgl/ml:アミノフィリンによる抗炎症作用が期待される
  • 10~20μg/ml:アミノフィリンによる気管支拡張作用が期待される
  • 20~30μg/ml:アミノフィリンによる軽度の副作用がでやすい
  • 30~40μg/ml:アミノフィリン中毒として重度の副作用が出現しやすい
  • 40μg/ml以上:アミノフィリン中毒はほぼ必発

このため、アミノフィリンの血中濃度は8~20μg/mlを保つように調整し、20μg/mlを超えないようにするのが一般的です。

副作用は軽度であれば嘔吐や頭痛、動悸ですが、重度になると不整脈など心臓のリズムがおかしくなったり、痙攣して意識がなくなったりしてしまいます。

ネオフィリンはこのように、血中濃度に気をつける必要があるお薬です。ですから、持病や他のお薬との飲み合わせに注意しなければいけません。この点については、続けてお伝えしていきます。

ネオフィリン注射は、COPDの急性増悪にも使われます。しかしCOPDの場合はβ2刺激薬の効果が弱い場合に限られるため、現時点ではよほど重篤でない限りは使用しません。

 

2.ネオフィリンの使い方で注意すること

同じタイプのお薬を使っていないか、喘息発作の診断で間違いないか、持病や内服薬の相性は大丈夫かを注意する必要があります。

ネオフィリンを使用する時は、

  1. 以前からテオドールやテオロングなどのキサンチン製剤を飲んでいたか?
  2. 喘息発作の診断で間違いないか?
  3. 持病や内服薬でネオフィリンとの相性が悪いものはないか?

などを考える必要があります。

以前からテオドールなどが投与されていて血中濃度が保たれている方に、ネオフィリンを投与してさらに血中濃度を高めてしまうと、副作用が出現してしまいます。そのためテオドールなどを内服されている人は、ネオフィリンの投与量を減らすことが多いです。

喘息発作の診断で間違いないか?というのはとても重要です。喘息の診断を受けて定期的に通院している患者さんが「いつもの発作だ」といってくるときは、ほぼ喘息発作でしょう。ですが、息が苦しくて喘鳴が聞かれた時に、安易に喘息と診断するのは危険です。喘鳴が聞かれる病気は他にもたくさんあります。

喘鳴が聞かれたときに喘息以外に考える疾患は?」を参照にしてみてください。

安易にネオフィリン注射を投与してしまった時に、特に危ないのが心不全です。ネオフィリン注射では心臓のリズムを強くするということで、心不全も適応が認められています。しかしながら現在では、ほとんど心不全には使用しません。むしろ心不全ではアミノフィリンの血中濃度があがりやすいため、投与しない方が良いとされています。

持病や飲み合わせのお薬によって、ネオフィリンの血中濃度が影響をうけやすいです。そのため、受診したときに内服薬や既往歴は全て話す必要があります。さらにいつものかかりつけの先生でも、最近飲み始めたお薬があれば必ず話すようにしましょう。

 

ネオフィリンは気管支の炎症と拡張両方の効果がある優れた薬であると同時に、血中濃度を一定に保たなければいけないというバランスをとるのが難しいお薬となっています。

そのため喘息発作にネオフィリンを使う場合は、慎重に投与するお薬となっています。喘息の発作治療は選択肢が少なく、

  1. β2刺激薬の吸入
  2. ステロイド点滴
  3. ネオフィリン点滴

以外の治療があまりないのが現状です。上の3つでも効果が弱い場合は、酸素を投与しながら入院して、この3つを繰り返していきます。さらに重篤な場合は人工呼吸器につないでコントロールするのですが、そのような状態でも上の3つが柱になります。

 

3.ネオフィリンの剤形と用法・用量

ネオフィリンは、注射液250mg(10ml)があります。主に喘息発作に適応があります。

ネオフィリンの適応は、

気管支喘息、うっ血性心不全、COPD(肺気腫、慢性気管支炎等)における呼吸困難、狭心症(発作予防)、脳卒中発作急性期

となっています。しかしこれは1993年発売時から記載されています。2016年では、

  • うっ血性心不全
  • 狭心症
  • 脳卒中発作急性期

は良い治療薬がたくさん開発されているため、ネオフィリン注射液を投与することはまずありません。

ネオフィリンの適応は9割ほど、喘息発作時と考えて良いと思います。喘息以外としては、COPD急性増悪でかなり重篤で内服や吸入が難しい場合は、ネオフィリン投与を考慮することもあります。

成人では、1回250mgを1日1~2回、生理食塩液又は糖液に希釈して投与します。添付文章では5~10分かけて緩徐に注射すると記載されていますが、現場では1時間かけて点滴で静脈投与することがほとんどです。アミノフィリンは、急激に血中濃度が上昇すると非常に危険なお薬です。そのため時間かけて投与する必要があります。

