身体表現性障害にはどのような原因があるのか

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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身体表現性障害とは、ストレスが原因となって身体症状にあらわれる病気です。

身体表現性障害の患者さんは、身体の不調を心配して内科などの身体科を受診することが多いです。検査などをしても症状を説明できるような原因が見つからず、「自律神経失調症」や「心因性」と診断されることが多いです。

身体表現性障害は、心理的要因によるストレスが原因となって生じる病気です。それでは、身体表現性障害を引き起こす心理的要因とはどのようなものがあるのでしょうか?

ここでは、身体表現性障害の原因について詳しく見ていきたいと思います。

 

1.身体表現性障害とは?

身体表現性障害とは、心理的要因によって身体症状としてあらわれる病気です。いろいろな表れ方があり、純粋に症状が認められることもあれば、病気や容姿といったことにとらわれることもあります。

身体表現性障害の原因についてお伝えしていく前に、まずは身体表現性障害とはどのような病気なのかをみていきましょう。

身体表現性障害(somatoform disorder)は、ストレスが身体症状として表れてしまう病気です。その表れ方は様々ですが、いずれの病気でも身体症状での治療を求めて内科などに受診することが多いです。

身体表現性障害の症状の表れ方によって、5つのタイプに分けられます。

このように身体表現性障害は、さまざまな形で症状があらわれます。身体に症状が出ることもあれば、病気や容姿などにとらわれてしまうこともあります。

内科などの身体化を受診することが多いですが、表面的な身体的な治療だけを行っていてもよくはなりません。心身症として、心と身体の両面から治療を進めていく必要があります。

このため身体表現性障害を治療していくに当たっては、原因を考えていく必要があります。それでは続けて、身体表現性障害の原因についてみていきましょう。

 

2.身体表現性障害の原因とは

身体表現性障害は、身体感覚の認知の問題や抑圧されたストレス、疾病利得などが原因となります。このため、性格傾向や日々のストレスなどが要因と考えられています。

身体表現性障害の原因としては、3つの側面から考えることができます。

  • 身体感覚の誤った解釈
  • 無意識に抑圧された葛藤によるもの
  • 疾病利得

身体表現性障害の患者さんは、身体の感覚を誤って認知しているといわれています。身体表現性障害の患者さんは、身体の嫌な感覚に対して敏感なうえに、耐えることができません。このように身体感覚のとらえ方が歪んでいるため、身体症状やそれに対する心配が生じてしまいます。

そして身体表現性障害は、自分の中に抱えている葛藤(ストレス)を無意識に抑え込み、その不安が症状に転換されて出てきているとも考えられています。

そして意識が身体症状に向くことは、自分の葛藤と向き合わなくて済みます。さらには病気であることから、周囲の人から配慮してもらえるという現実的なメリット(疾病利得)もあるのです。

このような身体化することが、ストレス対処法として習慣になっていることもあります。ストレスを上手く解消できない時に、症状に表現することで疾病利得を得るのです。子供の頃から学習されてきていることも少なくありません。

心気症はこのような原因が考えられているため、性格などの本人要因も大きいと、ストレスなどの環境要因が重なって発症します。

 

3.身体表現性障害の要因①-遺伝と性格

そこまで大きくはないですが、遺伝要因も示唆されています。性格傾向としては、神経質性格とアレキシサイミアが要因となります。

それでは、身体表現性障害の遺伝や性格要因からみていきましょう。

身体表現性障害に遺伝的な要因はあるのでしょうか?純粋な遺伝的な影響については、あまり多くは報告されていません。身体化障害では、双子研究などで遺伝的な影響が報告されています。

つぎに、身体表現性障害になりやすい性格についてみていきましょう。性格は遺伝的な気質に加えて、育ってきた環境や生きていく上での経験から培われていきます。

身体表現性障害になりやすい性格としては、

  • 神経質性格
  • アレキシサイミア

の2つがあげられます。神経質性格は、「とらわれ」が強い心気症や身体醜形障害に関連が深いです。アレキシサイミアは、転換性障害や疼痛性障害に関連が深いです。

神経質性格とは、

  • 内向的
  • 内省的
  • 心配性
  • 完全主義
  • 理想主義
  • 負けず嫌い

といった特徴があります。神経質性格は、心配性で内向的という弱気な側面もある一方で、完全主義で理想主義、負けず嫌いという強気な側面もある性格です。

このように共存しているため、弱気な部分を強きな部分が受け入れられなくてストレスを抱えやすい傾向にあります。

アレキシサイミア傾向がある人は、自分自身の感情に上手く気づけず、そしてその感情を表現することが苦手です。感情を感じていないわけではないのですが、それを自分で認識できないのです。

周りの人からみると、真面目で仕事熱心な頑張り屋さんで、頼まれるとノーと言えず、他人によく気をつかいます。ですが、「本当は嫌だ」「疲れている」と いった感情があるのに、それに気づけずに自分で抱えてしまいます。限界ポイントを超えてしまうと身体症状にあらわれ、心身症を発症してしまいます。

アレキシサイミアについて詳しく知りたい方は、「心身症や気分変調症の原因、アレキシサイミア(失感情症)とは?」をお読みください。

 

4.身体表現性障害の要因②ーストレス

身体表現性障害では、心理的ストレスや社会的ストレスが要因となります。いいことも含めて、変化はストレスとなります。

身体表現性障害では、ストレスを無意識に抑え込んでしまうことが原因と考えられています。ストレスが抑えきれなくなり、身体的な症状として置き換えられてしまいます。

このように無意識にストレスを抑圧しているので、自分でもストレスが意識できていないことが多いです。学校や仕事、家庭でのストレス、人間関係のストレスなどがあります。

ストレスが一番大きくかかってくるのは、変化したときです。自分の生活の中で、何か変化したことはなかったかを振り返ってみてください。

ストレスというと悪いことばかりが頭に浮かぶかと思います。確かにマイナスなことがストレスになることが多いのですが、ストレスはいいことでも生じます。

例えば新しい家族が増えたり、昇進することがストレスになることがあります。本人も喜ばしいことと思っていても、知らず知らずにストレスになっていることもあります。

変化をするということ、良いことであったとしてもストレスになりうるのです。最近の生活での変化に目を向けていく必要があります。

 

身体表現性障害では、もう一つの原因として疾病利得があります。

  • 避けたい出来事(学校や仕事に行くなど)
  • 感情的になる出来事(夫への怒りなど)

こういったストレスで、身体表現性障害が悪化します。身体症状として形にすることで、嫌なことを避けられたり相手にアピールできたりといった現実的なメリットがあります。

 

まとめ

身体表現性障害とは、心理的要因によって身体症状としてあらわれる病気です。いろいろな表れ方があり、純粋に症状が認められることもあれば、病気や容姿といったことにとらわれることもあります。

身体表現性障害は、身体感覚の認知の問題や抑圧されたストレス、疾病利得などが原因となります。このため、性格傾向や日々のストレスなどが要因と考えられています。

そこまで大きくはないですが、遺伝要因も示唆されています。性格傾向としては、神経質性格とアレキシサイミアが要因となります。

身体表現性障害では、心理的ストレスや社会的ストレスが要因となります。いいことも含めて、変化はストレスとなります。

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