自己愛性パーソナリティ障害の家族や周囲の対処法

元住吉 こころみクリニック
元住吉 こころみクリニック

2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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他者への共感がなく、周囲を自分の都合で威圧しコントロールしたがる傾向の強い自己愛性パーソナリティ障害。

本人は自分のパーソナリティ障害に無自覚の場合が多く、問題を感じるのは家族や職場の人たちの方というパターンがよく見られます。

本人が直接病院に相談しに来ることは非常に少ないです。周りの家族や友人が対応に困って、病院に相談に来られることの方が多いです。

自分の身近な人に自己愛性パーソナリティ障害の可能性があったら、どのような対処をすればいいのでしょうか。ここでは、自己愛性パーソナリティ障害の患者さんに対して、どのように周りが接していけばよいのか、その対処法についてお伝えしていきます。

 

1.自己愛性パーソナリティ障害の症状は?

自己愛性パーソナリティ障害の人の特徴を、以下で具体的にみていきましょう。

まず始めに、自己愛性パーソナリティ障害の症状をチェックしてみましょう。

  • 自分は偉大で特別な人間だと思い込んでいる
  • 現実には無い成功、権力、才能、美貌などの理想的な空想にとらわれている
  • 自分は特別な地位や権力のある人たちと関わるべき人間だと信じている
  • 他者は自分を手ばなしでほめるべき、チヤホヤするべきと思っている
  • 他者は自分に対し、特別な配慮やひいきをするべきだと思っている
  • 自分自身の目的や都合のために他者を利用しようとする
  • 他者に共感の気持ちを持たない
  • 自分以外の優れた人に対する強烈な嫉妬や周囲が自分に嫉妬しているという思い込み
  • 尊大で傲慢な態度や行動

診断基準ではこれらのうち、5つ以上の症状があてはまることとされています。その症状にもとづき、具体的には以下のような態度や行動が見られます。

  • 自分の自慢話を延々と続け、聞かないと怒り出す
  • 自分が批判されたと感じると、すさまじい怒りを相手にぶつける
  • 相手の欠点を責め続けたり弱点をしつこく攻撃したりする
  • 他人の悪い噂をつくりあげ、人間関係を壊そうとする
  • 自分以外の人がほめられると極端に機嫌が悪くなる
  • 一人でいることを嫌い他者を自分の都合で束縛する

 

2.自己愛性パーソナリティ障害の2つのタイプ

自己アピールが強く威圧的なタイプと、引きこもりがちで消極的なタイプに分かれます。

「尊大で傲慢(ごうまん)な態度や行動」は自己愛性パーソナリティ障害の人の大きな特徴ですが、それが表面にあらわれている人ばかりとは限りません。自己愛性パーソナリティ障害の人は、自己アピールが強く威圧的なタイプと、引きこもりがちで消極的なタイプとに大別されます。

消極的なタイプは、内面では自分は偉大で他者は自分を特別扱いすべきと思っていますが、「今そうじゃないのはまだ能力が発揮されていないだけ。」「正しく評価してくれる人に出会っていないだけ」と現実から目を背ける傾向があります。自己が否定されたり傷つけられたりすることを極端におそれ、他者と積極的に交わろうとしません。

他者からのささいな言葉に傷つき、引きこもってうつ状態になってしまうこともあります。このタイプは、外に向かって自己の欲求を発散できない分だけ、身近な家族やパートナーに集中して強い執着や怒りをしめす傾向が強くなります。

反対に自己アピールの強いタイプは、偉そうで思いやりに欠け、人を見下すような態度を取ります。どちらかといえば、現実でもある程度の成功をおさめている人も多く、それが順調にいっている間はとくに問題にはなりません。

しかしながら仕事などで思い通りの成果が出せなかったり、周囲から評価されなかったりしたときに激しい怒りを爆発させて攻撃的になります。家庭や職場で周囲を威圧的に支配しようとし、モラルハラスメントやクレーマー、DVに発展することもあります。

 

3.自己愛性パーソナリティ障害の特性を理解する

自己愛性パーソナリティ障害の根底には、ありのままの自分を愛せないことがあります。他人を鏡にして理想の自己をみて、それを愛しています。

相手の態度や行動の裏側にどのような心理があるか、障害の特性を理解することにより、自分が冷静さを保ちやすくなります。

  • 尊大で威圧的な態度や言動は、自信の無さの裏返し
  • 他者への共感ができないのは「共感」が何かを知らないから
  • 他者を支配したがるのは不安の裏返し
  • 他者の欠点を攻撃するのは、自分の問題を他者にすりかえて心を守るため
  • 本人は自分の何が悪いかを自覚していない

