ゴミ屋敷の原因?溜め込み障害とはどういう病気か

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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最近メディアでも、「ゴミ屋敷」のことが取り上げられることも多いかと思います。普通の人がみたら明らかにゴミとしか思えないものを捨てず、家の中はおろか外にまでゴミがあふれてしまうことがあります。

そして、「ゴミではない」と言い張る屋敷の主に、多くの方は理解ができないと思います。主にとってみれば愛着のあるものであり、本人にとってはゴミという認識はおそらくないのでしょう。

このような方は、「溜め込み障害」という病気の可能性があります。溜め込み障害とはその名のとおり、一般的には価値がないものを集めて捨てられなくなってしまう病気です。

たまにゴミ屋敷を無理やり片づけるテレビ番組をみることがありますが、溜め込み障害という病気だとしたら、本質的に何の解決にもならないことが分かると思います。溜め込み障害は、国際的な診断基準でもしっかりと認められている病気になります。

それでは溜め込み障害とは、どのような病気でしょうか?ここでは、その原因や診断、治療について詳しくお伝えしていきます。

 

1.溜め込み障害とは?

溜め込み障害とは、一般的には価値のないものを捨てず、本人の意志で溜め込んでしまう病気です。

まずは溜め込み障害とはどのような病気なのか、お伝えしていきたいと思います。

人が物を所有する目的には、大きく2つがあります。所有することそのものが目的の場合と、その物に対しての愛着がある場合です。溜め込み障害では、この両方が入り混じっています。

ゴミ屋敷の主は、「捨てられないのではない、コレクターなんだ」ということもあります。コレクターという表現をすると聞こえはいいですが、コレクターでは集めるものが限定されていますし、その物の価値は愛好家であれば理解ができるものです。

溜め込み障害の患者さんは、捨てないで溜め込んでいることに対して疑問を持っていません。そして捨てられることに対して、非常に強い抵抗を示します。

ゴミ屋敷とまでいかなくても多くの溜め込み障害の患者さんでは、本人と家族との共同生活が難しくなってしまいます。それが重症化すると、近隣住民とのトラブルとなるのです。

ためこみ障害は、欧米の調査では2~6%の有病率と報告されています。少なくない病気なのです。

 

2.溜め込み障害と強迫性障害との違い

溜め込み障害は強迫性障害と異なり、強迫観念や強迫行為は本人に苦しいものではなく、自分が病気だという認識は持ちにくいです。

溜め込み障害は、従来は強迫性障害のひとつの症状と考えられていました。強迫性障害の患者さんの20~40%で、溜め込み障害の症状があると報告されています。

最新の診断基準では、溜め込み障害は強迫性障害から独立した病気となり、強迫性障害の関連疾患のひとつという位置づけになっています。

強迫性障害は、強迫観念(ある考えやイメージへのとらわれ)と強迫行為(繰り返しの行為)を特徴とする病気です。確かに溜め込み障害を、物がなくなってしまうのではないかという強迫観念と、過剰なまでの溜め込みという強迫行為ととれます。そして物を捨てることを回避します。

しかしながら溜め込み障害では、勝手にやってくる苦しい考えやイメージを打ち消すために行っているのではありません。物を集めたいという気持ちは本人のもので、むしろ好ましい行為として本人は溜め込みをしているのです。

ですから、強迫性障害とはその病気の本質が異なります。患者さんは病識(病気という自覚)がないことが多く、治療のアプローチも変わってきます。このため溜め込み障害は、強迫性障害とは独立した疾患となりました。こうしてみると、溜め込み障害の患者さんの半数は、強迫性障害とは関係なく症状が認められます。

 

3.溜め込み障害の原因とは

ためこみ障害は、比較的遺伝の影響が大きいと考えられています。優柔不断な性格傾向や日々のストレスなどが原因とも考えられています。

溜め込み障害の原因は、ハッキリとしたものが分かっているわけではありません。しかしながら、いくつか分かっていることもあるのでご紹介していきます。

①遺伝

溜め込み障害には家族性があるといわれています。溜め込み障害がみられる患者さんの50%では、同様に溜め込み行動をする親族がいると報告されています。

強迫性障害に比べると溜め込み障害は、遺伝の影響が大きい病気と考えられています。

②性格

溜め込み障害になりやすい性格というものはあるのでしょうか?世間一般には、だらしがない人が多いという印象でしょう。

溜め込み障害と関係している性格傾向としては、優柔不断さがあげられています。溜め込み障害の患者さんの第一親族(親・子供・兄弟姉妹)では、優柔不断な性格の方が多いことがわかっています。

優柔不断とは、物事の決断がなかなかできない性格のことです。完璧主義で几帳面な人が多いといわれている強迫性障害でも認められることがあります。明確に決まったことでないと、決断できなくなるのかもしれません。

③ストレス

溜め込み障害の患者さんでは、症状が認められる以前に大きなストレスを経験していることが多いです。虐待などの心的外傷体験といわれるようなストレスはもちろんのこと、日々の様々なストレスが原因となります。

仕事や家庭といった日々のストレスの積み重ねの中で、溜め込み障害の症状が少しずつ悪化していきます。

④年齢や性別

溜め込み症状は、11~15歳の頃から始まることが多いです。小学校や中学校といった頃で、片付けができないとよく怒られているような方が多いです。

20代になると日常生活に支障がではじめて、30代になって問題が顕在化することが多いです。ちょうど結婚適齢期で、交際相手との共同生活で問題となることが多いです。溜め込み障害は慢性的に経過して、症状に波はほとんどありません。年を取るにつれて症状が少しずつ目立つようになっていく病気です。

そしてその発症には、男女差はほとんどないと考えられています。ただ、女性の方が過剰な買い物をする傾向にあります。

 

4.溜め込み障害の症状と診断とは?

