双極性障害(躁鬱病)で悩んでいる方へ、仕事や就職での対処法
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
双極性障害は、かつては躁うつ病と呼ばれていた病気です。「躁」と「うつ」という2つの気分の波を繰り返す病気になります。
双極性障害は若くして発症することが多く、その平均発症年齢は21.2歳と報告されています。ちょうど就職を控えた大学生や、仕事をはじめたばかりの社会人で発症することが多いのです。
躁状態ではバリバリと仕事が出来るものの、気持ちが高揚しすぎてしまって信じられないトラブルを引き起こしてしまうこともあります。うつ状態では心身が思うようについてこず、深い苦しみがあります。
こうした気分の波に振り回されていく中で、当たり前だった社会生活や日常生活が奪われていく病気なのです。
しかしながら双極性障害は、もともとのエネルギーが高い方が多いです。過去の偉人たちの中には、双極性障害をかかえていた方もいます。実業界で成功している方も少なくありません。
ここでは、双極性障害(躁鬱病)で悩んでいる患者さんへ、仕事や就職への対処法を一緒に考えていきたいと思います。
1.双極性障害のことを正しく理解することが大切
双極性障害は、付き合っていく病気であることを受け入れてください。少しずつ付き合い方を学ぶことで、安定して過ごせるようになります。仕事や家庭をもって生活していけます。
双極性障害をかかえながら仕事をしていくためには、まずは双極性障害のことを正しく理解することが大切です。
双極性障害は、残念ながら原因がよく分かっていない病気です。遺伝の影響も大きく、何らかの脳の機能異常が生じていると考えられています。
原因が分かっていないため現時点では根本的な治療ができず、双極性障害は長期間にわたって躁症状とうつ症状を繰り返す病気です。このような病気であるがゆえに、無くそうと必死になって頑張ろうとすると、ますます苦しみが深くなります。
双極性障害を治療していくには、病気と付き合っていこうという気持ちに切り替えていくことが大切です。双極性障害という病気を知って、少しずつ付き合い方を学んでいった方がよいのです。
少しずつ自分の気分の波を知って、その波への乗り方を覚えていきます。そうすることで、仕事や家庭をもって普通の生活をおくっていくことができるのです。
そのためには、専門家に相談していくことがとても大切です。そして気分の波を抑えるために、脳の機能のバランスを整える必要があります。このため双極性障害では、薬物療法がとても大切になります。
双極性障害の症状については、「双極性障害(躁うつ病)の躁症状・うつ症状とは?」
双極性障害の治療については、「双極性障害の治療と病気とのつきあい方」
双極性障害とつきあっていく考え方については、「双極性障害(躁うつ病)は完治する病気なのか」
双極性障害の薬物療法については、「双極性障害に有効な治療薬とは?双極性障害の薬物療法」
をお読みください。
2.双極性障害は有名人や成功者にも多い病気
もともとエネルギーが高い人も多く、また躁方向へのエネルギーが創造性や独創性を生み出すことがあります。その結果として、大きなことを成し遂げられる方もいらっしゃいます。
双極性障害と仕事を語っていくうえで初めにお伝えしておきたいことは、双極性障害の患者さんは有名人や成功者にも多いということです。
双極性障害の患者さんは、もともとのエネルギーが高い方が多いです。そのエネルギーが仕事に向かった時に、非常に大きなことを成し遂げられる場合があります。
双極性障害の症状というと、気分高揚・活動性亢進・社会性の増加・観念奔逸・多弁などがみられます。アイデアがどんどんと浮かんできて、それを行動にするエネルギーもあるのです。この結果として、創造的で独創的な仕事を生み出すことがあるのです。
大きな成功をおさめた方や高名な芸術家などの中には、気分の波が激しい方が少なくありません。双極性障害と診断されるほどではなくても、気分の波の大きさが成功につながっていることもあるのです。
過去の偉人たちを振り返り、その精神的な特性が創造性にどのような影響を与えたのかを調べる、病跡学(パトグラフィー)という学問があります。
例えば、かの有名なゲーテは双極性障害だったと考えられています。軽躁状態では生命感あふれる創造性に富んだ作品を多数生み出し、躁状態になると作品にもまとまりがなくなってしまいます。そしてうつ状態になると、いわゆるスランプ状態になるのだと思います。
日本人でも夏目漱石や太宰治、宮沢賢治などをはじめ、双極性障害ではないかといわれている方は少なくありません。現代でもテレビで活躍している芸能人などでは、双極性障害の方は少なくないでしょう。医者でも多いような気がします。
このように、双極性障害は負の側面だけではありません。上手く付き合っていければ、自分にしかない良さもあるのです。付き合っていくことはあきらめることではありません。ぜひ自分を肯定しながら、仕事を考えていきましょう。
3.双極性障害に大きなストレスとなる仕事とは?
