双極性障害(躁うつ病)は完治する病気なのか

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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双極性障害は、躁状態とうつ状態の2つの間で気分の波がある病気です。その原因ははっきりとわかっておらず、何らかの脳の機能的異常があると考えられています。

ですから、根本的に治療することはできない病気です。気分安定薬を中心としたお薬でサポートしながら、少しずつ病気との付き合い方をうまくしていく必要があります。

「双極性障害は完治するんですか?」という質問をよくされます。私はいつも、「病気を無くそうとするものではなく、波を乗りこなせるようになっていきましょう」とお答えしています。

ここでは、双極性障害(躁うつ病)をどのようにしたら完治に近づけていけるのか、考えていきましょう。

 

1.双極性障害(躁うつ病)は再発率が高い

双極性障害は再発率が高く、診断がつくまでに時間もかかります。

双極性障害は他の精神疾患と比べても、非常に再発率の高い病気です。同じ気分の病気であるうつ病では、3人のうち2人は再発しません。しかしながら双極性障害では、90%以上が再発します。

その傾向は双極性障害Ⅰ型で顕著で、ある研究では「薬の服用を中止してから1.5年程度で実に80%もが再発した」と報告されています。患者さんによっては、短期間で躁とうつを何度も繰り返してしまう方もいます。(ラピッドサイクラー)

さらには双極性障害の患者さんは、診断がつくまでに時間がかかってしまうことが多いです。最初に精神科を受診してから双極性障害と診断されるまでに、平均で4.6年かかっているという最近の報告があります。診断がつくまでの間に症状を繰り返していき、少しずつ社会的な不利益が積み重なっていきます。その過程で、様々な心の病を合併してしまいます。

 

2.双極性障害とは戦うのではなく、つきあっていく

双極性障害は、完治させる病気ではなく、つきあっていく病気です。

双極性障害という病気は長期間にわたって症状を繰り返す病気です。このような病気であるがゆえに、無くそうと必死になって頑張ろうとすると、ますます苦しみが深くなっていきます。双極性障害を治療していくに当たっては、病気とつきあっていくという気持ちに切り替えた方がうまくいきます。双極性障害とは戦うのではなく、つきあっていこうとした方がよいのです。

もちろん薬による治療は大切です。脳の機能的な病気なので、薬によってサポートすることができます。薬でサポートをしてもらうことで付き合いやすくなります。少しずつ自分の気分の波を知って、その波への乗り方を覚えていきます。

できたら家族ぐるみで仲良くなった方がよいでしょう。躁状態では、自分が病気であることが分からなくなってしまうことがあります。そのような時は、家族の理解があれば問題が大きくならないで済むことも多いです。

このようにして、少しずつ付き合い方を身につけていけば、再発が少しずつ減っていき、長年安定していく方もいらっしゃいます。

 

3.双極性障害と上手くつきあうために

双極性障害とはどのようにすればうまく付き合っていけるでしょうか?長い付き合いなので焦ってはいけません。少しずつ付き合い方を見つけていきましょう。

 

①治療は継続的に受けなければいけない

双極性障害の患者さんには、薬の服用を始めてからしばらくして、「もう治ったから治療も薬もいらない」といって通院を止めてしまうケースがよく見受けられます。双極性障害はつきあっていく病気ですので、薬も付き合っていく必要があります。もちろん調子が悪いときよりは少ない薬にできますが、再発予防効果を期待する薬は続けていく必要があります。

双極性障害の患者さんでは、問題を感じていなくても通院を定期的に続けていくことが大切です。客観的に状態を医師に診てもらうことだけでなく、こまめに自分の日常を振り返ることが大切です。

 

②規則正しい生活をする

双極性障害の患者さんでは、生活リズムの乱れや社会生活での変化が気分の波につながってしまうことがあります。ですから、規則正しい生活・社会リズムが非常に大切です。

まずは5つの時刻を意識してそろえていきましょう。

  • 起床した時刻
  • 人と初めて接触した時刻
  • 仕事・学校・家事・ボランティアなどを始めた時刻
  • 夕食をとった時刻
  • 就寝した時刻

 

③ストレスとの付き合い方を知る

双極性障害の症状の変化には、対人関係のストレスが原因になることが少なくありません。社会で生きる人にとって、一番のストレスはやはり「人」なのです。

そうならないためにはストレスとの付き合い方を知ることが欠かせません。そのために、人との関わりの大きさを量で見ていくのも方法です。人間関係のストレスを量として捉えて、どれくらいならば自分の調子が保てるのかがわかってきます。

その中で人との適切な関わりが得られるようにしていきます。「重要な人とはお互いに良い感じになっておいて、その他の人たちはほどほどで付き合えればよい」というゴールをもって対人関係を築いていきましょう。

 

④病状の移り変わりの状態をしっかり掴んでおく

双極性障害と上手く付き合うには、躁とうつの波の乗りこなし方を練習していく必要があります。そのためには、「躁やうつになったきっかけ」をよく理解して、上手く乗りこなせる方法を見つけていくことです。

  • 躁やうつのきっかけとなった可能性のある事柄
  • 躁やうつの症状のサイン
  • 躁やうつ状態から抜け出すのに効果があったのは何か

などを書きだしておきましょう。

 

⑤社会生活に少しずつ近づけていく

双極性障害の患者さんも病状が安定すれば社会生活に少しずつ近づけていくことができます。確かに社会生活をしていくとさまざまなストレスが出てきます。しかしながら、少しずつ社会生活を取り戻していくことも大切です。

双極性障害の患者さんは、病気のせいで社会的な不利益をこうむってしまう方も多いです。福祉や医療のサポートを受けながら、少しずつ社会生活を取り戻していくことが本当の意味での「病気と付き合っていく」道なのです。

双極性障害の患者さんの当事者会(ノーチラス会)などもあります。仲間(ピア)の力はとても大きな支えになります。ノーチラス会は、私の恩師の鈴木映二先生が立ち上げた団体です。

詳しく知りたい方は、「ノーチラス会(双極性障害の患者会)とは?」をお読みください。

 

まとめ

双極性障害は再発率が高く、診断がつくまでに時間もかかります。

双極性障害は、完治させる病気ではなく、つきあっていく病気です。以下のように少しずつ付き合い方を見つけていきましょう。

  • 治療は継続的に
  • 規則正しい生活をする
  • ストレスの付き合い方を知る
  • 病状の移り変わりの状態をつかむ
  • 社会生活に少しずつ近づけていく

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