また、発熱時や高齢者、持病をお持ちの方は、ネオフィリン250mgだと多いため、半分の125mgを注射していきます。ネオフィリン250mgは、若年者で他に病気がない人で、以前からネオフィリン投与しても副作用が認められないような方に限られます。

一方で小児の場合は、1回ネオフィリンを3~4mg/kgを静脈内注射していきます。投与間隔は8時間以上とし、最高用量は1日12mg/kgを限度となるようにします。小児の場合は、年齢と体重で細かく投与量が決められています。具体的には、

  • 6カ月~₂歳未満:3~4mg/kgを30分以上かけて点滴投与
  • 2歳~15歳未満で他のテオフィリン製剤(-):4~5mg/kgを30分以上かけて点滴投与
  • 2歳~15歳未満で他のテオフィリン製剤(+):3~4mg/kgを30分以上かけて点滴投与

となっております。さらに継続する場合は、

  • 6カ月~1歳未満:0.4mg/kg/時
  • 1歳~2歳未満:0.8mg/kg/時
  • 2歳~15歳未満:0.8mg/kg/時

ネオフィリンは徐放性剤として、ゆっくりと胃や腸に溶け出します。これは、ネオフィリンをゆっくりと、そして長い時間効かせるためです。

ネオフィリンは難しいお薬で、血中濃度がある一定以上ないと効果が得られないと同時に、血中濃度が高すぎると副作用が出現するからです。ネオフィリンの血中濃度の目安として、

  • 5~10μgl/ml:アミノフィリンによる抗炎症作用が期待される
  • 10~20μg/ml:アミノフィリンによる気管支拡張作用が期待される
  • 20以上μg/ml:アミノフィリンによる副作用がでやすい

となっています。喘息の長期的な管理でテオドールやテオロングを内服する場合は、キサンチン製剤の濃度を10μg/ml以上保って、気管支拡張までの効果がないと意味がありません。喘息の症状が安定している時は、気道の炎症も軽度だからです。

一方で喘息発作時は、気道の激しい炎症がもとに気管支が狭まった状態です。そのため、抗炎症作用である低用量でも効果があると考えられています。

さらにネオフィリンの血中濃度は、高くなると副作用が出現しやすくなるります。ネオフィリンの血中濃度は、量の目安があるわけではありません。体の大きさ、腎臓や肝臓の機能の状態、さらには一緒に飲むお薬との飲み合わせで、テオフィリンの血中濃度は千差万別です。

ですから、無理にアミノフィリンの血中濃度をあげていく必要はありません。ネオフィリン250mgの半量で使用する先生が多いのも、このことが理由です。

ネオフィリン注射250mgを2管(ネオフィリンとして500mg)、30 分かけて点滴静注した場合、投与直後に最高血中濃度に達します。そのときの血中濃度は、約15μg/mlとされています。そしてアミノフィリンは、9.51時間で血中より半減します。

なお喫煙者は、さらに早くアミノフィリンが血中から消失する傾向があります。

 

4.ネオフィリンの血中濃度と副作用

ネオフィリンが安全域の血中濃度でも、吐き気、頭痛、食思不振などの副作用が出現します。血中濃度が高いと、痙攣や心室頻拍の副作用が生じ、最悪の場合は命を落とす可能性があります。

ネオフィリンの添付文章をみても、具体的にどのくらいの頻度で副作用がでるという臨床試験がないため記載がありません。代表的なものとしては、

  • 吐き気・食思不振
  • 頭痛
  • 腹痛
  • 食欲不振
  • 動悸

が認められます。点滴中に上記の副作用が出現したら、すぐに看護師さんに伝えましょう。この中で吐き気や食思不振は、最も多い副作用という印象があります(内服薬であるテオドールやテオロングは、この食思不振が最も多いです)。

ただ、重篤になり得るのは動悸です。喘息発作はただでさえ息が苦しいので、もともと心臓が頑張って酸素を送るために頻脈気味になります。そんな中でさらに動悸などが起こると、心臓がオーバーヒートしてしまう可能性があります。

ネオフィリンの血中濃度が30μg/mlを超えると、

  • 痙攣
  • 心室頻拍・心房細動(心臓のリズムがおかしくなります)
  • 呼吸促進(息が苦しくなります)

などの副作用が出現するといわれています。ですがネオフィリンを1回投与しただけで血中濃度が上昇することは少ないため、過度に心配する必要はありません。

 

5.ネオフィリンの副作用のために注意すべき病気とは?