双極性障害の患者さんでは、「計画型」に仕事を変えていく必要があります。生活リズムと社会リズム(対人ストレス)が整えられる仕事が望ましいです。
仕事をしていく以上、多かれ少なかれストレスは避けられません。それでは双極性障害では、どのようなストレスに気をつけていけばよいのかをみていきましょう。
双極性障害では、ストレスの蓄積によって脳の機能的な異常が生じ、気分のアップダウンを引き起こしてしまいます。双極性障害の患者さんで大切になるのは、できるだけ一気にストレスをかけないことです。
そのためには、2つのリズムを整えることが大切になります。
- 生活リズムを一定に保つこと
- 社会リズム(仕事やプライベートの予定)を一定に保つこと
例えば試験勉強をする時に、一夜漬けするのではなくて、計画をたててコツコツやっていく方がよいということになります。
双極性障害の患者さんは、これまで「一夜漬け型」の仕事のやり方に慣れている方が多いです。できるだけ、「計画型」に切り替えていく必要があります。
ですから双極性障害の患者さんに大きなストレスとなるのは、
- 夜勤やシフト制など勤務時間が変動する業務
- 納期で過重労働が発生する業務
- 予定外の流動的な仕事が多い業務
- 対人業務
になります。
対人業務がなぜストレスになるのかというと、社会リズムと関係しています。社会で生きる人のストレスは、「人」との関わりがとても大きいです。そして対人業務では、相手がいて仕事がなりたつため自分でコントロールもできません。
このように、生活リズムと社会リズムを保てなくなる仕事は、双極性障害の患者さんにとっては大きなストレスとなります。
4.双極性障害と付き合いながら仕事をしていくポイント
双極性障害で仕事を継続的に行っていくためには、定期的な通院が何より大切です。そして仕事だけでなく、日常生活での意識も大切になってきます。
双極性障害という病気と付き合いながら仕事をしていくために、いくつか心がけていただきたいことがあります。
双極性障害という病気は付き合っていく病気であるため、仕事だけでなくプライベートから意識していく必要があります。
そして病状が不安定になった時に気づけるように、調子の変化に気づけるようにしていき、家族や職場など周りからも指摘をしてもらえる環境にできるのが理想です。
そして何より、自分を大切にして希望をもってほしいのです。
①病院に定期的に受診する
双極性障害の治療でもっとも大切なのは、専門家に定期的に相談することです。双極性障害では、お薬による治療はとても大切です。お薬での治療は、大きく2つの目的があります。
- 躁状態やうつ状態を改善する
- 気分の波を小さくする
気分が安定していても、気分の波を小さくするためにお薬を最低限使っていた方がよいです。もしろん気分が躁やうつの方向にふれたときは、お薬を調整していきます。
このようなお薬の目的だけでなく、定期的に自分自身を振り返っていく場を持つことは大切です。元気にすごせているならば、それを確認するだけでも意味があります。日常生活のちょっとした悩みがあれば、小出しにしていった方がよいです。
双極性障害の患者さんが仕事をしていくためには、定期的な通院が大切です。
②家族や会社に相談する
双極性障害の患者さんは、できれば家族や会社に理解してもらった方がよいです。これには2つの理由があります。
- 双極性障害を知らないと誤解されてしまう
- 躁状態が悪化した時に正しく判断できなくなる
双極性障害の患者さんは、その気分の波を周囲から誤解されてしまうことが少なくありません。気分屋や身勝手といったように誤解されてしまい、仕事の人間関係、友達や家族といったプライベートの人間関係を損なってしまいます。
また、躁状態になってしまうと、自分自身が病気を正しく認識できなくなってしまうことがあります。「気分が高揚する=調子がよい」と感じてしまうので、病気だという認識ができなくなります。そして病院にも受診しなくなってしまうことがあります。
家族や親友、会社関係者などが理解してくれていれば、早めに治療につなげていくことができます。
詳しく知りたい方は、「双極性障害(躁うつ病)の家族の接し方のポイント」をお読みください。
③規則正しい生活をする
