シーブリ(グリコピロニウム)の効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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シーブリ(一般名:グリコピロニウム)は、2012年11月にノバルティスファーマ株式会社より発売された抗コリン薬の吸入薬になります。

抗コリン薬によって気管支を広げることで、COPD治療薬として処方されているお薬です。抗コリン薬としては、スピリーバが有名かと思います。

ここでは、シーブリの効果と特徴について詳しくお伝えしていきます。それを踏まえて、スピリーバとの違いについてまとめてみます。

 

1.シーブリのメリットとデメリット

<メリット>

  • ドライパウダーのお薬を自分のタイミングで吸える
  • 1日1回の吸入で対応できる
  • しっかりと吸入できたかカプセルで確認しやすい
  • 即効性がある
  • 同じブリーズヘラーのデバイスでβ2刺激薬単体であるオンブレスがある
  • 同じブリーズヘラーのデバイスでβ2刺激薬と抗コリン薬の合剤であるウルティブロがある

<デメリット>

  • 前立腺肥大、緑内障の人には使用できない
  • 吸入力がないとうまく吸えない
  • カプセルを毎回セットする必要がある

シーブリは1日1回1吸入で、吸入器であるディバイスの「ブリーズヘラー」を用いて吸入する薬剤です。1日1回で24時間効果の持続が期待出来る薬剤です。デバイスの同調などは必要はありませんが、カプセルをPTPシートから一回ずつ取り出し、設置する必要があります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、慢性の咳や痰、呼吸困難を主訴とし、日常生活が制限されるだけでなく、長期の経過をたどる進行性疾患です。

抗コリン薬の禁忌(処方してはいけない患者)として、

  1. 閉塞隅角緑内障の患者
  2. 前立腺肥大症による排尿障害のある患者

これらがあげられています。緑内障は閉塞隅角のパターンのみ禁忌ですが、ご自身が緑内障のどのパターンか認識している人は少ないです。緑内障が悪化すると失明につながることから、一般的には緑内障の方にはシーブリは使用しないことが多いです。

また前立腺肥大は、高齢男性の多くに認められる疾患です。病院で診断されていなくても、

  • 残尿感がある
  • トイレが近い
  • 尿がスムーズに出せない

などの症状が高齢の男性にあれば前立腺肥大の可能性があるため、シーブリは処方しない方が無難かもしれません。このシーブリが処方できない場合は、β2刺激薬の吸入薬を使用します。β2刺激薬の吸入薬で最も処方されているのは、オンブレスになります。

オンブレスも、実はシーブリと同じノバルティスファーマが処方されているため、ブリーズヘラーを用いた同じ吸入方法になります。

またCOPDは、タバコで肺がボロボロになることで思いっきり息が吸えなくなる病気です。さらに恐ろしいことは、COPDに一度なると、禁煙しても肺機能はもとに戻らない特徴です。そのためCOPDと診断されたら、基本的には治療は一生する必要があります。

さらにCOPDと診断された多くの方は、タバコを吸い続けて、

  • 咳が止まらない
  • 痰が出続ける
  • 動くと苦しい

など、病院を受診するくらい症状が強いのであれば、抗コリン薬やβ2刺激薬単剤ではコントロールが難しいことも多いです。COPDは、タバコで肺がボロボロになってしまった病気です。肺がボロボロになることで気管支が狭まり、息が思いっきり吐けなくなります。こうなると痰も詰まりやすく、かなり苦しい症状が出現します。

こういった場合には、抗コリン薬とβ2刺激薬の両方を使うことになります。

こういった流れを受けて、抗コリン薬とβ2刺激薬の様々な合剤が発売されています。ノバルディスファーマからも、抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤であるウルティヴロが発売されてます。このように、

  • 抗コリン薬(シーブリ)
  • β2刺激薬(オンブレス)
  • 抗コリン薬とβ2刺激薬の合剤(ウルティブロ)

と、現在ではこの3種類が同じブリーズヘラーで発売されています。そのため薬を変更する時も同じブリーズヘラーの使用方法のため、この3剤はスムーズに変更しやすいです。

ブリーズヘラーの良さとしては、「吸入実感」ができるというポイントです。これは他のデバイスにはないポイントです。カプセルが透明になっているため吸入したあとノズルを開き、カプセルを目視するだけで薬剤がすべて吸えたか目で見て確認しやすいです。

またシーブリの効果自体の特徴ですが、シーブリに関してはスピリーバに比べ、「即効性」という点で優れているというデータが出ています。

「吸入後5分ですぐに効果が出て、吸入後4時間は効果のピークがある切れ味のいい抗コリン薬」と言われております。投与後4時間~24時間に関しても、スピリーバと同等の効果を発揮します。

COPDの患者さんは、特に体を動かしたときに息切れや咳、痰などの症状が出やすいと言われています。シーブリを朝吸入することで、活動性があがる午前中の4時間の息切れなどをより軽減することができる点で優れています。

 

2.シーブリの剤形の種類・用法・薬価とは?

