デパケンの片頭痛への効果とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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片頭痛(偏頭痛)は、原因のはっきりしない慢性的な頭痛です。脳の血管の病気と考えられてきましたが、最近では脳幹のある部分が活性化して、それが大脳皮質の興奮による「前兆」と、血管の拡張による「激痛」を引き起こすと考えられています。

片頭痛の治療としては、痛みが現れた時の急性期治療と、普段からの予防治療の2つを組み合わせていきます。デパケンはこのうち、予防薬として最も効果が期待できるお薬です。

ここでは、片頭痛の予防薬としてのデパケンの効果と使い方について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.片頭痛の予防薬を使うケースとは?

月に2回以上の頭痛で、頓服も週に2回以上使うような時に予防薬を検討します。

片頭痛の治療では、その頭痛の頻度と程度によって治療の戦略が異なります。たまに痛みが出てくる程度であったり、痛み止めを使ったらすぐに効果が出てくる場合は、予防薬まで使うことはしません。

予防薬は毎日服用しなければいけないので、使うメリットがある場合だけしか使わないのです。それでは、どのような患者さんに予防薬を使っていくのでしょうか?

アメリカのガイドラインでは、以下のケースとしています。

  • 月に2回以上の生活に影響がある頭痛
  • 急性期治療がうまくできない時
  • 頓服薬が週2回以上必要
  • 神経障害につながる稀な片頭痛

これを目安に、患者さんの状態をみながら予防薬を使っていくかを考えていきます。痛み止めを慢性的に使っていると、それが原因で薬剤乱用性頭痛になることもあります。ですから、頓服を頻繁に使うようでしたら予防薬を検討します。

 

2.デパケンがどうして片頭痛に有効なのか?

片頭痛の引き金になる脳幹部分の活性化を抑える働きがあるためと推測されます。

デパケンは片頭痛の予防薬としては、第一選択薬となっています。国際的なガイドラインをみても、どれもデパケンは最も高い評価になっています。日本の保健制度でも、片頭痛予防で保険が通るのは、デパケンとミグシス/テラナスの2種類になります。

それではどうしてデパケンが有効なのでしょうか?そのはっきりとした作用機序はわかっていません。ただ、デパケンには主に以下の2つの作用によって、脳の活動を抑える効果が期待できます。

  • GABAの働きを強める
  • 神経細胞膜を安定させる

「GABAって聞いたことある」という方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。デパケンには、このGABAの働きを強める作用があります。

デパケンには、神経細胞の膜を安定させる作用もあります。神経細胞が興奮して活動するためには、ナトリウムやカルシウムなどのイオンの働きが重要です。デパケンは、ナトリウムやカルシウムのイオンチャネルという通り道をブロックします。これによって神経細胞が興奮 しにくくなり、神経細胞膜が安定します。

このように、脳の活動を抑えるため、片頭痛の引き金になる脳幹部分の活性化を抑える作用があるのだと推測されます。

 

3.デパケンの片頭痛予防薬としての使い方

比較的低用量で有効性が示されていて、400~600mgが推奨されています。有効血中濃度の目安は21~50μg/mLです。

双極性障害やてんかんの治療薬としてデパケンが使われるときは、きっちりと血中濃度をはかりながら薬の調整を行っていきます。デパケンを片頭痛予防薬として使う時は、そこまで細かく血中濃度を測る必要がありません。デパケンの血中濃度が必要以上に高濃度になっていないかを確認する程度で十分です。

双極性障害やてんかんでの有効血中濃度は50~100μg/mLが目安でした。片頭痛では、21~50μg/mLが目安となります。さまざまな研究で、デパケン血中濃度が50μg/mL以上でも効果はかわらず、副作用が増えるだけという報告がされているためです。

これをうけて日本の添付文章でも、片頭痛の予防薬の用量は400~800mgとされて、最高量1000mgとなっています。実際に推奨される量としては、400~600mgです。

効果は2か月ほどかけて判定し、有効であれば半年ほど継続し、頭痛のコントロールがついて大丈夫そうであれば減量していきます。精神科の患者さんの場合は、何らかの抗うつ薬や気分安定薬などが使われていることがほとんどかと思います。これらの薬も予防効果があることも多いです。

 

4.デパケンが向いている片頭痛患者さんとは?

  • 男性
  • 出産予定がない女性
  • 双極性障害やてんかんの方
  • 他の予防薬で効果のなかった方

予防薬としては、他にも抗うつ剤のトリプタノール、βブロッカーのインデラル、Ca拮抗薬のテラナス/ミグシスなどがあります。これらの予防薬の中でも、デパケンの予防効果は高いです。このため、デパケンは第一選択として使われます。

ただ、デパケンには催奇形性が認められます。ですから、妊娠の可能性がある女性にはできるだけ使いたくないお薬です。このため、男性や出産予定がない女性に向いているといえます。

また、デパケンは双極性障害やてんかんの治療薬にもなります。これらの病気の患者さんでは、デパケンが向いているといえます。

他の予防薬で効果のなかった場合、妊娠の可能性がある女性でも使っていくこともあります。このときは、以下のことに注意してデパケンを使っていきます。

  • 徐放製剤のデパケンR錠を使う
  • 基礎体温をつける
  • 葉酸を服用する

 

まとめ

月に2回以上の頭痛で、頓服も週に2回以上使うような時に予防薬を検討します。

片頭痛の引き金になる脳幹部分の活性化を抑える働きがあるためと推測されます。

比較的低用量で有効性が示されていて、400~600mgが推奨されています。有効血中濃度の目安は21~50μg/mLです。

デパケンが向いている片頭痛患者さんは、

  • 男性
  • 出産予定がない女性
  • 双極性障害やてんかんの方
  • 他の予防薬で効果のなかった方

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