双極性障害の患者さんでは、生活リズムの乱れや社会生活での変化が気分の波につながってしまうことがあります。ですから、生活リズムと社会リズムを意識した規則正しい生活が非常に大切です。
まずは5つの時刻を意識してそろえていきましょう。
- 起床した時刻
- 人と初めて接触した時刻
- 仕事・学校・家事・ボランティアなどを始めた時刻
- 夕食をとった時刻
- 就寝した時刻
詳しく知りたい方は、「対人関係生活リズム療法とは?」をお読みください。
④プライベートも含めて予定を計画的にいれる
規則正しい生活に重なりますが、計画的に過ごしていくことが大切になります。
双極性障害の患者さんは、気分が落ちついている時でもペースを意識して生活していないことが多いです。予定が入ったら詰め込んでいくので、手帳をあけるとガチガチのスケジュールになってしまったりします。
双極性障害では、仕事だけでなくプライベートも計画的にすごしていく意識が大切です。慣れるまでは、スケジュール帳に「休息」という予定を前もって入れてしまってもよいかもしれません。
⑤病気の移り変わりの状況を理解していく
双極性障害と上手く付き合うには、躁とうつの波の乗りこなし方を練習していく必要があります。そのためには、「躁やうつになったきっかけ」「症状のサイン」をよく理解して、上手く乗りこなせる方法を見つけていくことです。
- 躁やうつのきっかけとなった可能性のある事がら
- 躁やうつの症状のサイン
- 躁やうつ状態から抜け出すのに効果があったのは何か
などを書きだしておきましょう。
⑥希望を持つこと
双極性障害の患者さんは躁とうつの波に揺さぶられて、非常に苦しみが深いです。そんな中で、自分の生きる意味を見いだせなくなってしまう方も少なくありません。
しかしながら双極性障害は、少しずつ付き合い方をみつけていくことで自分を取り戻して生きていける病気です。当たり前に生きていくことの大切さを知るからこそ、気づける喜びや希望もあります。
双極性障害の患者さん同士が支え合う当事者会(ノーチラス会)などもあります。仲間(ピア)の力はとても大きな支えになり、そして希望になります。
詳しく知りたい方は、「ノーチラス会(双極性障害の患者会)とは?」をお読みください。
5.双極性障害では就職をどう考えたらよいのか
双極性障害では、生活リズムが整えられる仕事が望ましいです。仕事のやりがいも大切にしながらも、病状の安定も意識して就職を考えていただいた方がよいです。患者さんの病状によっては、障害者雇用という選択肢もあります。
双極性障害の患者さんでは、できるだけ生活リズムが整えられる仕事が望ましいです。できるならば業務もある程度一定の方が望ましいですが、理想論で話をしてしまうと仕事がかなり限定されてしまいます。
仕事は人生でも大きな部分をしめるものです。ですから、仕事のやりがいも当然大切にしなくてはいけません。しかしながら双極性障害は、長く付き合っていく必要がある病気です。自分のペースをどこまで大切にできるのかも意識して就職を考えてください。少なくとも、夜勤やシフト制ではない業務にした方がよいと思います。
無事に就職ができれば、実際に仕事をしながら職場と相談していくこともできます。職場への相談の方法については、つぎにお伝えしていきます。
もしも一般での就職が困難な場合は、患者さんの病状や状況によっては障害者雇用という道もあります。障害者雇用促進法もあり、企業では障害者雇用という就職枠があります。
6.双極性障害の職場への相談の方法
①直接上司②人事・総務③産業医などの方法で相談できますが、それでも職場理解が得られなければ、主治医に診断書で就労上の意見を書いてもらうのも方法です。
「双極性障害を会社にいいたくない」と思われる患者さんもいらしゃるかもしれません。
そのように思われる気持ちも無理はありません。双極性障害に限らず、精神疾患に対する会社の理解はまだまだ十分とは言えません。しかしながら双極性障害は治療期間が長くなりがちで、再発することも多い病気です。
そして職場でも、誤解されることも多い病気です。双極性障害とつきあって仕事をしていくためには、職場で相談しながら仕事を行っていけることが理想です。
仕事の配慮をしてくれることもありますし、理解してもらえる人がいると安心して仕事にとりくめます。躁症状のサインに職場の方が気づいてくれて、早めに対策がとれることもあります。