自己愛性パーソナリティ障害の人は、一見自信満々なうぬぼれやに思えますが、実際にはその逆です。偉大で特別な自己像をつくりあげてそれをアピールし、他者から常にほめてもらわなければ自分に自信が持てません。

「現実の自分そのままでは誰にも受け入れられないのではないか」
「生きる価値のない人間ではないか」

そのような不安が心の奥に隠れています。しかし本人はそれを自覚しておらず、相手から見える自分を愛することで自分を守っています。

自分自身で自己を安定して保つことができないので、他者の反応や評価に強く依存し、外に見える地位や成功に執着します。相手を否定しおとしめることで自分の立場を守ろうとし、自分を手放しでほめて特別扱いをしてくれる誰かを常に求めます。

 

他者への共感が無いのは、「共感」という感覚を知らないからです。人は自分自身の苦しみや悩みを理解していてこそ、他者への共感が生まれます。こういうこ とを言っては相手が傷つくとか、相手には相手の事情や考えがあるとか、それは自分自身のことも思いやれる人が持てる感覚です。

自己愛性パーソナリティ障害の人がアピールしているのは偽りの自己で、結局それは等身大の自分に対する強い自己否定感のあらわれです。他者に対する態度は、裏を返せば本当の自己への態度のあらわれと言われています。

自分に優しい人は他者にも優しくできますが、等身大の自分をかえりみずに全面的に否定している自己愛性パーソナリティ障害の人は、他者にも否定の気持ちしか持てず、立場を尊重することができません。

自己愛性パーソナリティ障害の人と接するときは、まずそのような心理状態を理解し、こちらを軽視する態度・言動はやむを得ないとあきらめ、自分自身が怒りや自責の念でつぶされないよう心を守るようにしましょう。

 

4.自己愛性パーソナリティの人への対処と付き合い方

自己愛性パーソナリティ障害の人が身近にいると、周囲の人の方もそれに巻き込まれ、対応に疲れてうつ状態や苦しい精神状態になってしまうことがあります。それを避けるために、自己愛性パーソナリティ障害の人と接するときにおさえておきたいポイントをご紹介します。

 

治療へのつなぎ方

自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分から積極的に精神科を訪れることはあまりありません。相手の障害を指摘したり、無理やり病院へ行かせたりしようとすれば、激しい怒りをかう恐れがあります。

もしも相手にうつ状態や不眠などの症状が見られる場合は、「あなたの苦しみを少しでも楽にするために病院という選択肢がある」と、相手への共感の姿勢で治療をすすめるようにします。

それでも難しいとき、自分での対応が無理と感じるときは、まずは自分だけが病院を訪れ対処を相談してみることもできます。

 

問題を抱え込まない

自己愛性パーソナリティの人と一対一で向き合っていると、相手の言動によって自分が追いつめられ、深い自己嫌悪や自己否定の気持ちが湧いてくることがあります。自分が悪いから相手が怒っているのではないか、自分が至らないから関係が上手くいかないのではないか、そのような心境になってしまいがちです。

それを避けるため、一人だけや家庭内だけで問題を抱え込まないようにしましょう。相談先としては、パーソナリティ障害治療を扱える精神科、学校や職場のカウンセラー、公的な相談施設などがあります。

できれば専門の知識を持つ第三者に相談をし、客観的な意見を聞くようにしましょう。

 

相手をどうにかしようとしない

自己愛性パーソナリティ障害の人が身近にいると、その態度や行動をあらためてほしいとか、自分が傷ついていることをわかってほしいとか、少しは共感の気持ちを持ってほしいとか思いますよね。

ですが、いくら言葉をつくしても相手に伝えるのは困難です。自己愛性パーソナリティの人にとって、自分の態度や行動や考え方に問題があると認めることは、理想の自己イメージの崩壊を意味し、死ぬのと同じくらい耐えられないことです。

誰かにそれを壊されそうになれば、激しい攻撃で対抗しようとします。言葉を重ねれば重ねるほど相手を刺激してしまい、自分の方が疲れてしまいます。相手を変えようとしてもそれが難しい障害だということを頭に置き、感情的にならないように心がけましょう。

 

一定の距離を保つ

家族間や恋人間の場合お互いの距離が密接になりがちです。しかし、相手と自分の境界線が無くなりそこに巻き込まれてしまうと、自分の方が精神的に追いつめられてしまう恐れがあります。

