実は名医?ダメなクリニックと誤解されやすい4つのポイント
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
最近は町のクリニックの数は増える一方で、駅の広告もクリニックばかりのところもあります。
たくさんの選択肢がある中で、どこに行けば迷う人も多いでしょう。みなさん良いクリニックに出会いたいと思われるかと思いますが、本当によいクリニックかどうかを判断することはなかなか難しいかと思います。
実際に受診してみて良いクリニックかどうかを判断するポイントを知りたい方は、「内科のかかりつけ医を選ぶポイントとは?」をお読みいただければと思います。
しかしながら、中には医療に一生懸命取り組んでいることが、患者さんにとっては不信感につながってしまうこともあります。
ここでは、よく勘違いされやすい4つのポイントをまとめてみました。真剣に医療に取り組まれている結果であることもあるのです。これらに当てはまるからといってすぐに、「ダメなクリニックだ!」「ヤブ医者だ!!」となってしまわないように振り返っていただければ幸いです。
1.医学書ですぐに調べる医師
正しい医療かどうか確認しながら行うのはとても素晴らしい行為です。決して知識がないわけではありません。
自分の症状を伝えていざ薬を出してもらう時に、本やパソコンでその薬の内容などを医師が確認すると不安に感じるかもしれません。[よくわからないで診療しているの?]なんて懐疑的になる人もいるでしょう。
しかし医療は確実性が最も重要です。
- 確か・・・。
- 一応・・・。
- たぶん・・・。
などなどあやふやな知識で治療して、後で間違いだったなんてなったら目も当てられません。こういった間違いがないか確認する行為というのはとても素晴らしいです。
私は研修医に、「カンニングは医者の特権。沢山するように」と指導します。学生がやったら怒られる行為も、医師になったら絶対にこの調べるという癖はつける必要があります。
石橋をどんなに叩いて、叩いて、叩き続けても絶対がないのが医療です。しっかりと調べる先生は、このことがよくわかっている先生だと思います。
特に今の医療は日進月歩、非常に急激に進んでいます。
- 高血圧の薬は、100種類以上も発売されています。
- 糖尿病も、新しい治療薬が毎年のように登場します。
- 風邪薬にしても、年々新しいお薬が登場しています。
このように身近な病気でも、毎年新しい薬がバンバンと登場します。ですから、
- どんな人に効くのか
- どんな副作用があるのか
- どんな人に使ってはいけないのか
本で調べながら治療しているのです。細かいところをすべて頭に暗記させるのは不可能に近いです。よく使われる風邪薬として代表的なものの一つに、PL顆粒という薬があります。試しに、PL顆粒の添付文章をみてみてください。
- 警告や禁忌は絶対使用してはいけないということです。
- 慎重投与は気を付けて使用しなければいけない状態です。
- 相互作用は一緒に内服する時は気を付けなければいけないお薬です。
どの項目も、非常にさまざまな記載がされています。副作用も非常にたくさんの記載がされています。よく使う風邪薬ですら、これだけ沢山の内容が添付文章に記載されているのです。この内容を全て、毎年新しく出てくる薬まで暗記するというのは無理ですよね?
