ポララミンは蕁麻疹にどうやって効くの?

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック

急に全身が痒くなるってとても辛い症状ですよね。ときに痛みよりも、痒みは辛い症状になります。

全身が痒くなる疾患に蕁麻疹があります。蕁麻疹を経験されたことがある方は多いのではないでしょか?一生のうちに1回は15~20%の人が経験すると言われています。治療薬の第一選択は抗ヒスタミン薬になります。

ポララミンは効果が強いのですが、眠気も強い第一世代のお薬でした。

しかし夜の蕁麻疹などでかゆみが強くて眠れない時は、この眠気の副作用を逆手にとって使われることもあります。就寝前にポララミンを投与すれば、睡眠につきやすくなります。

またかゆみがあまりに強い場合は、ポララミンには注射薬もあるため筋肉や血管内に投与して、早く症状をとることもできます。副作用の少ない第二世代抗ヒスタミン薬には現在のところ注射薬が発売されていないため、蕁麻疹の注射薬としてはポララミンが使われることが多いです。

 ここでは、ポララミンの蕁麻疹への効果についてまとめてみましょう。

 

1. 蕁麻疹はなぜ起きるのか?

どういうメカニズムで蕁麻疹が起きるのか理解すると、お薬がどうして効果を示すのが理解しやすくなります。

蕁麻疹の原因とメカニズム(発生機序)をみていきましょう。

 

1-1.蕁麻疹の原因は?

蕁麻疹の原因は、非常に多くのものがあります。採血によって、原因が特定できることもあります。

 蕁麻疹がまず、どういった原因で起きるのかみていきましょう。

 蕁麻疹は主に急性と慢性に分けられます。急性は1時間以内に、慢性は約1か月以上続くものが挙げられます。ではどういったものが原因になるかというと、

  • 食べ物
  • 動物
  • 金属

 などの物理的なものが多いです。しかし、

  • ストレス
  • 寒暖の温度差
  • 感染症

 なども原因として挙げられます。細かく書いていくと100種類程度と膨大な量になってしまいます。蕁麻疹の原因として最も多いのが食べ物ですので、ここでは食べ物についてみていきたいと思います。

 蕁麻疹がおきやすい食べ物としては、以下のようなものがあげられます。

  • 魚類、甲殻類、貝類などの海鮮物
  • 牛乳、チーズ、卵などの乳製品
  • 小麦、大豆、ソバなどの穀類
  • りんご、メロンなどの果物

今まで気にせず食べていて全く問題なかったのに、ある日突然食べて蕁麻疹を起こすことがあります。特に魚介類は、鮮度が悪くなって繁殖した雑菌類で起きることもあります。またお酒や香辛料を摂取すると、血管拡張に伴い蕁麻疹が出現しやすくなります。

蕁麻疹が初めて生じた場合、どの食べ物が原因か確定することは難しいです。ですが同じもので2回以上起きた場合は、その食べ物がアレルギー源の可能性が高いです。

初めて蕁麻疹が出現したときは、いろいろなものを食べていてどれが原因かわからないということも多いかと思います。蕁麻疹が起きた時はアレルギー外来を受診しましょう。今は採血によって、どの食べ物でアレルギー反応を起こすか調べることができます。その際は怪しい食べ物を覚えておくことが大切です。

 

1-2.蕁麻疹のメカニズム(発生機序)は?

蕁麻疹は、肥満細胞からヒスタミンが大量に放出されることで起きます。ヒスタミンによって浮腫(むくみ)ができて、ヒスタミンの直接的な作用と合わさって痒み神経を刺激します。

蕁麻疹はアレルギー疾患です。アレルギー疾患はⅠ型からⅣ型に分けられます。

  • Ⅰ型アレルギー:IgEを主体にしたアレルギーです。IgEがアレルギー源にくっついて、セロトニンやヒスタミンを放出して発症します。
    代表的な疾患:花粉症・蕁麻疹・気管支喘息・食物アレルギー
  • Ⅱ型アレルギー:IgGを主体にしたアレルギーです。IgGがアレルギー源にくっついて、白血球が直接その細胞を破壊する生体反応です。
    代表的な疾患:悪性貧血・橋本病・特発性血小板減少性紫斑病・重症筋無力症
  • Ⅲ型アレルギー:アレルギー源を排除しようとした結果、うまく排除されずに免疫複合体という物質が形成され、血液を介して各々の臓器にダメージを与えるアレルギーです。
    代表的な疾患:関節リウマチ・シューグレン症候群・全身性エリテマトーデス・アレルギー性血管炎などの膠原病
  • Ⅳ型アレルギー:アレルギー源を排除しようとした白血球自体がおかしくなってしまうアレルギーです。おかしくなった細胞を感作T細胞とよび、周辺組織を損傷します。
    代表的な疾患:金属アレルギー・薬剤性肺炎・腫瘍免疫・移植免疫