それでは、職場にはどのようにして双極性障害のことを伝えればよいでしょうか?そのルートとしては4つあります。
- 直接上司に自分から相談する
- 人事・総務の担当者に相談する
- 産業医に相談する
- 主治医から診断書で意見を書いてもらう
双極性障害では、長く付き合っていかなければいけない病気です。直接の上司だけでなく、できたら人事・総務の担当者に相談した方がよいかと思います。長い目で仕事での相談にのってもらいながら、これからのキャリアプランも考えてくれるかと思います。
会社に知られたくないという思いが強い方は、産業医に相談するのも方法でしょう。50人以上の従業員がいる事業所では、産業医が月1回以上必ず訪問しています。産業医に情報コントトロールを上手くしてもらいながら、相談していきましょう。
職場の理解が得られない場合は、主治医から就労に関する意見を書くこともあります。具体的に書きすぎるとマネージメントができなくなってしまうので、「適切な業務上の配慮が望ましい」「生活リズムを整える必要があるため、夜勤やシフト勤務で配慮を要する」といった形で、診断書をお願いしてみましょう。
7.双極性障害が悪化してしまった場合は休職も必要
うつ状態がひどくなってしまったり、躁状態で仕事に支障がある時は休職することも必要です。無理して仕事を続けると、仕事での人間関係や信用を失ってしまうことがあります。
双極性障害の病状によっては、一度しっかりと休んで治療に専念した方がよい時もあります。
双極性障害では、うつ状態と躁状態の2つの状態に気をつける必要があります。
うつ状態がひどくなってしまうと、集中力が続かなくなててしまい、倦怠感や疲労感も強くなります。そんな中で無理して仕事を続けるとミスも続き、会社からの評価も落としてしまいます。
躁状態では、気分や活動性を抑えきれなくなってしまうことで大きな問題に発展してしまうことがあります。社長に突然直談判しにいったり、同僚とケンカしてしまうこともあります。現実性のないビジネスを考案したり、取引先を巻き込んでトラブルになることもあります。
うつ状態では本人も苦しみがあり、調子が悪い自覚があります。ですから医師から休職をすすめられたときは、仕事を休んでしっかりと休養するようにしましょう。
躁状態では、本人は病気の認識を持っていないことも多いです。躁状態では大きなトラブルにつながることがあり、本人も落ちつくと後悔することになります。すぐに病院に受診するして医師が休職をすすめた場合は、落ちつくまで仕事を休むようにしましょう。
8.双極性障害の方への職場でできる配慮
精神疾患に対して理解をしてあげてください。生活リズムをできるだけ一定にするように業務を配慮していただき、病状によっては治療につなげてください。
最後に、これらを踏まえて職場ではなにができるかについて考えていきましょう。もっともお願いしたいことは、双極性障害に対して理解してあげていただきたいということです。
私もふたつ上の先輩が双極性障害の当事者の精神科医の方がいました。うつ状態で休職が続くこともあれば、軽躁状態になってビックリする行動をされることがありました。コーラをシャカシャカふって医局の壁に投げつけ、ベタベタにされたことなどが思い出されます。それでも普段はとても熱心で優秀な先輩でした。
双極性障害は、本人でもコントロールできない気分や感情に振り回され、深い苦しみのある病気です。自分をコントロールできないという深い恐怖の中で、生きている患者さんが多いのです。そして病状が落ちついてさえいれば、もともと能力も高い人が多いのです。
それでは会社としては何が出来るでしょうか?双極性障害の従業員に対して、会社はどんなことができるのかをお伝えしていきたいと思います。
①双極性障害の治療をうけていなければ病院をすすめる
双極性障害は、しっかりと治療していくことで少しずつよくなっていく病気です。もしも従業員の方が双極性障害の治療をうけていなければ、病院への受診をすすめてください。健康面のことですが被害的に感じてしまう方もいるので、産業医を通した方がトラブルにならないかと思います。
なかにはお薬の治療を嫌がって、漢方薬やカウンセリングなどで治療をしている方もいると思います。会社として無理強いすることはできないとは思いますが、ぜひ私のサイトもご活用いただいて、病院での治療をすすめてください。