下手すると他のお薬とごっちゃになってしまうかと思います。あなたの目の前で色々調べているということは、それだけ石橋をたたいていただいてる証拠です。安心して身を任せて良いと思います。
2.話している最中に書いたり、キーボードを打ち続けている医師
医師はカルテ記載は義務化されています。これらをしっかりとやるとすると、話を聞きながら内容を記載する必要があります。
診療内容も大切ですが、医師自体の人間性も患者さんからすると気になると思います。
- 最初から下を向いていて挨拶がない
- 質問しようとしたら怒鳴られた
- 説明がよく聞こえない
などなど、患者さんからみて人間性に不満を持たれた方もいるのではないでしょうか?医療もサービス業の一つです。どんなに腕が良い医師でも、人と人のつながりがある以上不満を持たれるようではいけないでしょう。ただしこれらに並んで、
- 自分が話しているのにカルテに記載している
といったことを不満に感じる人もいるかと思います。「この人、私の話をちゃんと聞いてるの?」なんて不満に思う人もいるかもしれません。しかし医師側の言い分も少しさせてください。私たちは患者さんをみながら、カルテを記載していく必要があります。
医療のカルテの記載の基本はSOAPと、医者になった最初に教わります。
SOAPとは以下の事を示します。
- S(Subject):主観的データです。主に患者さんからのお話の内容です。
- O(Object):客観的データです。身体診察や・様々検査から得られた情報です。
- A(Assessment):SとOの情報を元にした評価です。つまり診断になります。
- P(Plan):Aを元にした計画です。つまり治療方針ということになります。
これを基本にカルテは記載されますし、医者の頭の中で考えていくことも、基本はAとPを決めるためにSとOを充実させていくことになります。
あなたがお話している時に医者が一生懸命キーボードを打っていたり、カルテを書いていたりしているのは、実はSの部分をカルテに残すためです。
では、患者さんのお話を聞きながら目を見てカルテを記載するのは可能でしょうか?最近の医学部では模擬患者さんを相手に問診するといったトレーニングがあります。そこでは、患者さんの目を見てしっかり話を聞くことと医学生は教育されますが、実際には話を聞きながらメモを取るのは非常に難しいです。
話を聞き終わってからメモすると無言の間ができてしまいますし、一生懸命に聞く方に夢中になってしまうとカルテが白紙になってしまいます。診察の後ですとわからなくなってしまうこともありますし、カルテをしっかり書かないと後からわからなくなってしまいます。
カルテは非常に重要で、診断をするための足掛かりになります。初診で診断をすぐ確定することはなかなか難しいです。次来た時に状態が治ってなかったら、前のカルテと見比べて次のAとPを決める必要があります。
そのため、医師が自分の話を聞きながら手を動かしている時は、自分と真剣に向き合おうとしてくれてるんだと感じてくれたら、医師としては嬉しい限りです。
3.自分の希望にこたえてくれない、自分のことを注意する医師
患者さんのことを真剣に考えれば考えるほど、間違ったことは間違いであると伝えられる医師は素晴らしいと思います。
医療=サービス業と考えてしまって、自分の希望通りになんでもやってくれるものだと思い込んでしまっている患者さんが中にはいます。しかし医療は、正しくないことは正しくない、無理なことは無理と、どうしても伝えなければいけません。
患者さんによっては、無理難題を押し付けてくる人も多いです。
- 風邪ひいたけど明日旅行だから点滴して今すぐ治して。
- 自分は熱があって辛いから他の人より早く診て。
- 何回も病院に来るのがめんどくさいから薬を沢山出して。
これらに対して、すべて希望通りにはいかないのが医療です。
- 点滴で風邪を一瞬にして治すお薬はありません。安静にすることが一番の治療です。
- 状態によって早く診ることがありますが、それは患者さんが強く主張した順ではありません。
- 薬の効果判定もしないで、いきなり最初から大量で長期にお薬を出すことは危険です。
治療上望ましくないことは「NO」ということは、とても重要です。なんでも患者さんの言う通りにしてくれるクリニックは、むしろ危険な可能性が非常に高いです。
また医療は薬で何でも治せるわけではなく、患者さんとの二人三脚で治療しなければいけない病気は沢山あります。
- 高血圧は塩分やお酒を制限する必要があります。
- 糖尿病は食事の量を制限する必要があります。
- COPD(肺気腫)はタバコをやめる必要があります。
これらの病気は、薬の前に生活を改めなければなりません。
- 高血圧だけど、食生活は変えられないから降圧薬を出して。
- 糖尿病だけど、食べるのはやめられない。
- 肺気腫だけど、タバコは長年吸ってきたからやめられない。
