ポララミンの副作用と安全性について
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ポララミン(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)は、1964年に発売された古くからある抗ヒスタミン薬です。
このためポララミンは第一世代の抗ヒスタミン薬に分類されていて、効果は強いのですが副作用も多いです。そのため最近では、アレグラやザイザルなどの眠気が少ない第二世代の抗ヒスタミン薬が主流となっています。
しかし、風邪による鼻水では第一世代でしか保険が適応になっていないため、今でもポララミンは処方される機会が多いと思います。
しかしポララミンは眠気が強い薬であると同時に、抗コリン作用による口渇や尿閉も出てくるお薬です。緑内障や前立腺肥大の人には使いづらいなどの特徴もあるため、ポララミンを使う際は第二世代よりも注意が必要です。
ここではポララミンを使う際、どのような病気の人が注意して、どのような副作用があるかまとめていきます。
1.ポララミンが使えない人、注意が必要な人は?
緑内障や前立腺肥大がある患者さんは、ポララミンを使用できません。
ポララミンは以下の3つの条件に対して禁忌としています。
- 緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、緑内障が増悪することがある]
- 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により排尿困難・尿閉などがあらわれ、症状が増悪することがある]
- 低出生体重児・新生児[痙攣することがある]
第一世代の抗ヒスタミン薬は、抗コリン薬と似ている部分があります。このためアセチルコリン受容体をブロックしてしまい、便秘・口渇・尿閉といった抗コリン作用が起きることもあります。そのため抗コリン薬が禁忌である緑内障患者や前立腺肥大患者には、ポララミンも禁忌です。
また低出生体重児や新生児にポララミンを投与すると、抗コリン作用に対する感受性が高く、中枢神経が興奮して痙攣などが生じる恐れがあります。
人間は口呼吸ができるので、鼻水がひどくても命が危険になることは稀です。そのため、適応がある2歳からポララミンを内服させるようにしましょう。
また上記以外にも、
- 甲状腺機能亢進症のある患者[抗コリン作用により症状が増悪することがある。]
- 狭窄性消化性潰瘍・幽門十二指腸通過障害のある患者[抗コリン作用により平滑筋の運動抑制や緊張低下が起こり、症状が増悪するおそれがある。]
- 循環器系疾患のある患者[抗コリン作用による心血管系への作用により、症状が増悪するおそれがある。]
- 高血圧症のある患者[抗コリン作用により血管拡張が抑制され、血圧が上昇するおそれが ある。]
と記載されています。特に高齢者は指摘されていなくても、高血圧や前立腺肥大、緑内障の合併があることがあります。ポララミンを使用する際には、これらの疾患がないか考えてから内服する必要があります。
2.ポララミンの副作用の特徴とは?
第一世代の抗ヒスタミン薬であるため、眠気が出やすいお薬です。さらに抗コリン作用として倦怠感、口渇、尿閉が出ることがあります。
脳では神経伝達物質として情報の橋渡しをしていますが、抗ヒスタミン薬によって脳でのこの働きがブロックされてしまうと、中枢神経が抑制されて眠気が出現します。第一世代はこの脳への作用が強いお薬になります。
ポララミンも第一世代であるため、第二世代の抗ヒスタミン薬より眠気の作用が強いお薬です。実際どれくらい眠気が強いのか気になるところですが、ポララミンは昔のお薬であり、市販後調査などの細かい報告がありません。添付文章でも「5%以上もしくは詳細不明」というところに眠気が記載されています。
また第一世代の抗ヒスタミン薬は、抗コリン薬と似ている部分があります。このためアセチルコリン受容体をブロックしてしまい、便秘・口渇・尿閉といった抗コリン作用が起きることもあります。
その他頻度は低いですが、
- 頭重感
- 下痢
- 吐き気・嘔吐
- 発疹
- 光線過敏症
なども認めることがあります。
3.ポララミンの併用するのに注意が必要なお薬は?
