プレドニン(プレドニゾロン)の副作用と対処法
プレドニン(一般名:プレドニゾロン)は、抗炎症作用・免疫抑制作用のあるステロイドの経口薬です。
ステロイドと効くと気になるのが、副作用だと思います。ステロイドは非常に有用なお薬である一方で、様々な副作用があるのは事実です。
これは、プレドニンを処方している医師は承知のうえで処方しています。プレドニンを処方する場合は多くの場合、「背に腹は代えられない」ほどの治りづらい、もしくは急いで治さないと危ない病気になります。そのため副作用に関しては、ある程度リスクを背負わざるをえません。
とはいってもプレドニンを内服している間、できる対策はあります。ここでは、プレドニンの副作用と対処法について書いていきます。プレドニンを飲んでいる方は、どんなことに気を付ければ良いか確認してみましょう。
1.ステロイドであるプレドニンが副作用が多い理由
ステロイドは、体内で作られているホルモンです。全身に作用することで、様々な部位に影響を与えます。良い面もあれば悪い面もたくさんあります。
ステロイドホルモンは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。
ステロイドホルモンは一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。そのため一部の臓器に作用せず様々な臓器に作用します。
どのように元気にするかというと、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切る作用のあるホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。つまりステロイドは良い面ばかりではなく悪い面もたくさんあります。
具体的なステロイドの作用ですが、
作用機序 | 副作用 | |
抗炎症 作用 |
炎症性の物質抑制(サイトカイン抑制) 炎症の経路抑制(アラキドン酸カスケード抑制) |
|
免疫抑制作用 | 好中球、マクロファージなど体を守る免疫細胞の抑制 抗体産生の抑制(免疫反応の抑制) |
感染しやすくなる |
骨代謝 作用 |
腸管のカルシウム吸収抑制骨の細胞の分化抑制、破壊促進 | 骨粗しょう症 |
タンパク質異化作用 | 筋肉のたんぱく質を分解 | 筋力低下 |
糖代謝 作用 |
血糖値を上げる | 糖尿病 |
脂肪代謝作用 | 体脂肪増加 コレステロール上昇 |
脂質異常症 満月様顔貌 |
水・電解質 作用 |
Na貯留 水分貯留 |
高血圧 むくみ |
この中で、抗炎症作用と免疫抑制作用の効果を利用して治療することがステロイドは多いです。その他の様々な作用は、副作用となってしまうのです。
代表的な作用をここではあげましたが、他にも眼の眼圧を上げたり、血を固まりやすくするなどの様々な作用があります。
2.プレドニンの副作用の特徴
プレドニンの投与量及び投与期間によって、出現する副作用および頻度が大幅に変わります。最も多いのは満月用顔貌です。
プレドニンの添付文章では、副作用は2299例中512例(22.27%)に認められたとなっています。主なものは、
- 満月様顔貎 2%(110件)
でした。しかしプレドニンは、
- 投与量
- 投与期間
で全く副作用の出現頻度が違います。さらにいえば、
- 年齢
- 体の大きさ
- 肝臓や腎臓の機能状態
- ステロイドを使用する病態
- 他にある病気の有無
によっても副作用は大幅に変わります。そのため、一概にどの副作用がどれくらい起きるかとは個々人によって大きく異なります。代表的な副作用としては、
- 満月様顔貌・肥満(ステロイドによる脂肪細胞の増殖および水分を体内に取り込む作用で起きます。)
- 細菌やカビなどの感染症に弱くなる(免疫を抑えるため防御が下がります。普段なら感染しないような特殊な菌にも感染しやすくなります。)
- 糖尿病(ステロイドが筋肉や脂肪を燃やし血糖値を上昇させます)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(ステロイドが胃腸に働くことでストレスがかかります)
- 高血圧・浮腫(ステロイドで血管が収縮します。さらに水分やNaを貯留するため血管内の水分が増えます。)
- 肝機能障害(ステロイドが肝臓を通して炎症を抑えるため負担がかかります)
- 緑内障・白内障(ステロイドで眼圧が上がったり、目のレンズが濁ったります)
- 精神障害(ステロイドでイライラしたり眠れなくなります)
- 骨粗鬆症(ステロイドは骨にも作用し、骨密度が低下します)
- 筋力低下(ステロイドによる筋肉を分解する作用で筋力が低下します)
- 月経異常(ステロイドホルモンは性ホルモンと似ている部分があるため、生理不順が起きます)
- ニキビ・皮下出血(皮膚の代謝異常でおきます。ステロイドで皮膚や筋力が衰え出血しているように見えます)
ここにあげたのは代表的なものです。糖尿病や高血圧、緑内障などが持病である人は、病状の悪化に特に注意が必要です。続けて、これらの副作用の対処法について考えてみましょう。
3.プレドニンの副作用対策は?
