適応障害で休職すべき?適応障害での仕事の考え方と休職中の過ごし方

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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 適応障害は、環境変化に上手く適応することができずに、そのストレスから心身の症状が生じる病気です。

適応障害は、会社組織の中でも最もよく認められる病気です。本人と職場環境の間にズレが大きく、適応しようと努力しても埋められないときに発症します。

そんな時はどうしたらよいでしょうか?適応障害を改善していくには、本人が何とかして適応していくか、環境が変わるかのどちらかになります。

それでは適応障害になってしまったときに、仕事に対してはどのように考えればよいのでしょうか?適応障害ならば休職して職場環境から離れるべきなのでしょうか?

ここでは、職場での適応障害について詳しく見ていきたいと思います。また、再休職しないための休職中の過ごし方についても見ていきたいと思います。

 

1.適応障害では仕事をどのように考えるべきか

職場環境の要因が大きい場合、環境調整をすれば再発なく仕事を続けられることが多いです。本人の要因が大きい場合、同じ職場環境で配慮してもらいながら、少しずつ適応力を高めていくのが本質的な治療になります。

会社組織では、働いている人の思う通りにいかないことはたくさんあります。多くの方がそれを理解して仕事をし、合わない環境でも辛抱しながら日々を過ごしているかと思います。

しかしながら異動や配置転換などの結果、自分の価値観とどうしても合わない職場環境になってしまうこともあります。それは仕事の内容であったり、職場の人間関係であったり様々です。

合わないと思っても、多くの方が新しい環境で馴染もうと努力をします。それでも埋められないギャップがあるときに、適応障害として心身に症状が生じてしまいます。

適応障害になってしまうのは、このように本人と職場環境の価値観のズレが大きいときになります。どんなにストレスに強い方でも、どうしても価値観の合わないこともあります。「甘え」や「根性」で解決できる問題ではありません。

適応障害は大きく分けて、

  • 職場環境の要因が大きい適応障害
  • 本人の要因が大きい適応障害

に分けることができます。どちらの場合も、まずは人に相談することがとても大切です。自分の中で悩んでいたことを人に話すと、それだけで気持ちが整理されることもあります。

職場環境の要因が大きい場合、環境をかえれば比較的すみやかに症状は改善します。どうしても折り合いがつかない職場でなければ、今までと変わりなく仕事を続けることができるのです。

本人の要因が大きい場合、環境を変えることが本質的な改善にはつながらないことが多いです。他の職場環境でも適応できず、再発してしまうことも多いです。できるならば同じ職場環境で配慮してもらいながら、少しずつ適応力を上げていくことが治療的になります。

 

2.適応障害で大事なのは、人に相談すること

適応障害で一番大切なのは、誰かに相談することです。心身の症状が認められば医療機関がよいですが、相談しやすい人ならば誰でもよいです。まずは話しやすい人に、相談してみてください。

このように適応障害では、人によって様々な要因があります。その人によって対処法も変わってはきますが、誰かに相談することは非常に大切です。

もちろん、心身に症状がでていれば医療機関で相談していただいたほうがよいです。「医者は職場のことを知らない」といわれてしまうと事実ではありますが、患者さんの立場で相談にのることができます。心身の症状があればお薬で和らげることもできますし、今の環境と付き合っていくすべを一緒に探っていけます。

ですが、いきなり医療機関は抵抗があるかもしれません。誰でもいいのです。一番心を許せる人に話してみてください。

話をするだけで自分の抱えているストレスが形になって、少し楽になります。また、客観的な目線で適応のアドバイスがもらえるかもしれません。

できるなら、会社の信頼できる上司などが理想です。あなたの抱えている悩みを現場で理解できますし、これまでの経験があります。どなたでも結構なので、まずは話しやすい人に相談してみてください。

 

3.適応障害で会社で相談する4つのルート

①上司②人事・総務③産業医の方法で相談できますが、難しい場合は④主治医に診断書で就労上の意見を書いてもらうのも方法です。

適応障害で大切なことは、誰でもよいので相談することとお伝えしました。ストレス因である職場環境が変われば当然症状は楽になりますので、職場の理解が得られるほうがよいです。

場合によっては、配置転換や業務配慮などで現実的な対処法が見いだされるかもしれません。しかしながら、「職場に話すのは抵抗がある」という方は少なくありません。

適応障害に限らず精神疾患に対する会社の理解は、まだまだ十分とは言えません。職場環境に適応できなかったのは本人のせいと、甘えのように誤解されてしまうことがないとはいえません。