②本人の同意のもとで職場での情報共有をはかる
双極性障害で悩んでいることが分かった場合、できるだけ職場で情報共有ができた方がよいです。ただし繊細な個人情報になりますので、本人としっかりと相談して同意のもとで、必要最小限に情報共有してください。
- 直接のマネージメントをしている上司
- 仕事を一緒に行っている同僚
- 管理職
- 人事・総務
などの中で、本人のために情報共有した方がよい範囲を相談しましょう。周りが自分の状況を理解してくれている中で仕事ができれば、「何かあっても大丈夫」と安心感を持って仕事ができます。仕事での配慮も行いやすくなりますし、不調のサインも拾いやすくなります。
③相談しやすい環境を整える
双極性障害に限ったことではありませんが、何かあった時に相談ができない環境はストレスになります。
相談しやすい環境をつくっていくのは従業員側でも大切なことなのですが、会社からも体制を整えていただけると助かります。
このような時に第三者として産業医を挟むのも一つの方法です。情報コントロールをしっかりとすることを保証した上で、「会社で伝えてほしくないことは産業医の先生にそう言って相談して」と伝えていただけると相談しやすくなります。
④業務内容を調整する
双極性障害の患者さんでは、その症状の程度によって業務内容の調整が望ましいこともあります。
双極性障害の患者さんは、リズムを一定に保つことが大切です。夜勤やシフト制勤務などの場合は、定時勤務での業務を調整してください。
業務内容については本人と話し合い、何がストレスとして大きいのかを検討する必要があります。どこまで調整が可能かは、現実的には実際のマネージメントとのバランスかと思います。出来る範囲で業務調整をしてください。
会社として気を付けた方がよい点は、運転業務や危険業務です。双極性障害の治療を始めていくと、ほとんどの場合で精神科のお薬を服用します。精神科のお薬は運転がダメと書いてあるものがほとんどなので、何か事故があった場合は会社の責任も問われてしまいます。
運転や危険作業をしない業務に変更するようにしましょう。ときに主治医に意見を求める会社もありますが、主治医からは添付文章に運転禁止と書かれているものに対して「運転可」とは書けません。
⑤躁症状に気づく
双極性障害の患者さんは、躁症状には自覚を持ちにくいことが多いです。仕事は生産的な活動なので、躁症状がもっとも表れやすいです。
仕事のなかで「いつもと違って生き生きしている」「急に元気になってバリバリ仕事している」といった変化があった場合、それはよいことなのですが躁症状を疑ってください。別人のように感じて、目に輝きがある時は、軽躁状態である可能性が高いです。
軽躁状態であれば本人と話をすることができますので、病院での通院を促してください。その際に、会社からの簡単な伝言が主治医に伝われば理想です。
躁状態で明らかに行動に異常がある時は、本人は自分が問題であることを理解できなくなります。産業医と連携をとりながら、場合によっては家族に相談して治療につなげるようにしてください。
まとめ
双極性障害は、克服していく病気ではなく、長く付き合っていく病気になります。それを受け入れて、うまく付き合っていくことを学んでいきましょう。
双極性障害の患者さんでは、「計画型」に仕事を変えていく必要があります。そして、生活リズムと社会リズム(対人ストレス)が整えられる仕事が望ましいです。
仕事のやりがいとのバランスになりますが、病状の安定のために自分のペースを大事に出来る仕事にしていきましょう。
双極性障害で仕事を継続的に行っていくためには、定期的な通院が何より大切です。そして仕事だけでなく、日常生活での意識も大切になってきます。周囲にも出来るだけ相談し理解をしてもらいながら、仕事を続けていくようにしましょう。
会社としても、生活リズムをできるだけ一定にするような仕事にするなどの配慮があることが望ましいです。病状によっては、治療につなげてください。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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