相手の問題に踏み込まず、かといって完全に突き放しもせず、相手と自分を切り離して距離をとり、家族や恋人であっても隣人と同じような感覚で接するようにすると、相手に巻き込まれにくく冷静さを保ちやすくなります。

可能であれば、一度距離を置いてしまうのも1つの手です。どのような対応がいいかは本人や自身の状態、環境などによって違うので、専門家と相談しながら一番いい方法を検討してみましょう。

 

本人の本当に優れている部分を探す

自己愛性パーソナリティ障害の人は、幻想の自分をアピールしてほめるように強要します。それを否定したり間違いを指摘したりすると相手を刺激するので避けた方がいいですが、完全に同調して持ち上げるのも好ましくないと言われています。

自己愛性パーソナリティ障害の人に対しては、本人の本当に優れている部分を探し、そこをほめるようにします。それ以外のことに関しては否定も同調もせず上手く受け流すようにしましょう。

 

相手に何かを伝えたいときは共感をしめした言葉に変える

相手の言動や態度の中でどうしても受け流せないことがあり、こちらの意向を伝えたいときは、相手を否定する言葉を使わないように注意します。

自己愛性パーソナリティ障害の人は否定や批判を強く恐れるため、そのような言葉を聞くと怒りにスイッチが入り、聞く耳を持たなくなってしまう可能性があります。

それを避けるため、話す際は「あなたの言っていることはわかるけど、こうした方がもっとよくなるかもしれない」「私の都合であなたに不便を感じさせて申し訳ないけれど、こうしてもらえるとすごく助かる」などのように、相手に共感をしめした言葉を選んでみましょう。

 

5.自己愛性パーソナリティ障害の職場での付き合い方

自分がまきこまれた場合は、早めに相談することが大切です。

自己愛性パーソナリティ障害の相手が職場の関係者である場合、一番に考えるべきは「どうすれば自分の職場環境と心を守れるか」ということです。

自己愛性パーソナリティ障害の人はときとして、ある特定の人だけを激しく攻撃したり、その人の悪い噂を流したり、しつこく欠点を指摘したりすることがあります。

もしも自分がその標的になってしまったら、まずは信頼できる立場の人に相談をしましょう。職場にカウンセラーがいるならそれを利用し、いないなら、上司の中で状況を冷静に判断できそうな人を選びます。

上司に問題を伝える際に注意したいのは、相手を批判するような言葉を感情的に並べないようにすることです。客観的に見て仕事に支障がでていることを、冷静な言葉で伝えることを意識するとトラブルが避けやすく、上司も対応がしやすくなります。

仕事仲間で話のわかりそうな人がいれば、協力を申し出てみるのもいいかもしれません。職場での問題に対しては公的な相談機関もあります。

自分での判断が難しいときや精神的に追いつめられているときは専門家に相談しましょう。

 

6.自己愛性パーソナリティ障害は治る?

治療には時間がかかりますが、少しずつ改善がみられる方もいます。治療によって不安定になることもありますが、周囲は動揺せずに自分のペースを保つようにしましょう。

自己愛性パーソナリティ障害の可能性がある人が距離の置けない相手だったとしたら、障害が治るものなのかどうかはとても気になりますよね。

自己愛性パーソナリティ障害の治療は主に地道なカウンセリングの積み重ねとなります。様々な面で難しいと言われる治療ですが、確実な改善がみられるケースもあります。

もしも治療を受けることになったら、周囲の人はできるだけ本人の問題に踏み込まず、色々なことを言って治療を混乱させないように注意する必要があります。治療の中で患者さんは様々な葛藤を抱え、一時期はよけい不安定になることがあります。しかしながら周囲はそれに動揺せず、自分のペースを保つようにしましょう。

治療には時間がかかることが多く、本人はもちろんですが周囲も大変です。家族や病院、相談先と連携をとり、自分自身の精神や生活を守ることをまずは大切にしてください。

 

まとめ

自己愛性パーソナリティ障害の根底には、ありのままの自分を愛せないことがあります。他人を鏡にして理想の自己をみて、それを愛しています。

職場で自分がまきこまれた場合は、早めに相談することが大切です。家族など切手は切れない関係の場合は、本人への対応を統一しましょう。まずは自分の気持ちの安定を大切にしながら、自分のペースで接するようにしましょう。

治療には時間がかかりますが、少しずつ改善がみられる方もいます。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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