しかしながら、普段からの仕事を知っていれば、会社の評価が大きくかわることはありません。これまで仕事を頑張っている人が適応障害になれば、本当につらい環境なんだと理解してくれます。

職場環境にアプローチするために、職場に相談する方法としては4つのルートがあります。

  1. 直接上司に自分から相談する
  2. 人事・総務の担当者に相談する
  3. 産業医に相談する
  4. 主治医から診断書で意見を書いてもらう

上でお伝えしましたが、信頼できる職場の上司に自分から相談するのが一番良いです。現実的な解決策が見つかるかもしれません。

しかしながら、不適応のきっかけが上司自身にあることもあります。とても相談できない場合もありますね。上司に相談しにくい場合は、人事・総務部の担当者に相談してみるのも方法です。客観的にみて、これからの仕事のやり方について相談にのってくれます。

また、50人以上の従業員がいる事業所では、産業医が月1回以上必ず訪問しています。産業医に相談するのも方法です。産業医は守秘義務がありますので、「会社に伝えないで」といわれたことは伝えません。情報コントトロールを上手くしてもらいながら、会社にどのように伝えるのかを相談するのも方法です。

これらによっても職場の理解が得られない場合は、主治医から就労に関する意見を書いてもらう方法があります。具体的に書かれすぎてしまうとマネージメントができなくなってしまうので、「適切な業務上の配慮が望ましい」といった具合に、診断書を主治医と相談しましょう。

適応障害の診断書について詳しく知りたい方は、「適応障害の診断書の実情とは?適応障害の病名や休職期間について」をお読みください。

 

4.仕事をしながら適応障害と付き合うには?

環境(相手)に対して期待をせず、割り切るマインドセットを作ることも一つの方法です。

会社に相談することで環境を変えていくようにアプローチする方法についてみてきました。

ですが現実的には相談しても変わらない場合もあれば、そもそも相談することができないこともあります。そんな時は、どのようにして適応していけばよいのでしょうか。

周りに少しずつ適応できるならば、それに越したことがありません。ですが絶対に折り合いがつかない環境では、自分にストレスがかからないように心持ち(マインドセット)を切り替える必要があります。

まずは、環境(相手)に対して期待をしないようにする必要があります。つまり、「割り切り」になります。

多くの場合は人間関係になりますので、まずは対人関係の目標を整理しましょう。決して親密になる必要はなく、ほどほどの人間関係でよいのです。そのうえで割り切るときは、自分にとってのメリットを考えていくことが早いです。

その人との人間関係をほどほどで維持しておくことで、得られるメリットを考えてみましょう。少しずつ割り切れてくる部分も出てくるかと思います。

このように割り切りができれば、幾分気持ちは楽になるのではないでしょうか?そこから一歩先に、自分が思っているように仕向けるマネージメントの練習と考えてみるのも方法です。

このように心の持ちようを変えることで、少しずつ心身の不適応が薄れていくことがあります。

ここで大切なのは、「割り切ること」自体には意味を持つことです。自分の価値観では折り合いがつかないような理不尽な状況に対して、「割り切れていること」自体が意味があることと意識することです。

目の前のことに意味を見出す力(有意味感)は、ストレス耐性を高めるひとつの要素になります。

詳しく知りたい方は、「解決困難な人間関係のストレスを2段階で解消する方法」をお読みください。

 

5.適応障害で休職したほうが良いケース

適応障害では、症状がひどい場合、勤怠が悪化している場合、環境が変えられずにジリ貧の場合に、休職をしたほうが良いです。

適応障害では、何とか仕事を休まずに適応をよくしていければ、そちらのほうがよいです。ですが適応がなかなか上手くいかず、休職して環境から離れたほうが良いこともあります。どのようなケースかといいますと、

  • うつ状態や不安がひどい場合
  • 勤怠が悪化している場合
  • 環境を変えられず、ジリ貧の場合

これらになります。

うつ状態や不安があまりに強くなってしまうと、正常な判断ができなくなってしまいます。思考力や判断力は低下してしまって、正しい判断ができなくなってしまいます。

「退職させられてしまうのではないか」「周りに迷惑をかけてしまうのではないか」という思いから無理に仕事を続けていても、当然よいアウトプットは出せません。本人の評価が下がってしまったり、かえって仕事で迷惑をかけてストレスになってしまったりします。悲観的になって、「もう会社を辞めるしかない」などと思い詰めてしまってしまうこともあります。