ポララミンは一緒に投与してはいけないお薬はありませんが、注意が必要なお薬はいくつかあります。
ポララミンの添付文章では、以下のお薬が併用注意としてされています。
- 中枢神経抑制剤(精神科のお薬全般)
- MAO阻害剤(パーキンソン病治療薬)
- 抗コリン作用のある薬剤
これらはお互いに作用して効果や副作用を強める可能性があります。また、救急治療室で使われている様な以下のような昇圧剤も注意が必要とされています。
- プレドパ
- ノルアドレナリン
これらとポララミンを併用すると、血圧が異常上昇することがあるためです。ですが昇圧剤は、患者さんが普段服用するお薬ではありませんね。
ですから、
- 中枢神経抑制剤
- MAO阻害剤
- 抗コリン作用のある薬剤
の3剤が使われてないか注意する必要があります。心配な人は医師にお薬手帳を渡して確認してみましょう。
4.ポララミンの眠気とは?
第一世代の抗ヒスタミン薬として眠気が強いです。運転は避けるようにしましょう。
ポララミンには、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩という成分が使用されています。抗ヒスタミン薬の中でも第一世代として非常に眠気の副作用が強いです。
添付文章では具体的な発生頻度は記載されていませんが、運転や危険作業などは控えるように記載されています。運転をせざるを得ない方は、ポララミンは控えた方がよいお薬になります。
このため、花粉症などの定期的に長期に内服する場合は、あまり現在ではポララミンはお勧めできません。風邪などで家でゆっくり休むような時にポララミンを内服しましょう。
軽症な風邪だけども無理して症状を抑えようとすると、ポララミンは逆効果になりかねません。鼻水は止まるかもしれませんが、眠気が出る可能性があります。特に風邪で体力が低下している場合は、眠気が強く出る傾向があります。
5.ポララミンはアルコールと一緒に飲んでいいの?
ポララミンは、アルコールと一緒に服用すると相互に作用を増強します。
ポララミンの添付文章にも、アルコールとの併用によってポララミンとアルコールの作用が相互に増強されることがあると記されています。
実際にポララミンとアルコールを併用して問題になるのは、アルコールによって酔いが回りやすくなることです。普段よりも酔いやすくなるので、思ったよりも少ない量で、めまいや吐き気、意識がなくなることがあります。
ポララミンが効きすぎてしまうのは良いことのように感じるかもしれませんが、副作用が強く出てきてしまうことがあります。さらには、症状がよくなるとは限りません。お酒を飲みすぎると、アレルギー症状や風邪症状が強くなることがあります。
ポララミン自体が第一世代の抗ヒスタミン薬として副作用が強いお薬です。ポララミンを服用する場合は、アルコールは避けるようにしましょう。逆に花粉症の期間中に飲み会があってどうしても飲まなければいけない場合は、アレグラやクラリチンなどの抗ヒスタミン薬の中でも副作用が弱いお薬の方が影響は少ないです。
詳しくそれぞれの副作用について知りたい方は、「クラリチンの副作用と安全性」「アレグラの副作用と安全性」を確認してみてください。
6.妊婦・授乳中・小児にはポララミンは大丈夫?
ポララミンは新生児には使えないお薬です。妊婦の方には使用できるお薬です。
ポララミンの添付文章をみてみましょう。
妊婦の方には、
治療の有益性が危険性を上回る場合のみ投与すること。(動物実験で催奇形が報告されており、新生児に副腎不全を起こす可能性があります。)
授乳中の方には、
授乳を避けること。(ポララミンは母乳に移行することが報告されています。)
小児の方には、
新生児には抗コリン作用に伴う痙攣が出現することがあるため禁忌となっております。2歳以上の小児から使うようにしましょう。
となっています。
ポララミンは古いお薬ですので、長い歴史があるため妊婦の方に安全と考えて処方されることが多いお薬です。海外のガイドラインでも、Bとなっていて安全性は比較的高いとされています。詳しく知りたい方は、「アレグラは妊娠中や授乳中でも大丈夫?」をお読みください。
授乳に関しては眠気が強いため、赤ちゃんにも眠気が強まってしまう懸念があります。このためできるだけ避けた方がよいと考えられています。
子供では抗コリン作用に対する感受性が高く、中枢神経が興奮して痙攣などが生じる恐れがあります。 このため中枢神経の発達が未熟な乳児期はポララミンは避けた方がよく、2歳以上で服用できることとなっています。
まとめ
- ポララミンは第一世代として眠気が強いお薬です。
- ポララミンは抗コリン薬の成分もあるため口渇、便秘、吐き気などが出ることもあります。
- ポララミンは、アルコールとの併用は基本的には勧められないお薬です。
- ポララミンは新生児には使ってはいけないお薬です。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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