溜め込み障害の診断は、診断基準に従いながら行っていきます。診断基準には主要な症状も含まれているので、溜め込み障害の診断基準をみながら症状をお伝えしていきます。

アメリカ精神医学会(APA)のDSM-Ⅴという国際的な診断基準をもとに見ていきたいと思います。この診断基準では、AからFまでの6項目を上から順番にチェックしていくことで、溜め込み障害と診断できるようになっています。

A.実際の価値とは関係なく、所有物を捨てることや手放すことが持続的に困難である。

溜め込み症を持つ患者さんは、80~90%の方が過剰な収集をしています。置き場もないのに不要なものを捨てられずに収集しています。

最も多いのが、過剰な買い物です。社会人になりお金が自由に使えるようになると、色々なものをまとめ買いしてしまいます。次に多いのが、チラシ広告や他人の捨てたものなどの無料の品物の収集です。

価値があるものかどうかは関係なく、捨てられなくなってしまうのが溜め込み障害の本質的な症状です。価値とは関係なく愛着をもっていることも多く、重要な情報を失ってしまうかもしれないという恐れがある方もいます。

B.品物を捨てることの困難さは、品物を保存したいと思われる要求や捨てることに関連した苦痛によるものである。

溜め込んでいるものを捨てようとすると、それに非常に強い苦痛を伴います。このことは、溜め込んでいる行為が患者さん自身の意図があることを意味しています。

だまし討ちして捨ててしまっても、溜め込み障害の患者さんは大きな苦痛を感じます。

C.主有物を捨てることの困難さによって、活動できる生活空間が物で一杯になり、取り散らかり、実質的に本来意図された部屋の使用が意見にさらされることになる。

自分自身が普段から生活している空間では、最低限の整理整頓をするのが当たり前です。物が散らかって来たら掃除して、最低限生活ができるようにしていきます。溜め込み障害の患者さんでは、そのような生活空間も物で一杯になってしまいます。

家族や掃除業者などがきれいにしている場合に関しても、ほっておいたら生活空間が物であふれてしまう場合は診断基準を満たすと考えます。

D.ためこみは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的・職業的・他の重要な機能の障害をもたらしている。

溜め込み障害と診断するためには、ためこみが生活に支障を及ぼしている必要があります。溜め込み障害の患者さんは、病識(病気だという認識)がないことが多いので、自分自身がためこんでいることでの苦痛を感じることは少ないです。

病院に受診される患者さんも、本人が困ってという形はまずありません。共同生活をしている人との関係が限界となり、仕方なく病院に受診する患者さんが多いです。

E.物質または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない

F.他の精神疾患の症状ではうまく説明できない

アルコールや薬物による影響でないことを示す必要があります。また、さまざまな精神疾患でないことも示す必要があります。

除外する必要のある他の精神疾患として、うつ病や統合失調症、認知症や発達障害だけでなく、強迫性障害もあげられています。つまり、他の強迫症状から広がった「ためこみ症状」は強迫性障害と考えます。強迫性障害と合併しないものだけを「溜め込み障害」と診断します。

溜め込み障害の特殊なタイプとして、「動物ためこみ」というものがあります。ときに非常にたくさんの動物をかって、エサや水などをほとんど与えず、ひどい衛生状況の中で飼育している人がいます。このような動物ためこみをする人は、物をためこみする人よりも病識がないことが多いです。

 

5.溜め込み障害の治療とは?

本人がイヤイヤ病院にくるため、治療はなかなか困難です。家族や恋人などのサポートが治療には必要です。お薬は効きが悪く、精神療法を中心に行っていきます。

ためこみ障害の治療は、非常に難しいです。本人は溜め込みに対して問題意識はありません。ですから、自分から治療を望むことはまずありません。家族や恋人などに言われて、イヤイヤ病院に来たという患者さんが多いです。

治療をしていく場合は、基本的には日々の生活の中で改善をしていく必要があるので、外来治療が原則になります。お薬の治療としては、強迫性障害と同じように薬物療法を行っていきますが、強迫性障害よりも有効性は低いです。

強迫性障害の薬物療法について詳しく知りたい方は、「強迫性障害に有効な薬とは?強迫性障害の薬物療法」をお読みください。

精神療法としては、暴露反応妨害法を中心としたアプローチとなります。家族や恋人によって自宅を片付けることでの不安や不快感を我慢して慣れていき、過剰な買い物や不必要なものの収集を我慢していきます。その中で少しずつ、誤った物事のとらえ方を修正したり、意思決定能力を高めたりしていきます。

このような治療なので、家族や恋人などが一緒になって治療をすすめていく必要があります。

暴露反応妨害法について詳しく知りたい方は、「暴露反応妨害法(エクスポージャー)とはどういう治療法なのか」をお読みください。

 

まとめ

溜め込み障害では、一般的には価値のないものを捨てず、本人の意志で溜め込んでしまう病気です。

溜め込み障害は強迫性障害と異なり、強迫観念や強迫行為は本人に苦しいものではなく、自分が病気だという認識は持ちにくいです。

ためこみ障害は、比較的遺伝の影響が大きいと考えられています。優柔不断な性格傾向や日々のストレスなどが原因とも考えられています。

本人がイヤイヤ病院にくるため、治療はなかなか困難です。家族や恋人などのサポートが治療には必要です。お薬は効きが悪く、精神療法を中心に行っていきます。

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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