このように明らかに抑うつ状態や病的な不安が認められている場合、環境から離れるために休職することが望ましいです。勤怠が悪化してしまっている場合は、なおさら休職が必要になります。

環境をこれ以上は変えられず、本人の症状も悪化していく場合も休職をしたほうが良いです。このような状況で「何とかなる」と思えなくなってきた場合は、休職した方が良いのです。

休職によってストレス因となっている職場環境から離れることで、比較的すぐに適応障害の症状は良くなっていきます。症状が重たい場合は時間がかかることもありますが、そこまで長引かないことが多いです。

 

6.適応障害は休職だけでは治らない

うつ病や不安障害に発展していることもあれば、「休職」という環境変化が適応障害につながっていることもあります。また本人の要因にも目を向け、本人の適応のあり方にも目を向けなければ本質的には改善せず、適応障害を繰り返してしまいます。

適応障害は、休職すれば確かに症状は改善していくことが多いです。職場環境に適応できなかったことでの心因性の症状ですから、そこから離れれば症状が改善していくのが通常です。

ですがときに、休職をしても症状が続いてしまうことがあります。というのは、

  • うつ病や不安障害に発展している場合
  • 「休職をしたキャリア」という現実と適応できない場合

うつ病や不安障害に発展しているような場合は、休職しても症状は残ってしまいます。確かにストレスは軽減するので多少はよくなるかもしれませんが、脳の機能的な異常が認められると改善に時間がかかります。

また、休職することは誰もが人生で想定しておらず、仕事を続けて出世していくのを夢見ている人もいれば、職場でベテランになって仲間から頼りにされるビジョンでいる人もいます。

「休職をしたというキャリア」という現実は、そのようなこれまでの人生の価値観とは大きくかけ離れてしまいます。これからの仕事に対する希望や夢を抱けなくなり、それがストレスとなって症状が続いてしまうことがあります。

それは、新しい適応障害ともいえます。「休職」という環境変化がストレス因になって、これまでの価値観とのズレがストレスとなり、心身の症状が生じてしまうのです。

適応障害はこのように、休職しただけではよくならないこともあります。そして適応障害の原因として本人の要因が強い場合、休職して一時的に症状がよくなっても、本質的にはよくなっていきません。

症状が落ち着いて来たら、自分自身の適応のあり方についても目を向けていく必要があります。この点については、後程詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

7.適応障害で休職中の過ごし方

まずはゆっくりと休み、落ち着いてきたら生活リズムを意識していきましょう。心のゆとりが出てきたら、自分自身をふりかえり、現実的に仕事にどう向き合っていくかを考えていきましょう。

それでは適応障害では、仕事を休職したときにどのように過ごせばよいのでしょうか。

適応障害と一言で言っても、そのストレス因も異なれば症状の程度も異なります。それぞれの患者さんによっても異なりますが、一般的にどのように休職中に過ごせばよいのか、ご紹介していきます。

①症状が落ち着くまではゆっくり休む

休職をしたら、まずは仕事のことを考えずにゆっくり休むことが大切です。多くのことを気にしなくてよいです。ゆっくりと休み、自分自身の気持ちが落ち着くことをして過ごしましょう。

誰しも気持ちが塞いでいるときは、世界が暗くみえて悲観的になります。反対に気持ちが高まっているときは、世界が明るく見えて楽観的になります。

適応障害で休職した直後は、気持ちが塞いで悲観的になっていることがほとんどです。このため、「もう会社は辞めなければならない」「これから先がみえない」などといった気持ちが湧き上がってくるのは当然です。

このように不安定な状態では、先のことを考えても悪循環になってしまいます。まずは心身を休め、冷静に判断できるように落ち着きを取り戻すことが大切です。

②生活習慣を整える

適応障害では、休職して職場環境から離れることで症状は比較的早く良くなっていきます。

少しずつ回復してきたら、生活習慣を整えることから意識していきましょう。適応障害の症状がそこまでひどくない方は、最初から生活習慣を意識しながら休養したほうが良いこともあります。

