半夏白朮天麻湯【37番】の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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めまいの原因はさまざまですが、漢方の世界では、胃腸機能の低下により、体内の水の巡りが悪くなることが原因の一つとされています。

半夏白朮天麻湯は、めまいの中でも、もともと胃腸が弱くて疲れやすく、冷え性である体質の人によく起こるものに対して処方される漢方です。

めまいといえば、メニエール症候群、低血圧に伴う症状としてのめまいなどがありますが、例えばメニエール病の原因は、内耳が水分代謝の異常を起こすことが原因と分かっているので、水毒を改善することは、めまいの改善に有効なのです。病院でも、めまいといえば頻繁に使用されます。

半夏白朮天麻湯は、気血水のうち停滞した「水」をめぐらせ、同時に胃腸の働きを強化することで体をあたため、めまいを改善していきます。漢方では消化器を「脾」といいますが、この「脾」に作用する生薬と、体内の水分のバランスをとる生薬が主に配合されています。

頭痛や吐き気など、めまいとともにあらわれる症状だけでなく、もともとの体質にもはたらきかけます。このため半夏白朮天麻湯は、急性症状と慢性症状の両方に効果が期待できます。

漢方薬にはそれぞれ番号がついていて、半夏白朮天麻湯は「ツムラの37番」などとも呼ばれます。ここでは、病院で処方される半夏白朮天麻湯の効果と副作用についてお伝えしていきます。

 

1.半夏白朮天麻湯【37番】の生薬成分の効能

生薬は、体の「水」の巡りを整える生薬と、消化器をあらわす「脾」を活発化させ、正常な働きにする生薬をバランス良く配合しています。全体的には、体をあたため、消化器を活発化させ、余分な水分を排出することで症状を改善していきます。

漢方は、何種類かの生薬を合わせて作られています。生薬は自然界にある天然のものが由来です。天然のものといっても、生薬それぞれに作用が認められます。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

半夏白朮天麻湯は、12種類の生薬から有効成分を抽出して作られています。まずはそれぞれの生薬成分の作用をみていきましょう。

  • 半夏(3.0g):制吐作用・健胃作用
  • 白朮(3.0g):健胃作用・利尿作用・発汗作用
  • 茯苓(3.0g):利尿作用・鎮静作用・健胃作用・抗めまい作用
  • 沢瀉(1.5g):利尿作用
  • 天麻(2.0g):鎮静作用・鎮痛作用・抗けいれん作用・強壮作用
  • 人参(1.5g):強壮作用・抗ストレス作用・賦活作用・補気作用
  • 黄耆(1.5g):強壮作用・利尿作用
  • 乾姜(1.5g):強壮作用・健胃作用
  • 陳皮(3.0g):健胃作用・鎮咳作用・理気作用
  • 黄柏(1.0g):健胃・止瀉作用・中枢抑制作用・血管弛緩作用
  • 麦芽(2.0g):健胃作用・消化作用
  • 生姜(0.5g):発汗作用・制吐作用・健胃作用・鎮咳作用

※カッコ内は、製剤1日量に含まれる生薬の乾燥エキスの混合割合です。

半夏白朮天麻湯の組成の効果は、大きく3つに分かれます。一つ目は、消化器を活発化させて正常なはたらきができる状態にし、滋養とともに体内に食物の栄養分が行きわたるようにするもの。半夏・人参・陳皮・黄柏・麦芽・乾姜がこの役割をします。

二つ目は、体内の水分を調節し、不要で滞っていた分を、体の外へ排出させる生薬です。半夏白朮天麻湯に含まれる白朮・沢瀉・茯苓・黄耆は、むくみや胃アトニーなど、いわゆる「水毒」に効果をあらわす代表的な漢方です。余分な水分を排出することで内耳の腫れをとり、また、むくみがとれることで冷えも改善し、毒素も排出します。

冷えをとって体をあたためる組成は、生姜が大きな役割を果たします。半夏白朮天麻湯には、乾姜と生姜の両方が含まれており、この2つは、もともとの原料は同じです。乾燥させた方の乾姜は、主に強壮・健胃に作用し、一方で生のままの生姜は、ジンゲロンやショウガオールガオールが豊富で、体をあたためる発汗作用を持つのです。