患者さんからこのように言われたときに、注意してやめていくように伝えるのが医師の務めでもあります。患者さんが嫌なことへ向かわせなければいけません。上手くやる気にさせられれば名医ですが、嫌なことを伝えることは普通の医者でもしなくてはいけません。患者の希望のままではヤブ医者です。
どんな病気も、薬だけで調整するのは無理があります。薬の量が増えれば増えるほど、副作用も強くなります。さらにこれらの病気がコントロールが悪くなると、
- 血圧が高すぎて脳出血になって植物人間になった
- 糖尿病の値が悪すぎて、透析が必要になった
- 肺気腫が進行しすぎて、少し動くだけでも息苦しい
状態まで悪化すると、もうどうすることもできません。
「目上の人から怒られなくなったらお終いだ」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか?親はあなたのことが憎いから怒るのでしょうか?あなたのことが大切だからこそ叱るのだと思います。どうでもよければ叱りません。
医療も同じです。医師は、病気が悪化するととんでもないことになるのを知ってるから注意するのです。ここで見てみぬふりをして、「大変なことになったら他の大きな病院に行ってきて」という方がよほど楽です。でもそうしない先生は、あなたのことを大切にしている証拠です。
このように、患者さんの希望に答えてくれない、注意されて気分が害されたということが時によってあるかもしれませんが、全てはあなたの健康のためです。
ただし何を伝えるにしても、納得させる説明は必要だと思います。
- 無理だからの一言で片づけられた。
- 怒鳴られて萎縮してしまった。
- 無視されて流された。
「NO」というにしても伝え方があるかと思います。これに関しては、患者さんによって合う合わないもあって非常に難しいです。あなたの要求に関して、なんでもかんでも「YES」でしたがってしまうクリニックは、最初は居心地が良いかもしれません。
しかし本当に何かあった時は、大きな総合病院に行ってで片づけられてしまうので注意しましょう。大きな総合病院へ行っても、どうにもならないことは沢山あります。そうなってから後悔する前に、ぜひ自分の健康は自分で守るようにしましょう。
4.患者さんがあまりいなくて空いてるクリニック
完全予約制で患者さんを待たせないようにしているクリニックもあります。また大量に患者さんが待っているクリニックは、回転率が悪いだけの可能性もあります。
混んでる=人気があると考え方は、どの業界でもあると思います。
- あそこのラーメン屋は凄い並んでるから美味しそうだ。
- あそこのライブは凄い人がいるから人気のバンドなんだろうな。
- あの試合は凄い人が入ってて盛り上がってたよ。
これらのことが医療に当てはまるかというと、一概にはそうともいえません。日本のクリニックは現在10万近くあり、コンビニの倍以上あります。そしてクリニックによってさまざまな特徴があります。
医師の特性を生かして、「治療が難しい人をじっくりと診察して治したい」といったクリニックは完全予約制で診ていることも多いです。これらのクリニックは待合室で長期間待たないように調整するため、人があふれかえっているということは少ないです。
一方で予約がなくても診るクリニックもあります。そういった完全予約でないところは、混んでた方が良いクリニックということに思われるかもしれません。
しかし一概に、そうとはいえません。私も総合病院で働いていましたが、パッパッと仕事をこなす医師もいれば、仕事が遅くいつも外来がパンク状態の医師もいました。そのため混んでるからといって人気があるとは言えないのが実情です。
診察するスピードが遅くて患者さんがパンクしてしまっている可能性があります。逆にそういった病院に行って、状態が悪いのに対応が後手後手になってしまうことがあるので注意が必要です。
そもそも医療は、質の良し悪しは受診しただけではなかなか分かりません。
- 駅から近い。
- クリニックが綺麗だ。
- 受付の女性が可愛い。
などなど医療とは関係ないところで人気があるクリニックも多いです。そのため、
- 患者さんが全然いないから駄目なクリニックだ。
- 患者さんであふれかえっているから素晴らしいクリニックだ。
と安易に考えないようにしましょう。
まとめ
- すぐ調べることは確実に医療をしようとしている証拠です。
- 話している時に手を動かしていることは情報を確実に残そうとしています。
- あなたのことを怒る医師は、あなたの健康を考えてこそです。
- クリニックが空いてる、混んでるは悪い、良いの判断基準にはなりません。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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