生活習慣を整える上で、以下の3つを意識していきましょう。

  • 起床時間を整えて昼寝を減らす
  • 食事は3食、規則正しくとる
  • 少しずつ外出して習慣的な運動にしていく

③自分自身の問題点を振り返る

適応障害は、環境と本人の価値観のズレがストレス因となっていました。だからといって、すべてが「環境」のせいということはありません。程度の差はあれ、自分自身でも振り返るべき点はあります。

むしろ、休職という機会で自分自身を見つめ、成長の機会にするという心構えのほうがプラスになっていきます。落ち着いてきたら、自分自身について振り返っていきましょう。

自分の適応力をあげていくためには、様々な方法があります。まずは適応力の一つとして、ストレス耐性につながる3つの感覚をチェックしてみましよう。「SOC(首尾一貫性感覚)からストレス耐性をセルフチェック」でチェックしてみてください。

これらの感覚を意識して身につけていくことで、物事のとらえ方が柔軟になっていきます。また、マイナスに陥りがちな思考パターンがあれば、認知行動療法などによって自分の考え方を見つめていきます。

適応障害では、人に相談するということが大切であることをお伝えしてきました。相談が上手くできていなかった方は、早い段階で家族や友人、職場の同僚や上司に相談できる方法を考えてみるのもよいでしょう。

考え方を改善することは時間がかかりますので、休職中にすべてを改善する必要はありません。大切なのは、自分自身の等身大を正しく認識することです。そうすれば適応障害による休職は、自分を知る機会になります。復職後も含めて、少しずつ自分ができることに取り組んでいきましょう。

④職場環境に対して考える(復職・転職)

適応障害の原因となった環境についても、もちろん考えていく必要があります。復職するにあたって、どのような環境が望ましいのでしょうか。

多くの方は、復職することを前提にされているかと思います。復職にあたっては、元の部署に配属されることが一般的です。元の部署のほうが本人もわかっていますので、変化が少ないからです。

ですが明らかに環境が休職の原因となっている場合、復職部署は相談できる場合があります。自分が上手く適応していくために、どのような環境調整を会社にお願いしていくのかを明確にしておきましょう。

これは自分ですべて行おうと思わなくても大丈夫です。職場の産業医に相談し、会社と調整してもらうこともできます。主治医と相談して、就労にあたっての意見を診断書で書いてもらうのも方法です。

このように復職を前提に考えてはいきますが、どうしても職場に適応できると思えないときは転職も選択肢にはなります。人生の大きな決断になりますので、精神状態が落ち着いているときに家族とよく相談していきましょう。

⑤これからの人生を見つめる

適応障害の患者さんは、休職することで症状は比較的すぐに良くなることが多いです。ですが患者さんの中には、症状が続いてしまうことがあるとお伝えしてきました。

その原因として、「休職したキャリア」という現実を受け入れられないことがあります。適応障害の症状としてはよくなっても、むしろ復職した後に現実に気づかされることも少なくありません。

職場に戻ると、多くの場合は周りからは配慮されます。良くも悪くもですが、これまでと同じように変わりなく接してもらえる職場は多くはありません。改めて、自分が休職したという事実に気づかされます。

自分のこれからの人生について、どのように折り合いをつけて考えていけばよいのかは、いずれ考えていかなければいけない課題になります。ここから目をそらすと、ストレスがかかった時に適応障害を再発しやすくなってしまいます。

心の病気で休職をしたということは、決してマイナスばかりではありません。自分の生き方を見つめる機会にもなりますし、休職を経験した人にしかわからない目線になります。

自分の人生を諦めるというのではありません。人生を見つめて、自分の本当の価値観をみつけて、それを大事にした人生を歩んでいくことが大切かと思います。

 

まとめ

職場環境の要因が大きい場合、環境調整をすれば再発なく仕事を続けられることが多いです。本人の要因が大きい場合、同じ職場環境で配慮してもらいながら、少しずつ適応力を高めていくのが本質的な治療になります。

適応障害で一番大切なのは、誰かに相談することです。心身の症状が認められば医療機関がよいですが、相談しやすい人ならば誰でもよいです。まずは話しやすい人に、相談してみてください。

適応障害では、症状がひどい場合、勤怠が悪化している場合、環境が変えられずにジリ貧の場合に、休職をしたほうが良いです。

まずはゆっくりと休み、落ち着いてきたら生活リズムを意識していきましょう。心のゆとりが出てきたら、自分自身をふりかえり、現実的に仕事にどう向き合っていくかを考えていきましょう。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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