三つ目は、天麻の働きです。天麻には、めまいや頭痛を直接発散して治す働きがあるといわれています。症状を直接おさえる作用に加え、生薬の体質に対する作用が、めまいの根本的な回復に向かわせます。

半夏白朮天麻湯の生薬の由来について表にしました。

 

2.半夏白朮天麻湯の証

陰陽(陰証)・虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(水毒)

漢方では、患者さん一人ひとりの身体の状態をあらわした「証」を考えながら薬を選んでいきます。証には色々な考え方があり、その奥はとても深いです。

漢方薬を選ぶに当たって、患者さんの体格や体質、身体の抵抗力やバランスの崩れ方などにあわせて「証」をあわせていく必要があります。証を見定めていくには、四診という伝統的な診察方法を行っていくのですが、そこまでは保険診療の病院では行わないことがほとんどです。

このため、患者さんの全体像から「証」を推測して判断していきます。「陰陽(いんよう)」「虚実(きょじつ)」「寒熱(かんねつ)」など、証には様々な捉え方があります。

このうち医者が参考にする薬の本には、たいてい「陰陽」と「虚実」しかのっていません。陰陽は身体全体の反応が活動的かどうかをみて、虚実は身体の抵抗力や病気の勢いをみます。つまり病院では、以下の2点をみています。

  • 体質が強いかどうか
  • 病気への反応が強いかどうか

さらに漢方では、「気血水」という3つの要素にわけて病気の原因を考えていきます。身体のバランスの崩れ方をみていくのです。

漢方の証について詳しく知りたい方は、「漢方の証とは?」をお読みください。

半夏白朮天麻湯が合っている方は、以下のような証になります。

  • 陰陽:陰証
  • 虚実:虚証
  • 寒熱:寒証
  • 気血水:水毒(水分停滞)・脾気虚(胃腸が弱い)

半夏白朮天麻湯は、虚証の人に向いている漢方薬になります。

 

3.半夏白朮天麻湯の効果と適応

  • 胃腸が弱く、頭痛やめまいが起こりやすい
  • 低血圧に伴う頭痛、めまい
  • 胃アトニー、胃下垂
  • 疲れやすく冷え性であり、めまいや頭痛が起こる

半夏白朮天麻湯は、金時代に書かれた「脾胃論」という漢方の古典書をもとに生薬の成分を配合しています。それぞれの生薬成分の効果があわさって、ひとつの漢方薬としての効果がみられます。

半夏白朮天麻湯は、冷えがあり疲れやすい、頭痛やめまいが起きやすい人に最もよく使われます。めまいの原因にはさまざまありますが、めまいや頭痛を直接しずめ、それと並行して体質を改善していく形で漢方薬は効いていきます。

漢方では、めまいは水毒が一因と考えられています。水分が停滞して内耳が腫れてしまい、三半規管に影響を及ぼしてめまいを引き起こしていくと考えられています。半夏白朮天麻湯は、水毒を解消することでめまいの改善に役立つといえます。

水がめぐるためには、気・血もバランス良くめぐる必要があります。それぞれが正常にめぐることを促すために、消化器官を強化して、食物からエネルギーを取り入れる力を強めるの必要があるのです。

食物から栄養が取り入れられれば、栄養は気・血となって体に取り入れられ、体内をめぐります。半夏白朮天麻湯に含まれる生薬の中では、人参に「補気薬」、陳皮に「理気薬(気をめぐらせる)」の作用があるため、これらも、気血水の正常なめぐりに寄与します。

水分の停滞は体に冷えをもたらし、冷えは水分の停滞をもたらすため、悪循環となります。体を直接あたためる作用を持つ生薬を配合するほか、余分な水分を除くことも冷えの改善につながるため、水分代謝の改善は大切なのです。これらの複合的な作用により、めまいを主とする頭痛や疲れやすさなどの症状を改善します。

めまいのほか、証が適合する偏頭痛や緊張型頭痛にも、使われることがあります。

 