それぞれの副作用の対策について考えてみましょう。
3-1.満月様顔貌・肥満
プレドニンを内服していて、最も多く認める副作用です。プレドニン10mg以上内服していると出現しやすくなります。服薬量と期間によって、さらにまん丸とした満月の様な顔になりやすいです。一般的には、プレドニンが10mg以下になれば元の顔に戻っていくことが多いです。
さらにプレドニンは、元気にする作用があるため食欲が上がりやすくなります。病気で動き回れなくて運動量が少ない中、お菓子などを食べてしまうとアッという間にまん丸になってしまいます。必ずステロイド内服中は太りやすいことを意識して、お菓子などの間食は避けるようにしましょう。
3-2.細菌やカビなどの感染症に弱くなる(易感染)
プレドニンを20mg以上内服してる場合で、風邪などのばい菌に2倍程度かかりやすくなるといわれています。ただし2週間以内でプレドニンが終了された場合は、免疫力には影響がないといわれています。この辺りはご自身の病気の状態をみながら、医師によって減量できそうなら減量していくと思います。
そのためご自身も、ばい菌にかからないように気を付ける必要があります。
- 人込みに出ない
- 正しい手洗い・うがい
- マスクを着用
など感染防御に努めましょう。詳しく知りたい方は、「風邪の予防に有効な5つの方法」を参考にしてみてください。
一方で我々が普段住んでる世界は、実はばい菌だらけです。免疫力が全く問題ない人なら気にならない菌などが、免疫が落ちることで感染してしまう場合があります。
最も有名な感染症が、ニューモシスティス肺炎です。ニューモシスティスはカビ(真菌)の一種で、普通はエイズなど特殊な病気な人以外はまずかかりません。しかしプレドニンを長期に内服して免疫が落ち続けてしまうと、このニューモシスティス肺炎になる率が徐々に上がっていきます。
ニューモシスティス肺炎は、感染した段階から息が苦しくなり、急激に症状が悪化する危険な病気です。そのためプレドニンを長期間投与することが見込まれている場合は、バクタ錠というニューモシスティスに対して効果があるお薬を予防的に投与することで、肺炎になるのを防ぐようにします。
3-3.糖尿病
糖尿病も、プレドニンを長期間内服していると高頻度で出現します。さらに糖尿病がもともとある人は、プレドニンの内服によって悪化します。そのため入院中の方は、場合によっては毎食前に血糖値をチェックして、高ければインスリンなど注射する必要が出ていきます。
糖尿病の一番の治療は食事です。先ほどの満月様顔貌と合わせて、プレドニンを内服する場合はダイエット食を意識するように心がけてください。
3-4.胃潰瘍・十二指腸潰瘍
病気になった方は、それだけでストレスがかなりかかっていることが多いです。この状態にステロイドで胃腸にも負荷がかかると、胃腸が荒れてしまいます。特にロキソニンなどの痛み止めや解熱薬も一緒に飲んでる人は、非常に高確率で胃が荒れる可能性があります。この場合は事前に、胃薬を処方してもらいましょう。
また胃や十二指腸が荒れた状態で放っておくと、胃や十二指腸に潰瘍ができてしまいます。一度潰瘍ができてしまうと、なかなか治りが良くならないです。
一般的にステロイドの胃潰瘍は急激に痛みを伴うことは少なく、何となく腹部の違和感から始まり徐々に痛みが続きます。そのためお腹の痛みが続くようであれば医師に相談して、必要があれば胃カメラなど検査するようにしましょう。
3-5.高血圧・むくみ
ステロイドには、糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの2種類があります。大部分は糖質コルチコイドの作用ですが、塩分や水分を血管内に貯留させる作用があるのは硬質コルチコイドです。
この硬質コルチコイドの副作用によって、水分や塩分が血管内に引き込まれることで高血圧やむくみが出現します。特に、高血圧が元々ある人は要注意です。プレドニンで水分や塩分が体内に蓄積されやすい状態なので、特に塩分の過剰摂取は気を付けてください。
また、血圧を定期的に測定することが大切です。高血圧を放っておくと、
- 脳出血
- 心筋梗塞
など命にかかわる病気になってしまうかもしれません。必要があれば積極的に降圧剤の処方を検討するのが一般的です。
3-6.肝機能障害
プレドニンは、肝臓にも負担をかけるお薬です。もともと肝障害がある方は注意が必要です。一方で肝障害を起こるプレドニンの量は30mg以上と、高用量で起きることが多い副作用です。プレドニン30mg以上内服している方は、入院で定期的に採血をされている方かと思います。
そのため肝機機能障害は、採血で主に気が付くことが多いです。肝臓に最もよくないのがアルコールです。食べ物に対して制限がかなり多いですが、中でもアルコールは絶対に飲まないようにしましょう。