シーブリは、COPDに適応があるドライパウダー式の吸入薬です。1日1回吸入することで効果を発揮します。

シーブリは、グリコピロニウムとして50μgを1日1回吸入することでCOPDに対して効果があるお薬です。

具体的にシーブリの適応は、

慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害 に基づく諸症状の緩解

となっています。

COPD急性増悪に対して効果があるわけではなく、毎日吸入することでCOPDの進行を抑えるのです。COPDはそもそも、タバコで肺がボロボロになった病気です。この病気は実は治すことができません。むしろ年を取るにつれて、徐々に弱ってくる病気です。シーブリは、この低下するのを抑えるお薬です。

そのため1回や2回のシーブリ吸入だけでは、なかなか効果が実感できないので注意しましょう。

シーブリの薬価ですが、シーブリブリーズヘラーは、

商品名 剤型 薬価 3割薬価
シーブリ カプセル 204.7円 61.4円

※2016年9月24日時点での薬価です。

シーブリは7枚シートで1週間分として処方されます。そのためシート代は1432.9円となります。

 

3.シーブリが向いてる人は?

  • 前立腺肥大や緑内障がない方
  • 若年者の方
  • 午前中活動性が上がる方
  • PTPシートからのカプセルの取り出しが難なくできる方
  • 吸入したかどうか確認をしたい方
  • できるだけデバイスを小さく持ち運びの便利さも考えたい方

現在では肺気腫や慢性気管支炎などCOPDの患者さんに、第一選択肢として抗コリン薬が処方されています。

シーブリなどの抗コリン薬を使用する時に気を付けなければいけないのが、前立腺肥大や緑内障がある人です。この場合は、シーブリは避けた方が無難かもしれません。

一方で抗コリン薬で最も処方されているお薬は、スピリーバレスピマットというスプレー式のお薬です。COPDは、年を取るにつれて吸入力が低下していく病気です。そのため、どうしてもシーブリなどの粉薬だと正しい吸入方法で吸っていたとしても、

  • そもそもシーブリが吸えない
  • 最初はシーブリが吸えていたけど、年齢とともに吸入力が落ちていつの間にか吸えなくなっていた

などの問題が生じます。このことから高齢者では、スピリーバレスピマットに分があるといわざるをえません。

一方でバリバリ働いているような若年者では、シーブリは非常に向いているお薬です。特にシーブリは効果発現が早いと言われていますので、午前中に働く方には良いお薬といえます。

ただしこの際、カプセルを毎回セットするのがめんどくさいと感じないことが必須条件になります。シーブリは毎日吸入するお薬です。そのため些細な事でもめんどくさいと感じてしまうと、長続きできないので注意しましょう。ただし、このカプセルを毎回セットするメリットもあります。

シーブリはカプセルを毎回出すのですが、その際にカプセル内に粉が残ってないか目で見ることができます。そしてカプセルを毎回セットする代わりに、ディバイスが小さいです。そのため、コンパクトな方が持ち歩きやすいという人はお勧めです。

 

4.シーブリの作用メカニズム

抗コリンとして副交感神経の働きを遮断することで、気管支を広げます。

私たちが運動を行っているとき、よりたくさん空気を取り入れるために気管支が拡張します。この時に働く神経系を交感神経と呼びます。「交感神経は運動時に働く神経系である」と認識できれば良いです。

そして、この交感神経の反対の働きをする神経系として副交感神経があります。運動時とは異なり、「体を休めている時に働く神経系」が副交感神経になります。

先ほど、「交感神経が活発になると、空気を取り入れるために気管支を拡張させる」とお伝えしました。それでは、この反対の作用をする副交感神経が働けば気管支は収縮します。つまり、気道が狭くなっていきます。

副交感神経が興奮すると、気道が狭くなるという作用が起こります。そしてこの副交感神経の興奮に関与している物質として、アセチルコリンがあります。アセチルコリンが作用することによって副交感神経が活発となり、結果として気管支が収縮します。

ですからアセチルコリンの働きを抑えてしまえば、「気管支収縮の逆」として気管支を拡張できることが分かります。より正確に言えば、「気管支収縮の抑制」となります。

「アセチルコリンが受容体に作用する過程を抑制する薬」を、総称して抗コリン薬と呼びます。抗コリン薬によってアセチルコリンの働きを抑え、気管支を拡張させることができるようになります。

このようにアセチルコリンの働きを抑えることによってCOPDを治療する薬として、シーブリ(一般名:チオトロピウム)があるのです。

抗コリンの働きついて詳しく知りたい方は、「抗コリン作用とは?抗コリン薬・コリン作動薬のすべて」をお読みください。

シーブリの作用機序の特徴として、この抗コリン薬は「M3受容体」という気管支にある受容体に作用し、効果を発揮すると言われております。

この受容体に結合する速度が早いほど、速攻性が期待出来ますが、シーブリは投与後5分ですぐに結合し、4時間までスピリーバよりその結合速度が早かったという結果が、マウス実験で判明しています。(4時間後以降は、スピリーバも同等の結合率であることもわかっております)

このためシーブリは、非常に早く効果を発現するといわれています。

 

まとめ

  • シーブリレは1日1回吸入する長時間作用型の抗コリン薬になります。
  • シーブリはCOPDに適応があります。
  • シーブリは前立腺肥大と緑内障がある方には使用することができません。
  • シーブリーはカプセルのセットが必要ですが小型、カプセル内に残薬がないか確認することができます。
  • シーブリは効果発現が早い吸入薬と言われています。

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