ネオフィリンが使えない人はいませんが、注意する病気はたくさんあります。

ネオフィリンが絶対に使えない病気は、添付文章には記載されていません。

ただ、気を付けた方がよいという病気は記載されていて、以下のようなものがあげられています。

  1. てんかんの患者〔中枢刺激作用によって発作を起こすおそれ〕
  2. 甲状腺機能亢進症の患者〔甲状腺機能亢進に伴う代謝亢進のおそれ〕
  3. 急性腎炎の患者〔腎臓に対する負荷を高め、尿蛋白が増加するおそれ〕
  4. うっ血性心不全の患者〔テオフィリン血中濃度が上昇することがある〕
  5. 肝障害のある患者〔テオフィリン血中濃度が上昇することがある〕

となっています。

特に重要なものは、肝臓に障害が出た場合です。ネオフィリンは80%以上が肝臓で代謝されます。そのため肝臓の機能が急激に悪くなると、テオフィリンが代謝されなくなり血中に蓄積されるようになります。

そのため肝臓が悪くなった時にネオフィリンを内服し続けると、急激にテオフィリンの血中濃度が上昇してしまい非常に危険です。

肝臓に限らず、腎臓や心臓の機能が低下してもネオフィリンは注意するように記載されています。そのため体調が悪くなった際は、ネオフィリンを継続した方が良いか主治医に相談した方が良いと思います。

ネオフィリンは、小児でも使用できるお薬です。しかしながら慎重投与として、

  1. てんかん及び痙攣の既往歴のある小児〔痙攣を誘発することがある〕
  2. 発熱している小児〔テオフィリン血中濃度の上昇や痙攣等の症状のおそれ〕
  3. 6ヵ月未満の乳児〔乳児期にはテオフィリン血中濃度が上昇することがある〕
  4. 低出生体重児・新生児に対する安全性は確立していない.〔使用経験がない〕

と記載されています。

小児は成人と比べて、けいれん発作が出現しやすいといわれています。そのため喘息がよほど重症でなければ、上記4つの場合では使用しない方が無難かと思います。

 

6.ネオフィリンが向いてる人は?

  • 喘息発作の方
  • 病気や他の薬を定期的に飲んでない若年者の方

ネオフィリンは、

  • 気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)
  • 炎症を抑える作用(抗炎症作用)

の二つを併せ持ったお薬です。この効果を利用して主に喘息発作の治療に使用します。喘息の発作の時は

  1. β2刺激薬の吸入(メプチンサルタノール)
  2. ステロイド点滴(サクシゾン、ソルメルコート、リンデロン、デキサートなど)
  3. ネオフィリン点滴

が主な治療となります。軽症であれば、メプチンやサルタノールの吸入で様子が見れます。

そのため②ステロイド点滴と③ネオフィリン点滴は、中等症以上の喘息発作で病院を受診したときに投与されます。メプチンやべネトリンなどのネブライザーで吸入するとともに、ステロイドとネオフィリン点滴が使われます。

ただしネオフィリンは、他の病気や飲み薬で血中濃度が変動しやすい病気です。そのため向いてる人としてあげるのであれば、喘息以外の病気がない人の方が望ましいです。

さらに高齢者は、体調が悪くなると肝臓や腎臓を含めて全身状態が悪化することが多いです。肝臓や腎臓が悪くなると、テオフィリンの血中濃度は急激に上がりやすくなります。そのため高齢者に使用する場合は、ネオフィリンは慎重を期す必要があります。高齢者よりは若年者の方が向いてるお薬と言えます。

ネオフィリンは効果も期待できる反面、副作用も怖いお薬です。喘息発作では、よくわからず点滴をされている患者さんも多いかと思います。まずは点滴に、ステロイド以外にネオフィリンが含まれているか聞いてみましょう。

ネオフィリンが投与されている方は、副作用でどのような症状が出るのか確認してみましょう。

  • 吐き気・食思不振
  • 頭痛
  • 腹痛
  • 食欲不振
  • 動悸

これらの副作用がでたら、すぐにネオフィリンの点滴を中止するようにしましょう。また人によっては発作が起きた時だけ治療すればよくなるといって、長期的な喘息の治療をしたがらない人がいますが、これは大間違いです。

喘息発作は回数を重ねれば重ねるほど悪くなっていきます。悪くなっても、喘息発作の治療には限界があるのです。

喘息発作が起きやすい人は、アドエアシムビコートなどの長期的な喘息の管理薬を吸入するようにしましょう。

 

まとめ

<メリット>

  • 喘息発作時の治療薬として投与する
  • 点滴のため確実に投与できる
  • COPDの急性増悪にも使用できる

<デメリット>

  • 副作用が多い
  • 持病によっては血中濃度が変動しやすい
  • 飲み合わせが悪いものが多い

  <向いてる人>

  • 喘息発作の方
  • 病気や他の薬を定期的に飲んでない若年者の方

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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