3-7.緑内障・白内障
- 緑内障は、眼圧が上がって視神経が障害されて目が見えづらくなる病気
- 白内障は、目のレンズが曇って目が見えづらくなる病気
です緑内障や白内障は、ご高齢の方は非常に多くの方が発症しています。そのため、以下のような目の症状がある人は眼科の先生に相談してみてください。
- 視力が落ちてる
- 視界がぼやける
もともと緑内障・白内障がある人は、プレドニンは非常に投与しづらいお薬です。それこそ「視力をとるか、命をとるか」くらい重症な病態に対してのみ、プレドニンは処方されることが多いです。
緑内障・白内障は糖尿病や高血圧でも悪化しやすいので、
- 血糖値
- 血圧
は厳重にコントロールする必要があります。
3-8.精神症状
プレドニン含めてステロイドに多い精神症状は、「イライラする」「不眠」の2つです。
特にプレドニンを飲むような病態の方は、病気自体でのストレスも強いかと思います。大部分がイライラ程度の精神症状で、重篤な精神状態にはほとんどなりません。
さらに不眠ですが、ステロイドは攻撃のスイッチを入れるお薬です。そのため夜にステロイド量が多いと体が攻撃態勢に入ってしまい、なかなか眠れません。
可能であればプレドニンを朝と昼に内服して、夜は避けるようにします。もし不眠で悩まされていて夕食後にプレドニンを内服しているのでしたら、朝と昼に変更できないか医師と相談してみましょう。
なかにはプレドニンによって、うつ状態になってしまったりすることもあります。明らかにメンタル不調が認められたら、医師に相談するようにしましょう。
3-9.骨粗鬆症
プレドニンは骨にも作用して、骨をもろくする作用があります。一方で飲んだ瞬間にもろくなるわけではなく、一般的には2~3か月プレドニンを内服した場合に起きるといわれています。そのためプレドニンを長期内服が予想される人は、
- ベネット(一般名リセドロン酸ナトリウム)
- ボナロン・フォサマック(一般名:アレンドロン酸)
などのビスフォスネート製剤を投与します。ビスホスネートは骨からカルシウムが出ていくのを抑制することで、骨がもろくなるのを防ぐ効果があります。プレドニンの長期間投与することが予想される方は、事前に骨粗しょう症に対してビスフォスネート製剤を内服して予防していきます。
また、高齢者の方は転倒などに注意しましょう。骨がもろくなっているため、容易に骨折してしまいます。
3-10.筋力低下
プレドニンなどのステロイドを内服続けると、たんぱくの異化作用で筋肉が分解して減少します。これをステロイド筋症といいます。さらにプレドニンを内服する病態の人は安静にしている人が多いので、徐々に筋力低下してい来るのが一般的です。適度な運動をといいたいところですが、
- 易感染
- 骨粗しょう症
などの副作用があるため安易な運動は危険です。これらに関しては、プレドニンの量を減らしてもすぐには元に戻りません。しかし病気が治ってプレドニンの内服が終了したら、徐々に運動を再開するようにしてください。それによって多くの方は改善します。
3-11.月経異常
ステロイドの成分は性ホルモンと一部似ていることから、生理にも影響を与えます。もともと生理不順な人は起こりやすいです。プレドニンを短期間で終了できる方は良いのですが、プレドニンと長い間付き合わなければならない人もいらっしゃるかと思います。
プレドニンをやめても治らない、プレドニンがやめらなくて生理不順が続いているといった方は、婦人科に相談してみましょう。
3-12.ニキビ・皮下出血
プレドニンは免疫を落とし、さらに皮膚細胞自体にも変化を起こすためニキビも起きやすいです。そのため皮膚を清潔に保つように気を付けましょう。
一方でステロイドを内服すると、筋力が低下することで血管が内出血しているように見えることがあります。皮膚の中で出血しているわけではないので安心してください。
まとめ
プレドニンの代表的な副作用として、
- 満月様顔貌、肥満
- 細菌やカビなどの感染症に弱くなる
- 糖尿病
- 胃潰瘍や十二指腸潰瘍
- 高血圧・浮腫
- 肝機能障害
- 緑内障、白内障
- 精神障害
- 骨粗鬆症
- 筋力低下
- 月経異常
- ニキビ・皮下出血
があります。
一方で今回記載したのはほんの一部です。プレドニンは細かい副作用まであげると無数にあります。そのため一番の副作用対策は、
- プレドニン内服中に何か気になる症状があったらすぐに医師に相談しましょう
に尽きると思います。採血や診察で分かる副作用もあれば、患者さん自身から言ってくれないと分からない自覚症状も多いのがプレドニンの副作用です。重篤な状態まで悪化する前に医師に相談してみましょう。
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