蕁麻疹は、Ⅰ型アレルギーに分類されます。もっと細かく流れをみていきましょう。

  1. IgEが何らかの原因でアレルギー源に接触し、肥満細胞を刺激する。
  2. 刺激された肥満細胞から大量にヒスタミンが分泌される。
  3. ヒスタミンが血管の拡張、透過性が亢進、血管外への血漿成分の漏出などを引きおこす。
  4. 血管からの炎症が皮膚の表面まで及び、限局した浮腫(むくみ)になる。
  5. 浮腫やヒスタミンが皮膚の神経を直接的に刺激し、痒みを誘発する。

このような流れになります。ヒスタミンは、炎症やアレルギーのときに出てくる物質です。ヒスタミンによって血管の細胞のすき間が開き、血管から白血球やタンパク質などが血漿成分が、血管の外に出ていきます。これによって傷を治したり、身体の敵と戦うのです。

アレルギー反応は、免疫が誤作動して過剰に働いてしまう現象です。これによって蕁麻疹というむくみができて、痒みが生じます。

 

2. 蕁麻疹はどういった症状が出るの?

膨疹といった特徴的な皮疹が出現します。

血管外に漏出した血漿成分によって、皮膚が膨らみます。この膨らみのことを、医学的には膨疹と呼びます。膨疹をみたら蕁麻疹と診断しますが、逆に膨疹がないから蕁麻疹じゃないとはいえません。そのため、自己判断ではなく医師に診察してもらう必要があります。

医師がよくチェックする方法としては、皮膚描記法があります。蕁麻疹ですと皮膚をこすると、赤く膨隆します。一方でアトピー性皮膚炎では、白色になります。

また、大量のヒスタミンが分泌されるため、体幹や四肢など広範囲に出現することが一般的です。さらにこのヒスタミンが唇に到達した場合は唇が腫れる、まぶたに達した場合はまぶたが腫れるなどの症状があります。

さらに、目に見えないところにもヒスタミンが分泌されることで症状が出ます。例えば腸管にヒスタミンが分泌されると、腸が浮腫んで下痢になります。さらに気道が浮腫むと、息が苦しくなります。大きな血管が膨張することで血圧が急激に下がることもあります。これらは、場合によっては命にかかわります。(皮膚以外に全身に症状が進行した場合はアナフィラキシーと呼びます。)

 

3. ポララミンは蕁麻疹にどのように効果を示すの?

抗ヒスタミン薬として蕁麻疹の原因を止めます。

免疫系の誤作動により分泌されるヒスタミンが蕁麻疹の主な原因で、これが痒みの直接の原因になります。ですから、このヒスタミンをすぐ止めるのが症状を抑える治療法となります。

ポララミンは抗ヒスタミン薬ですので、全身のヒスタミンが血管に作用するのを防ぐ作用があります。ヒスタミンの分泌の前段階の肥満細胞やIgEを抑えても、ヒスタミンが大量に分泌された後では全く効果がありません。

ポララミンが作用することで、大量に分泌されたヒスタミンが血管や神経にある受容体にくっついて作用するのを防ぐ役目となります。ヒスタミンを邪魔した結果、痒みや膨疹が治まるのです。

 

4.蕁麻疹の場合のポララミンの内服の容量・用法は?

成人の場合、ポララミン1回2mgを1日1~4回経口投与する。。

ポララミンの使用方法について、添付文章からご紹介していきます。

【錠剤・散剤・シロップ】

  • 通常、成人には1回2mgを1日1~4回経口投与する。なお、年齢や症状により適宜増減する。

【ドライシロップ】

  • 2歳〜5歳:ポララミンドライシロップ0.5mg/回を4〜6時間あけて必要に応じて経口投与する。 
  • 5歳〜12歳:ポララミンドライシロップ1.0mg/回を4〜6時間あけて必要に応じて経口投与する。

なおポララミンは、新生児には抗コリン作用にてけいれん発作が出現する可能性があるため使ってはいけないお薬になっています。そのため添付文章が推奨している2歳以上から、ポララミンは使用しましょう。