4.半夏白朮天麻湯の使い方

1日2~3回に分けて、空腹時(食前・食間)が基本です。飲み忘れが多くなる方は食後でも構いません。

半夏白朮天麻湯は、ツムラから発売されています。1日量は、ツムラとクラシエは7.5g、コタローは9gになっています。

半夏白朮天麻湯は、1日2~3回に分けて服用します。漢方薬は空腹時に服用することを想定して配合されています。ですから、食前(食事の30分前)または食間(食事の2時間後)に服用します。量については、年齢や体重、症状によって適宜調整します。

漢方薬を空腹時に服用するのは、吸収スピードの問題です。麻黄や附子などの効果の強い生薬は、胃酸によって効果が穏やかになります。その他の生薬は、早く腸に到達することで吸収がよくなります。半夏白朮天麻湯を食前に服用するのは、吸収をよくするためです。

とはいっても、空腹時はどうしても飲み忘れてしまいますよね。現実的には食後に服用しても問題はありません。ただし、保険適応は用法が食前のみなので、形式上は変更できません。

 

5.半夏白朮天麻湯の効き目とは?

慢性頭痛には早ければ数日、めまいには1週間ほどで効果が感じられるといわれています。

それでは、半夏白朮天麻湯の効き目はどのような形でしょうか。

半夏白朮天麻湯には、症状に直接作用する天麻が含まれています。これにより、証が合えば、症状自体には比較的早い効果が期待できます。

しかし、胃腸の弱さや疲れやすさは、慢性的、あるいは体質的なものです。いっとき症状は治まっても、体質が変わって徐々に症状が出なくなっていくまでには、1ヶ月ほど様子を見た方が良さそうです。

利尿効果によるむくみや冷えの改善は、証があっていれば徐々にあらわれていくでしょう。同時に、胃腸が強化されて消化がよくなり、疲れやすさも感じにくくなるはずです。

漢方薬の効果について詳しく知りたい方は、「病院で処方される漢方薬の効果とは?」をお読みください。

 

6.半夏白朮天麻湯の副作用

半夏白朮天麻湯では、誤治や生薬固有の副作用が中心です。

漢方薬は一般的に安全性が高いと思われています。しかしながら、生薬は自然のものだから副作用は全くないというのは間違いです。

漢方薬の副作用としては、大きくわけて3つのものがあります。

  • 誤治
  • アレルギー反応
  • 生薬固有の副作用

漢方薬の副作用として最も多いのが誤治です。漢方では、その人の状態に対して「漢方薬」が処方されます。ですから状態を見誤って処方してしまうと、調子が悪くなってしまったり、効果が期待できません。このことを誤治といいます。

誤治では、さまざまな症状が認められます。これを副作用といえばそうなるのですが、その原因は証の見定めを間違えたことにあります。あらためて証を見直して、適切な漢方薬をみつけていきます。

ま た、食べ物でもアレルギーがあるように、生薬にもアレルギーがあります。アレルギーはどんな生薬にでも起こりえるもので、体質に合わないとアレルギー反応 が生じることがあります。鼻炎や咳といった上気道症状や薬疹や口内炎といった皮膚症状、下痢などの消化器症状などが見られることがあります。飲み始めに明らかにアレルギー症状が出ていたら、服用を中止してください。

そして、生薬自体の作用による副作用も認められます。生薬の中には、その作用が悪い方に転じて「副作用」となってしまうものもあります。

半夏白朮天麻湯は、証があっていれば、重篤な副作用は起こりにくいといわれています。しかし、まれに、飲みはじめに胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気が起こる場合があります。治まらない、または慣れなければ、医師に相談するようにしてください。

漢方薬の副作用について詳しく知りたい方は、「漢方薬で見られる副作用とは?」をお読みください。

 

まとめ

消化器官の強化・正常化、水分停滞の解消、また、体を温める効果によって、余分な水分を排出し、気血水のめぐりをよくして、めまいや頭痛を改善します。症状に直接作用するほか、体質を改善することで疲れやすさ、冷えも改善し、症状を起こりにくくしていきます。

虚実(虚証)・寒熱(寒証)・気血水(湿証・脾気虚)

半夏白朮天麻湯は、以下のような方に使われます。

  • 疲れやすく、冷えがある人のめまい、頭痛
  • 低血圧によるめまい、頭痛
  • 慢性頭痛(偏頭痛・緊張型頭痛)
  • むくみ、胃内停水など、水毒の症状
  • メニエール症候群

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