食べ物や薬が原因の急性蕁麻疹であれば、ポララミンを2~3日内服すればほぼもとに戻ります。しかしながら慢性蕁麻疹だと、ポララミンをやめてからリバウンドして再び蕁麻疹が出現することもあります。また、ストレスが要因のことも多いので、薬を飲みながら仕事や学校に行くと再発するリスクも多いです。

膨疹が完全に消えた場合は良いですが、心配な人はポララミンをお守りとして数錠ストックしていただいて、再び蕁麻疹が認められたらすぐにポララミンを飲んで受診するようにお願いすることもあります。

しかしながら、ポララミンを蕁麻疹に対して処方することは少なくなりました。理由としては、ポララミンの投与量が1回~4回と曖昧だからです。

ポララミンは副作用が強いため、軽症である場合は少ない量で、重症な場合は複数回投与することとなっています。しかし蕁麻疹が軽症か重症かは薬の効き具合にもよります。そのため一回診察してポララミンの処方量を決めるのは非常に難しいのです。

現在は蕁麻疹に対して抗ヒスタミン薬を処方する場合は、アレグラザイザルなどが主流です。こちらの第二世代は副作用も少ないため、投与量が軽症でも重症でもあまり変わらず処方できるからです。

そのためポララミンが蕁麻疹で使っていく場合は、次の注射の方が多いです。

 

5.蕁麻疹の場合のポララミン注射の用量・用法は?

蕁麻疹に対しては、ポララミン注射5mg(1アンプル)を筋肉か静脈内に投与します。

ポララミン注射の適応は、

  1. 蕁麻疹などの皮膚疾患
  2. 花粉症のなどの鼻炎

の2種類です。風邪に伴う鼻炎は適応から外れます。

また、ポララミン注射を花粉症で投与することはほとんどありません。花粉症は期間中ずっと症状が続く病気です。一回ポララミン注射を打っただけでは治すのが難しい病気のため注射を打とうとは思いません。

一方で蕁麻疹では、ポララミン注射の良い適応です。つらい痒みを早くとりたい時には、お薬で内服するよりも注射でポララミンを投与した方が効果的です。

ポララミンを内服した場合は腸までポララミンが到達して、それが吸収されてから全身にいきわたるまでタイムラグが生じます。一方でポララミン注射であればすぐに吸収されることから、早く蕁麻疹の痒みが取れる可能性があります。

蕁麻疹の注射の治療薬といえば、強力ネオミノファーゲンシー(強ミノ)という肝庇護剤が良く用いられます。しかしこの強力ネオミノファーゲンシーがなぜ蕁麻疹に効くのか、よくわかっておりません。そのため、作用機序がしっかりわかっているポララミン注射を好む医師も多いです。

成人に対してポララミン注射を蕁麻疹に対して投与する場合、5mg(1アンプル)を筋肉か静脈内に投与します。

しかし注意点としては、ポララミンは第一世代の抗ヒスタミン薬として眠気が非常に起こりやすい注射です。残念ながら第二世代の抗ヒスタミン薬の注射は、2016年時点では発売されていません。そのため、蕁麻疹に対して抗ヒスタミン薬を使うとすれば第一世代になります。

そのためポララミン注射を投与する前に

  • 車で病院に来ていないか?
  • 誰かと一緒に来ているか?

を確認する必要があります。ポララミン注射の眠気の頻度は、添付文章では不明となっております。しかし実際にポララミン注射を投与してみた感覚では、半分くらいの人が眠気が出現する印象があります。

つまり蕁麻疹の痒みをとった後にしっかりと家に帰れるかを確認しなければなりません。

ポララミン注射を打った後、眠気で自動車事故を起こした、階段で転んで頭を打ったでは笑いごとで済まされません。逆に車で来たり一人で来た人は、先ほどの強力ミノファーゲンを投与した方が無難かと思います。

 

まとめ

  • 蕁麻疹は、様々な原因で肥満細胞から大量にヒスタミンが分泌された結果、膨疹が起きる疾患です。
  • 蕁麻疹に対して、抗ヒスタミン薬であるポララミンが処方されます。
  • 注射薬はポララミンなどの第一世代しかないため、ポララミンは注射薬として筋肉注射や静脈注射で投与されることが多いです。
  • ポララミン注射は眠気が強いお薬です。病院で車で来たり、一人で来た人は避けるようにしましょう。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック